僕と曜も合流し、再び練習が始まったわけだが。
次のライブをどうするか悩んでいた。
地方予選で敗退した原因は恐らく、持ち時間をオーバーしたことに加え、登録者以外の人をステージに近づけたことだろうと思っている。
みんなが目指している場所は一緒であり、パフォーマンスのレベルも上がっているため、実力で負けたということはないだろう。
ラブライブに優勝すれば知名度が上がることは確かだ。
けど、それでここの魅力が伝わると断言できない。
時間をオーバーしてまで寸劇をやり、みんなで歌ってもらうことで魅力が伝わっているのは数字が増えたことから確かだ。
でも、同じやり方で果たして間に合うのだろうか。
「優くん?」
「…………ん?」
「さっきから反応がないですけれど、まさか熱中症ですの?」
「あ、ごめん。考え事してて集中してなかった」
一応水分を取っておけと言われ、果南から飲み物を手渡される。
「それで、何を考えてたの?」
「次のライブについてちょっとね」
「ハッキリしませんのね」
ストレートな物言いに思わず苦笑いをしてしまう。
全校生徒が応援に来るなんてどうして分かるのか説明なんてできないもの。
そう考えていると、ドアが開いて先ほどの三人が顔を出す。
もうアニメの内容は大まかにしか覚えていない。
加えて曜の事といい、これから先どうなるのか。
アニメの強制力が働くのか、未来は変えられるのか。
千歌たちが話しているのをボーッと眺めながら、分かりもしない未来のことを考えていた。
練習も終わって帰り支度をしていると、梨子がそっと近づいてきた。
「どうかした?」
「うん。……さっきの話なんだけどね」
ラブライブの出場規約を読み返し、すでに登録した人以外が歌うこと、ステージに近づくことが出来ないことを知り。
千歌へと伝えたいが、楽しそうな顔を見て伝えることができないといった話だった。
「なるほどね」
「どうしたらいいかしら」
「……この件、僕に任せて貰っても?」
「いいの?」
「うん。それと、他の人にも話さないように内緒で」
「……必要なこと?」
「うん」
「分かった。また優くんに頼っちゃうけど……」
「マネージャーだからね」
「二人で何話してるの?」
僕の背に覆いかぶさるようにしながら曜が混ざってくる。
まだ話すわけにはいかないため、ちょっと相談をと答えを濁す。
梨子が自然な感じで離れていっても曜は背中から動かなかった。
柔らかな弾力に意識がいってしまうが、まだ何か用でもあるのだろうか。
「で、何話してたの?」
どうしようもないのでこのまま支度をしようとした時。
スッと嫌に耳へ入ってくるほど冷たい声で問いかけられる。
「本当にちょっとした相談だよ」
「ふーん……」
嘘は付いていない。
相談を受けたことは確かだが、その内容まで話すわけにはいかなかった。
千歌以外なら問題ないとは思っているが、あまり知る人を増やしても良いことはないだろう。
「ねえ、キスして」
「……ここでか?」
「大丈夫。誰も見てないって」
「リスクは避けるべきだろ」
「…………そうだったね」
納得してくれたのか曜は僕から離れていったが、その時に何か呟いていた気がする。
けどその声は余りに小さく、僕の耳に届くことはなかった。