ありふれないジェダイとクローン軍団で世界最強 作:コレクトマン
28話目です
護衛と襲撃
ハジメがジャンゴと交渉を終えてから翌日、俺たちは次の大迷宮であるグリューエン大火山に向かう為に一旦冒険者ギルドに向かい、キャサリンの所に会うのだった。
「おや、いつもの坊や達じゃないか。今日はどんな用だい?」
「グリューエン大火山の迷宮へ行きたい。何か情報を持ってないかと思ってな」
「はいはい、ちょっと待ちな」
そういってキャサリンは分厚い本を開き、一枚一枚とページをめくって調べている中、キャサリンは俺たちにある事を確認する。
「そういえばこの間冒険者登録、ここでしたよね?とすると、今のランクは“青”だね」
「なんだそのランクってのは?」
「冒険者の価値や実力の指標さね、覚えておきな。…と、さぁ待たせたね。大火山の情報だよ。これを見てみな」
キャサリンの言われた通りに俺たちは本に書かれている地図を見た。俺たちが前にオルクス大迷宮の地図と比較して見ると、こちらの方がより分かりやすかった。俺たちが向かおうとしているグリューエン大火山は大陸を西に進んだ大砂漠の中にある様だ。迷宮に挑戦する場合はそれなりの準備が必要との事だった。準備に必要な物は途中の中立商業都市“フューレン”をキャサリンから勧められた。
「今ならフューレンへの護衛の依頼が一件あるね。馬車で移動できるから丁度いいと思うよ。どうするかい?」
更にはフューレンへの護衛の依頼まで勧めてくれた。この時の俺たちは急ぎの旅ではない為、たまには馬車での移動も悪くないと賛成し、キャサリンが勧めた依頼を受けるのだった。
「キャサリンさん、貴女が勧めた依頼を受けさせてもらうよ」
「あいよ。それじゃそのまま正門へ行っとくれ。…あ、ちょっと待ちな」
するとキャサリンが俺たちを呼び止めて紙に何かを書き始めた。そして書き終えた紙を封に入れ、一通の手紙にしたそれを俺たちに渡した。
「これは?」
「手紙だよ。他の町でギルドと揉めた時にそれを見せな。おっと、詮索はなしだよ?いい女には秘密がつきものさね☆」
「アンタいったい何者だよ…」
「…だけどまぁ、何から何まで感謝します」
そうキャサリンに礼を言った後に俺たちはギルドを後にして一度宿に向かうのだった。何でもこの依頼は色々と準備が必要な為、出発は明日になるとの事だ。そこで俺たちは宿で一泊し、最終点検を行うのだった。…それにしても、本当にキャサリンという人物はいったい何者なのかと気になったが、あの人の言う通り余り詮索はせず、その考えを放棄するのだった。
それから翌日……
俺たちは予定道理に正門で待っている依頼主であろう隊商のリーダーと会うのだった。それ以外のも隊商を護衛する他の冒険者達の姿があった。
「私の名はモットー・ユンケル。この隊商のリーダーをしている。君達のランクは未だ青だそうだが、キャサリンさんからは大変優秀な冒険者と聞いている。道中の護衛は期待させてもらうよ」
「……もっとユンケル?……隊商のリーダーって大変なんだな……」
日本のとある栄養ドリンクを思い出させる名前に、ハジメの眼が同情を帯びる。なぜ、そんな眼を向けられるのか分からないモットーは首を傾げながら、「まぁ、大変だが慣れたものだよ」と苦笑い気味に返した。……ハジメ、名前がいくらアレとはいえその反応はどうなのかと疑問に思うのだった。
「護衛については問題ない。我々があなた方を無事にフューレンまで護衛いたしましょう」
「それは頼もしいな。……ところで、早速で悪いが、君に相談がある」
突然とモットーは俺に何かの相談を持ちかけられた。一体何の相談なのかは分からなかったが、モットーがその口を開いた。
「その兎人族…売るつもりはないかね?それなりの値段を付けさせてもらうが」
そうモットーに言われた瞬間に俺は疑問に思った。こいつは何を行っているのか?と……
「シアを
「ええ。珍しい白髪に美しい容姿の兎人族。これほど珍しい商品は初めて見るものでしてね?見れば随分と懐かれている様子。それなりの額を出しますが…いかがかな?」
そうモットーはシアを見ながら俺にシアを売る気はないかと聞いて来た。その視線を受けてシアは咄嗟に俺の背後に隠れた。ユエのモットーを見る視線が厳しい。だが、一般的な認識として樹海の外にいる亜人族とは、すなわち奴隷であり、珍しい奴隷の売買交渉を申し出るのは商人として当たり前のことだ。モットーが責められるいわれはない。だからこそ、俺は答えた。
