君が好き   作:不思議ちゃん

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こっちに来るんだって?

 真姫はピアノコンクールが終わった後に用事があるらしく、僕との別れを惜しみながらも去っていった。

 

 今は梨子と一緒にいるのだが、目の前の光景は面白いの一言に尽きる。

 なぜなら同人誌を慌てて隠そうとして転び、僕の目の前に散らばっているのだから。

 梨子も頭を地面につけ、尻を高く上げているなんとも間抜けなポーズである。

 

 ノックをしたけれど返事を聞く前に入った僕に非はあるけども、そろそろ我慢の限界であった。

 

「…………ふふっ」

 

 思わず漏れた笑みは当然のように梨子の耳にも届き。

 顔だけをこちらに向け、睨みを利かせてくるのだが、体勢は変わっていないため面白さに磨きがかかった。

 

「ごめんごめん。あまりにも面白くてさ。ほら」

 

 梨子に手を差し出し、立ち上がる手助けをしてそのまま散らばった同人誌を拾っていけば。

 少し遅れて状況を理解した梨子も僕より多く拾おうと顔を真っ赤にさせながらも頑張っている。

 

「別に人の好きなものをどうこう言うつもりはないよ。それに梨子の趣味は僕、知ってたし」

「ふぇっ!?」

 

 僕の言葉に驚いた梨子はせっかく拾った同人誌を落としていた。

 苦笑いしながらそれも拾い、邪魔にならない場所へまとめて置いておく。

 

「な、ななな、なんっ、……いつ!?」

「いつって言われても……」

 

 梨子がハッキリとしない僕に問い詰めようとした時、スマホが鳴り響く。

 それで少し冷静になれたのか、僕から離れていくもその表情は納得がいっていなかった。

 

「もしもし?」

『あ、梨子ちゃん!』

「千歌ちゃん?」

 

 そのまま話してるのを聞いていれば、無事に予選に合格したといった報告だった。

 

「え? こっちに来たい?」

 

 待っている間が暇だったので同人誌の一つを手に取り、それを読んでいれば。

 驚きの声を上げる梨子に本から顔を上げて目を向ける。

 

「うん、うん。……私は一泊伸ばせばいいけど、優くんがどうか」

「んー? 知り合いに連絡して泊まれたらそっちいくし、ダメならダメで宿取るから大丈夫だけど」

『優くんそこに居るの!?』

 

 あまりの声量に梨子は耳からスマホを遠ざけていた。

 少し離れた僕まで聞こえるのだから、相当な大きさだったのだろう。

 同人誌を元の位置に戻し、梨子からスマホを受け取って通話を変わる。

 

「聞こえたよ。こっちに来るんだって?」

『そうなの! 私たちとμ's、何が違うのか知りたくて!』

「うん、いいと思うよ。僕も一泊伸ばすから、また明日集合しようか」

 

 あ、そうだ。と。

 千歌にスピーカーへと変えてもらい、みんなに聞こえるよう頼む。

 

「みんな、予選の合格おめでとう。みんなは梨子を。梨子はみんなを信じたから両方とも上手くいったよ」

 

 こうして口に出すのは少し恥ずかしいけれども、声に出して言わなければ伝わらない事もある。

 

 向こう側が何やら騒がしい気がするが、声が遠くて何を言っているのか分からない。

 話す事も話したし、もう十分だろうと通話を切ってスマホを梨子へと返す。

 

「改めて、おめでとう。梨子」

「うん! みんなと優くんのお陰だよ!」

 

 さて、僕は今晩どうするかを考えなければいけないのだが。

 取り敢えず、ダメ元で聞くだけ聞いてみるか。

 

 

 

『今、東京にいるんだけど、誰か泊めてくれる人いる?

居なかったら宿とるから、無理にとは言わないけど』

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