Re:緋弾のアリア   作:Sinku

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第2話です!


2.

バスに乗り遅れた俺は、自転車で桜並木の道を進んでいた。

流れていく景色、舞い散る桜の花びら、そんな中ペダルをゆっくり回していく。

 

(俺も今日から上級生か…)

 

新入生が大勢歩いている姿を観ながらふと思う。

新しい生活にワクワクしているのか、彼らは一様に楽しそうだ。

晴れやかな顔をしているもの、友達と喋っているもの、同級生の女子を口説いているもの、多種多様な様相を見せる。

 

(———-あいつらも気の毒に………。)

 

彼らを見ているとそんな思いがこみ上げてきた。

彼らの笑顔が数日と経たずに曇る姿が目に浮かぶ。

悲しいことに武偵高では、奴隷の1年、鬼の2年、閻魔の3年という言葉が存在する。言葉通り上級生の存在が絶対であり、下級生は人間以下の存在だ。

彼らがワクワクしながら歩いている桜並木が実は地獄への道のりだとは思うまい。

 

(ま、下級生に負けないように頑張らないとな)

 

そう思いながら自嘲気味に苦笑する。

いやー、一年時代は酷かったな。今生きてるのが奇跡にしか思えん。

過去に思いを馳せるが、数日前まで自身が一年生であった事もあり、余計な地獄の日々を思い出してしまった。

組手と称する蘭豹のストレス発散に付き合いボコボコにされたり、暴れ出せば周りから止めて来いと言われボコボコにされたり、機嫌が悪ければボコボコにされるというそんな地獄だった。

あれ?よく考えた俺蘭豹からしかボコボコにされてねえ。

そのことにゲンナリしながらも自転車を進める。

まあ、あいつらが強襲科(アサルト)に入らないことを祈っておこう。

道が大きく開けると、俺が所属している探偵科(インケスタ)の専門棟が見えてきた。

探偵科(インケスタ)は俺が高1の3学期から転科した専門科であり、人外魔鏡で異常者の巣窟と言われるこの学校で一番マトモな学科だ。

ほんと、この学科でよかった。

 

(確か体育館はこの棟を曲がった先だったな)

 

棟を通り過ぎた後、体育館に向かうべく自転車をターンさせた。

よし、何とか始業式には間に合いそうだ。

教務科(マスターズ)の連中による体罰を免れることができたため、つい顔が緩んでしまう。だがそんな俺を嘲笑うが如く、平和な時間は崩れ去っていく。

 

「その チャリには 爆弾 が仕掛けて ありやがります」

 

チラシを切り貼りしたような脅迫文に、機会音声の奇妙な声が聞こえた。

 

「チャリを 降りやがったり 減速 させやがると 爆発しやがります。」

 

なるほどこの自転車には爆弾が仕掛けられている、と。しかも降りたり減速したら爆発するというオマケつきか。

 

(……は?)

 

いやいや、なんの冗談だ。誰かのイタズラか?

眉を寄せて周囲を見回すと、ギョッとしたことに俺の自転車に妙な物体が何台も併走していた。

その乗り物は昔見たことがある。確か———そう、セグウェイだ。

 

「助け を 求めては いけま せん。ケータイを 使用した場合も 爆発 しやがります」

 

再び奇妙な機会音声が聞こえる。

セグウェイは無人であり、本来人が乗るはずのスペースには小型のスピーカーと1基の自動銃座。————-そこからUZIの銃口が向けられいた。

 

 

「————っ!」

 

 

それに気づくと同時に俺は自転車を急ターンさせていた。

 

(くそっ!)

 

焦りながらも先程得た情報を頭の中で整理する。

爆弾、セグウェイ、無人、銃口————そうだ、爆弾だ。

爆弾という情報を思い出し、自転車を弄ると、サドルの裏に変な物体があった。

落ち着け、落ち着けと言い聞かせながら指でなぞる。

 

——やばい。型までは分からないが、プラスチック爆弾だ。その上この大きさ。自転車どころか自動車でも跡形なく消し飛ばせるサイズだぞ。

 

 

(マ ジ か よっ!!)

