始まり
「それで、急に呼ばれて来たわけだけど」
「優く〜ん! どうしよ〜!」
「どうしようも何も、説明なしじゃどうしようもないよ」
下校中、スマホに連絡があったから来たはいいものの。
部屋に入るなり腰へと抱きついてくるオレンジ頭。
それを引き剥がしてそこらへんに転がし、空いてるところに座って比較的常識人である曜へと目を向ける。
「あはは……」
苦笑いをしながら説明してくれたところによれば、スクールアイドルを始めようとして生徒会長に怒られたと。
「僕、帰っていい?」
「酷いっ! 幼馴染が困っているのに手を差し伸べてくれないなんて!」
「学校違うし僕は男だから女子校のことなんて分からんよ。つまり相談相手を間違えてるわけだ」
テーブルに盛られて置いてあるミカンを一つ手に取り、揉みながらため息を一つ。
千歌と曜、それにあと一人を加えた四人で小さい頃から遊んでいた幼馴染とはいえため息の一つでもつかないとやってられん。
「あ、学校から宿題あったんだ」
ミカンはテーブルの端に置いておき、カバンから紙と筆箱を取り出す。
先に食べちゃうと手が汚れるし、面倒なことは先に済ませるに限る。今出来るならやるに越したことはないのだ。
「二人は宿題とかないの?」
「うん、今日は無いよ。入学式があるだけだから」
「優くんって真面目だよね。宿題ちゃんとやってるし」
「……いや、これが普通だから」
起き上がった千歌がミカンの皮を剥きながら口にしたことに呆れて曜を見れば、剥いたミカンを片手にまた苦笑いを浮かべている。
「こんなでも高校二年生なんだからおかしな話だよな」
「こんなってなにさー! 私だってやればできるんだから」
「僕と曜で頑張ったおかけだけどな」
「あの時はどうもお世話に……ってそうじゃなーい! スクールアイドルの話!」
「んなこと言われても僕にはどうしようもないって」
宿題をしているというのにずっと話しかけてくる千歌を適当にあしらいながら書き進めていくこと三十分。
少しだけ時間かかりながらも終わらせ、食べようと思っていたミカンへと手を伸ばすがそこにあるべき物が無かった。
「……おい、アホミカン。ここにあるやつ食ったな?」
「そ、そんなことしないよっ! 優くんのに手を出したら怖いもんっ!」
過去にやらかしてくらったお仕置きでも思い出してるのか、自身のみを抱いて体を震わせている。
それじゃあ誰がと視線を移せば、最後の一欠片を口に入れた曜と目があった。
「まさか曜……?」
「優くんが取ったミカンっていつも剥きやすいよね」
「しれっと言ってるがお仕置きだな」
「いひゃい……」
昔は千歌がよく人のものを取って食べていたが、最近では曜の方が多いような気がする。
「優くん、曜ちゃんにやるお仕置き甘くない? 私の時はもっと酷かったよね!」
「普段の行いってこういう時に活きてくるんだよ」
納得いっていない様子の千歌は置いておき、まだ山とあるミカンを手に取り、先ほどと同じように揉んでいく。
まだ残ってるのにミカン一つで酷いお仕置きなどしない。
千歌の場合は人が楽しみにとって置いた最後の一つを持っていくからだ。
「それより、これ」
「ん? なぁに、これ」
「千歌がスクールアイドルをやるのに素人目線ながら必要だと思うものを箇条書きにしてまとめたもの。あとはやるべき事とか?」
といっても衣装や人、曲に歌詞、振り付けといった至極当たり前のものだ。
やるべき事も体力作りであったり発声練習だったりと誰でも思いつく。
けれど箇条書きでも書き出すのとそうで無いのとではだいぶ差があるため、最低限の出だしとして代わりにやっておく。
これ以上は僕が手出しすることではないし、何より千歌がやっていかねばならないことだからだ。
「優くん、宿題やってたんじゃなかったの?」
「僕も始業式だけなのに宿題があるわけないじゃん」
「む〜。優くんのくせに生意気なっ!」
そう言って千歌はミカンを食べようとしていた僕の手を掴み、自身の顔へと近づけて口に含む。
要は強制的なアーンで食べられたわけだが、指まで咥えられたので千歌の唾液がついている。
「…………」
「いだだだだだだっ!?」
汚れた手でアイアンクローをし、お仕置きを決行する。
仮にも女の子なのだから男相手にすることじゃない。
すぐに解放してあげたが、千歌は痛む頭を抑えてこちらを睨んでくる。
そんな千歌は相手にせず、お手拭きで綺麗にしていく。
視界の端で曜が今まで見たことのない表情をしていたのでそちらに顔を向けたが、いつもと変わらない曜がいるだけだった。
「優くん、どうかした?」
「いんや、何でもないよ」
回答の中で好きなキャラを教えていただけたらと
-
曜
-
梨子
-
善子
-
花丸
-
千歌