ありふれないジェダイとクローン軍団で世界最強 作:コレクトマン
41話目です。
「ふんふんふふ~ん、ふんふふ~ん! いい天気ですねぇ~、絶好のデート日和ですよぉ~」
「あまりはしゃぎすぎるなよ、シア。これでもかなり目立っているかなら…」
俺とシアは食材の買い出しを兼ねて町を回りながらも束の間の休息を味わっていた。周りの人からすれば人と亜人のデートと見て取れるかもしれないが、飽くまでもこの世界は亜人達にとって優しくない世界だ。一部には人が亜人族の奴隷を連れて町を歩き回っているという認識もいるだろう。しかし、そんな事はどうでもいいことでもあった。特にシアとっては俺とデート(俺は全くそのつもりはないが…)できてかなり上機嫌の様子だった。現在俺とシアがいるのはフューレン観光区という場所だ。そこにはフューレン以外の町からやって来た旅行者や冒険者などがいて血気盛んな区であることが見て取れる。そんな場所で俺とシアは観光区にある水族館“メアシュタット”にて色んな海の生物を見て回っていた。…それにしても、内陸なのに海の生物を大切に扱っているな。管理、維持、輸送などで大変だろうに。
そう感心しながらもメアシュタットの中の様子は極めて地球の水族館に似ていた。ただ、違いを入れるのならば、地球ほど大質量の水の圧力に耐える透明の水槽を作る技術がないのか、格子状の金属製の柵に分厚いガラスがタイルの様に埋め込まれており、若干の見にくさはあったが、別に俺とシアに取ってはあまり気にすることでもなかった。
そうして30分も水族館で色んな海の生物を見て回りながら楽しんでいたが、突然シアがギョッとしたようにとある水槽を二度見し、更に凝視し始めた。
そこにいたのは……シーマ○だった。ハジメが教えてくれた某ゲームの人面魚そっくりだった。
「……な、なぜ彼がここに……」
「…シア、この生物に面識が有るのか?」
何やらシアはこの人面魚に面識があったそうだったので聞き出してみたところ、ライセン大迷宮にてミレディによって迷宮から外へと流される最中、水中にてシアはその人面魚を見てしまい、それによって溺れてしまったの事だった。……シアが溺れてしまった原因はまさかこの人面魚であったとは思いもしなかった。俺は水槽の傍に貼り付けられている解説に目をやった。
それによると、この人面魚は水棲系の魔物であるらしく、固有魔法“念話”が使えるようだ。滅多に話すことはないらしいがきちんと会話が成立するらしく、確認されている中では唯一意思疎通の出来る魔物として有名らしい。ただ、物凄い面倒くさがりのようで、仮に会話出来たとしても、やる気の欠片もない返答しかなく、話している内に相手の人間まで無気力になっていくという副作用?みたいなものまであるので注意が必要とのことだ。あと、お酒が大好きらしく、飲むと饒舌になるらしい。但し、一方的に説教臭いことを話し続けるだけで会話は成立しなくなるらしいが……ちなみに、名称はリーマンだった。
何かと胡散臭い感じではあったが、もし“念話”が使えるというのならと思い、俺はそのリーマンに“念話”を使って対話を試みた。
“…失礼、俺は藤原雷電という者だ。貴方は本当に話せるのか?言葉の意味を理解できるのかを問いたい”
突然の念話に、リーマンの目元が一瞬ピクリと反応する。そして、シアから視線を外すと、ゆっくり俺を見返した。シアが、何故か勝った!みたいな表情をしているが気にしないでおこう。
“……チッ、礼儀はなってはいるが初対面だろ”
“突然話しかけてしまい申し訳ない。どうやら念話での会話が可能の様だな。……一つ聞きたいが、リーマンというのは一体何なのか?”
