「優くん!? 何でここに?!」
「来ちゃった」
『優くんそっちにいるの!?』
ノックをして部屋に入った僕を見て、梨子はとても驚いた表情をしている。
タイミングが良いのか、千歌たちと通話もしていたみたいであり、梨子のスマホの画面がわちゃわちゃと動いていた。
『知り合いに会いに行くって梨子ちゃんのことだったの!?』
「いんや、別の人だよ。その人に頼んでここに入れて貰ったんだ。本来ならここ、関係者以外立ち入り禁止だからね」
画面に映るみんな、梨子、そして僕の手首にはそれぞれのイメージに合った色のシュシュが付けられていた。
中でも僕のは少し特殊であり、みんなのイメージカラーを合わせ、目立つ黒い糸で縫いつけてある。
なんでも十人目としてみんなを纏めて引っ張ってくれることを願っているらしい。
「そろそろ時間だから僕はそろそろ戻るよ。緊張しているようだったら何か声でもかけようかと思ったけど、大丈夫そうだし。梨子も、みんなも。今を精一杯楽しんでやっておいで」
みんなによく見えるよう、シュシュを付けている手をカメラに向かって振って部屋を出ようとした時。
「あ、優くん」
「ん?」
既に通話は終えているのか、梨子はスマホを置いて僕の元へと駆け寄ってくる。
胸元で手をキュッと握り、少し頰を染めながら口を開く。
「みんなと繋がってる、心は一つだと分かっていても少しだけ、不安だったんだ……」
そして僕の手を取り目をまっすぐに見つめ、素敵な笑みを浮かべる。
「でも優くんが来てくれて、不安もどっかいっちゃった! ありがとう!」
「うん。演奏、楽しみにしているよ」
手を振って別れ、先に座って待っている真姫の元へと向かう。
それにしても、さっきの梨子は距離が近いように感じた。
鼻と鼻が触れそうとまではいかないが、出番を前に興奮していたのだろうか。
「お待たせ」
「目的は果たせたのかしら?」
「うん、真姫のお陰だよ。ありがとう」
「ま、まあ、私にとってこれくらいのこと簡単よ」
「いつも助けて貰ってばかりだからね。お返しになるか分からないけど、僕にできることなら何でもするから」
「その言葉、忘れちゃダメよ?」
真顔で真っ直ぐに僕を見ながら言うものだから少し引いてしまったが、肯定の意を込めて頷く。
それに満足したのか、前を向いてパンフレットに目を落としていた。
僕にとっては何が大事なのかサッパリだったけど、真姫にとってはとても大事なことだったのだろう。
これまでもそういったことは何度かあるけれど、いくら経験しても此ればかりはいつまで経っても分からない。
本作では『赤い糸≒黒い糸』