君が好き   作:不思議ちゃん

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やるしかないよ!

 みんなで作ってくれた千羽鶴を視界に入れないようベッドへ横になった千歌は、分かれる前に梨子が言っていた事を思い返していた。

 

 ──まだ、優くんは何かしようとしてるんじゃないかな。

 

 どういうことか詳しく聞いても、梨子もなんとなくそう感じるだけと曖昧な答えしか返ってこなかった。

 

「……もう、どうしようもないのかな」

 

 口にして後悔が押し寄せてくる。

 まだ認めたくない自分がいて、でも何も出来なくて。

 

 下からご飯だと声をかけられていたが、千歌はそんな気になれず、そのまま眠りへとついた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 僕はまだ、日が出る前だと言うのに浦の星女学院にいた。

 そこにはすでにみんな揃っており、どうやら僕が一番最後だったようだ。

 

「みんな……優くん……」

「気付いたら来ていた」

「以心伝心ずら」

「うんっ」

「聞こえたぞ。闇の囁きが」

「なんか良く分からないけどね」

「私は、分かるよ」

 

 千歌はみんなの顔を一人一人見回してから語りかけるように話し始める。

 

「みんな、まだ諦めたくないんだよ。鞠莉ちゃんが頑張ってたのは分かる。でも、私も、みんなもまだ何もしていない」

「そうですわね」

「無駄かもしれない。けど、最後まで頑張りたい。足掻いて、足掻いて足掻いて、ほんの少し見えた輝きを探したい──見つけたいの」

 

 千歌は手を上へとまっすぐ伸ばし、グッと握りしめる。

 

「みんなはどう?」

 

 握りしめた手を胸の前に持ってきて、千歌はみんなへと問いかける。

 

「いいんじゃない?」

「足掻くだけ、足掻きまくろうよ」

「そうね」

 

 千歌が、みんなが僕を見る。

 

「私たちにも……私たちでも、起こしてみせる! 奇跡を!」

『奇跡を!』

 

 少しだけ、泣きそうになってしまった。

 まだ本人たちは気付いていない輝きを目の当たりにして。

 

「まだ、優くんが言いたかったことが全部分かってないけど……でも、私は、私たちはまだ諦めない!」

 

 いきなり鉄棒へと駆け出した千歌はスカートだというのに逆上がりを始める。

 

「っ!」

 

 目を逸らそうとする前に両目を誰かによって覆われたのだが、右目が力強く押さえられてるため痛みが走る。

 

「起こそう、奇跡を! 足掻こう精一杯! 全身全霊、最後の最後まで──みんなで輝こう!」

 

 千歌が着地した音が聞こえてからようやく見えるようになったわけだが。

 

「優くん、ごめんなさい! 強く押さえちゃって……目、痛くない?」

「うん、大丈夫だと思う」

 

 どうやら左目を曜、右目を梨子が覆っていたらしく。

 力が強かったことは自分でも分かっていたのか、梨子は心配そうに謝ってくるが、少し痛む程度であったのでそこまで問題でもない。

 

「それより、マリーさんのお父さんと交渉しなきゃね」

「でも、どうやって……」

「廃校の原因は人が足らないから。つまりは入学希望者の人数が必要数いれば問題ないわけだ。そこを軸に、いつまでに何人集めればいいのかを決める」

「なる、ほど……?」

「そういう事ですの」

 

 理解できた組とできなかった組、綺麗に分かれているのが少し面白い。

 

 マリーさんは早速とばかりに理事長室へ向かい、お父さんと電話をするようだ。

 僕たちは邪魔をしないよう、部屋の前で待っていることにした。

 

「優くん、学校は大丈夫なの?」

「ああ、今日はサボることにした」

「今から戻れば間に合いますわよ?」

 

 そんな気分じゃないですし、と伝えるとダイヤさんも何も言わなかった。

 

「どうだった!?」

 

 ドアが開き、マリーさんが出てきたのだが……その表情は少し暗いように見えた。

 

「期限、延ばして貰えたけど……」

「いつまで?」

「今年いっぱい」

「伸びただけでも感謝しなきゃだよ!」

「それで、何人集めるのですか?」

「…………百二十人」

「ひゃく、にじゅう……」

「今集まっているのが三十人ぐらいだから、あと九十人か……」

 

 百人じゃ、ないのか……?

 集まっている人数が二十人増えたから、入学希望者も二十人増えたのだろうか。

  それとも俺がいたから、なのだろうか。

 

「百人とかじゃ、駄目だったんですかね」

「私もそう言ったのだけれど……パパが言うにはあくまで入学希望者だから、減る分も踏まえてこの人数が妥当だって」

「やるしかないよ!」

 

 俯きかけていた僕とマリーさんの顔が上がる。

 そこにはやる気に満ち溢れた千歌やみんながいた。

 

「廃校だと決まったことを」

「また延ばしてもらった」

「これもちょっとした」

「奇跡ずら」

「俯いてる時間なんて無いよ」

「鞠莉さん」

「優くん」

 

 マリーさんと顔を見合わせ、クスッと笑みをこぼして差し伸べられた手を取る。

 

「そうね。クヨクヨしている時間なんてないわね」

「物凄く高いハードルなんだ。これからもっと厳しくしていかないとな」

 

 何人か……いや、全員嫌そうな顔をしてるため、ツボに入ってしまった。

 

 何だかんだでみんなきちんと練習をこなしていくのだ。

 目指すものも出来、九十人くらい今の彼女たちなら集められるだろう。

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