悪の帝国に忠誠を ~最愛の人の為に、私は悪に染まる事にした~   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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50 突撃!

「『氷霧(アイスミスト)』」

 

 革命軍の拠点が射程範囲に入った瞬間、私は魔術を発動した。

 選んだのは氷属性上級魔術『氷霧(アイスミスト)』。

 系統としては氷結(フリーズ)系の冷却魔術なんだけど、これの他の魔術と違う点は、凍りつくまでの過程だ。

 発動した瞬間対象を凍らせる他の氷結系と違って、この魔術は一見するとただの白い霧にしか見えない濃度の冷気を散布し、広範囲に広がった時点で一気に温度を下げて冷却する。

 こういう内部が複雑に入り組んだ拠点とかを攻撃する時に便利な魔術だ。

 細い通路とかにも冷気の霧が浸透するから、内部の構造が全然わからなくても、とりあえず全てを凍りつかせてくれる。

 楽でいい。

 

 そして、

 

「降下開始」

 

 作戦開始だ。

 移動用アイスゴーレムの床を開き、そこから先駆けのワルキューレを射出する。

 放ったワルキューレの数は、7体。

 そいつらが氷魔術で拠点に風穴を空け、内部へと侵入していく。

 それに続いて、私達主力部隊もアイスゴーレムから飛び降りた。

 

「ヒャッホウ! 祭りの始まりだぜ!」

「真面目にやりなさい、レグルス」

 

 ワルキューレ達のすぐ後に続くのは、私、レグルス、プルートの三人だけの部隊。

 人数は一番少ないけど、最高戦力部隊だ。

 本当なら指揮官だけで固まるのはあんまり良くないんだけど、万一裏切り爺と遭遇した時の為にこういう編成にした。

 如何に序列二位の裏切り爺とはいえ、同格の六鬼将三人と正面から戦ったら勝てまい。

 

「セレナ様達に続け!」

『おう!』

 

 そんな私達の後から飛び降りて来てるのが、引き連れて来たそれぞれの直轄部隊数名。

 人数は各5人ずつで、計15名。

 彼らには普通に、私の部下5人、レグルスの部下5人、プルートの部下5人の三組に分かれて行動してもらう。

 慣れない相手と無理に連携とらせるより、この方が動きやすいだろうと判断しての事だ。

 それに、多分拠点の中はそんなに広くない通路で出来てるだろうから、わらわらと固まってても動けないだろうし。

 ただ、それだと裏切り爺の一派にぶつかった時が不安なので、それぞれの部隊に未起動状態のワルキューレを一体ずつ保険として持たせている。

 もし裏切り爺一派とぶつかったら、ワルキューレを囮にして撤退だ。

 ワルキューレは替えがきくけど、優秀な人材は替えがきかないからね。

 たとえ、そいつらが帝国に染まりきったクズだとしても、優秀な人材は貴重だから重宝せざるを得ないのだ。

 ホントに、世知辛い世の中だよ……。

 

 それはともかく。

 私達三人はワルキューレがこじ開けた穴から拠点の中に侵入した。

 私は氷翼(アイスウィング)で、レグルスは火魔術の放射で、プルートはスライムみたいなクッションを水魔術で作って、それぞれ落下の衝撃を殺しながら。

 

 そうして侵入した拠点の中で、私達は早速敵にエンカウントした。

 

「新手か!?」

「クソッ! さっきの化け物だけで手一杯だってのに!」

「落ち着け! まずは目の前の敵に集中しろ!」

 

 私の魔術で一面銀世界となった拠点の中、それでも元気そうな人達が結構居た。

 この場に居る元気な人達は、10人弱。

 その全員が量産品には見えない魔導兵器(マギア)を持ってるところを見るに、多分、この人達は全員が上級戦士なんだと思う。

 革命軍上級戦士。

 初期のルルやデントと同じ階級で、量産品とは比べ物にならない高性能な魔導兵器(マギア)を支給された精鋭。

 その強さは、一般戦士以上、特級戦士以下。

 まあ、要するに。

 

「かかれぇ!」

『オオオオオオオッ!』

 

 雑魚である。

 

「『火炎剣(フレイムソード)』!」

『ギャアアアアアアアアッ!?』

 

 レグルスが炎を纏った大剣を一振り。

 それを起点として炎は放射状に広がり、戦士達を骨まで焼き払う。

 たった一撃で、革命軍の精鋭達は骨すら残さず焼き尽くされた。

 

「オイオイ、野郎ばっかじゃねぇか。女が居ねぇんじゃ華がねぇな」

 

 どうやら、レグルスは今の人達が男オンリーだったから躊躇なく焼き尽くしたらしい。

 相変わらずで、ため息が出そうだ。

 

「女が居たら生け捕りにでもするつもりですか? 任務を優先しなさい、この色魔」

「チッ。わかってるっての」

「それと……」

 

 プルートがレグルスを注意した。

 そして、おもむろに杖を構え、

 