 

 

心の中で叫び声を上げる。

サァーっと一気に血の気が引き、冷や汗が全身に滲む。

そうだ、この手口どこかで…。

 

——(「武偵殺しには、気をつけてね」)——

 

そんな白雪の言葉を思い出た。武偵殺し…。

思い出した。この手口は武偵殺しそのものだ。

 

(ってことは——-チャリジャックか!?)

 

心の中で自分の不幸を呪いながらも自転車を走らせる。

万一に備え、とにかく人気のない場所を走り、俺は第2グラウンドへと向かった。

金網越しに覗いた朝の第2グラウンドには、思った通り誰もいない。

 

(これなら————。)

 

そのまま入り口めがけて自転車を漕ぐ。

全力で自転車を漕ぐ俺を余所に、セグウェイは相変わらず銃を向けながら併走している。

さて、ここまで来たはいいがどうする——-。俺はここに来るまで対処法を考えていたが、いい手が浮かばない。

あの()()()なら何とか出来るかもしれないが、あいにく今は通常()()()

あの事件を境にある程度コントロールできるようになったが、使うためには集中力と時間が必要だ。残念ながらこの状況では使えない。

時間がない中、考えを巡らせる。その時だった。

 

「——?」

 

グラウンドの近くにある七階建てのマンションの屋上の縁に、女の子が立っている姿が見えた。

武偵高のセーラー服。遠目にもはっきりわかる、長い、ピンク色のツインテール。

何か呟いたと思うと、そのまま屋上から()()()()()

 

(———飛び降りた!?)

 

くそ、マジかよ!と悪態をつく。

どうにか彼女を助けようと行動するが——ダメだ、間に合わない。

だがその心配は杞憂だった。

ウサギみたいにツインテールなびかせ、ふぁさーっと。

パラグライダーを、空に広げ滑空していた。

 

(よかった…。)

 

チャリを漕ぎながら安堵する。

だがそれも束の間、次の瞬間には吹き飛んだ。

あろうことか、こっち目掛けて降下してくるのだ。

おい、嘘だろ!?

 

「おい! バカ! 来るな! この自転車には爆弾が——-。」

 

俺の叫び声は間に合わない。小柄なせいか予想以上に彼女が降下する速度が速いのだ。

すると彼女は、ぐりん。とブランコみたいに体を揺らし、空中でL字に方向転換。左右のふとももに付いているホルスターから、それぞれ黒と銀の大型拳銃を抜いた。

 

(あれは…ガバメント、か?)

 

そう考えていると同時に、アニメみたいな高い声が。

 

「そこのバカ!早く頭を下げなさい!」

 

バリバリバリバリバリッ!

うおッ、危ね!俺が頭を下げるよりも早く、併走していたセグウェイを銃撃した。

ガガガガガッ!

先程放った弾は魔法のように全弾命中。セグウェイは反撃すら出来ず、バラバラに壊れていく。

 

(———うまいな。)

 

彼女が扱っている拳銃は大型のガバメント。それも二丁である。

威力も俺が扱うベレッタよりも倍近くあり、小柄な彼女が扱うにはかなり難しいであろう代物だ。

それが全弾命中。しかも体制が安定しない空中で、だ。

彼女は空中で、くるっ、くるくるっ。と二丁拳銃を映画の西部ガンマンのように器用に回し、左右のホルスターに収めていた。

そのまま、ひらりと俺の頭上を飛んでくる。い、いかん!

彼女から逃げるように第2グラウンドへ入る。

 

「来るな!この自転車には爆弾が仕掛けられる!お前も巻き込まれるぞ!」

 

セグウェイがどうにか出来た今ならば、俺1人でも何とかなる。

そう考え、彼女に叫ぶ。だが——。

 

「このバカッ!武偵憲章一条にあるでしょ!『仲間を信じ、仲間を助けよ』って!———行くわよ!」

 

一度俺の脳天に着陸すると、ゲシっ!そう叫びながら脳天を足場に再び上昇していく。

 

(行くわよ!って———まさか!?)

