それは何の脈絡もなかった。
「ねえ、優くん」
「ん?」
「好き。私と付き合って」
作ってもらったチャーハンを食べている僕をずっとニコニコと見ていたかと思えば。
日常の会話を行なっている気楽さで告白をされた。
「…………?」
その事実を認識するのに時間がかかった。
「本当はね、どこで告白するかとか考えていたんだけど、我慢できなくなっちゃった」
曜はてへっ、と可愛らしく舌を出しながらそう言うが、ちょっと待って欲しい。
いったい、いつから。
幼馴染として好かれているとは思っていたけれど、それ以上の気持ちを抱かれているなんて思ってもいなかった。
「いや──」
「優くんの言いたいことは分かってる。今はラブライブが大事な時だもんね」
そう。次の地方予選に向けていかなければいけないのだ。
だけどいつもと同じ笑みであるはずなのに、今の曜からは底知れないものを感じる。
「それに無理矢理恋人になるのも違うもんね。優くんが私の気持ちを受け入れるまで待ってるよ」
いや、そういうことじゃ……そういうことなのか?
ラブライブが無かったら、いたって普通の恋愛話だ。
「だから今は、私がしたいときにキスしてくれたらそれでいいよ」
少しそれた思考に走っていると、さらなる爆弾を放たれた。
いったいどういうことかと問いかける意を込めて曜を見れば、何も言わずに立ち上がってテーブルを回り、僕のそばまでやってくる。
そして僕へ手を伸ばしてきたのだが、反射的にイスごと引いて避けてしまった。
「…………へぇ」
顔は笑っているはずなのに、その声は恐ろしく冷たかった。
僕へ見せつけているのか、おもむろにポケットからスマホを取り出し、何か操作をしている。
「これ、出回ったら終わっちゃうよね?」
そう言って見せてきた画面には僕が曜を押し倒してキスをしている写真が映し出されていた。
服装的に今日撮ったものであるはずだが、僕にその記憶は全くない。
一体どういうことなのか困惑していると、曜は無邪気な子供のように喜びながら説明をしてくれた。
「上手く撮れてるでしょ? 優くん寝ちゃってるから、位置とるのに苦労したんだよね。でも、その回数分キスできたら私的には嬉しかったけど」
その話を聞いてもう一度写真を見れば、たしかにそうかもしれない。
が、よほど上手く撮ったのだろう。
言われてようやく分かるかな、と言った具合だ。
これを何も知らない人が見たら僕が押し倒してキスしていると受け取られる。
「いや、ま……待って。曜もラブライブが、Aqoursが大事なんだよね?」
「うん。とっても大事だよ」
「ならさ、こんな事──」
「それ以上に優くんが好きなの。こんな事じゃない」
「…………」
被せるようにして言われたセリフに僕は何も言えなかった。
「私も、優くんも大事なAqoursを、ラブライブを壊したくないよね? 私にこんな事させたくないよね?」
そう口にしながら頰に伸ばされた手を、僕は避けることができなかった。
「今後はまだ限定的だけど、私だけの優くんなんだね。そう思うだけでどうにかなっちゃいそうだよ」
親指で僕の頰を撫でていたが、ピタリと止まり。
少し上を向くように顔を動かされる。
「ずっとずっと優くんの事が好き。他の誰にも取られたくないほど、愛おしいの」
真っ直ぐに見つめながらそう口にした後、目を閉じて顔を寄せてくる。
僕は逃げる事ができず、口をキュッと結んで曜からのキスを受け入れた。
離れる際にペロッと唇を舐められたが、今はただ、この時が早く過ぎて欲しいとだけ願っていた。
あー、こんな事されたいなぁ!