Re:緋弾のアリア   作:Sinku

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10.

猫探しの依頼(クエスト)を解決した——その翌日。

俺は依頼したアリア内偵調査の結果を聴く為、()()()()へと足を運んでいた。

本来ならアリアに付きまとわれ、自由行動とは名ばかりの拘束生活だが、アイツは依頼(クエスト)中。近くにいない今が好機(チャンス)だ。

 

「理子」

 

お目当ての人物を見つけ、声をかける。

メールで呼び出しておいた通り、理子はある場所——女子寮前の温室にいた。

ここは尋問科(ダギュラ)が管理するビニールハウスで、()()に使う薬草や花を育てている。

だが基本的に一から育てるよりも専門業者からまとめて買う方が安い。実際に使う人はほとんど居らず、管理とは名ばかりで半ば放置されている。

そのためかいつも人けがなく、秘密の打合せにうってつけな場所なのだ。

 

「キーくぅーん!」

 

バラ園の奥で、猫撫で声を出しながら理子くるっと振り返る。

ふんわり背中に垂らした髪とツインテールがふわりと舞うようにその動きを追う。

緩いウェーブのかかった髪はツーサイドアップで結われており、その身長・容姿と相まってかより幼い印象を受ける。正直、小学生と言われても信じるレベルだ。

 

「相変わらずの改造制服だな…前は別のやつ着てなかったか?」

 

「おおー!きーくんも中々鋭いですなぁ、前のは武偵高の女子制服・ゴスロリ風アレンジでこれは白ロリ風アレンジだよ! 特にこの白いフワフワがお気に入りなの!」

 

「そんな種類言われても俺には分からん。ったく、いったい何着制服持ってんだ」

 

俺なんか1着しか持ってないぞ。防弾・防刃の特殊加工を施された武偵高制服はかなり値が張るってのに。財力の差に涙が出てくるね。

 

「んっとねー、白ロリ風にゴスロリ風———」

 

本格的に指を折り改造制服の種類を数え始めたので、聞く振りをしながらも俺は鞄から紙袋で厳重に隠したゲームな箱を取り出した。

 

「ほら、約束のゲームだ。報酬は渡したんだから頼むぞ。いいか?ここでの事はアリアには秘密だからな」

 

「うー! らじゃー!」

 

びしっ。

先程までとは打って変わり、理子はキヲツケの姿勢となる。

体が若干前屈みになりながらも両手でびしっと敬礼(?)ポーズを取った。

すると——ぽよんっ。

その反動で白雪よりは小さくも勝るとも劣らない胸が弾んだッ。

 

(ゔ……!!!)

 

慌てて目線を逸らし、苦い顔をしながらも理子に紙袋を差し出す。

アリアが小型ボート以下の金だらいレベルならば理子は弩級戦艦である。アリアと暫く行動を供にしていたため油断していた。危険性がまるで違う…!

ふんふんふん。

紙袋を受け取ると理子はまるで獣のように荒い鼻息をしながら、袋をびりびり破いていった。

 

「うっっっわぁ———!『しろくろっ!』と『白詰草物語』と『(マイ)ゴスだよぉー!』

 

ぴょんぴょん跳びはねながら理子が両手でぶんぶん振り回しているのは、女子と擬似的な恋愛をするシミュレーションゲームだ。

しかもR-15指定、つまり15歳以上でないと購入できない所謂ギャルゲーである。

理子は服装からわかる通り生粋のオタクだ。しかも世間一般のオタク女子とは違い、ギャルゲーのマニアという奇特な趣味の持ち主である。

中でも特に自分と同じようなヒラヒラでフワフワの服を着たヒロインが出てくる物に強い関心を示す。

1年の頃、毒の一撃(プワゾン)などの実習試験などでは武藤、不知火、理子の面々とよく組んでいた。

その時から同クラスのよしみでよくつるんでおり、コイツには延々とギャルゲーについて熱く語られた記憶がある。

その際、武藤と不知火は早々サムズアップしながら離脱し、聞くのが俺一人という状況に陥った。そのおかげ、いやそのせいで否が応にも理子が好きなギャルゲー限定で詳しくなってしまったのだ。

