「まさか、私たちの頑張りが無駄だったなんて……」
「何をやっても意味なんてなかったずら……」
「ごめんなさい、みんな……」
「マリーちゃんが謝ることじゃ無いよ」
優が部屋を去ってから暫く経ち、ポツリポツリと話し始める。
頭を下げるマリーに千歌や果南がかけよっていく。
「もう、どうしようもないのかな」
「……うん」
あまりの事にショックを受け、みんなは思考が止まっていた。
「優くん、私たちどうしたら…………優くん?」
曜が部屋を見回し、ようやく優が居なくなっている事に気がつく。
「みんな、優くんどこ行ったか知ってる?」
「お手洗いとかじゃなくて?」
「いつから居ないのか分からないけど、こんなに遅いかな?」
「しょ、ショックを受けて」
「きっと屋上にいるずら!」
という事でみんなで屋上へと向かったが、そこに優の姿はなく。
部室や校庭、学校内を探しても見つからなかった。
「荷物は置きっ放しですのね」
「定期とスマホはいつも持ち歩いてるけど」
「ダメ。電話かけても全然でないよ」
再び部室に戻ってきたみんなはテーブルに優のカバンの中身を広げている。
「ねえ、千歌ちゃん。果南ちゃん」
「うん」
「私も同じ事、考えてたかも」
「三人とも心当たりが?」
「前にも一回だけ、似たような事があったんだ」
千歌、曜、果南の三人は一度顔を合わせたあと頷き、曜が話し始める。
優が引っ越していく少し前のこと。
何が原因であったか定かではないが、今回と同じように行方をくらました事があった。
あの時は暫く帰らないと書き置きが残してあったのだが、帰ってきたのは三日ほど経ってからである。
それまで地元の人たちがいくら探しても見つけることはおろか、痕跡すら分からなかった。
帰ってきた優は一言。
『少し、一人になりたかった』
とだけ答え、その後は何も語ろうとせず。
普段と変わらず過ごしていたため、周りもそれ以上掘り返すことはなく。
その後は何事もなく時は過ぎていった。
「でも、今回は書き置きも何もありませんわよ」
「それじゃあ優は荷物を置いてどこに行ったっていうのさ」
「それは……」
「二人とも、ここで喧嘩してもしかたないわよ」
「マリーちゃんの言うとおりずら」
いつも優がやっているように梨子は手を二回叩き、少し悪くなった空気を変える。
「日も短くなっているし、今日は動ける人だけで少し探しましょう。もしかしたら明日にはいるかもしれないし」
「そうだね。お母さんに帰るの遅くなるって連絡しておかなきゃ」
もし見つからなかった場合と、明日の対応まで決め、みんなは各々動き始めた。
☆☆☆
何度目かの電話のコールが止まり、暗くなった画面から視線を外す。
既に日も暮れ、空を見上げれば星が夜空に光り輝いている。
秋も過ぎ、コートだけでは少し冷えるが、まだなんとか耐えられる寒さだ。
このままどこかへ消えていってしまうような感覚を味わっていると、後ろから足音が聞こえてくる。
「…………よく、ここに居るって分かったね」
「女の勘、かな」
僕の隣に腰かけたのは梨子だった。
前にも一回失踪した時にここを使っていて、バレなかったから大丈夫と思っていたのだけれど。
スマホを少し弄った後、画面を消して少し僕の方へ体を寄せてくる。
「ここ、冷えるのね」
「風邪引く前には帰りなよ」
「その時は優くんも一緒ね」
顔をこちらに向けて微笑む梨子の姿はどこか妖艶であった。