「…悪いがモットーさん、シアは俺にとって大事な弟子だ。たとえ何処ぞの神が欲しがっても手放すつもりはない。……ここまで言えば後は分かると思うが、敢えて言わせてもらう。お引き取り願おう」
「…そこまで言われたら仕方ない、ひとまず今は引き下がろう。ではそろそろ出発しますよ。護衛の程、よろしくお願いします」
そうして俺たちはモットー率いる隊商の馬車に乗り込み、護衛しながらも中立商業都市フューレンまで向かうのだった。因みに最前列の馬車には俺やハジメ、ユエとシアが乗っており、最後列の馬車にはデルタ分隊が乗っている状態である。因みにシアはというと、匿ってくれたことに嬉しさを隠せないのか、俺の背後から肩に顎を乗せたシアの顔が至近距離に見えた。その顔は真っ赤に染まっており、実に嬉しそうに緩んでいる。
「シア……分かっていると思うが飽くまで師弟としての意味で言った訳で、特別な意味ではないからな?」
「うふふふ、わかってますよぉ~、うふふふ~」
飽くまで身内を捨てるような真似はしないという意味であって、周りで騒いでいる奴らのように“自分の女”だからという意味ではないとはっきり告げたのだが、果たしてそれがシアに伝わっているのかどうか分からないのであった。
夕暮れ時、ある程度進んだ所で一旦馬車の足を止め、野営の準備の為に焚き火を起こすのだった。今日はどの位の距離を進んだのかモットーから聞いたところ、大体三分の一位は進んだとのことだ。順調に行けばあと四日程で着くとのことだ。するとモットーが俺たちに食糧に関して聞いて来た。
「ところで、食事はどうされるおつもりで?一応食糧の販売もしてはいますが…」
「あぁ、そういったことは心配いらない」
モットーの問いにハジメが代わりに答えて“宝物庫”から食糧を取り出し俺とシアの任せるのだった。
「頼んだぞ、食事係」
「おまかせくださーい!」
「いやっハジメ、
「は?どういう意味……あっ…」
俺の言った意味を理解したハジメだが、時既に遅し。モットーはハジメが“宝物庫”から食糧を何もないところから出現させたことに驚きを隠せず、口を開いてポカンとしていた。そして……
「なっ…なんですかその道具は!?」
当然、初めて見る道具に興味を示し、俺たちに聞いてくるモットーの姿があった。一応これ以上の厄介ごとを避ける為に俺は“宝物庫”について説明をした。すると案の定モットーは言い値で買い取りたいとのことだった。とりあえず俺はモットーに“宝物庫”についての表側の理由はハジメが錬成で作り出したアーティファクトであると同時に、まだ試作品であるために売るわけにはいかないと嘘の情報で誤摩化すのであった。もしも“宝物庫”がオルクス大迷宮のものであると知ったら、色々と厄介なことになるのは確実であった。そんなこんなでモットーには“宝物庫”のことは諦めてもらい、俺とシアは皆の為に食事を作るのだった。因みに俺たちが作った料理を隊商や護衛隊の者達が食べてみたらかなりの高評価だった。
雷電Side out
昨日の“宝物庫”の件でモットーから質問攻めをされて少し寝不足になった俺は、馬車の中で少し休んでいた。その馬車の中には雷電がいた。ユエとシアは馬車の屋根の上にいて、風を感じていた。
「大丈夫かハジメ?」
「大丈夫じゃねえよ。あの後ひたすら質問攻めされて眠いんだよ…」
「まぁ確かに…“宝物庫”さえあれば馬車要らずだからな。ある意味では運送業の革命とも言えるアーティファクトだからな?」
「その分、モットーの目が血走ってて気味悪かったぞ…」
“確かにな…”と雷電は少し苦笑いをしていると、雷電が何かを感じ取ったのか馬車から身を出した。
「シア、お前も感じたか?」
「はい、マスター!フォースが少しざわついていたので見たのですが…」
「それでどうだった、敵の数は?」
「はい、数およそ百以上、森の中から来ます!」
その警告を聞いて、冒険者達の間に一気に緊張が走る。現在通っている街道は、森に隣接してはいるが其処まで危険な場所ではない。何せ、大陸一の商業都市へのルートなのだ。道中の安全は、それなりに確保されている。なので、魔物に遭遇する話はよく聞くが、せいぜい二十体前後、多くても四十体くらいが限度のはずなのだ。