 

(嫌な記憶を思いだしちまった……)

 

だがついでに過去の武藤と不知火の所業を思い出したので、奴等は後で制裁しておこう。

もちろん理子も15歳以上なので購入することはできる。しかし先日、学園島のツ○ヤでは身長から中学生と判断され、売ってもらえなかったと俺にぶちぶち言っていた。

そこで依頼(クエスト)料金兼報酬として俺が代わりに買ってきてやった、というわけだ。

 

「あ……これと、これはいらない。理子はこういうの、キライなの」

 

ぶっすぅー、と、リスみたいに膨れっ面になり唇を尖らせながら突っ返してきたのは先程喜んでいた『(マイ)ゴス』の2と3、続編だ。

パッケージも理子好みだし、ゲーマーの理子なら全編やりたがると思ったんだが…。

 

「なんでだよ。これ、他と同じようなやつだろ」

 

パッケージに描かれている絵もそっくりだし、違いが一切分からん。せいぜい数字があるかないかくらいだ。

 

「ちがう。『2』と『3』なんて、蔑称。個々の作品に対する侮辱。イヤな呼び方」

 

そう言いながら膨れっ面だったホッペをより大きく膨らませ、不機嫌に唇を尖らせる。

 

(…ワケの分からんヘソの曲げ方だな)

 

何が気に入らないのかは不明だが『2』と『3』が原因ってのは分かった。気まぐれな理子のことだ。追求すると依頼自体がお釈迦になりかねん。とりあえずこの問題は放置しておこう。

 

「あー…なら、続編以外のゲームだけやる。報酬はその分減るが文句言うなよ」

 

「——あい!」

 

ぴっ。

軽く先程と同じような敬礼(?)をしながら、制服と同じようにフリフリに改造された自身の鞄に突っ返したゲーム以外を詰め込んでいく。

明らかにサイズが足りていないが、不思議にも四次元ポケットのようにするする入っていく。どんな仕組みしてんだ。

 

「はぁ…それで、何かわかったことはあるか」

 

そう言いながらちょうど足がつく高さにあった柵に腰を下ろす。

 

「もっちろーん!理子にかかればお茶の子さいさい!スリーサイズから下着の色までバッチリ!なんでも聞いて!」

 

ぴょん。

軽くジャンプしながら俺の隣に腰を下ろす。だが俺とは違い足がつかないため、膝下をプラプラしている。というかおい、何でその情報をピックアップするんだっ!

 

「そんな情報はいらんっ。たく、あーそうだな…ならまず強襲科(アサルト)での評価を教えてくれ」

 

「ほいほーい!んーランクだけど、Sだったね。2年でSって、どの学校でも片手で数えられるぐらいしかいないんだから凄いよねー」

 

(…だろうな)

 

身のこなしからある程度推測はしていたため、別段驚きはしなかった。あの時は軽くあしらう事ができたが、体捌きなどどう考えても常人のレベルじゃなかったからな。

 

「理子よりちびっこなのに、徒手格闘もうまくてね。流派は、ボクシングから関節技まで何でもありの……えっと、バーリ、バーリ…バリツゥ…」

 

流派を中々思いだせずに、むむむっと両手の人差し指で頭を抑え、うーんと唸っている。だが、バーリとつく格闘技なら覚えがある。

 

「バーリ・トゥードか」

 

「そうそうそれ。それが使えるの。イギリスでは縮めてバリツって呼ぶんだって」

 

(どおりであの身のこなしな訳か…)

 

バーリ・トゥードとは、総合格闘技の原型とも称される、所謂何でもありの格闘技の総称だ。様々な形態の武道(マーシャルアーツ)から技法を取り入れており、扱うだけでも困難な代物である。

体育倉庫でもぶん投げられかけたが、あれだけの技量ならば大抵の奴はものともしないだろう。

 

「あと拳銃とナイフは、もう天才の領域。どっちも二刀流なの。両利きなんだよあの子」

 