“……お前さん。人間ってのは何なんだ?と聞かれてどう答える気だ?そんなもんわかるわけないだろうが。まぁ、敢えて言うなら俺は俺だ。それ以上でもそれ以下でもねぇ。あと名はねぇから好きに呼んでくれ”
…ふむ、どうやらそれなりに対話が可能であることが分かったが、何かとセリフがいちいち常識的で、しかも少しカッコイイのだ。全くもって予想外である。やる気の欠片もなかったんじゃないのか?と水族館の職員にクレームを付けたいと思っていると、今度はリーマンの方から質問が来た。
“こっちも一つ聞きてぇ。お前さん、なぜ念話が出来る?人間の魔法を使っている気配もねぇのに……まるで俺と同じみてぇだ”
当然といえば当然の疑問だろう。何せ、人間が固有魔法として“念話”を使っているのだ。なぜ自分と同じことを平然と出来ているのか気になるところだ。普段は、滅多に会話しないリーマンが俺との会話に応じているのも、その辺りが原因なのだろう。俺は、念話が使える魔物を喰ってそれで習得したとかなり端折った説明をした。
“……若ぇのに苦労してんだな。よし、聞きてぇことがあるなら言ってみな。おっちゃんが分かることなら教えてやるよ”
その結果、リーマンに同情された。どうやら、魔物を喰うしかないほど貧乏だとでも思われたようだ。今のそれなりにいい服を着ている姿を見て、“頑張ったんだなぁ、てやんでぇ!泣かせるじゃねぇか”とヒレで鼻をすする仕草をしている。
実際、苦労したことは間違いないので特に訂正はないのだが、何かと人面魚に同情されるとは思いもしなかったと同時に何かと複雑な気分だった。そうおもっているとシアがそわそわし始め、俺の服の裾をちょいちょい引っ張る。…どうやら俺が“念話”でリーマンと会話しているうちに他のお客の目がこっちに向いていることに気付いて一旦リーマンとの会話を切り上げることにした。どうやら知らぬうちに会話が弾み過ぎた様だ。そしてリーマンの方も“おっと、デートの邪魔だったな”と空気を呼んで会話の終わりを示した。そんな感じで俺とリーマンの間で“リーさん”と“ライ坊”と呼び合う中になった。
俺は最後にリーさんが何故こんなところにいるのか聞いてみた。そして、返ってきた答えは……
“ん?いやな、さっきも話した通り、自由気ままな旅をしていたんだが……少し前に地下水脈を泳いでいたらいきなり地上に噴き飛ばされてな……気がついたら地上の泉の傍の草むらにいたんだよ。別に、水中じゃなくても死にはしないが、流石に身動きは取れなくてな。念話で助けを求めたら……まぁ、ここに連れてこられたってわけだ”
それを聞いた俺はツーと一筋の汗を流した。それは明らかにライセンの大迷宮から排出された時のことだろう。どうやら、リーさんはそれに巻き込まれて一緒に噴水に打ち上げられたらしい。直接の原因はミレディなのだが、巻き込んだという点に変わりはない。気を取り直して俺はリーさんに尋ねた。
“あ~…その〜、リーさん。正直言ってここから出たいですか?”
“?そりゃあ、出てぇよ。俺にゃあ、宛もない気ままな旅が性に合ってる。生き物ってのは自然に生まれて自然に還るのが一番なんだ。こんな檻の中じゃなく、大海の中で死にてぇてもんだよ”
いちいち言葉に含蓄のあるリーさん。既に、リーさんを気に入っていた俺は、巻き込んだこともあるしと彼を助けることにした。
“リーさん。なら、俺が近くの川にでも送り届けてやるよ。どうやら、この状況は俺達の事情に巻き込んじまったせいみたいだしな。数分後に迎えを寄越すから、信じて大人しく運ばれてくれないか?”
