さすがに泊まる事はなく、新幹線に乗って帰ってきた。
バスに揺られながらボーッと外を眺めていれば、浅瀬に見覚えのある少女達の姿が。
降車ボタンを押し、海から少し離れた停留所で降り。歩いて戻っていく。
悔しいよ、と千歌の声が聞こえ。
曜に抱きついて泣いている姿が見える。
「ぁ……優、さん」
「…………やあ」
ルビィが俺に気付いたので皆の視線が集まる。
こうして実際に対面すると、なんで話したものか分からなくなってくるな。
「優くん、私諦めない! このままじゃ悔しいままだもん!」
どう切り出したものかとまごついていたら、千歌が叫ぶようにして口にする。
「だから私、続ける! スクールアイドル、やめないよ!」
「…………そっか」
思っている事そのままを素直に口にできる千歌が眩しく見える。
「それなら僕も正直に話すことにするよ」
そう口にした時、反応したのは曜とヨハネの二人だった。
後のみんなは何のことか分からずに首を傾げている。
「僕はね……スクールアイドルをするみんなから避けてたんだ」
引っ越した先でスクールアイドルのマネージャー的なのをしていた事。
彼女達は十分に輝いていて、自分のアドバイスでその輝きが失われてしまうのではないか。
その不安もあって千歌たちがやるスクールアイドルの活動からは避けていた事。
それらを簡単に説明した。
「……なら、今更どうしてなのよ」
「今日、久しぶりに会ってさ。……あの時間は大切だって言われて。なら千歌たちから逃げないで向き合わないとって」
「──優くんっ!」
少し恥ずかしくなってみんなから目を逸らせば。
千歌が僕の名前を呼びながら駆け寄って抱きしめてくる。
「優くん優くん優くん! とっても嬉しいよ! 優くんが手伝ってくれるならきっとなんだって出来るもん!」
「何でもは出来ないかな」
ギュッと力強く抱きしめてくる千歌をそっと抱きしめ返す。
『──えっ!? 優くん手伝ってくれるの?! それなら私たち、どこまでだって飛べる! なんだって出来るよ!』
いつの日か、似たような事を言っていた彼女の姿が思い返される。
……今度みんなに会うときはまず謝罪かな。
今回といい、謝ることばかりだ。
「千歌、冷たい」
「えっ!? ……あ、優くんも濡れちゃったね」
いつまでも抱き合っているわけにはいかないので離れてもらう。
海に浸かっていた千歌は濡れているため、抱きつかれた僕の服も濡れて冷たい。
みんなも海に入ったままだと風邪を引いてしまうだろう。
「千歌、風呂借りてもいい?」
「うん。みんなもあったかくしないと風邪引いちゃうよ!」
ルビィなんかはクシャミをしている。
小走りで旅館へと向かうみんなの後を追いかけていく。
「──ねえ、優くん」
「ん? どうかした?」
手を掴まれ、振り返り見れば曜がそこに立っていた。
「私も、優くんが手伝ってくれるって聞いて、とても嬉しかった。だから──」
「二人とも、日も沈んで冷えてきたよ!」
「りょーかい! すぐ行くよー!」
何か言いかけていたけれども、梨子に遮られてしまう。
曜は手を振りながら返事をし、旅館へと向かっていく。
「曜、何か言いかけてなかった?」
「あー、うん。特に大したことじゃないから」
「そうか? 何かあったらいつでも言ってくれ。今までのお詫びも含めてなんだってするよ」
「ほんと? それじゃ楽しみにしてるね」
どこか含みのある笑みを浮かべ、曜は走って行ってしまった。
「最後、曜と何話してたのよ」
旅館へ着くと物陰からヨハネが出てくる。
首にタオルを巻いているが、風呂にはまだ入っていないようだ。
「特に何も話してないけど。それより早いとこ風呂入らないと風邪引くぞ」
「ふん。堕天使ヨハネは風邪なんて引かないのよ」
鼻を鳴らし、そう口にしたヨハネは僕の顔をジロジロと見始める。
「…………何さ」
「べっつにー。優が私のリトルデーモンだという事を忘れてなけりゃそれでいいわ」
それだけ言うとヨハネはさっさと風呂場へ向かって行った。
曜といい、ヨハネといい。
女の子の気分はよく分からない。