無事に花火来会でのライブを終えた今。
夏休みに入った僕たちは海の家を切り盛りしていた。
「なーにしてるんだろうなぁ……」
「辛気臭い顔しているなら呼び込みでもしてきなさいよ」
「そうは言っても、十分じゃん」
はじめは閑古鳥が鳴いていた海の家も今では人であふれかえっている。
呼子をしているのが可愛い子ばかりだからだろう。
客のほとんどが男を占めている。
「毎年手伝っていたのは覚えているけど……まあ、いい息抜き程度に考えておくか」
「暇ならこれ運んでよ。あそこのテーブル」
「……この真っ赤なたこ焼き頼む人、いるんだ」
ヨハネの味覚は少しおかしいというか、なんというか。
作っているところをさっき見たが、あれは人の食べるものではない気がする。
☆☆☆
「あー、疲れた!」
日も傾き、海にいる人も減ったため店を閉め。
テーブルにみんな集まり、雑談をしている。
主に話題はヨハネ、鞠莉さん、曜の作った料理についてなのだが、楽しそうに話している中、一人だけ浮かない顔をしている。
「梨子」
そっと席を立ち、梨子にだけ聞こえるよう声をかけて店の外へと出ていく。
潮風によって運ばれた砂が被さった木の階段に座って待っていると、少し時間を空けてから梨子も店から出て隣へ腰を下ろす。
「どうかしたの?」
「みんなに話しにくい相談でも、僕なら話せるんじゃないかな」
「…………よく見てるのね」
「一応、マネージャーですから」
「優くんは私たちのマネージャーよ。一応なんかじゃない」
「そうはっきり言ってくれると嬉しいよ」
そこから少しの間だけ店から聞こえてくるみんなの声と波の音だけ聞こえていたが、ポツリ、ポツリと話してくれる。
ピアノコンクールの招待状が届いたけども、その日にちがラブライブの予選と被っていること。
最初加入したときはあまり乗り気でなかったスクールアイドルも今では大切なものとなっており、かといってピアノコンクールも……と。
どちらを取るのか悩んでいるらしい。
「ふふっ」
「……真剣に悩んでいるのに、笑うのは酷いと思うのだけれど」
「ごめんごめん。梨子の中でスクールアイドルが大切なものになっていることが嬉しくてさ」
訳を口にすると梨子は僕と反対へ顔を向ける。
けれどちらりと見える耳は真っ赤だ。
「梨子の中でスクールアイドルが大事になってきているならさ、仲間を頼ってもいいと僕は思うよ」
「……でも、私の都合でだなんて」
「みんなはそんなに頼りないかな?」
「そんなことは……ないけど」
「どうするか強制しないよ。どちらを選んでも梨子の意思を尊重する」
時間ないだろうけど、納得いくまで考えな。
そう声をかけ、僕は先に戻ることにした。
「っわ。びっくりした」
「梨子ちゃんとなに話してたの?」
「マネージャーとしてちょっと相談をね」
店に入ってすぐ、曜が立っていたのでびっくりした。
ふーんと呟いてそれ以上深く聞いてこないのはありがたい。
僕が勝手に話していい内容じゃないからね。
「あ、優くん聞いてよ。善子ちゃんがね──」
曜は一つ手をたたき、話題を変えて話し始める。
そして僕の手を取り、みんながいる場所へと引っ張っていく。
まるで僕を梨子から遠ざけたいように感じたのだが、それは見当違いな考えだろう。