ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
『司令!緊急事態です!』
「どうした?」
『サテライトロックです!』
やはりか、とクリス司令は納得する。同時に頭を抱えたそうな顔をした。
「サテライトロックって?」
「衛星からロックオンされたってことだ。」
「衛星?なんの?」
「マイクロウェーブだ。」
宇宙から太陽光発電で備蓄したエネルギーを、マイクロ波に変換して地上へと届けるのが本来の仕事だった。だが今こうして本来の役目から外れ、コントロールの効かなくなった大量破壊兵器と化した。
「こっちが本命だったというわけだ。どうやら我々を確実に始末することに決めたらしい。」
「えぇ!?」
「発射までの予測時間は?」
『発射態勢に入るまで、あと15分!』
「発射までそれだけかかるとして、それまでに少しでも狙いを逸らさせなければ・・・。」
だから海中に敵がいなかった。そしてその狙いをつけさせているのも、足止めをするのも、あのワスプの仕事というわけだ。
「なにか打つ手は?」
「技術部のがんばりと、天命を待つしかない。」
「その天を押さえられているわけだが。」
「天・・・。」
少し考えてから、遊馬はゲームPODネクスを起動した。
「おう、今度は何だ?」
「衛星を止めなきゃいけない。」
「どの衛星?」
一行は今まさに、宇宙空間に飛び出していた。これから火星に向かうところのようだ。
「マイクロウェーブを地上に向けて発射するやつ。」
「・・・それってこの前破壊した衛星砲じゃないの?」
「そっか、あれを改造したのかな。」
以前バミューダがもぎとった衛星砲『トールハンマー』、それも元は今回の衛星と同じ機能を有していた。それを再利用したものが今回の衛星なのかもしれない。
「じゃあ、バミューダが壊した残骸を回収しちゃえば・・・。」
「その回収クエストは?」
「・・・この前に消化しちゃった。」
「じゃあダメじゃん。」
そうでした。C判定でした。むしろ衛星の残骸を回収するのが主目的だったのかもしれない。
ともあれ、覆水盆に返らず。こうなったら別の手立てを考えるしかない。
「衛星砲ね、一度ロックされたら完全にその砲撃から逃れるのは難しい。特に海上に照射されれば、すさまじい水蒸気爆発と、津波が発生することになるわ。」
エルザと雄二は、自身の経験からそう答えを導き出した。
たとえ直撃しなくとも、荒波に巻かれる木っ端のようにネプチューンは沈むことになるだろう。今度は逆に、ネプチューンの方から救援を求めさせるのが目的というわけだ。
「方法としては二つ、衛星をハッキングして発射を阻止すること。もうひとつは、範囲外まで可能な限り逃げること。」
「どっちも難しいけど、今出来そうなのは後者かな・・・。」
「つまり、そのワスプとやらを排除してロックから逃れて、海中に隠れて勢いを逃す。それしかない。」
現実に戻ってきた遊馬は、クリス司令が全く同じことを提案していたkとを知る。
「幸いなことに、スパイドローンが海溝を見つけてくれた。ここに逃れれば、直撃や爆風から逃れることは出来るだろう。」
だが、ワスプを排除する手段がない。この艦の砲だけでは、自由自在に飛び回るレベリオンを倒すことは非常に難しい。
「ならやっぱり僕が出ます!」
「ならん!」
「何故!」
「何故もあるか!何が悲しくて素人の手を借りる軍人があるか!」
普通に考えればそうだ。何度でも言うが遊馬はレベリオンにはまだ乗りたてのペーペー。しかも無数の無人機と最新鋭機を相手にし、なおかつ友軍の弾幕を避けながら戦わなければならない。時間制限もある。こんなステージが序盤にあるとしたら、間違いなく負けイベントである。
そして、現実での負けはすなわち『死』を意味する。
「その『死』を被るのは、君だけじゃないんだぞ!」
「でも、僕の命だけでみんなが助かるのなら・・・。」
「おバカ!」
バチンッ、と遊馬の頬に鋭い痛みが走った。顔を前に向けると、手を抑えるクリス司令の姿があった。
「・・・いきなり打ってしまってすまない。だが・・・。」
「おうおう、なに人の息子を打ってくれてるんだ。」
「・・・本来なら、その自分の息子を諫めるのは親の役目だと思うのだが。」
「俺は育児失敗したから。代わりにやってくれ。」
「やれやれ・・・いいか、遊馬くん。いや遊馬。犠牲というのは言葉の聞こえは美しい、だがその実は空虚なものだ。」
「残された者は、自らの無力さを悔い、喪ったことに泣くしかないんだ・・・。」
遊馬は、叩かれた頬を撫でながら思い返す。犠牲になったあの子の事を・・・。
少し考えれば思い出す、自分の無力さを悔いたこと。現実を直視できなかったことを。
「キミがこの艦に来て、多くの人と触れ合っただろう?その人たちみんなが、キミの事を大事に思っている。そのみんなを、キミは悲しませたいのか?」
シェリルやセシルとも約束をした。それに、顔も名前もまだ覚えていない、メカニックのおっちゃんたちや情報室のお兄さんたち。
「けど・・・だからこそ、みんなを守りたい!みんなの帰る場所を!」
「遊馬君・・・。」
いまこうしている間にも、死のカウントダウンは刻一刻と迫っている。悩んでいる暇はない。
「・・・格納庫、聞いていたな?」
『ハイ!あと5分、いや3分待ってください!』
「え?」
「キミのレベリオンを用意している。それに乗って戦ってくれるか?」
「・・・はい!」
「では格納庫へ急げ!キミ用のパイロットスーツも用意してある!」
「了解!」
遊馬は今まさに必要とされている。そのことがこの上なく嬉しかった。
「・・・調子いいこと言って、最初から頭数に入れてやがったな?」
「元より、使えるものなら親でも使うつもりだ。」
「ブタもおだてりゃ木に登るってか。」
装いも新たに、格納庫に入った遊馬が目にしたもの、今まさに改造が施されていくライトレベリオンだった。
「来たか少年!すぐに乗り込んでくれ!」
「待った待った!ハードはもういいかもしれんが、ソフトがまだだ!もう少しでシミュレーションデータとコンバットメモリーをインプット出来る!」
被弾率を最大限抑えるためのシールドを両肩に装備し、手には反動を限りなく抑えるよう調節されたフォノンライフル。腰には近接武器としてナイフが一本だけ差さっている。
「よし、ソフトもOKだ!」
「さあ、行け少年!」
「はい!」
今この艦に残っているありあわせの素材をすべて盛り込んだ、ジャンクの山のようなこの量産機。可能性をこれでもかと詰め込んだ、希望の塊だ。
「俺達の希望を、キミに託すぞ!」
「がんばれよ!」
「気を付けて!」
シートの座り心地を確認しながら、遊馬は届けられた言葉にひとつひとつ応えていく。それらすべてが遊馬の中で勇気に変わる。
「よし・・・いくぞ!」
レベリオンのパイロットとしての、本当の一歩を踏み出した。