「私、夢を見てるんじゃないかって思うんだ」
「紛れも無い現実だよ」
「うん。あの光景、忘れる事はないと思う」
ラブライブで優勝を果たしたAqours。
初めは薄かった現実感も徐々に認識し始め、みんなで泣きながら抱き合っていた。
μ'sのみんなからもお祝いのコメントが届いている。
今は内浦に帰ってきており、解散しているのだが。
曜と二人で月明かりが照らす中を散歩していた。
ラブライブで優勝したため、いつの日か約束したお願いをするのだろう。
「お願いの前に一つ聞きたいんだけど、いい?」
「いいけど」
わざわざ断りなんかいれなくても聞きたいことくらい聞いてくれればいいのに。
なんて事を考えている僕の前を歩いていた曜は振り返り。
「善子ちゃんと梨子ちゃんの二人ともキスしてたって本当?」
「…………?」
言っている意味が分からず、足を止める。
ヨハネはまだ分かる。いや、何故バレているのか分からないけど、分かる。
けど梨子? どうしてここで梨子の名前が一緒に?」
「梨子ちゃん、寝てる優くんに何度もキスしてるけど……知らなかったの?」
衝撃がデカすぎて思考が上手く纏まらないながらも頷くことだけはできた。
言われて思い返せば、起きた時にあった口周りのベタつきはそれだったのか……?
確かに、梨子が近くにいたけれど……。
「嘘……じゃ、ないよな?」
「ここで嘘言ったってしょうがないじゃん」
軽く口にする曜だが、浮かべている笑みが酷く異様に見えた。
「やっぱり優くんは魅力的だから、モテモテなのは仕方ないよね」
「いや、そんな事は……」
「三人の女の子からキスされてるのに?」
「…………ごめん」
何に対しての謝罪なのか分からなかったけれど、他になんて言ったらいいか。
いつの間にか側まで来ていた曜は両手で恋人繋ぎをし、唇が触れるだけのキスをしてくる。
全てが終わった今、同じように目を逸らし続ける事はできない。
梨子の事は未だに驚いているが、彼女たちに向き合っていかないと──。
「私のお願いなんだけどね」
普通に話しているはずなのに、曜の口から発せられる言葉がゆっくりに聞こえ。
真っ直ぐに僕を見つめる瞳から目を逸らすことが出来ない。
──結婚、して欲しいな。
そう言って微笑み、もう一度キスをする。
今度は先ほどよりも長く、誓いを立てるように。
「もちろん、今すぐじゃないよ? 優くんは法律的に後一年待たなきゃ出来ないからね。だからまだ婚約、かな」
確かに、僕にできる事なら何でもするって約束だったけれど。
まさか、まさかだよ。
「…………ぁ」
「約束、守ってくれるよね?」
僕は口を閉じ。
ただ、頷くしか出来なかった。
「それじゃ早速、証が欲しいな。もちろん、子どもは計画的にだけど、今日は大丈夫な日だから」
今頃気がついたが、話をしていたのは曜の家の目の前だった。
ヘソの下あたりに手を当てながら口にする曜が何を言いたいのか察してしまう。
が、手を引かれる僕に抵抗の意思はなかった。
「あ、安心していいよ、優くん。私が一番で、帰ってきてくれるなら。善子ちゃんと梨子ちゃんと浮気してきても許してあげる。なんなら子ども作ってもいいよ?」
曜は一体、何を言っているのだろうか。
僕の背後で鍵を閉める音が聞こえた。
それは籠に閉じ込められてもう逃げられないような。
そんな錯覚を覚えるような気がした。
色々と言いたい事はあると思いますが、これで完結です。
あとがきとして色々と言い訳をしたいと思います。