“ライ坊……へっ、若造が、気ぃ遣いやがって……何をする気かは知らねぇが、てめぇの力になろうって奴を信用できないほど落ちぶれちゃいねぇよ。ライ坊を信じて待ってるぜ”
俺とリーマンは共に笑みを交わしあった。その分かりあったような表情で見つめ合う二人?に“あれ?まさかのライバル登場?”とシアが頬を引き攣らせる。俺はシアの手を引いてその場を離れようと踵を返した。訳がわからないが、取り敢えず俺に付いて行くシアにリーマンの“念話”が届く。
“嬢ちゃん、あん時は驚かせて悪かったな。ライ坊と繋いだその手、離すんじゃねぇぞ”
「へ?…へっ?え……えっと、いえ、気にしてません!おかげでライデンさんとファーストチュウ出来たので!あと、もちろん離しませんよ!」
訳がわからないなりに、しっかり返事するシア。そんな彼女に満足気な笑みを見せるリーさん。内心で俺は“お節介だな…(汗)”と苦笑いし、新たな友人のこれからに幸運を祈りつつもハジメに“念話”である物を貸してほしい”と頼みながらメアシュタット水族館を後にした。
そして、その数分後、下部にカゴをつけた空飛ぶ十字架が水族館内を爆走し、リーマンの水槽を粉砕、流れ出てきたリーマンを見事カゴにキャッチすると追いかける職員達を蹴散らし(怪我はさせていない)、更に壁を破壊して外に出ると遥か上空へと消えていくという珍事が発生した。新種の魔物か、あるいはリーマンの隠された能力かと大騒ぎになるのだが……それは別の話だ。
雷電Side out
雷電とシアが買い物というよりデートに行ってから一時間後に雷電から“念話”による連絡が来た。なんでも、俺のアーティファクトを貸してくれと言ってきたのだ。一体何があったのかと聞いてみたら“ちょっとした手助けだ”と言ってきた。あいつが何を考えているのかよく解らんが、別に面倒ごとには巻き込まれてないことだけは理解した。そんで俺は遠隔操作型アーティファクトの一つである“クロスビット”を雷電の元に送っといた。まぁ、あいつの事だ。どうせお人好しの為に使うつもりなんだろうな。…といっても、そのお人好しに伝染した俺も人のことを言えた義理じゃないけどな。因みに俺はフューレンの観光区をユエと一緒に回っていた。VIPルームには清水達を留守番に置いてある。
「ハジメ、何か嬉しそう…」
「ん?顔に出てたか?実は雷電のことで考えていたところだ」
「ライデン……ハジメ達と初めて会った時は本当に変わった人だった。少しお人好しだけど、冷静でよく周りを見ている。けど…怒った時のライデンは少し怖い」
「まぁ…雷電の前世が前世だからな。ジェダイとしての使命を強く思っているんだろう。その分、自分自身が闇に呑まれないようにそれなりに修行を兼ねているからな」
そうユエと雷電のことで話し合いながらも観光区を歩き回っていると、“気配感知”から下から人の気配を二つ感知した。
「……ハジメ?」
「…いやっな、気配感知で人の気配を捉えたんだが……」
「人?…周りの人たちじゃなく……?」
「あぁ、俺が感知したのは下だ」
「下……となると、下水道?」
「気配が二つあるがひとつは普通だが、徐々に弱まりつつある。んでもう一つはやたら小さい故に弱い。これは子供だぞ」
「…!ハジメ!」
「…あぁ、言わずもがな!」
俺達はその気配がする方向にそって後を追った。ユエと二人で地下をそれなりの速度で流れていく気配を追う。町の構造的に、現在いるストリート沿いに下水が流れているのだろうと予想し、一気に気配を追い抜くと地面に手を付いて錬成を行った。紅いスパークが発生すると、直ちに、真下への穴が空く。
俺とユエは、躊躇うことなくそのまま穴へと飛び降りた。そして、下方に流れる酷い匂いを放つ下水に落ちる前にユエを抱き寄せながら“空力”で跳躍し、水路の両サイドにある通路に着地する。
「ハジメ、あそこ…!」
「どうやら間に合った様だな。じゃあ後は…!」
ユエがその気配の持ち主を見つけ、俺は再び地面に手を付いて錬成を行った。紅いスパークと共に水路から格子がせり上がってくる。格子は斜めに設置されているので、流されてきた二人は格子に受け止められるとそのまま俺達の方へと移動して来た。俺は左義手のギミックを作動させ、その腕を伸長させると子供をかかている少年を掴み、そのまま通路へと引き上げた。