 

彼女はこちらへUターンすると、ぶらん。

俺の予想通りパラグライダーのハンドルにつま先をかけ、逆さ吊りの状態になった。

彼女の意図がわかった俺は全力で自転車を漕ぐ。

ぐんぐんと速度が上がり、ぶら下がる彼女との距離が縮まっていく。

お互いがぶつかる瞬間、両手を十字架のように広げた彼女と上下互い違いのまま抱き合った。

ガッ!急速なGを感じながらも空へ攫われる。それと同時に———。

 

 

ドガアアアアアアンッッッ!!!

 

 

爆音と閃光。それ続き爆風が襲いかかってくる。

爆風をもろにに浴び、俺たちは錐揉みしながら空中で吹っ飛ばされた。

パラグライダーは力を発揮せず、爆風と同時に吹っ飛んでいる。

 

(この状況はマズイッ!)

 

吹っ飛ばされながらも冷静に考える。このまま行くと俺たち2人は地面に叩きつけられ、潰れたトマトみたいになっちまう。

彼女は爆風をもろに浴びたせいか既に意識がない、俺は日頃の鍛錬と爺ちゃんとの地獄の組手のおかげで健在だ。

この状況をどうにか出来るのは俺のみ。だったら——-。

吹っ飛ばされ上下左右と視界がぶれながらも何とか両手で彼女を抱きとめる。それと同時に俺のオリジナル技である『橘花』を繰り出す。

橘花とは、受けた相手の打撃エネルギーを受け取る技であり、減速防御に用いる。仕組みとしては単純で、打撃を受けた方向と同じ方向に体を動かすことで威力を無効化、または軽減する。本来は対人専用の技だ。

だが爆風も受ける範囲が広いだけで似たようなもんだ。両手が塞がっているため右足左足しか使えないがしのごの言ってる暇はない。

俺は全身の骨を使えるだけ使い両足から橘花で衝撃を逃がしていく。

バンッバババンッ!と炸裂弾が鳴るような音を周囲に立て続ける。

人1人抱き抱えながらも上手く作用してくれる橘花に安堵し、

 

(よし、このまま衝撃を逃し続ければ…)

 

なんとかなる。そう思ったとき、俺の目にグラウンドの片隅にある体育倉庫の扉が見えた。

 

(くそッ!)

 

あの扉は超々ジュラルミン製で、武偵高らしくバズーカ砲にもビクともしない特性防弾扉だ。

時間が足りない。橘花で衝撃を逃し切る前に扉に激突してしまう。

そう考えた瞬間に橘花をキャンセル。爆風の衝撃を僅かに残し、右足を桜花で加速する。

桜花とは体の各部位を連動して加速させる技で、最高速度は音速に達する。が、今はまだ亜音速までしか出せない。

橘花と同じ要領で全身の骨を使えるだけ使い、自損しない亜音速まで加速させる。

だが空中で錐揉みしている今の状態では上手く蹴りを放つことができない。そこで、遠山家の技である『秋水』、その前提技である『秋草』を併用する。

秋水とは、打撃に余す事なく自身の全体重を乗せた最も技術化させた体当たりで、威力を何倍にも引き上げることができる。

秋草とは、秋水の前提技。簡単に言うと寸勁によるベリーショートキックである。通常、どんな動作をする時も前振りが必要だがこの秋草はそれを必要としない。つまり、インパクトする瞬間に一瞬当てるだけでいいのだ。

 

(扉を吹っ飛ばすにはこれしかない)

 

そう考えている間にも扉が目前にまで迫ってくる。

空中で身体を捻り、秋水による全体重を乗せた桜花気味の蹴りを叩き込む!

 

「秋草ッ!!!」

 

 

ドゴンッ!!!!!

 

 

カノン砲が炸裂したような轟音が周囲に轟く。

扉の中心には大きなクレーターができ、メキメキメキッとひしゃげ、派手な音を立てながら倉庫内へ吹っ飛んでいった。

爆風の衝撃も乗せてあるため自身が思い描いていた以上の威力が出た。

はたして人間が出していい威力なのだろうか…。

だが、橘花を途中キャンセルし爆風による衝撃を逃し切れていなかった俺も彼女を抱き抱えながら体育倉庫へ突っ込んでいくのだった。




遠山家の技をやっと出せました!
キンちゃんならこれくらいやってくれると思う(๑ ˃̵͈́∀˂̵͈̀ )
続きも楽しみにしてて下さい!
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