フリマの売り上げが良くなかったり、水族館でバイトしたり。
そしてダイヤさんから相談事があったり。
まあ、フリマとバイトは僕やってないんだけど。
そこの負い目というか、バレないように少し多めの額を入れている。
更には三人組の子たちが金欠をどこから聞きつけたのか、全生徒からカンパをしてくれたらしく。
これで廃校をどうにかして欲しいとみんなの想いを伝えてくれた。
資金も溜まったし、地区大会が廃校締め切りの期限前に投稿できる最後のライブ映像であるため、張り切ろうとしていたのだが。
「また帰ったか」
ここ最近、ヨハネがさっさと帰っていってしまう。
今日に至ってはその後を追うためか梨子もいない。
「弛んでいますわ!」
「こんなことじゃ地方予選突破できないよ!」
「確かに二人の言う通りだけど、人それぞれに事情ってものがあるからね。強制的にってのはできないよ」
「それじゃ、どうするずらか?」
「んー、取り敢えず一週間。地方予選までを逆算すればそんくらい時間あるから、様子みようか」
まだ曲も振り付けも決まっていないため、残っている人たちで基礎を鍛える。
もし、ヨハネと梨子の基礎が落ちていたらどうしてくれようか。
「……な、なんだか怖い」
「あれ、二人の基礎が落ちてたら練習倍とか言いそうだよね」
「倍かー。今のじゃちょっと物足りないから有り難いかな」
「果南さんは黙ってて下さいまし」
正直、僕としても少し時間ができるのは嬉しい。
この短期間で相当なデータがあるのも、生徒のみんなが協力してくれているらしい。
学校を残したい気持ちはみんな同じらしく。
自分たちに出来ることを積極的にやっているようだ。
予定していた一週間が経った。
二人も戻ってきたため、正座をさせて事情を聞けば犬を拾ったと。
まあ、何にせよ元の飼い主も見つかり、二人も戻ってきたのでそれはいいのだが。
「二人とも、休めると思わないでね」
「ひぇ……」
「う、うん……」
最低限の事はやっていたようだが、少し差が出来てしまっていた。
一見問題がないように感じるが、合わせて踊った場合それが目立つようになってくる。
……あとは果南が物足りないと言い出し、みんなの練習がいつも以上になっていたのも関係しているが。
取り敢えず、みんなのレベルを合わせるために二人の練習を少し濃いめにやったわけだが。
途中から梨子がどこか恍惚な表情をしていることに少し引っかかった。
引っかかったというより、引いていた。の方が正しいかもしれないけれど。
「優くん」
「梨子?」
「迷惑かけてごめんなさい。早くみんなに追いつけるよう頑張るから、しっかり見ていてね?」
「あ、うん」
よく分からなかったのだが。
責任を感じている、ということで良いのだろうか。
今日の練習は終わったため、みんな着替えるために部室へ向かっているのだが、へばっているヨハネを誰も連れて行こうとしない。
「ヨハネ、早く着替えてくれないと僕が──おっ?」
荷物が部室にあるため、さっさと着替えてくれないと困るのだ。
そう伝えるため、ヨハネの体を揺すって声をかけると。
ガバッと体を起こし、僕の目をジッと見てくる。
「優、気を付けなさい」
「えっと……?」
「梨子もあんたの事、狙ってるわよ」
「梨子が?」
急に何を言いだすかと思えば、と笑い飛ばせればよかった。
相手がどう思っているのか分からないということをすでに二度も経験しているのだ。
「犬の飼い主を見つけたときに梨子が呟いてたこと、教えてあげる」
聞こえないよう呟いたみたいだけど、この堕天使ヨハネの耳を持ってすれば造作もないこと。
なんてカッコつけてから、神妙な顔をして口を開く。
『やっぱり、管理するにはリードを付けなきゃいけないわよね。でも、私的には優くんにリードを付けるより、付けて欲しいのだけれど』
何を言われているのかすぐに理解できていない僕にキスをし、ヨハネは着替えるため屋上を後にする。
一人残された僕は日が沈みかけている空を見ながら、しばらくの間動けないでいた。