ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第9話

 さてグラウンドについたはいいが、話しかけるに話しかけられない。

 

 「なんかすっごいこっちを見てるんですけど。」

 

 そりゃあんだけ撃ちまくればな、文句の一つも言いたくなるだろう。

 

 「ほら、話に行けよリーダー。」

 「がんばってくださいね。」

 「こういう時だけリーダー呼びとかしないで。」

 

 まあ、話しかけるのはプレイヤーの役目だ。少々おっかなびっくりしながら、近づいていく。

 

 顔は黒いバイザーで覆われ、喪服のような黒一色のコートを着込んでいる。背丈はモンドと同じくらいで、成人男性よりも少し高い。性別はおそらく、男。

 

 その男と、残り5mほどのところで立ち止まる。風も吹かない、陽の暖かさも感じないこの世界にいながら、背筋に悪寒の走るような寒気を感じたから。やっぱ怒ってるんだろうか。

 

 「あのっ!」

 「・・・。」

 「・・・ノーリアクション。」

 

 第一声が『あの』は無いだろうけど、上ずる声を必死に抑えながらなんとか反応を引き出そうとする。が、彼はこちらを見てくるばかりで、うんともすんとも何の反応も寄越さない。

 

 途端に、遊馬は悪い予感がしてきた。あのコートの下には武器が隠されていると、そう思えてならないのだ。

 

 十中八九そうであろう。彼がこのゲーム『ダークリリィ』の登場人物なのか、はたまた我々と同じく集められた『駒』なのかは、定かではないが、イベント戦闘が挟まれるとすればそういう頃合いだろう。そしてその対象が、目の前の彼であるとも十分に考える。

 

 「モンド!代わって!」

 「しょうがないな。おいお前、何者だ。」

 

 モンドは迷わず、話しかけながら近づいていく。勿論武器をいつでも抜ける状態で。

 

 「おい。」

 「・・・ようやく来たか、『来訪者』たち。」

 

 来訪者、それは我々の事だろう。

 

 「どうやら、この状況について何か知っているようだな。なら全部話してもらおうか、一から十まで。」

 「俺『達』は待っていた。時計の針が進みだす、この瞬間を。」

 

 俺『達』と言ったか。この場にいない誰かなのか、それとも罠に嵌められたのか。ただ、バイザーの奥の顔が、小さく『笑った』ように見えた。

 

 「!?」

 「警報?!なんの!」

 

 先ほどのチャイムとは違う、警告を知らせるサイレンが流れてくる。

 

 すると突如グラウンドの一角が割れて、巨大な穴が生まれる。

 

 「こ、これは!?」

 「ロボットだと・・・。」

 

 エレベーターに載せられて、ゆっくりと上がってきたのは、全高5mほどのロボットだった。黒一色の彼とは相対的な、白一色の非常にヒロイックなカッコいいリアル・ロボット。

 

 「だが、俺達の希望を託すにふさわしいか、試させてもらう。」

 「そうこなくっちゃな。」

 「えぇー!?」

 

 まるで歓喜の声をあげるかのように駆動音が響くと、ロボットの胸が開いて、彼を迎え入れる。目に光が入り、ブレードアンテナが立ち上がる。

 

 「どどど、どうしましょう?」

 「Are you ready?」

 「ノ、ノー・・・。」

 

 もう少しレベルアップしてから来るべきだったかな?いや、今更悔やんでも仕方がない。

 

 『行くぞ!』

 

 初めてのボス戦が始まった。


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