「『水散弾(スプラッシュ)』」

『ギャアアアアアアアアッ!?』

 

 小さな水の弾丸を無数に打ち出し、そこら辺で解凍された人達を撃ち抜いた。

 

「気をつけてください。あなたが考えなしに火魔術を使えば、せっかくセレナが凍らせて無力化した敵が復活します。

 いくら脳筋でも、脳筋は脳筋なりにもう少し頭を使って戦いなさい」

「ケッ! わかったよ! でも、脳筋脳筋連呼すんじゃねぇ! 腹立つ!」

 

 ああ、うん、なんて言うか。

 放っておいたらすぐ喧嘩するね、この二人は。

 でも、なんだかんだで息が合ってるというか、やってる事自体は普通にプルートがレグルスをサポートしてるだけなんだよなぁ。

 お互いに、本気で嫌い合ってる感じでもないし。

 むしろ、喧嘩するほど仲が良い的な?

 ゲームでも、プルートがアルバ達に討ち取られた後、悪態つきながらも悲しむレグルスとか、仇討ちに燃えるレグルスとか見れるんだよね。

 そんなんだから、腐の方々の妄想に使われるんだよ。

 今回の会話も、凄まじくひねくれた見方をすれば、他の女を気にするレグルスにプルートが嫉妬したように見えない事もないし。

 そんな事を考えてたら、悪寒でも感じたように、二人の身体がブルリと震えた。

 相変わらず、勘の鋭い事で。

 

「お二人とも、お喋りも結構ですが、今は任務を最優先してくださいね」

「え、ええ、わかってますよ」

「……なあ、おい、セレナ。前々から気になってたんだが、お前たまに俺ら見て変な事考えてねぇか?」

「なんの事です?」

 

 すっとぼけておいた。

 そして、下手に感づかれる前に話題を逸らすべく、私は斜め下の床を指差しながら告げた。

 

「それよりレグルスさん、この方向を火魔術で焼いて道を拓いてください。恐らく、そこにターゲットが居る筈です」

「なんか誤魔化されてる気がするんだが……まあ、わかった。『火炎剣(フレイムソード)』!」

 

 レグルスの火魔術で床を焼き払い、そこに空いた穴の中を進んで行く。

 この拠点は、前にサファイア領で見た革命軍の拠点と同じく植物で出来ている。

 だから、それを焼き払える火魔術が効果的なのだ。

 

 そのまま、掘削用のドリル的な存在と化したレグルスに続き、私達は拠点の地下深くへと進んで行く。

 途中、天井を突き破って空間がある場所に何度か出たので、そこに居た敵を仕留めたり、氷像を砕いたりしながら先を急ぐ。

 そして、移動中に拠点全体が震えるような振動と轟音が何度も聞こえてきた。

 多分、他の部隊やワルキューレが特級戦士辺りとぶつかってる音だと思う。

 気にしなくて大丈夫。

 

 そうして穴を掘り進め続けた先に、その少女は居た。

 

「……来たわね」

 

 覚悟を決めたような顔で大振りのナイフを構えた、私と同い年くらいの少女。

 つい最近会って、語り合った少女。

 そして、今回のメインターゲットと一緒に居た少女。

 

 『夜明けの勇者達(ブレイバー)』のヒロインにして『勇者』のパートナー、ルル。

 

 彼女は、背後の扉を守るように立っていた。

 随分頑丈そうな植物が複雑に絡み合ったような歪なデザインをした扉。

 多分、あの中には部屋がある。

 そして恐らく、あの部屋の中にまで私の『氷霧(アイスミスト)』は届いていない。

 

「ほう! 中々に良い女じゃねぇか! こりゃ来た甲斐があったぜ!」

「だから、その色欲全開の思考をやめろと、何度言えばわかるのですかね……」

 

 ルルを前にレグルスは舌なめずりをし、プルートは頭を抱えた。

 大分、油断が見える。

 

「お二人とも、彼女は反乱軍の精鋭であり、前回の戦いで私を追い詰めた連中の一人です。油断しないでください」

「おう、わかってるって」

「ええ、理解していますよ。実家の領地を荒らそうとした害虫の事は」

 

 ホントにわかってるんだろうか?

 不安だ。

 でも、これは普通に考えれば負ける訳ない戦力差。

 そして、私が追ってきた、アルバにくっつけた超小型アイスゴーレムの反応は、ルルが守る部屋の先から感じる。

 つまり、今回のメインターゲットであるアルバはこの先に居る可能性が高く、そこに到達する為にはルルを倒して行くのが最も早い。

 なら、戦わないという選択肢はなかった。

 

「来るなら来なさいよ。やってやるわよ、こんちくしょう」

 

 ルルが決死の覚悟を見せつけるかのようにナイフを構える。

 それを見て私は、いつものように戦いのスイッチを入れた。

 この気高き少女を殺し、彼女が守る大切な人を手にかける覚悟を決めて、戦闘態勢に入った。

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