駅のホームで電車を待っていると、不意に立ち上がって歩いていく千歌を目で追っていく。
他のみんなは移動やらなんやらで疲れて倒れ込んでいるというのに、元気なやつだ。
「ん? 曜、どうかした?」
空から白い鳥の羽が落ちてくるのを見たとき、服を引っ張られる。
そちらを向けば俯いて表情が読めない曜の姿があった。
いつも元気な様子とは違い、今にも脆く崩れ去ってしまいそうな雰囲気を感じる。
「少し、相談したいことがあるの」
「僕で出来ることなら何でも聞くよ」
「でもここじゃ……」
このまま僕は曜の家へと向かうことになった。
帰るまでの道中はいつもの曜に戻ったが、何か悩みがあるようには見えなかった。
これまでは二人きりになるというのを避けてきたけれど、目指すものができた今、そんなこと言っていられない。
何か間違いが起きたらと考えなくもないが、僕がしっかりとしていれば大丈夫だろう。
☆☆☆
「…………んっ、あれ?」
いつの間にか寝ていたようだ。
曜が運んでくれたのか、ベッドへ横になっていた。
……女の子にお姫様抱っこされて移動されたと考えると情けなく感じるな。
上体を起こして見回せば、メガネをかけて本を読んでいた曜が起きた僕に気がつく。
「あはは。優くんも疲れていたみたいだね。グッスリだったよ?」
「ごめん。少し寝てスッキリしたし、相談乗るよ?」
「ううん、それはもう大丈夫。覚えてない? 優くんが寝る前に相談乗ってもらったんだけど?」
そう言われ、寝起きで少し靄がかった思考を働かせるが……寝る前の記憶があまりない。
「ごめん、覚えてないみたい……」
「そっか。でも、恥ずかしい相談だったから私としてはありがたいかも?」
そういってクスクス笑う曜の様子から、悩みは解決できたのだろう。
「それじゃ、僕はそろそろ帰るよ」
「え? このまま泊まっていけば? もう、夜遅いよ?」
そう言われて今更ながらに時間を確認すれば、0時を過ぎていた。
この時間だと、とうにバスは走ってない。
曜の家と僕の家はそこそこ離れているが歩けない距離ではないし。
「いや、歩いて帰るよ」
「……そんなに、私といるのが嫌?」
ベッドから立ち上がろうとしたとき、曜の口から出たとは想像できないほど冷たい声に動きが止まる。
「…………曜?」
「どうかしたの?」
恐る恐る、名前を呼びながらそちらを向けば、不思議そうな顔をしながら首をかしげる曜の姿があった。
寝ぼけているのかとも思ったが、本当にそうなのかと自信が持てなくなっている。
「やっぱり、泊まっていくよ。男でも夜道は危ないもんね」
「りょーかい! お腹空いてる? 軽く何か作ってるから、ゆっくりおいで!」
曜が元気よく部屋を出て行った後、思わずため息をついてしまう。
無意識のうちに身体が身構えていたのだろう。
心当たりがあるとすれば先ほどのことなのだが……。
「まさか、ね」
頭を振って考えていたことを思考の外へを追いやり。
寝すぎなのか少し気だるい身体を動かしながら曜の部屋を出て下へと向かう。
この時、もう少しよく考えておくべきだったのだ。
そうしたらこれから先の未来、もう少し違った形になっていたかもしれないのに。