君が好き   作:不思議ちゃん

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話してくれないのね

 日は短くなっているのにまだまだ暑さは続いている。

 そのため、変わらずジャンケンに勝てないヨハネとともにアイスの買出しへと来ていた。

 

「それで、何か相談事?」

「取り敢えず、これを見てくれない?」

 

 そう言って差し出されたスマホには筋トレをするヨハネの動画が。

 

「九十回、やったのを撮っているのだけれど……期限、設けてないわよね?」

「……普通はあの日限りだと思うんだけど」

「そんなの堕天使であるヨハネにとって誤差の範囲内よ」

「まあ、今回だけ特別ね。何を聞きたいの?」

 

 せっかく頑張ってきたのだからご褒美をあげないと。

 と言っても、ただ質問に答えるのがご褒美になるのか疑問だが。

 

「優の悩み事、聞かせてくれないかしら」

「それ、質問かな? ……えっと、悩み事?」

 

 斜め上の質問? に少し思考が止まる。

 前にヨハネから私を頼りなさいと言われていたけれど、それほど無理しているように見えるのだろうか。

 

「今は特にない、かな。廃校が少し引っかかるけど、僕じゃどうしようもないし」

「そう。…………話してくれないのね」

「え?」

 

 ヨハネは僕の答えを聞き、そっけない態度でアイスの入ったカゴをレジへと持っていった。

 話してくれない……って、何を僕は話していないのだろうか。

 

 また、この間と同じように二人でアイスを食べながら帰っているわけだが。

 あの質問の後からヨハネは僕をチラリとも見ようとしない。

 

 どうしてそうなったのかサッパリ分からないため、現状どうしようもないまま学校へと歩いていく。

 

「優、これを見てちょうだい」

 

 半分まで来たところで唐突にヨハネは口を開き、さっと同じようにスマホの画面を僕へと向けてくる。

 

「…………へ?」

 

 そこに写っていたのは僕と曜がキスをしているものであった。

 

 予想外の不意打ちに食べかけのアイスを落としてしまったが、そんなことを気にする余裕が今の僕にはなかった。

 

「私は三回、待ったわ。優は何も話してくれなかったけど」

「いや、だって……」

「でも、そんなことどうでもいいの」

「…………?」

 

 まだうまく考えられないのに加え、ヨハネが何を言いたいのか分からない。

 画面を消してスマホをしまったヨハネは笑みを浮かべて僕を見る。

 

 

 

 ──その笑みは、いつの日かの曜と重なった。

 

 

 

「曜と同じことを私にしてくれたら、今はそれで十分よ」

 

 そう口にしてスッと僕へ近づき、流れるようにキスをした。

 

 唇に触れていた感触がなくなり、近くにあったヨハネの顔が離れていくが、その唇へと目がいってしまう。

 それが分かっているからだろう。

 僕へ見せつけるように自分の唇を人差し指でゆっくりと撫でていった。

 

「これからもよろしくね、優」

 

 にこやかな笑みでそう口にするヨハネの表情を、セリフを。

 僕は忘れることができないだろう。

 

 

 

 いつも通りに振舞っていたと思うのだが、学校へ戻った僕の様子が違う事にみんなが気づいた。

 

 買ったのに買い出しについていくのが面倒になった事と、帰りながら食べていたアイスを落として気分が落ち込んでいたと言い訳した。

 

 そこから芋づる式に今までずっとアイスを多く食べていたとバレ、なぜかお説教をされる羽目に。

 でも、今の僕にとってはそれがとてもありがたかった。

 

 曜との行為が日常の一部になるまで慣れただなんて偽りだったのだ。

 

 僕が黙っていれば大丈夫。

 そのうちどうにかなるはず。

 

 そんなわけないのに、先延ばしにしていたツケがきた。

 ヨハネも加わり、歪になってしまった何かはもう元に戻れないと訴えてくる。

 

「優」

 

 ヨハネが僕にだけ聞こえる声で名前を呼ぶ。

 チラリとそちらを見れば、声に出さず、口の動きで『スキ』と伝えてくる。




一応、前の話で映画に絡めるためちょこっといれましたが
現段階ではアニメのみで終わる予定です
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