「それは知ってる」

 

実際にこの目で見たしな。空中で大型拳銃をまるで自分の手足のように扱える奴なんてそういない。俺の知り合いの中でも真似できるやつはいないだろう。

 

「じゃあ、2つ名も知ってる?」

 

「2つ名?」

 

「そう、双剣双銃(カドラ)のアリア」

 

——双剣双銃(カドラ)

武偵用語では、二丁拳銃ないし二刀流のことをダブラと呼ぶ。

双剣双銃(カドラ)という用語は聞いたことがないが…おそらく文字通りの双剣双銃(カドラ)。アリアの武装である日本刀二工と大型拳銃(ガバメント)二丁、4つ(カトロ)の武器をもつことから来た2つ名だろう。

大体は当時者の戦闘スタイルが自然と定着することが多い。強ち間違いではないはずだ。

 

「笑っちゃうよね。双剣双銃(カドラ)なんて」

 

「笑いどころはよく分からんが…まあ、評価はもういい。次はそうだな…活動、いや実績について教えてくれ」

 

評価は推測していたことが大方当てはまっていた。真新しい情報もあったが優先度的には他の情報より劣る。限りある報酬での情報だ。大事に聞いていかないとな。

 

「おっけー!もうスッゴイ情報があるよ!転校を気に今は休職してるみたいなんだけど、アリアは14歳からロンドン武偵局の武偵としてヨーロッパ各地で活動しててね———その間、犯罪者を一度も逃したことがないんだって」

 

「逃したことがない?」

 

「そう。狙った相手(ターゲット)を全員逮捕してるんだよ。99回連続、それもたった一度だけの強襲でね」

 

「それは……凄いな」

 

正直、かなり信じ難い内容である。

武偵は落とし物の捜索から犯罪者の捕縛等かなり広い範囲を依頼(クエスト)として依頼主から受注している。様々な依頼(クエスト)が舞い込んでくるが、犯罪者の逮捕などという危険度の高い仕事は極稀だ。というのも犯罪者の捕縛を依頼する側———それは主に警察だ。

只でさえ犬猿の中である警察と武偵である。わざわざ武偵に頭を下げて依頼する機会などそうそうない。大概は自分たちで手に負えなくなった時に依頼するのが常だ。まあ依頼といえば聞こえはいいが、ようはただの押し付けだな。

またその機会も直接プロの武偵に頼むことが多く、武偵高に降りてくる機会は滅多にない。プロでは割に合わない、もしくはプロでも手に負えない依頼が武偵高に降りてくる。それを99回も連続で、一発逮捕とは…

 

(そんなヤツとパーティを組んじまったのか…)

 

今後のことを考えるとかなり気が滅入ってきた。これ以上深掘りすると俺の精神衛生上良くない。話題を変えることにしよう。

 

「あー…他には。体質とかはどうだ」

 

「うーんとね。アリアって、お父さんがイギリス人とのハーフでお母さんが日本人なの」

 

「てことはクォーターか」

 

「そう。で、イギリスの方の家がミドルネームの『H』家なんだよね。すっごく高名な一族らしいよ。おばあちゃんはDame(デイム)の称号を持ってるんだって」

 

「デイム…確か、称号みたいなもんだったか?」

 

少し前に見た洋画でそんな言葉を聴いた気がする。

かなり曖昧な記憶だが、偉い人から与えられる称号だったはずだ。

 

「おー!キーくん、よく知ってたね!そうそう、けど称号は称号だけどイギリス王家が授与する称号だよ。叙勲された男性はSir(サー)、女性はDame(デイム)なの」

 

「てっことはあいつ貴族かよ…」

 

全くイメージが湧かなかったぞ。だが、貴族であるなら所々に現れた気品さに納得がいく。暴力の化身みたいな奴だが、一挙一足から育ちの良さ、というか優雅さが見えたからな。

 

「そうだよ。リアル貴族。でも、アリアは『H』家の人たちとはうまくいってないらしいんだよね。だから家の名前を言いたがらないんだよ。理子は知っちゃってるけどー。あの一族はちょっとねぇー」

 

「教えろ。ゲームやったろ」

 

「理子は親の七光りとかそういうの大っキライなんだよぉ。まあ、イギリスのサイトでもググればアタリぐらいはつくんじゃない?」

 

(…ん?)

