君が好き   作:不思議ちゃん

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甘くみないことね

 事前にスタッフへ寸劇をすること、ステージの近くに登録者以外が寄って歌うことを伝えてあるためお叱りはなかった。

 

 まあ、今後もやるようだったら何かしらの対処が必要になるかもしれないと言われたが、これが最初で最後だから特に問題はない。

 

「入学希望者、増えてる!」

 

 学校へ戻り、理事長室へ集まったみんなは早速とパソコンの前に集まり、確認をしていた。

 一つの小さな画面をギュウギュウになって見ている光景を懐かしく思いながら、出してもらったお茶を啜る。

 

「優くんの言う通りだったね!」

「凄いずら!」

 

 みんなが大はしゃぎする中、スッとダイヤさんが近づいてきて僕へ頭を下げる。

 

「申し訳ありませんわ。私、視野が狭くなっていたみたいですわ」

「頭をあげて下さい。これが僕の仕事ですから」

「優しいんですのね」

「優しい……ってより、一度経験しているから、ですかね」

「そう言えば前にもどこかでスクールアイドルのマネージャーをしていたと、鞠莉さんが仰ってましたね」

 

 そうなの!? と、話を聞いていたらしい千歌がパソコンの前から僕の方へと駆け寄ってくる。

 

「私、初めて聞いたよ!」

「近い、近いから……」

 

 グイグイ顔を寄せてくる千歌を手で押し返そうとするも、止まってくれない。

 来客用のソファーに押し倒されたところで掛かっていた圧力がフッと消えた。

 

「千歌ちゃん、それじゃ優くん話せないよ」

「それに幼馴染とはいえ距離が近すぎると思うな」

「そっか。ごめんね、優くん」

「あ、うん……」

 

 どうしたのかと上体を起こしてみれば、曜と梨子が千歌の腕をそれぞれ持って引き剥がしていた。

 

「それで、優は私たちの前にどこのマネージャーをしていたのよ」

「私、知ってマース!」

「鞠莉、今度は教えてくれるの?」

「イェース!」

 

 僕的にはまだ話す時期じゃないと思っているのだが、マリーさんは話す気満々のようだし、止めるのは無理そうだ。

 

 みんながマリーさんに注目している間に抜け出すか。

 

 飲んだ茶碗を片せないのが少し申し訳ないが、抜け出す原因はマリーさんだし。

 みんなの反応が面白いのか、すぐに話さないでくれているのは僕としても抜け出す時間ができてありがたい。

 

 ソッと理事長室を後にし、荷物を取りに部室へと向かう。

 今日はこの後ダラダラとするだけだったし、先に帰っちゃうか。

 

「あら、もう帰るの?」

 

 カバンを肩にかけた時、声をかけられてビクッと肩が跳ねる。

 振り向けばヨハネが出入り口でポーズを決めながらこちらを見ていた。

 

「せっかくだから一緒に帰りましょう」

「よく、気付いたね」

「堕天使ヨハネの力を甘くみないことね」

 

 僕が苦笑している間に支度を終えたのか、ヨハネは行きましょ、と言って先を歩いていく。

 

 スマホの通知が先程から止まらないため、僕がμ'sのマネージャーをやっていると聞かされたのだろう。

 捕まってしまうとしばらく帰れなくなりそうなので少し急いでヨハネの後を追っていく。

 

「遅いわよ」

「一分も待たせてないと思うんだけどね」

 

 そのまま暫くの間、互いに話すことはなく歩き続けていたが、なんだか心地よい気がした。

 あの時の笑みに少し引っかかる部分はあるが、曜のように何かあるわけでもない。

 

「ん? どうかした?」

 

 ヨハネがジッと僕を見ていることに気付いた。

 声をかけるも反応があるわけじゃなく、真っ直ぐで綺麗な瞳をずっと僕へと向けている。

 

 曜との事が頭をよぎり、後ろめたさから視線を外した時。

 袖をクイッと引っ張られる。

 

「私じゃ力になれない……?」

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