「ひゃ…百以上だと!?そんな数聞いたことないぞ!」
「最近、襲われた話を聞かなかったのは勢力を溜め込んでいたからなのか?ったく、街道の異変くらい調査しとけよ!」
護衛隊のリーダーであるガリティマは、そう悪態をつきながら苦い表情をする。商隊の護衛は、全部で十六人。ユエとシア、デルタ分隊を含めて二十二人。この人数で商隊を無傷で守りきるのはかなり難しい。単純に物量で押し切られるからだ。
「引き返せ!今ならまだ間に合うかもしれん!」
ガリティマが引き返すよう指示を出すが、俺はユエにある事を聞き出した。
「ユエ、お前の魔法ならこの数、何とかなりそうか?」
「んっ…。ハジメ、ここは私に任せて」
そう言葉を残してユエは馬車の上へと移動する。
「正気なのか!?魔物が百匹もいるんだぞ!それを一人の冒険者に任せるなんて…」
「あー…その点は問題ないぞ。ユエの魔法なら何とかなるからな」
その時には百匹以上の魔物の群れを目視で確認できた。案の定ものすごい数であった。すると雷電は何か案があるのかライトセーバーを片手に取り出した。
「百匹以上の魔物か。…
「ん…大丈夫、問題ない」
「いや、そのネタ……何でもない」
何でそのネタを知っているのか色々と突っ込みたかったが、時はそれを許してはくれなかった。
「接敵、十秒前ですよ~!」
シアの言う通り、既に魔物の群れが徐々に近づいていたのだ。敵に先制攻撃される前にユエは詠唱し始めた。
「彼の者、常闇に紅き光をもたらさん、古の牢獄を打ち砕き、障碍の尽くを退けん、最強の片割れたるこの力、彼の者と共にありて、天すら呑み込む光となれ、──“雷龍”」
ユエの詠唱が終わり、魔法のトリガーが引かれた。その瞬間、詠唱の途中から立ち込めた暗雲より雷で出来た龍が現れた。その姿は、蛇を彷彿とさせる東洋の龍だ。
「な、なんだあれ……」
それは誰が呟いた言葉だったのか。目の前に魔物の群れがいるにもかかわらず、誰もが暗示でも掛けられたように天を仰ぎ激しく放電する雷龍の異様を凝視している。護衛隊にいた魔法に精通しているはずの後衛組すら、見たことも聞いたこともない魔法に口をパクパクさせて呆けていた。
そして、それは何も味方だけのことではない。森の中から獲物を喰らいつくそうと殺意にまみれてやって来た魔物達も、商隊と森の中間あたりの場所で立ち止まり、うねりながら天より自分達を睥睨する巨大な雷龍に、まるで蛇に睨まれたカエルの如く射竦められて硬直していた。そして、天よりもたらされる裁きの如く、ユエの細く綺麗な指タクトに合わせて、天すら呑み込むと詠われた雷龍は魔物達へとその顎門を開き襲いかかった。“ゴォガァアアア!!!”っと、凄まじい轟音を迸らせながら……
その雷龍は百匹以上もいる魔物の群れの方に向かい、そこに着弾すると、その場にいた魔物達が一瞬で塵となって消え去った。余りにも高過ぎる攻撃力に肉体が持たず、今の様になったのかもしれない。俺たちはユエがいままで見せたことのない魔法に驚き……というよりは若干引き気味になっていた。
「おいおい……あんな魔法、俺でも初めて見たぞ」
「複合魔法、私のオリジナル。雷属性の魔法にライセンで手に入れた重力魔法を組み合わせてみた。…因みに詠唱は、ハジメと私の出会いと未来を詠ってます」
無表情ながらドヤァ!という雰囲気でハジメを見るユエ。我ながらいい出来栄えだったという自負があるのだろう。ハジメは、苦笑いしながら優しい手付きでユエの髪をそっと撫でた。自慢気なユエを見ていると注意する気も失せた。この時に他の護衛隊がユエの魔法が衝撃的過ぎて、冒険者達は少し壊れ気味になっていたのは余談だ。その時に雷電が声を掛けて来た。
「あー…和んでいるところ申し訳ないが、敵の一部がまだ生き残っているぞ」
そう雷電が指摘してユエが放った魔法の方を向けると、前よりも約四十匹前後ぐらい生き残っていた。どうたら本能的にユエの魔法のヤバさに早く気付き、直ぐにこの場から離れ、魔法の直撃から避けられた様だ。まだ残っていた魔物に対してユエは再び魔法を放とうとするが、雷電がそれを静止する。
「ライデン…?」
「もう十分だ、ユエ。後は俺がやる」
そういって雷電はライトセーバーを起動させ、プラズマ刃を展開する。しかし、今回はいつもとは違って一部のエネルギーが電流の様に“バチバチッ!”とプラズマ刃の周りを走り、電流がプラズマ刃の方に集まっていた。雷電はそのライトセーバーを一突きの構えを取り、向かってくる残りの魔物の群れに向けて詠唱し始めた。
