悪の帝国に忠誠を ~最愛の人の為に、私は悪に染まる事にした~   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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29 友達を家に招くような話?

「じゃあ、場所はセレナの屋敷でいいな」

「ああ、そうだな」

「まあ、妥当なところですかね」

「え」

 

 なんか、当然のように私の家が会場に決まった。

 しかも私以外全会一致で。

 どういう事だってばよ!?

 私、今までこいつらを家に連れてった事ってなかったよね!?

 

「な、なんでですか……?」

「なんでってそりゃ、お前がここまで畏まるって事は内密の話だろ?

 だったら城でやる訳にもいかねぇし、俺やプルートの屋敷だって他の家族の息がかかった使用人の目がある。

 消去法で、お前が完全制圧してるお前の屋敷しかねぇじゃねぇか」

 

 ぐぬっ!?

 脳筋レグルスのくせに理路整然とした理由言いやがって!

 いや、言われてみれば確かにそうなんだけど。

 でもなぁ……

 

「なんだ? 俺達を招きたくない理由でもあるのか?」

「いえ、その……」

 

 あります。

 正直、ルナの近くにこいつらを近づけたくない。

 あの子には、帝国の闇にも権力にも関わってほしくないのだ。

 私のやらされてるシノギの話とかも耳に入れたくないし。

 優しいお姉ちゃんが殺戮軍人だったとか知ったらトラウマになりかねんでしょ。

 それに……ルナに殺人鬼を見る目で見られるのは怖い。

 

 でも、まあ、屋敷に招くくらいならルナと会う事もないかな?

 帝都にある別邸の方でもてなせば、まかり間違ってルナと遭遇する事もないだろうし。

 ……最近、ルナが昔の姉様に似て行動力のあるお転婆になってきてるのが懸念事項だけど。

 大丈夫だよね?

 私の城から飛び出した挙げ句に、本邸の転移陣に飛び乗ったりしないよね?

 お姉ちゃん信じてるからね?

 

「…………わかりました。では、皆さんを当家にお招きします」

「セレナ、嫌なら嫌と言っていいんだぞ」

「いえ、ダイジョウブデス」

 

 ノクスの気遣いは気持ちだけ貰い、私達は城内を移動し始めた。

 途中でノクスの部下達にちょっと出掛けて来る旨を伝え、私達の部下にも伝えておくように伝言を頼む。

 そして、城の外にタクシーの如く常時待機してる馬車の一つを使い、アメジスト伯爵家の別邸へとやって来た。

 いつもなら帰って来たと言うところだけど、今回は違うわな。

 

『お帰りなさいませ、セレナ様!』

 

 しかし、私は違くても使用人達にとってはいつもの帰宅と変わらない。

 いつも通り、一糸乱れぬ動きでお帰りなさいと言ってきた。

 で、次の瞬間にはお客さんに気づいたのか、若干慌てて何人かが屋敷の中に引っ込んで行く。

 多分、客間とかお茶菓子の準備してるんだと思う。

 こういう時、普通は事前に連絡して準備してもらうものだから、それがなくてバタバタさせちゃった使用人達にはちょっと悪い事したかもしれない。

 ごめんね。

 でも、忙しい連中を引き留めてる訳だから、そんな暇なかったんだよ。

 あとでボーナスあげるから許して。

 

 一方、お客様であるノクス達は何故か目を丸くしていた。

 

「どうされました?」

「いや……随分と教育が行き届いていると思ってな」

「驚きました。使用人達の表情がやたらと明るいですね。サファイア家ではあり得ない光景です」

「お前ん家、確かお前が一家全員粛清して家督簒奪したんじゃなかったか? なんでこんな慕われてんだよ」

「「レグルス!」」

「あ、ヤベ!? 今のなし!」

 

 レグルスが失言して二人に睨まれていた。

 まあ、それを表立って肯定しちゃうと面倒な事になるからね。

 こういうのは、あくまでも事故死という事にしとかなきゃならない。

 例え、誰が見ても犯人が一目瞭然だったとしてもだ。

 それが貴族社会というものよ。

 相変わらず腐ってらっしゃる。

 まあ、これに関してはその腐敗に救われた感じだけども。

 

 ……そういえば、粛清がバレたと思わしき当時、こいつらは傷物に触れるように、やたらと労るような感じで私に接してくれたっけ。

 あの対応は助かったなぁ。

 それが私の前で口を滑らせるくらい気安い関係に戻ったんだから、なんとなく感慨深い。

 

 しかし、目を丸くしてたのはそういう事ね。

 生粋の帝国貴族であるこいつらからすると、最近やたらアットホームな職場と化してるウチは異質に見えるらしい。

 しかも、粛清騒動があった事まで知ってるから尚更。

 でも、理由を説明する必要はないかな。

 悪い貴族に向かって悪い貴族を殺したから感謝されてますとか素直に言ったら微妙な空気になりそうだし。

 ここは曖昧に微笑んで誤魔化しておこう。

 

 曖昧に微笑んで誤魔化しながら、私は三人を別邸の客間へと案内した。

 正確にはメイドさんに案内してもらった。

 だって、この屋敷の客間とか使った事ないから、自分の家なのに場所がわかんないんだもん。

 それを察してくれたメイドさん、マジ有能。

 さすが、不興を買ったら物理的に首が飛ぶ職場で鍛えられただけの事はある。

 

 内心でメイドさんに感謝し、表向きは当然ですよという顔をしながら客間の中へ。

 すると、私が座ってくださいと言った瞬間、四人分のお茶菓子が運ばれてきた。

 この短時間で……!

 驚愕しながらも顔には出さず、使用人達に目線で感謝を伝えた後、人払いをした。

 探索魔術により、使用人達が本当に退散した事を確認する。

 これで、室内のヤバイ会話を聞いた使用人が消される心配はない。

 

「では、話を始めさせて頂きます」

 

 そうして、私は口火を切った。

 ここからは真面目も真面目、大真面目の話だ。

 

「今回発生した革命軍、いえ反乱軍による一斉蜂起ですが。私はこの裏に裏切り者の貴族がいると考えています」


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