 

珍しいな。何か思うところがあるのか、一瞬だけ眉を潜めていた。注視していないと気づかないレベルだが、偶然気づくことができたぞ。

しかし、この反応からするとーー

 

(これ以上は無理か)

 

恐らくこれ以上の情報は得られないだろう。理子自身も話す気がない上に、追加の報酬を要求される可能性がある。既に火の車である俺の財布にこれ以上の負担はかけられん。

 

「俺、英語ダメなんだがな…」

 

「がんばれやー!」

 

弱音を吐いた俺の背中を叩こうとしたらしい理子のちっこい手が——ぶんっ。

背中から大きく外れる形で思いっきり空振った。

 

「っと」

 

そのままいくと俺の手首をブッ叩き、俺も巻き込む形で転びそうだったので——すっ。

身体を半身にずらすことで理子の手を避け、そのまま転ばぬように右腕を伸ばし腰周りを抱き止める。

 

「ったく…おい、大丈夫か」

 

対応が遅れてれば危うく二人揃って転けるところだったぞ。

理子に目を向けると普段から大きな目をまんまると見開き、何が起きたか分からず驚いた様子だ。

声をかけると自分の状況が理解できたのだろう。しきりに目をパチパチ瞬かせながらも俺に顔を向ける。

 

「…あちゃー、失敗失敗。きーくん、ありがと!」

 

てへへっ、と。

ちっちゃな舌を軽くだしながらそう言った。

 

「礼はいいからとりあえず早く離れてくれ」

 

理子ならこのまま抱え続けることは可能だ。がしかし、女子と密着しているこの状況が良くない。

 

「あー、キーくんそっけない!ぷんふんがおーだぞ!女の子と密着してるんだからもっと喜ばなきゃ!」

 

そう言うと体勢を変えながら腰周りを抱え込んでいた俺の腕をガッチリ胸の谷間に挟み込む形で抱え込んできたっ。

むんにゅり。

弩級戦艦並みの胸が大きく歪み、右腕の両側からマシュマロみたいな柔らかい感触をモロに感じる…!!

 

(で、でか…!)

 

瞬時に熱くなった血液が体の中央に集まる感覚がする。まずい…!

するっ。

即座に理子から腕を引き抜くと——-がちゃ。

無理に腕を動かしたせいか、俺の腕時計が外れて足元に落ちた。拾い上げると、金属バンドの三つ折れ部分が外れてしまっている。

 

「うぁー! ごっ、ごめぇーん!」

 

「あー別に安物だから気にすんな。台場で1980円で買った奴だしな」

 

ブランド物でもなく、何処でも買えるような腕時計だ。代えも直ぐに効くためそう言うが——-

 

「だめ! 修理させて! 依頼人(クライアント)の持ち物を壊したなんて、理子の信頼に関わっちゃうから!」

 

ばっ。

返事を聞くよりも早く俺から腕時計をむしり取ると——そのままセーラー服の襟首をぐいーっと引っ張って開け、すぽっと胸の間に入れてしまう。その際に金色の下着がちらりと見えてしまい、即座に目を逸らす。

 

「あーわかったっ、頼む。情報もこれぐらいでいい」

 

まだ理子に若干聴きたいことはあったが、先程の胸の感触と光景が相乗効果を引き起こしヒステリアモードになりかねない。

記憶から消去するために慌ててそう言うと、そそくさと温室を後にした。




未だに原作一巻を抜け出せていないです…
本来ならもっと進めていた筈なんですけど、忙しくて中々時間がとれませんでした( ̄^ ̄゜)
少しずつ落ち着いてきたので、徐々に更新していきたいと思います。
とりあえずは二週間に1回更新出来るよう頑張ります!‎|•'-'•)و✧
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