「ゲホッゲホッ…!誰だか知らないが、助けてくれたことには感謝するよ」
「……貴方は?」
「おっと、名乗りたいのは山々だが、先ず先にこの子を助けてくれないか?」
「…ハジメ」
「まぁ、息はあるし……取り敢えずここから離れよう。臭いが酷い」
その子供を見て、ユエが驚きに目を見開く。ハジメも、その容姿を見て知識だけはあったので、内心では結構驚いていた。しかし、場所が場所だけに、肉体的にも精神的にも衛生上良くないと場所を移動する事にする。
何となく、子供の素性的に唯の事故で流されたとは思えないので、そのまま開けた穴からストリートに出ることが躊躇われたハジメは、穴を錬成で塞ぎ、代わりに地上の建物の配置を思い出しながら下水通路に錬成で横穴を開けた。そして“宝物庫”から毛布を取り出すと小さな子供をくるみ、抱きかかえて移動を開始した。
とある裏路地の突き当たりに突如紅いスパークが奔り地面にポッカリと穴が空く。そこからピョンと飛び出したのは、毛布に包まれた小さな子供を抱きかかえた俺とユエ、そしてもう一人の少年だ。俺は、錬成で穴を塞ぐと、改めて自らが抱きかかえる子供に視線を向けた。
その子供は、見た目三、四歳といったところだ。エメラルドグリーンの長い髪と幼い上に汚れているにも関わずわかるくらい整った可愛らしい顔立ちをしている。女の子だろう。だが何より特徴的なのは、その耳だ。通常の人間の耳の代わりに扇状のヒレが付いているのである。しかも、毛布からちょこんと覗く紅葉のような小さな手には、指の股に折りたたまれるようにして薄い膜がついている。
「この子、海人族の子ですね……どうして、こんな所に……」
「まぁ、まともな理由じゃないのは確かだな」
「すまない。その点は大まかに説明したいのだが、先ず先にその子を」
海人族は、亜人族としてはかなり特殊な地位にある種族だ。西大陸の果、【グリューエン大砂漠】を超えた先の海、その沖合にある【海上の町エリセン】で生活している。彼等は、その種族の特性を生かして大陸に出回る海産物の八割を採って送り出しているのだ。そのため、亜人族でありながらハイリヒ王国から公に保護されている種族なのである。差別しておきながら使えるから保護するという何とも現金な話だ。そんな保護されているはずの海人族、それも子供が内陸にある大都市の下水を流れているなどありえない事だ。犯罪臭がぷんぷんしている。
と、その時、海人族の幼女の鼻がピクピクと動いたかと思うと、パチクリと目を開いた。そして、その大きく真ん丸な瞳でジーとハジメを見つめ始める。俺も何となく目が合ったまま逸らさずジーと見つめ返した。意味不明な緊迫感が漂う中、海人族の幼女のお腹がクゥーと可愛らしい音を立てる。ちょっとばかり気が抜ける感じだったが、そんな事を気にせずに俺は海人族の幼女に名前を聞き出した。
「お前、名前は?」
「……ミュウ」
「そうか。俺はハジメで、そっちはユエだ」
軽く自己紹介しながらも俺は“念話”で雷電にこっちに来てほしいと連絡を入れ、その後に俺は“宝物庫”から資材を取り出して簡易の浴槽を作るのだった。
ハジメSide out
ハジメから“少し訳ありな二人を保護したんだが、来てくれないか?”と“念話”による連絡で俺とシアは他の食材の買い出しを一旦中断し、ハジメがいる場所に向かうのだった。そして合流し、ハジメが何処かに行く前に俺に詳しい状況を説明した。なんでも下水道から二人の子供の気配が感知して、その子供らを救出した様だ。一人は白人白髪の男性で、もう一人は海人族の幼女だそうだ。何故その少年幼女らが下水道に流されていたのか、それを白人の少年が説明した。
「いやーっ僕はとある裏組織に追われていてね、海人族のミュウちゃんを連れて逃げ出したのは良いものの、下水道に逃げたのはマズかったな?その結果、追い込まれて最終的に下水に飛び込んで身をくらまそうと思ったんですが、思ったよりも下水の流れが強くて流されてしまい、最終的に彼等に助けてもらった次第です。あっ…申し遅れましたね?僕はキャスパー、“キャスパ―・マテリアル”。しがない
その少年ことキャスパーは、自らのことを商人と名乗った。フォースを通して彼が嘘をついて居る感じはしなかった。彼は本当に商人ではあるが、少し訳ありの商人であることが判った。
