ヨハネは本当に周りをよく見ていると僕は思っている。
もしかしたら薄々、曜が関係あると考えているのではないだろうか。
「廃校までのタイムリミットがどれくらいなのか、ちょっとね」
でも、僕が何も言わなければこれ以上ことが大きくなることはない。
まだ多少の抵抗はあるものの慣れてきたし、そういうものだと思えば大丈夫。
それに一応は僕も男であるため、美少女からのキスはドキドキしてしまう部分もある。
「そんなに時間がないの?」
「もしかしたら夏休み明けにやる予定の入学説明会すらやらないかも」
「それ、みんなは?」
「マリーさんは理事長だから知ってそうだけど、他のみんなは知らないだろうね」
やっぱり、勝ち進んでいくべきだったかと後悔が押し寄せる。
知名度を使って期限をどうにか出来ないか交渉材料にする手もあったと今更ながらに気付く。
「それなら内緒にしていた方が良さそうね」
「うん、お願い」
「当たり前じゃない。Aqoursとしても、私個人としても優に助けられているのだから。……だから、優も何かあったら私に頼りなさいよ?」
「そのときは頼りにするよ」
手を振ってヨハネと別れた僕は、これからどうしようかと考える。
結末を変えられず廃校になった場合、ラブライブで優勝しなければならない。
その為にみんなの実力を上げておくのは最低条件だが、それ以上に僕ができることはないだろうか。
☆☆☆
私に背を向けて歩いていく優をジッと見るも、振り返る様子はない。
何か深く考え込んでいるように見える。
考えているのはきっと私に話してくれないことではなく、さっきまで話していた廃校うんぬんについてだろう。
「…………」
優の後ろ姿が見えなくなってからスマホの写真フォルダを開き、一枚の写真を表示する。
優と曜が誰もいない部室でキスをしている場面を隠し撮ったものだ。
その時に聞こえてきた話から察するに、優は曜から脅されてキスをする関係になっているということ。
既に二度、話してくれないかと分かりやすく聞いてみたというのに、まるで隠し事なんてないかのように返してくる。
──もう、私は知っているというのに。
あと一度、その時も同じような態度であったなら。
私にも考えというものがある。
どちらに進もうが私にとって嬉しいことに変わりはないのだが。
どちらかと言えば、最後のチャンスをフイにしてくれた方が美味しい思いが出来る気がする。
人差し指で唇を一度なぞり、その時を想像して笑みを浮かべる。
私は堕天使ヨハネ。
すでに堕ちているのだから。