冬休みに入り、地区大会のゲストとして呼ばれたAqoursは北海道へ行っている。
僕は寒いのが好きじゃないため家で引きこもる予定だったのだが。
「久しぶりだねー、優くん」
現在、穂乃果の家にお邪魔し、おこたでヌクヌクしていた。
少し髪が伸びた穂乃果は落ち着きもあってかどこか大人びて見える。
「学校の方はどう?」
「それがね、聞いてよ! 海未ちゃん、確かに同じ大学なんだけど学部は違うんだよ! それなのに毎回レポートは出したのかー! 課題はやったのかー! って!」
だがあくまで黙っていた時の雰囲気だけである。
口を開けばあの頃となんら変わりのない穂乃果がそこにいた。
「そっか。ことりは服飾系に行ったから違うのか」
「うん! いろんな賞取って頑張ってるみたいだよ!」
その後もみんなが何をしているのか、最近どんな事があったかを話して過ごした。
「優くんもまたスクールアイドルのマネージャーをやってるって聞いた時、嬉しかったな」
「……そう?」
「うん」
目を細めて浮かべた笑みを見て、少しドキッとした。
明るくて、バカで、元気だけが取り柄の穂乃果から女性を感じ、目を合わせられない。
「だって、μ'sのマネージャーをやってくれてる時、どこか辛そうな気がしたから」
今度は別の意味でドキッとさせられた。
目を逸らしているため、いま穂乃果がどのような表情をしているか分からない。
「みんなでも、何度か話し合ったんだ。何が優くんを苦しめているのか分からないから、話してくれるまで待とうって」
「…………」
「それで今も、マネージャーをやってて辛そうに見える」
僕は何も答えないままミカンへと手を伸ばし、いつもと同じように揉み込んで皮をむいていく。
「もし、さ」
「うん」
「未来を知っていて、自分の行動ひとつでそれが変わっちゃうってならったらどうする?」
「えっ。穂乃果に難しい話する?」
「……もう少し、分かりやすく例えるよ」
ミカンを一つ食べようとしていた手を止め、ため息をつく。
少し真面目な話をしようとしているというのに、良くも悪くもマイペースな……。
「僕が関わらなかったらμ'sは廃校を阻止できて、関わったらラブライブも優勝できず廃校になっていた。……こうなった時、それでも僕は関わるべきなのか、関わらないべきなのか」
「うーん…………それって、未来を知ってるのは優くんだけ?」
「そう」
腕を組み、唸りながら悩んでいる穂乃果を横目にミカンを食べすすめていく。
そして一個目が食べ終わり、二個目のミカンを揉んでいると穂乃果も腕組みを解いてミカンに手を伸ばす。
「まだ、ちょっとよく分からないけど、たとえ廃校になるとしても、優くんと一緒がいいかな」
「どうして?」
「もちろん、学校が無くなるのは嫌だよ? でも、優くんと過ごしてきた時間も大切なものだから」
そこで一度区切った穂乃果はミカンを一口食べ、先ほどとは違ってただただ明るく元気な笑みを浮かべる。
「それにほら! 結果論? ってやつ? μ'sはラブライブ優勝して、廃校も阻止したし!」
「今僕がマネージャーしてる学校、統廃合になったけどね」
「うぇっ!?」
まだそこまで聞いていなかったのか、聞いていて忘れていたのか。
どちらにせよ、やっちゃったみたいな感じで視線をあっちこっち向けている。
「夢をね、見たんだ」
「わわわ、優くんごめ──夢?」
「うん、夢。僕がマネージャーをやっていない世界でも、その学校はあと少しのところで統廃合が決まる夢」
いつもなら分からないことがあれば話してる途中でも質問してきていたのに、変なところで穂乃果の成長を感じる。
「だから、僕が頑張れば統廃合をどうにか出来たんじゃないかって思ってたんだ」
結局、ダメだったけどね。
そう付け加え、話は終わりとミカンを食べ進める。
「でも、優くんやみんなは一生懸命に頑張ってきたんだよね?」
「うん」
「確かに廃校は残念だよ。でも結果がダメだからってこれまで一生懸命やってきたことも否定するのは違うと思うな」
「あ、一応言っとくともうみんな切り替えてるから。今、ラブライブ優勝して名前を残すために励んでる」
「へっ? 穂乃果凄く恥ずかしいんだけど。なら、今までの話は!?」
「僕の愚痴みたいなものかな?」
穂乃果は恥ずかしさから赤くなった顔を隠すようにテーブルへと突っぷす。
「話して、少しスッキリしたよ。ありがとね、穂乃果」
「うぅ……それは別にいいんだけど……」
なんか納得いかなーい、と子どものように騒ぎ始める。
それを止める事なくミカンを食べていれば、雪穂が五月蝿いっ! と怒鳴り込んできたりあったが、ゆっくりした時間を過ごせた気がする。