悪の帝国に忠誠を ~最愛の人の為に、私は悪に染まる事にした~   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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25 魔導兵器

「ご苦労様でした。これにて作戦終了です」

 

 全ての暴徒達を殺すか捕らえるかして無力化し、生き残りを街の中央に集めてお仕事完了。

 正確には作戦が終了しただけで、後始末とか色々あるからまだ完全には終わってないんだけどね。

 ただ、戦いはこれで終了だ。

 

 私がその宣言をした直後、隣からパチパチと拍手が聞こえてきた。

 見れば、プルートが優しい顔をして手を叩いている。

 レグルスは誇らしそうな顔で私を見ていた。

 

「お見事でしたよ、セレナ。

 戦死者が一人出てケチが付いてしまいましたが、それを差し引いても立派な初陣でした。

 これならば、誰であろうとあなたを認めるでしょう。

 六鬼将の一人として相応しいとね」

「その通りだ! たまにはプルートもいい事言うじゃねぇか!

 よく頑張ったな、セレナ! お前は俺らの自慢の後輩だぜ!」

「わぷっ!?」

 

 レグルスが全力で頭を撫でてきた。

 姉様の優しさ溢れる天使の撫で方と違い、犬でも撫でるかのような乱暴な手つきだ。

 やめろー!

 頭がぐわんぐわんするー!

 

「さて、セレナの方はそれでいいとして、問題はこの暴徒達ですね。

 劣等種の分際で魔術と思わしきものを使っていたのは見過ごせません。

 即刻、調査する必要があるでしょう」

 

 プルートがそう言って眼鏡をくいっとする。

 これがプルートの悪役としての面だ。

 彼は平民の事を魔力を持たない劣等種と呼んで見下している。

 他の連中と違って理不尽にいたぶったりしないだけマシだけどね。

 多分、平民なんて眼中にないんだと思う。

 

「尋問なら俺に任せとけ! ちょうど俺好みのいい女がいたからな。ちょっくらそこら辺で取り調べしてくるわ。

 という訳でセレナ。そこで氷漬けになってるあの女を元に戻してくれ」

「……程々にしてくださいね」

「わかってる、わかってる」

 

 という事で、私はレグルスがご所望のリーダーっぽい女の人を解凍した。

 まだコールドスリープの影響が抜けていなので意識がない。

 今の内に合掌しとこう。

 

「あなたはまたセレナの教育に悪い事を……劣等種とまぐわうなどどうかしていますよ」

「うるせぇ! 俺も気持ちいいし、相手も気持ちいいし、ついでに情報も抜き取れる!

 ウィンウィンなんだから別にいいじゃねぇか!」

 

 そうして、レグルスは私が解凍したリーダーっぽい女の人を連れて破損してない民家の中に消えて行った。

 その直後、家の中から「あぁ~~~~~ん♥️」という悩ましい声が聞こえてきたので、私は聞こえないふりをしました。

 

 これがレグルスの悪役としての面だ。

 彼は女好きである。

 だから、気に入った平民の女の子とか、敵軍の捕虜の女兵士とかにすぐ手を出して、美味しく頂いてしまうのだ。

 一応、自国の貴族とか相手だったら了承を取ってからヤるらしいし、あんな感じでヤる相手にも痛い事はせずに技と媚薬で極限まで気持ちよくさせるのをモットーとしてるらしいので、相手の事を何も考えずレ◯プするのが趣味だったクソ親父とかよりはマシ……だと思っておこう。

 

 ちなみに、レグルスが私を誘った事はない。

 どうやら奴にロリコンの気はないらしい。

 ちなみに、プルートを誘った事もない。

 どうやらBLの気もないらしい。

 今はまだ。

 そんな考えが私の脳裏を過った瞬間、魔導兵器(マギア)をマジマジと見詰めていたプルートがビクリと震えた。

 相変わらず勘の鋭い事で。

 

 

 そんなこんなで後始末は進み、私は今回の事の顛末とレグルスが聞き出した事で正式な情報となった『革命軍』と『魔導兵器(マギア)』の事を書いた報告書を作成して、それを騎士の何人かに持たせて帝都に戻らせた。

 あとは皇帝とか、軍部の頂点である六鬼将序列一位の人とかの指示待ちだ。

 

 ちなみに、その魔導兵器(マギア)だけど、これの説明を軽くしておこうと思う。

 これこそが革命軍の根幹を成す兵器であり、平民が貴族に対抗する為の切り札なんだよね。

 簡単に言うと、平民が簡単な魔術を使えるようになる武器だ。

 

