(千歌が入る可能性が存在します
「なっ、何をふざけた事言ってますの!」
僕の発言にみんなが固まる中、真っ先に反応したのはダイヤさんだった。
「それ、本気で言ってるの?」
腕を組みながら眉間にシワを寄せている果南も珍しく少し切れている。
他にも僕が何を言ったのか理解し始めたのか、胡乱気な目を向けていた。
「……今の私たちじゃ、実力が足りない?」
「いや、そうじゃない。この地方予選なら普通に突破できると思ってる」
「なら──」
問い詰めようとする千歌を手で制し、もう一度みんなを見回す。
「僕たちの目的は何?」
「何を今更──」
「きちんと言葉にして」
「……ラブライブを優勝して知名度を上げ、浦の星女学院廃校の阻止ですわ」
「違う」
「っ! あなた、さっきから何が言いたいんですの!」
声を張り上げるダイヤさんだが、みんなも同じ気持ちらしい。
でも、これこそが僕の仕事なのだ。
「僕たちの目的は浦の星女学院廃校を阻止する。ただそれだけだよ。ラブライブ優勝はその手段の一つでしか無い。そこを間違えちゃいけないんだ」
「……結局、優くんは何が言いたいの」
「ラブライブを優勝すれば確かに知名度は上がる。けど、それで入学希望者が増えるとは断定できない」
「どうしてですの」
「伝わるのは君らAqoursの魅力であって、学校の、地元の魅力じゃないから」
察しのいい子はすぐに、そうでなくても時間が経つにつれてみんな理解し始めた。
「それじゃ、私たちはどうしたら良かったんですの……」
「今までやってきたことは無駄だったずらか?」
「いんや、無駄なことじゃないよ」
「優くんには、何か考えがあるの?」
頷き、指を二本立てる。
「PR動画と花火大会でのライブ。この二つは大いに町の、学校の魅力を伝えられていると思う」
そこで指をもう一本立てる。
「だからこそ今、どういう状況なのか。どういった経緯で何をしたのかを、そしてより深く魅力を理解してもらう」
「ここで勝って、その後にPV作ればいいんじゃないの?」
「それも悪くないけど、地方予選とはいえ少なくない数の人が見てる今を使わない手はないと思ってる。廃校が決まるまで後どれくらい時間があるかも分からない今、魅力を伝えるための火力が必要なんだ」
「それで、何をしようとしてるの?」
「ライブをする前に寸劇。これで経緯と現状を伝える。そして、来てもらったみんなにステージの周りで歌ってもらう」
「……なるほど。だからラブライブの優勝を諦めるってことね」
千歌が言ったようにここを突破してPVを作り、優勝するのが良いのかもしれない考えがよぎる。
ラブライブ優勝した後だと再生回数の伸びを期待することはできるが、PVよりもライブの方がより伝わる気がする。
「そう。自分たちの持ち時間を過ぎた上、登録者以外をステージに近づけて一緒に歌う。ルール違反で失格だ。……でも、これで想いは伝わるはずだ」
僕ができるのはここまで。
後は千歌が、Aqoursがどうするかだ。
九人で話しているため、僕は少し離れて自販機で飲み物を買うことにした。
缶コーヒーのプルタブを開け、飲みながらちらりとみんなへ目を向ける。
説明もなしにラブライブを諦めようと言った僕に対する反応は、ダイヤさんや果南が正しいと思う。
他のみんなも僕が言っていることを理解してから似た反応をしていたけれど、三人。
三人だけ不思議な……いや、少し不気味な反応であった。
曜、梨子、ヨハネ。
彼女たちはただ、笑って僕を見ていた。
「優くん、決まったよ」
振り向けばみんながそこに立っていた。
先ほどまで考えていたことが気になって三人に目がいきそうだが、缶の残りを一気に飲み干してゴミ箱へ捨て、気持ちをリセットする。
「大事なことを思い出させてくれてありがとう。私たち、頑張って突っ走るよ! どうすればいいか教えて!」
みんなもやる気充分といった感じだ。
時間があまりないため、とりあえず僕たちは会場へ向かうため走った。