「あれ? 一年生組は?」
みんなが帰ってくる日に千歌の家へ集まってもらったのだが。
「あの子たちは少し残っていくそうですわ」
「なるほど?」
知ってはいるが、ダイヤから簡単に経緯を聞いておく。
「それで、急に話があるってどうしたのさ」
「うん。ラブライブの決勝で披露する歌と振り付け、衣装のデザインを僕に任せてもらえないかなって」
「全部……って事だよね?」
「や、流石に作るのは厳しいかなと。あくまでデザインだけ」
「それでも十分なんだけど……」
「間に合いますの?」
「まだ見せられないけど、大方出来てるよ」
実際は既にあるものをなぞるだけだから簡単、なんて思っていたけれど。
歌詞の一字一句まで覚えているわけではない。
でも、今の僕なら、みんなと過ごしてきたことを思い返せば書ける気がした。
「もしかしたら、少し頼るかもだけど」
「頼っていいんだよ!」
「本来、一人でやることじゃないんだよ?」
みんな苦笑いをしている。
きっとすぐ頼ると思われてるのだろう。
「ほとんど完成させてギャフンと言わせてやるー!」
捨てゼリフを残し、僕は一人で帰路へとついている。
どうしてだか分からないが、梨子と曜の雰囲気が何やら違うような気がした。
帰りに曜と二人きりにならないためにも──。
「優くん」
後ろから抱きしめられ、耳元で名前を呼ばれる。
振り向かなくても曜だと分かるのだが、息一つきれてないところが怖い。
走って後を追ってきたはずなのに。
「一人で帰るなんて寂しいじゃん。一緒に帰ろ?」
「それじゃ、まずは離れてくれないと」
「そうだね」
離れてくれたのはいいが、恋人繋ぎしたうえで腕に抱きついてくる。
僕から曜の顔が見えないため少し怖いが、余計なことを言いそうだから下手に声もかけられない。
「ねえ、優くん」
互いに何も話さないまま歩き始めてから少しして曜が口を開く。
「何でも言うことを聞いてくれるお願いなんだけど、やっぱりラブライブで優勝してから言うね」
「うん? まあ、いいけど……」
「それとは別に一つだけお願い、聞いてくれない?」
「僕に出来る範囲でいいんなら」
「とっても簡単なことだよ」
腕を組んで歩いているため、足を止めた曜に合わせて僕も足を止める。
──好きって、言って。
変わらず、曜の顔は見えないが。
組んでいる腕に震えが伝わってくる。
「好きだよ。曜」
そう答えると、腕に抱きつく力がギュッと強くなる。
「ほんとに?」
「うん」
「ほんとのほんとに?」
「僕は曜を嫌いになったことなんてないよ」
「…………よかったぁ」
その声色には心からの安堵がこもっていた。
けど、逆にどうしてそこまでの不安を曜が抱えていたのかが僕には引っかかる。
けど、僕は深く聞くことをしなかった。
いや、しなかったというよりは、出来なかった。が、正しい。
これから決勝に向けて徐々に繊細となってくる。
どうにかしなきゃという思いを無視した。
藪を突くことを恐れたのだ。