 実は、魔力を持ってなくても魔術を使う事はできるのだよ。

 この世界には魔道具という魔力を流せば特定の魔術を発動させてくれる道具が存在する。

 転移陣しかり、トイレを水洗式にしてくれる水の魔道具しかり。

 だから、中世ヨーロッパ風の世界のくせに、貴族の暮らしだけはシャワーあり、トイレあり、キッチンありと、現代日本並みなんだよね。

 まあ、テレビとかはさすがにないから、現代日本並みは言い過ぎだと思うけど。

 

 でも、魔道具を発動させる為には魔力が必要。

 じゃあ魔力を持ってない平民にはどうせ使えないんじゃね?

 そう思われるかもしれない。

 しかーし、そこは革命軍側の魔道具製作者の発想の転換によって解決した。

 その逆転の発想がこうだ。

 魔力がないなら、ある所から持って来ればいいじゃない。

 

 という訳で、あの魔導兵器(マギア)の仕組みを簡単に説明するとこうだ。

 あれには私の自律式アイスゴーレムと同じく、内部に魔力を貯めておけるシステムが搭載されている。

 携帯のバッテリーみたいなのが、銃のマガジンみたいな感じで取り付けられるようになってるのだ。

 殆ど私の自律式アイスゴーレムと同じ仕組みだね。

 というか、私の方がゲームで知ったこのシステムを真似て作ったのが自律式アイスゴーレムな訳だけどさ。

 まあ、私製の方が複雑で高性能だろうけど。

 何せ、かけてる魔力量が違うから。

 

 まあ、それはともかく。

 そのマガジン部分に革命軍側の貴族達がえっさほいさと寝る間も惜しんで魔力を注ぎ込み、それを平民の兵士達に支給する事で簡単魔導兵器(マギア)の出来上がりー! となった訳だよ。

 なお、魔力タンク役はブラック企業も真っ青な地獄の労働らしいぞ!

 魔導兵器(マギア)生産工場の方も負けず劣らずの地獄らしいけど。

 

 で、このゴツイ両手銃みたいなのが、そんな革命軍の皆さんの血と汗と涙で作られた量産型魔導兵器(マギア)

 恐ろしい事に、ゲームでは革命軍のほぼ全員が装備するくらいの量産に成功してた。

 革命軍の兵士の数って、軽く百万越えてると思うんだけどなー。

 どんだけブラックな労働を強いたのだろうか。

 そこだけは帝国よりブラックかもしれない。

 

 でも、数こそ恐ろしいけど性能は大した事ない。

 これの機能は引き金を引くと無属性の初級魔術『魔弾』を撃ち出すという簡単なもの。

 だが、この魔弾に大した威力はない。

 男爵クラス相手ですら何発も叩き込まないと倒せないし、高位貴族に至っては身体強化だけで防げると思う。

 ぶっちゃけ、私も今回の戦闘でわざわざガードする必要なかったくらいだ。

 それでもガードしたのは念の為でしかない。

 これを持った奴が百万人いても、私一人で殲滅できる自信がある。

 

 でも、勿論そう簡単な話でもない。

 革命軍がそんな貧弱な装備だけで戦いを挑む訳ないんだから。

 この魔導兵器(マギア)はあくまでも量産品の最低品質。

 革命軍の主力にはもっと高性能なのが支給されてるし、幹部クラスは専用の魔導兵器(マギア)を持ってる。

 未来のブライアンも持ってた。

 自分の魔術と剣術と魔導兵器(マギア)の力を組み合わせる事によって、雑魚い魔力量しか持ってないくせに強キャラになった男、それがブライアン。

 そんなブライアンと同類の奴が革命軍には結構いるんだ。

 油断できる相手じゃない。 

 

 まあ、そんな事を細かく報告書に書く訳にはいかないけどね。

 例によって証拠がないから。

 レグルスが聞き出してくれた情報でも、あのリーダーっぽい女の人は末端で、革命軍本隊の内情は何も知らないって事だから、証拠にならないし。

 でも、私の予想という事でノクス辺りには多少の情報を話しとこう。

 あいつも、あと数ヶ月で学園を卒業するし、その後はゲームと同じく私達の上司として革命軍との戦いに参加するだろうからね。

 指揮官に情報が行ってればかなり有利になる、と思いたい。

 

 そんな事を考えながら、私は後始末を続けた。


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