「のたうて──“鳴神”ッ!!」
そしてライトセーバーを突き出すと、そこから強力なビーム状の雷撃が放たれた。その雷撃は残りの魔物を飲み込み、雷撃により塵となって跡形もなく消滅した。これを見ていた俺たちや他の護衛隊も今の技に唖然とした。俺は何とか雷電にその技を何処で覚えたのか聞き出した。
「なぁ雷電、お前その技何処で覚えた?俺の記憶が正しければそいつは……」
「あぁ、この技は俺やハジメの故郷であるとあるゲームにあった技を俺なりに再現してみたものだ」
「何処ぞの戦国武将だよ、お前……」
「今の俺はジェダイだけどな……」
そう雷電が言うが、いつの日か極殺モードに入るんじゃないのか?…いや、流石にそれは雷電が嫌う暗黒面だろうな。そして唖然として固まっていた護衛隊は我に戻った瞬間、ユエが複合魔法を見せた時と同じ様にまた壊れ気味になった。この時に俺は雷電に対してもう何を言ってもツッコマないことにした。
ハジメSide out
俺とユエが、全ての商隊の人々と冒険者達の度肝を抜いた日以降、特に何事もなく、一行は遂に中立商業都市フューレンに到着した。フューレンの東門には六つの入場受付があり、そこで持ち込み品のチェックをするそうだ。ハジメ達も、その内の一つの列に並んでいた。順番が来るまでしばらくかかりそうである。
馬車の屋根で、俺とシアは共に瞑想し、ユエに膝枕をされ、寝転んでいるハジメ。そんな俺たちにモットーがやって来た。何やら話があるようだ。大方シアや“宝物庫”を売る気がないのかの再確認なのだろう。
「ハジメ殿にライデン殿。着く前によろしいか?出発前に話したその兎人族と“宝物庫”、やはり売る気はありませんかな?」
「またその話かよ……いい加減しつこいぞ」
「ハジメ、その件は俺とて同じだ。だが、彼にとってそれが商人としての生き方なのしれない。とは言え、俺もハジメと同じで売る気はない」
「一生遊んで暮らせる額をお支払いしますよ。特に“宝物庫”は個人の手に余る代物」
モットーの言う通り空間に何でも保管することが出来る“宝物庫”は確かに個人の手に余る代物であろう。だが、これのおかげで俺たちは旅が出来ているのは事実でもあり、厄介ごとに巻き込まれていることには自覚している。
「この先厄介なことになるかもしれませんぞ?──例えば、彼女たちの身に何か起きたり…」
モットーが、少々狂的な眼差しでチラリと脅すように屋根の上にいるユエとシアに視線を向けた時、ハジメや雷電の姿が無かった。
「……?あれ…どこに……っ!?」
瞬間、ゴチッと額に冷たく固い何かが押し付けられた。壮絶な殺気と共に。周囲は誰も気がついていない。馬車の影ということもあるし、ハジメの殺気がピンポイントで叩きつけられているからだ。
「それは、宣戦布告と受け取っていいのか?」
静かな声音。されど氷の如き冷たい声音で硬直するモットーの眼を覗き込むハジメの隻眼は、まるで深い闇のようだ。対して雷電はヘルメット越しで表情は伺えないが、モットーの発言によっては止む終えないと見ている様な感じであった。モットーは全身から冷や汗を流し必死に声を捻り出す。
「ひっ…ち……違っ…!わ…私はあなたがそれを隠そうとしていないので。可能性としてそういうこともあると…たっ…ただそれだけで…」
モットーの言う通り、ハジメはアーティファクトや実力をそこまで真剣に隠すつもりはなかった。ちょっとの配慮で面倒事を避けられるなら、ユエに詠唱させたようなこともするが、逆に言えば、“ちょっと”を越える配慮が必要なら隠すつもりはなかった。ハジメは、この世界に対し“遠慮しない”と決めているのだ。敵対するものは全てなぎ倒して進む。その覚悟がある。俺の場合はジェダイがまだ復活してはいないが、出来る限り争いごとにならない様に調停者として中立を維持しようと考えていた。そして俺はモットーにドンナーを向けているハジメを静止した。
「ハジメ、モットーさんが言っていることは本当だ。そういう可能性があるということをモットーさんは、ただそれを俺たちに教えたかっただけだ。別にユエたちをどうにかしようと考えてはいない」
「……そうか、ならそういうことにしておこうか」
