「ほーれほれほれ」
「あぅぅぅぅ」
東京から帰ってきて数日が経った今日の下校時。
幼馴染が後輩の女の子にお菓子で餌付けをしている場面に遭遇した。
曜に梨子……それに花丸もいて餌付けの様子を見ている。
…………他人のフリして帰るか。
「あ、優くん」
「……お久」
「ピギィッ!?」
少し遠回りになるがこれに関わるよりはマシかと道を変えようとしたところ、曜に見つかってしまい。
仕方なしに近づいて挨拶をしたのはいいが、餌付けされかけてた子──ルビィは高い声を上げて木の陰に隠れてしまった。
「あー! あと少しだったのに!」
「久しぶり、優くん」
「おう」
東京から帰ってお土産を渡した時、梨子から苗字は他人行儀だからと名前で呼び合うよう提案された。
まだ片手で数えられるぐらいしか会ってないのに、コミュ力高すぎない?
それはさておき、置いてきぼりの二人に自己紹介をしなければ。
でないとずっと怯えられたままだろうし。
「僕は桜優。オレンジのアホと曜の幼馴染ってやつだ」
「マルは国木田花丸ずら」
「「「ずら?」」」
「ずらっ!? 国木田花丸……って言うず……言います。よろしくず……よろしく、お願いします」
「よろしく」
「えっ、優くんはスルーなの?」
「何が?」
「ずらってとこ!」
「方言か訛りだろ? 可愛くていいじゃん」
「確かに可愛いけど!」
千歌が言いたいことは分かる。
けれど言うほど気にするような事でもない。
曜がよく口にする『ヨーソロー』の方が俺としては気になる。
「…………ずらぁ〜」
「よ、よかったね、花丸ちゃん」
「ずらっ!」
千歌に構っている時、二人で何か話しているようだったが、俺の視線に気付くとルビィは花丸の背に隠れてしまう。
「ほらほら、ルビィちゃんも自己紹介するずら」
「う、うん……」
花丸に背中を押されて出てきたルビィだが、腕に抱きついている姿は小動物を思わせる。
少しからかってみたいところだが、そんな事をすれば物語が詰んでしまう可能性すら見えるので辞めておく。
そうでなくとも初対面の人に対してやる事でもないしね。
「ルビィ……黒澤、ルビィ……って言います」
「うん、よろしく」
「ほらほら、ルビィちゃん。飴ちゃんだよ〜」
少し打ち解けたと思ったところで、性懲りも無く再び餌付けを試みる千歌。
それに吊られているルビィもどうかとは思うけど。
「捕まえたっ!」
「ピギィッ!?」
「よーしよしよし、可愛いねぇ」
千歌に捕まったルビィが可愛がられてるのをよそに、曜のもとへと寄っていく。
「んで、あのアホは何してるの?」
「あはは……あの二人、入学式の時にも会ってね。千歌ちゃんが入ってもらおうって」
「なるほどねぇ」
「あ、東京のお土産、穂むらのお饅頭だっけ? とても美味しかったよ。お母さんがお礼言っといてって」
「私にもお土産、ありがとう。お母さんも喜んでた」
「それは良かった。向こうにいた時、よく食べてたから」
自分用にも二つ買っており、期限ギリギリまでゆっくりと食べるつもりだ。
鉢合わせしないよう、希さんに買いに行ってもらった。
「二人とも、スクールアイドルやろうよ!」
曜、梨子と話していると、そんな声が聞こえてきた。
直球で誘っていくあたり流石だなと思うが、二人の反応は良いものでなかった。
「マルは……遠慮しておくずら」
「ルビィも……」
「えーっ!? 二人ともとっても可愛いのに!」
「千歌ちゃん、あまり無理に誘うのも……」
入ると言わない限り勧誘をやめそうにない千歌を曜と梨子で二人から遠ざけていく。
「せめて体験、そうだ! 体験だけでも〜」
「それじゃ、またね!」
「ヨーソロー!」
諦める様子のない千歌を二人で引きずって去って行ってしまった。
その様子をルビィと花丸は苦笑いで見ていたのだが、今のところイメージは大丈夫だろうか。
「悪いね、二人とも。千歌は少し強引なところがあるから」
「い、いえっ!」
「国木田さんと黒澤さんはスクールアイドル嫌い?」
「そ、そんなことないずらっ!」
「だ、大好き! ……です」
元気のいい返事に思わず頰が緩むが、二人は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしている。
「……でも、マルはあんなにキラキラできないずら」
「ルビィは…………」
「出来ないわけを無理に話さなくてもいいよ。……でも、本音を隠して出来ない理由を探すのはあまりオススメしないよ」
なんだか説教みたいになってしまった気がする。
二人も何やら真剣に考え込んでしまったし。
「最後、千歌が叫んでたみたいに一回だけ体験でもしてみたらどうかな? 想像とやってみるじゃ、やっぱり違うもんだよ」
食べ歩きでもしようと思って持ってきていたほむまんを二人に渡してその場を後にする。
……元々こんな関わるつもりは無かったのに、希さんと会ってから自分の調子が少しズレている気がした。
回答の中で好きなキャラを教えていただけたらと
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曜
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梨子
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善子
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花丸
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千歌