「僕は少し、考え事」
前に失踪した時の理由はなんだったかな。
引っ越す先が音の木坂の近くで、μ'sとどう関わっていくかを悩んだような気がする。
今回は廃校の事である。
元々からそうであったのかは定かではないが、僕なら物語を変えられるんじゃないかと自惚れていた分、ダメージが大きかった。
僕がここに居る意味は何なのだろうか。
梨子が来るまでその事について考えていた。
μ's、Aqoursの物語に関わりを持たせ、結末を変える事はできない。
……いや、もしかしたらAqoursがラブライブを優勝できない可能性がまだあるのか。
もしそうなのだとしたら、余計に僕はいらない。
そこまで考えたところで、梨子から手を握られる。
引っ張られ、梨子の方へ倒れ込めば頭が太ももの上に。
「梨子?」
「優くんのせいじゃないよ」
頭を動かして顔を見ようとしたが、手で抑えられてそれは叶わず。
そのまま頭を撫でられ、言葉をかけられる。
僕のせいじゃない。
その言葉だけで少し、救われた気がする。
「優くんも、私たちも、一生懸命頑張ったよ。学生だから何も力がなくて、何もないからこそ出来ることを力いっぱいやってきた。…………だから今回は仕方ない事なんだよ。大人の都合で決まったことを私たちはどうすることもできない」
心が弱っていたからだろうか。
梨子の言葉の一つ一つが入り込んでくるような気がする。
「優くんは一人で抱え込みすぎだと思うの。私たちのことを考えて、助けてくれるのはとても嬉しい。でも、優くんは誰に頼るの?」
「僕のは別に大したことじゃないから」
「大したことない悩みだったら、失踪なんてしないでしょ?」
「これはまた、別の問題だからノーカンだよ」
「別の問題だからノーカン、とかじゃないのよ?」
頰をペチペチと叩いて来る。
怒っているためか少し痛いが、どこか優しさを感じた。
でも、こればかりはどうしようもない。
「心配してくれて、ありがとね」
そう口にして伝えると、頰を叩いていた手の動きが止まる。
梨子との会話で少し安心した僕は頭に柔らかさと温もりを感じつつ眠りについた。
☆☆☆
すやすやと眠る優くんを見て。
あの時、忘れ物を取りに戻るといって優くんのスマホに追跡アプリを仕込んでおいてよかったと心底思っている。
スマホのパスワードは開けるところを何度か見て覚えた。
みんなには見つけたと連絡を入れ、連れ帰るから明日問い詰めようと続けているため。
ここは私と優くんしかいないし、邪魔も入らない。
ここまで弱っていたのは曜ちゃんや善子ちゃんのせいではなく、また別の理由だろうということは何と無く分かっていた。
その理由までは分からないけど、ここまで無防備になるまで私へ気を許してくれるように出来たのだから良しとしよう。
優くん。
私は二人みたいに脅して、なんてことはしないよ。
部室で二人きりになってキスしているのを
私がそんな事をしないと信じてくれているのか、疑うことをしなかったね。
このままドロドロに甘やかしてあげる。
私の全てが優くんであるように、優くんの全てが私であって欲しいと願う。
でもそう簡単にはいかないし、現実は甘くない。
だから曜ちゃんや善子ちゃんのところに行ってもいいんだよ。
最後に私のところへ帰って来てくれたら、ね。