ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
「おぉっ?!なんの警報だぁ!」
一方、自室で筋肉痛から体を労わり、ベッドに横になっていた遊馬は。けたたましく鳴り響くサイレンにたたき起こされた。
『やむを得ん、迎撃する。対空砲用意!』
クリス司令の怒号が、艦内放送に乗ってくる。そこでようやく遊馬も異常事態に気づいた。にわかにこの居住区も、ハチの巣をつついたように騒がしくなってくる。しばらくすると、断続的な振動が足に伝わってくる。どうやら砲撃が始まったらしい。
『遊馬クン、司令室に来てくれ。』
今出ていくと迷惑になると思い、しばらく部屋にとどまっていたところ、艦内放送で呼び出された。素直に指示に従い、エレベーターに乗り込んで目指す。
司令室にまで至る間の空白、何か出来ることはないだろうかと思案したものだが、あまり選びたくない選択肢が真っ先に浮かんできた。それはこの艦に一機だけ残された、ライトレベリオンに乗り込んで戦うというものだ。
もちろん、そんなことはあり得ないと言っていいだろう。いくらシミュレーターでいい線行ったとは言っても、まともな訓練を受けていない素人なんかが出て行ったら足手纏いにしかならない。まるで現実的ではない。
だが、他に方法が無いとすれば・・・。などと思い至ったあたりで、指令室のドアが開いた。外の様子を映したモニターは、砲塔から吹き出す砲火と無人機の爆撃の光に埋め尽くされている。
『司令室、こちら情報室。』
「どうした?」
『奇妙な情報が流れています。この戦闘の様子の動画が、ネットやニュースで流れています。』
「どんな様子だ?」
『・・・どうやら、敵が意図的に流した情報のようです。』
「そうか、やはり・・・そういうことか。」
そこへ情報室からあらたな手掛かりが入ってくると、クリス司令は冷静に咀嚼して考えを整理する。
「あの、大丈夫なんですか?」
「安心しなよ、この程度の攻撃ではネプチューンはまだ沈まない。」
「まだ?」
「敵の攻撃に、こちらを沈めようという意志が感じられない。これは陽動だろう。」
「陽動?」
「おそらく、我々が焦って救援を出すことを狙っているんだろう。我々の味方をおびき出すためにな。」
「ヘイヴンに味方っているんですか?」
「いくらかはいる。例えば、この後向かおうとしていた秘密ドックとかにな。」
「なるほど。」
対空砲の攻撃によって無人機はどんどん落とされていく様子を見て、遊馬もホッと胸をなでおろす。どうやら自分の出番はなさそうだ。
「お前がそうソワソワしていても変わるものじゃない。ここは名司令官のお手並み拝見と洒落込もうじゃないか。」
「父さんはのんびりしすぎだと思うのだけれど。」
「俺は心配してないからな。」
などと呑気にのたまいながら、和馬はコーヒーを飲んでいる。
「私も、おそらく追撃の手は薄いと考えている。」
「どうして?」
「言ったろう、この攻撃はおそらく陽動だと。沈めてしまったら陽動の意味がなくなる。」
「敵増援!」
「ただのコケ脅しだ。潜水システムの復旧を急がせろ。あとどれぐらいかかる?」
『30分ほどかと!』
「とにかく急げ、次が来るぞ。」
あまりモタモタしていると、痺れを切らした敵が本気で沈めに来るかもしれない。
「情報の方はどうなっている?」
『ネットで様々な憶測が飛び交っているようです。』
「そうか、なら放っておけ。」
「このままじゃ、国際社会から敵視されるんじゃ?」
「その心配は今はしなくていいだろう。民間人を巻き込んでいるわけでもあるまいし。」
(僕らは民間人なんじゃないのかな。)
(そこはホラ、もう片足突っ込んでるから。)
攻めてる方も、攻められている方も、どちらも表向きには所属不明だ。エヴァリアンだって表立って騒ぎを起こしたくない立場のハズだし、ここに世論的な目論見は無い。
「じゃあこんな情報を流してる真意は?」
「おそらく、外に行ったパイロットたちを揺さぶるのが狙いだろう。これが第一目標だとして、次点で我々の味方を燻りだすこと。最後にあわよくば生け捕りにするってところだろう。」
「生け捕り?」
「君たち親子のことをまだ狙っているんだろう。その可能性は十分ある。」
「確かに。」
「沈めてしまったら、それも出来なくなる。そこが付け目だ。」
「つまり、どういうことだってばよ?」
「俺たちは盾ってことか。」
あっ、なるほどね。なんという慧眼、さすがヘイヴンのトップだ。
「海中からの接近はないな?」
「ソナーに反応なし。」
「海中は手薄、か・・・だが伏兵の可能性がある。偵察機を出しておけ。」
「了解。」
とにかく30分耐えれば、潜水して逃げることが出来る。いかにレベリオンがあらゆる地形に対応できるといえども、海中はネプチューンのホームグラウンドとなる。それなら勝ち目は十分にある。
「か、海中から襲ってくる可能性があると?」
「停泊中から常に監視は張っていたが、念のためにな。比較的安全そうな道を撤退ルートに選んだところを、隠し玉で伏撃するというのは常套戦術だ、忘れてないよ。」
「な?心配ねえだろ?突如として敵が新兵器を担ぎ出してきたりしないかぎり沈まないっての。」
「あんたの発言そのものがフラグなんだよ。」
ワザとフラグを建てて肩透かしさせるつもりなのかもしれないが、それにしたって不謹慎だ。
「進路クリア、海中に敵はいません。」
「よし、微速前進。システムが復旧次第、潜水して逃れる。」
「あれ、本当に海中に敵はいない?」
「それよりも、空を警戒したほうがいい。あのニュースの映像を撮ったやつが、直接攻撃を仕掛けてくるだろう。」
「了解。」
遊馬たち素人に出来ることはない。半ばポカーンとつったっているままに、状況はよどみなく進んでいった。