ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

85 / 307
第81話

 『司令!緊急事態です!』

 「どうした?」

 『サテライトロックです!』

 

 やはりか、とクリス司令は納得する。同時に頭を抱えたそうな顔をした。

 

 「サテライトロックって?」 

 「衛星からロックオンされたってことだ。」

 「衛星?なんの?」

 「マイクロウェーブだ。」

 

 宇宙から太陽光発電で備蓄したエネルギーを、マイクロ波に変換して地上へと届けるのが本来の仕事だった。だが今こうして本来の役目から外れ、コントロールの効かなくなった大量破壊兵器と化した。

 

 「こっちが本命だったというわけだ。どうやら我々を確実に始末することに決めたらしい。」

 「えぇ!?」

 「発射までの予測時間は?」

 『発射態勢に入るまで、あと15分!』

 「発射までそれだけかかるとして、それまでに少しでも狙いを逸らさせなければ・・・。」

 

 だから海中に敵がいなかった。そしてその狙いをつけさせているのも、足止めをするのも、あのワスプの仕事というわけだ。

 

 「なにか打つ手は?」

 「技術部のがんばりと、天命を待つしかない。」

 「その天を押さえられているわけだが。」

 「天・・・。」

 

 少し考えてから、遊馬はゲームPODネクスを起動した。

 

 「おう、今度は何だ?」

 「衛星を止めなきゃいけない。」

 「どの衛星?」

 

 一行は今まさに、宇宙空間に飛び出していた。これから火星に向かうところのようだ。

 

 「マイクロウェーブを地上に向けて発射するやつ。」 

 「・・・それってこの前破壊した衛星砲じゃないの?」

 「そっか、あれを改造したのかな。」

 

 以前バミューダがもぎとった衛星砲『トールハンマー』、それも元は今回の衛星と同じ機能を有していた。それを再利用したものが今回の衛星なのかもしれない。

 

 「じゃあ、バミューダが壊した残骸を回収しちゃえば・・・。」

 「その回収クエストは?」

 「・・・この前に消化しちゃった。」

 「じゃあダメじゃん。」

 

 そうでした。C判定でした。むしろ衛星の残骸を回収するのが主目的だったのかもしれない。

 

 ともあれ、覆水盆に返らず。こうなったら別の手立てを考えるしかない。

 

 「衛星砲ね、一度ロックされたら完全にその砲撃から逃れるのは難しい。特に海上に照射されれば、すさまじい水蒸気爆発と、津波が発生することになるわ。」

 

 エルザと雄二は、自身の経験からそう答えを導き出した。

 

 たとえ直撃しなくとも、荒波に巻かれる木っ端のようにネプチューンは沈むことになるだろう。今度は逆に、ネプチューンの方から救援を求めさせるのが目的というわけだ。

 

 「方法としては二つ、衛星をハッキングして発射を阻止すること。もうひとつは、範囲外まで可能な限り逃げること。」

 「どっちも難しいけど、今出来そうなのは後者かな・・・。」

 

 「つまり、そのワスプとやらを排除してロックから逃れて、海中に隠れて勢いを逃す。それしかない。」

 

 現実に戻ってきた遊馬は、クリス司令が全く同じことを提案していたkとを知る。

 

 「幸いなことに、スパイドローンが海溝を見つけてくれた。ここに逃れれば、直撃や爆風から逃れることは出来るだろう。」

 

 だが、ワスプを排除する手段がない。この艦の砲だけでは、自由自在に飛び回るレベリオンを倒すことは非常に難しい。

 

 「ならやっぱり僕が出ます!」

 「ならん!」

 「何故!」

 「何故もあるか!何が悲しくて素人の手を借りる軍人があるか!」

 

 普通に考えればそうだ。何度でも言うが遊馬はレベリオンにはまだ乗りたてのペーペー。しかも無数の無人機と最新鋭機を相手にし、なおかつ友軍の弾幕を避けながら戦わなければならない。時間制限もある。こんなステージが序盤にあるとしたら、間違いなく負けイベントである。

 

 そして、現実での負けはすなわち『死』を意味する。

 

 「その『死』を被るのは、君だけじゃないんだぞ!」

 「でも、僕の命だけでみんなが助かるのなら・・・。」

 「おバカ!」

 

 バチンッ、と遊馬の頬に鋭い痛みが走った。顔を前に向けると、手を抑えるクリス司令の姿があった。

 

 「・・・いきなり打ってしまってすまない。だが・・・。」

 「おうおう、なに人の息子を打ってくれてるんだ。」

 「・・・本来なら、その自分の息子を諫めるのは親の役目だと思うのだが。」

 「俺は育児失敗したから。代わりにやってくれ。」

 

 

 「やれやれ・・・いいか、遊馬くん。いや遊馬。犠牲というのは言葉の聞こえは美しい、だがその実は空虚なものだ。」

 

 

 「残された者は、自らの無力さを悔い、喪ったことに泣くしかないんだ・・・。」

 

 遊馬は、叩かれた頬を撫でながら思い返す。犠牲になったあの子の事を・・・。

 

 少し考えれば思い出す、自分の無力さを悔いたこと。現実を直視できなかったことを。

 

 「キミがこの艦に来て、多くの人と触れ合っただろう?その人たちみんなが、キミの事を大事に思っている。そのみんなを、キミは悲しませたいのか?」

 

 シェリルやセシルとも約束をした。それに、顔も名前もまだ覚えていない、メカニックのおっちゃんたちや情報室のお兄さんたち。

 

 「けど・・・だからこそ、みんなを守りたい!みんなの帰る場所を!」

 「遊馬君・・・。」

 

 いまこうしている間にも、死のカウントダウンは刻一刻と迫っている。悩んでいる暇はない。

 

 「・・・格納庫、聞いていたな?」

 『ハイ!あと5分、いや3分待ってください!』

 「え?」

 「キミのレベリオンを用意している。それに乗って戦ってくれるか?」

 「・・・はい!」

 「では格納庫へ急げ!キミ用のパイロットスーツも用意してある!」

 「了解!」

 

 遊馬は今まさに必要とされている。そのことがこの上なく嬉しかった。

 

 「・・・調子いいこと言って、最初から頭数に入れてやがったな?」

 「元より、使えるものなら親でも使うつもりだ。」

 「ブタもおだてりゃ木に登るってか。」

 

 装いも新たに、格納庫に入った遊馬が目にしたもの、今まさに改造が施されていくライトレベリオンだった。

 

 「来たか少年!すぐに乗り込んでくれ!」

 「待った待った!ハードはもういいかもしれんが、ソフトがまだだ!もう少しでシミュレーションデータとコンバットメモリーをインプット出来る!」

 

 被弾率を最大限抑えるためのシールドを両肩に装備し、手には反動を限りなく抑えるよう調節されたフォノンライフル。腰には近接武器としてナイフが一本だけ差さっている。

 

 「よし、ソフトもOKだ!」

 「さあ、行け少年!」

 「はい!」

 

 今この艦に残っているありあわせの素材をすべて盛り込んだ、ジャンクの山のようなこの量産機。可能性をこれでもかと詰め込んだ、希望の塊だ。

 

 「俺達の希望を、キミに託すぞ!」

 「がんばれよ!」

 「気を付けて!」

 

 シートの座り心地を確認しながら、遊馬は届けられた言葉にひとつひとつ応えていく。それらすべてが遊馬の中で勇気に変わる。

 

 「よし・・・いくぞ!」

 

 レベリオンのパイロットとしての、本当の一歩を踏み出した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。