俺の説得でハジメはドンナーをしまい、殺気を解く。モットーはその場に崩れ落ちた。大量の汗を流し、肩で息をしている。
「別に、お前が何をしようとお前の勝手だ。あるいは誰かに言いふらして、そいつらがどんな行動を取っても構わない。ただ、敵意をもって俺の前に立ちはだかったなら……生き残れると思うな?国だろうが世界だろうが関係ない。全て血の海に沈めてやる」
「ハジメ、あまり商人にそういうことを言ってやるな。……でもまぁ、これで分かったと思うが、つまりそういうことだ。今回の取引は本当に諦めてくれ」
「……はぁはぁ、なるほど。割に合わない取引でしたな……」
未だ青ざめた表情ではあるが、気丈に返すモットーは優秀な商人なのだろう。それに道中の商隊員とのやりとりから見ても、かなり慕われているようであった。本来は、ここまで強硬な姿勢を取ることはないのかもしれない。彼を狂わせるほどの魅力が、ハジメのアーティファクトにあったということだろう。
そんなこんなで俺たちは入り口付近に辿り着いた後、モットー率いる隊商の護衛を完了させたという報告をギルドにしなければならないということでモットーと別れを告げるのだった。
「では私は手続きがありますのでこれにて」
「あぁ…」
「とんだ失態を犯しました。ご入用の際は是非我が商会を…」
「銃口を突き付けられた相手に営業かよ。ホント商魂逞しいな?」
「それが商人というものだろう。もし機会があったら立ち寄らせてもらうよ、その時は兎人族と“宝物庫”の話は無しの方角で頼む」
俺達はモットーと別れる間際にモットーが“またの機会を…”と言葉を交わして別れるのだった。
中立商業都市フューレン。…その名の通りこの世界の商業都市と言ってもいい位に人々が盛んでいて賑わいもある都市だ。流石は大陸一の商業都市といっても過言ではない。現在の俺たちは中央区の一角にある冒険者ギルド:フューレン支部内にあるカフェで軽食を食べていた。
「さて……これを食べ終わったらひとまずギルドで依頼完了の報告と宿探しでもしよう」
「…だな。一応この都市のガイドブックはもらっているから問題ないとして、ユエたちはどんな宿がいいんだ?」
「…またお風呂がある所がいい。もちろん、混浴で貸切できる所」
「私は大きなベッドがいいです!」
「俺たちの場合は何処でもいいが、将軍やコマンダーに任せます」
そんな形で俺たちはユエたちの意見も聞き入れながらも食事を続けるのだった。この時にすぐ近くのテーブルでたむろしていた男連中がユエたちに声を掛けたかったりしたが近くに俺たちがいる為中々いけなかった。その際に男連中は“視線で人が殺せたら!”と云わんばかりに俺たちを睨んでいたが、すっかり慣れた視線なので、俺たちは普通にスルーした。
そんな感じで食事を終えた俺たちはギルドに向かおうとした時、俺たちは不意に強い視線を感じた。特に、シアとユエに対しては、今までで一番不躾で、ねっとりとした粘着質な視線が向けられている。視線など既に気にしないユエとシアだが、あまりに気持ち悪い視線に僅かに眉を顰める。俺とハジメがチラリとその視線の先を辿ると……ブタがいた。体重が軽く百キロは超えていそうな肥えた体に、脂ぎった顔、豚鼻と頭部にちょこんと乗っているベットリした金髪。身なりだけは良いようで、遠目にもわかるいい服を着ている。そのブタ男がユエとシアを欲望に濁った瞳で凝視していた。
ハジメが“面倒な”と思うと同時に、そのブタ男は重そうな体をゆっさゆっさと揺すりながら真っ直ぐ俺たちの方へ近寄ってくる。どうやら逃げる暇もないようだ。…まぁ、ハジメが逃げる事などないだろうが。ブタ男は、俺たちのテーブルのすぐ傍までやって来ると、ニヤついた目でユエとシアをジロジロと見やり、シアの首輪を見て不快そうに目を細めた。そして、今まで一度も目を向けなかったハジメに、さも今気がついたような素振りを見せると、これまた随分と傲慢な態度で一方的な要求をした。
「お、おい、そこのガキ共。ひゃ、百万ルタやる。この兎を、わ、渡せ。それとそっちの金髪はわ、私の妾にしてやる。い、一緒に来い」
フューレンに着いて少しばかし下準備でもしようかと考えていたのだが、どうやら未だに俺たちは面倒ごとから避けられない様だ。
天之河の末路について
-
原作通り
-
アナキンと同じ末路
-
カイロ・レンと同じ末路