君が好き   作:不思議ちゃん

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きっかけ

「それで、今は何してるん?」

 

 飲み干した頃に希さんは出てきた。

 そして自分の分と僕のおかわりを注ぎ、対面に座ったかと思えばこれだ。

 

 これから今の僕について根掘り葉掘り聞かれるのだろう。

 

「沼津の高校に通ってるよ」

「そうやなくて。またマネージャーみたいなこと、しとるんやろ?」

「…………どこでそれを?」

「カードがうちに告げるんよ」

 

 希さんのそれは何でもありだな……。

 

「…………まだ出来たばかりで三人しかいないし、今日がファーストライブだよ」

「観なくてよかったん?」

「まあ、大丈夫だと」

「信じてるんね」

 

 そう言って微笑む希さんから目を逸らしてしまう。

 別に僕は彼女たちを信じていたわけではない。

 

 僕がいない方が上手くいくことをわかってる分、不確定要素によって失敗しないよう願いに来たのだ。

 

「優くんはきっと、向こうでもモテモテなんやろうね」

「急にどうしたのさ」

「いんや、そう思っただけや」

「向こうでも……って、こっちでモテた覚えないけど……」

「それは優くんが一線引いてたからやろ? 本当は気付いてるやん」

「…………」

 

 そう言われて、僕は黙るしかなかった。

 深く踏み入ってしまえば引き返せなくなるからだ。

 

「ごめんごめん。意地悪やったな」

 

 ポーカーフェイスには自信があったけれど、希さんには通じないようで。

 仕切り直すためにおかわりを注いでくれる。

 

「でもな、優くん。これだけは覚えておいてや」

「…………?」

「女の子って時には大胆な行動をとるんや。一服盛られないよう気をつけやー」

「みんな良い子だから、そんなことないよ」

 

 そういう薬を持っていても不思議じゃない堕天使とかなら思いつくが、性格上使うなんてことはないだろう。

 

「優くんに一服盛って既成事実作ろうとしてた子が何人かおるんやけど……信じる?」

「…………冗談に聞こえないね」

 

 結局、希さんは肯定も否定もしなかった。

 医者の娘がいるため、薬の入手が比較的簡単そうなのが真実味を帯びていそうで怖い。

 

「ただでさえ優くんは警戒心が無いんやから。今だって二人きりなんよ?」

「それ、言う立場逆だと思うんだけど」

「それもそうやね。……今日はウチに泊まっていき。別にとって食ったりしないから安心し」

「だからそれ、僕のセリフ……」

「聞こえんなー」

 

 一頻り会話を楽しんだからか、上機嫌で夕飯の支度を始める希さんを横目にどうしようかと思っていたらスマホが震えた。

 

 確認してみれば曜からで、街の人みんなが観に来てくれていっぱいになったから、今後は同好会として活動できる。

 といった内容だった。

 

 おめでとう、と一先ず返しておき、続けて明日には帰る。お土産は期待してて。と送る。

 すぐに既読がつき、僕にも観ていて欲しかった。と。

 

「…………」

 

 また今度の機会にね。と返し、スマホの画面を落とす。

 すぐにスマホは震え、曜からの返事が来たことを知らせてくれるが、何となくそれを見る気にはなれなかった。

 

 曜のことだから『絶対だよ』とか『約束だからね』みないな感じだとは思う。

 けれど後回しの返事をしている自分自身に対して嫌気がさしてくる。

 

 今更ながらきちんと向き合うべきなのだろうか、といった考えさえ浮かんでくる。

 あの時だって最後は綺麗に落ち着いたとはいえ、自身の選択に後悔する場面は何度もあった。

 

「もうすぐできるでー」

「今更だけれど何か手伝う?」

「そしたらお皿並べて貰ってええ?」

 

 朗らかな希さんの声が耳にスッと入ってきた。

 深呼吸を一つし、気持ちを切り替え。今更ながら手伝いを申し出て言われた通り皿を並べていく。

 

「優くんは考えすぎないで好きにしたらええと私は思うんよ」

 

 手の動きが一瞬止まるけれども、何もなかったように準備を進めていく。

 希さんもそれ以上何かを言ってくることは無かったが、 僕に迷いが出てきたのは確かなことだった。

回答の中で好きなキャラを教えていただけたらと

  • 梨子
  • 善子
  • 花丸
  • 千歌
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