君が好き   作:不思議ちゃん

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出演依頼

「じゃーん! 花丸ちゃんにルビィちゃん、そして善子ちゃんでーす!」

「善子じゃなくてヨハネ! ……って、この人誰よ」

「誰って優くんだよ?」

「優くん? ……ああ、たまに話に出てくる名前ね」

 

 テスト期間が終わり、暫くぶりに呼ばれてきたかと思えばこれだった。

 二人は放って皆に声をかけ、いつもあるミカンを手に取りニギニギする。

 

 無事に花丸とルビィも入り、気づけばヨハネもいる。

 そろそろあそこの場面に突入するわけだが、どうしたものか。

 

「我が名は堕天使ヨハネ。あなたもリトルデーモンになりたいのかしら?」

「ん? ああ、別に構わないよ。よろしく、ヨハネ」

「だからヨハネ! ……って、呼んでるわね。なかなか良いじゃない。あなた、名前は?」

「僕は桜優。好きに呼んでくれ」

「そう。ならよろしく、優」

「とぉー!」

「ぁいたっ!?」

 

 自己紹介をしてヨハネが差し出した手を握れば、千歌のチョップですぐさま離される。

 

「何するのよ!?」

「いやー、なんだかやらなきゃいけないかなって思って」

「なにそれ!」

 

 ヨハネと千歌が騒いでいるが、千歌がチョップをしていなければ曜か花丸がやっていた事だろう。

 手で仰いで誤魔化そうとしているが、僕はしっかりと見えていた。

 

「それより優くん!」

「何?」

「どうして素直に受け入れてるのさ!」

 

 ヨハネとの争いは一段落したのか、千歌は次に僕を標的にし始めた。

 だが、千歌の問いかけにヨハネを含めた全員が興味あるようで、視線が集まる。

 

「別に対して気にするようなことでもないでしょ」

「確かに、善子ちゃんのはスルーするのが一番ずら」

「善子じゃなくてヨハネよ! それにスルーって何よ!?」

「そういう事なの?」

「んー」

 

 果たして本当にそうなのかと問われれば、明確な言語化はまた難しい気がする。

 それでもどうにか伝えようとミカンを食べながら考えていれば、誰も話さなくなり、僕の答え待ちとなっていた。

 

「ぶっちゃけ他の人がどうあろうと、どうでもいいんだよね」

「どうでもいいとか言われてるずらよ?」

「それを言ったらずら丸だってそうじゃない」

「ずらっ!?」

 

 ヨハネに指摘され、花丸がこちらを見てくるが……苦笑いをするしか僕にはできなかった。

 ミカンを一つ食べ、続きを話し始める。

 

「だってさ、その人が築き上げてきたものって、その人でしか分からないじゃん。それを外野がとやかく言ったって、その人はその人である事に変わりないんだし。方言だろうが堕天使だろうが、その人の魅力の一つなんだからどうでもいいじゃん」

 

 言いたい事は言い切ったし、個人的にも要点をまとめて話せたと思っている。

 皆が何も話さないのは少し不気味に感じるが、まあいいだろう。

 

 丸々食べきったので、二個目に手を伸ばし。

 

「優くんって色々と考えてるんだね」

「どういう意味だ」

「いだだだだだだっ!?」

 

 そのまま千歌へとアイアンクローを仕掛ける。

 他の人に言われても同じことをしただろうけれども、千歌に言われるのだけは釈然としないな。

 

 自身の手が疲れないうちに離し、ミカンを手に取る。

 

「まったく。千歌だけには言われたくないね」

「ううう……いつも変わらず私にだけ酷くない?」

「そうされるようなことをしてるからでしょ。…………ってか、今日呼び出されたのって紹介するだけのために?」

「ふーんだっ!」

 

 千歌はアイアンクローをされて拗ねているのか、僕の問いかけには口に出しながらそっぽ向いて痛む頭を手で抑えている。

 それならそれでと放っておき、再びニギニギと揉み込んだミカンの皮を剥いて一つ口に運ぶ。

 

「んで、何の用なの? 内浦を紹介するPVなら見たよ。予定あって手伝えなかったけど、あれは生で見てみたかったね」

「えへへへ。みんなで頑張ったからね!」

「とっても楽しかったずら!」

「……そういえば優くん、私たちのライブを生で見たこと無いよね?」

「言われてみれば無いわね」

 

 僕も一応高校生であるため、私生活というものがある。

 曜や梨子の言う通り、生で観たことない。

 個人的には見たいのだが、気付いた時には終わった後だったり、予定が入っていたり。

 

「それも大事だけど、今はこれを見て欲しいかな」

 

 そう言って梨子に魅せられたのはパソコンの画面だった。

 そこにはスクールアイドルのランキングが99位と表示されており。

 

「私たちが作ったPVで人気出て、東京のライブイベントに出ないかって出演依頼が来たの!」

「今日はそのお知らせです!」

 

 ばばーん、と。わざわざ口にしてアピールしてくれるのはいいんだが、僕は急にテンション上げられてもついていけない。

 だから黙ってミカンをパクリ。

 

「反応薄くない!?」

「僕のことは置いておいてさ。東京でのライブ、楽しんできなよ」

「普通、そこは頑張ってきなって言うとこじゃないの?」

「それに、優くんは来てくれないの?」

「まず自分たちが楽しむことが大事じゃない? それと来てくれるのが当然みたいなこと言ってるけど……え? 僕がおかしいの?」

「だって宿、七人でとっちゃったよ?」

「…………ん?」

 

 僕が行くことを前提で話を進め、後から承認を得るとか……。

 行くことが半ば決まったようなものじゃん。

 

「まあ、別にいいけどさ」

「やったー! これで始めて私たちのライブを観てもらえるよ!」

 

 …………なるほどね。

 僕がまだ、生で観れていないことを気にしてたのか。

 なら、しっかりと観ないとね。

 

「あんた、宿は男女別でとったんでしょうね?」

「へ? 安くなるから一緒でいいかなって」

「高校生の男女が一緒って! キャンセルして部屋別でとりなさいよ!」

「今からだとキャンセル料かかっちゃうよ?」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 ヨハネはキャンセル料がかかると聞いて諦めたのか、黙って座り、大人しくなった。

 そこで諦めちゃいけないと思うんだが、高校生だから小さなことでも出費は痛い。

 

 ってか、反対してたのヨハネだけで後の人たちが大人しいのもどうかと思うのだけれどもね。

回答の中で好きなキャラを教えていただけたらと

  • 梨子
  • 善子
  • 花丸
  • 千歌

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