「その元商人が何故、裏組織に追われているのかは敢えて聞かないが、その裏組織の名は何だ?」
「僕らを追っていた組織の名は“フリートホーフ”。人身売買を生業とする裏組織ですよ。もっとも、僕が一番嫌いな部類な奴らでもありますがね…」
どうやらフリートホーフは人身売買を生業とする裏組織の様だ。個人的にも奴隷といった人権を無視し、道具の様に扱うことを一番嫌う。そう考えながらも俺はキャスパーに何故海人族の幼女ことミュウと共にフリートホーフから逃げていたのかを聞き出したところ、ミュウはフリートホーフに捕まっていたのだが、キャスパーがフリートホーフから逃げる際にミュウを連れて逃げ出したそうだ。…よく捕まらずに済んだなと思ったが、そのフリートホーフという裏組織は恐らくこの町を拠点にし、人込みにまぎれて隙あらばミュウやキャスパーを攫う可能性がある。
そう考えている間にハジメが袋を片手に戻って来た。どうやらミュウとキャスパー用に服を買って来た様だ。それと同時にユエから浴槽が空いたとキャスパーに告げ、キャスパーはミュウが着替え終わるまで待ち、その後に浴槽で身体を洗うのだった。
キャスパーが浴槽で身体を洗っている間に俺は海人族のミュウに自己紹介をし、どうして此処にいるのか聞き出した。その結果、たどたどしいながらも話された内容は、俺やハジメが予想したものに近かった。すなわち、ある日、海岸線の近くを母親と泳いでいたらはぐれてしまい、彷徨っているところを人間族の男に捕らえられたらしいということだ。
そして、幾日もの辛い道程を経てフューレンに連れて来られたミュウは、薄暗い牢屋のような場所に入れられたのだという。そこには、他にも
いよいよ、ミュウの番になったところで、その日たまたまキャスパーがフリートホーフから脱走する時に偶然ミュウを見掛けた。その時にキャスパーは“一緒に逃げないか?”と軽い感じでミュウを連れて下水道へと逃げたものの、フリートホーフに追い詰められて、逃げ出す策として下水に飛び込んだのは良いが、結局どのタイミングで陸に上がるのか考えてなく、その結果、流されるがままになってしまったそうだ。……何というかそのキャスパーという少年は結構冒険心があるが、かなり無茶をするなと思った。なお、キャスパーはこの後どうするのか聞いてみたが、“今後のことは自分で何とかしますよ”とはぐらかしながらも俺達にミュウを任せたと同時に別れた。
「キャスパーから予め聞かされたが、やはりこの世界にも裏組織は存在するか……」
「人身売買組織か……海人族の子を出すってことは、裏のオークションか何かだろうな」
「こんな小さな子供まで…」
「この町には陰に隠れた畜生共がゴロゴロいるってことか。…んで、雷電。お前のことだ、ミュウを俺達の旅に連れて行くと同時に“海上の町エリセン”でミュウの母親のところに送り届ける算段か?」
「まぁ…最初はそう考えたんだが、どちらかと言うとミュウは保安署に預けるのがベターかもしれない。流石にまだ五歳にも満たない子供を連れて行くほど俺は馬鹿じゃない」
“そりゃそうだろうな”とハジメが納得する中、シアだけは納得出来なかった。
「マスター…ハジメさんの言い分も分かりますが、それは幾らなんでも……」
「シア、俺だって同じ気持ちだ。だが、ミュウはまだ若過ぎる。俺達と旅をして、もしもの時にミュウに何があってからじゃ遅いんだ。だから保安署にミュウを預けるんだ。保安署の方々なら手厚く保護される。精々俺達がしてやれることはこれくらいしか出来ない」
なんとかシアにそう言うが、それでもシアは納得いかない様子だった。それについては俺とて同じだ。だが、現実を見なければならない。ジェダイ騎士は調停者であるが、神様ではないのだ。そこまで万能ではないことを自覚している分、もどかしい気分だった。その時にミュウは不安そうな感じでハジメに声を掛けてきた。
「ミュウ、どうなっちゃうの?」
「ミュウ、お前を守ってくれる人達の所へ連れて行く。時間は掛かるだろうが、いつか西の海にも帰れるだろう」
「お兄ちゃん達は?」
「悪いが、そこでお別れだ」
「やっ!」
「いや、やっ!じゃなくてな……」
「お兄ちゃん達とお姉ちゃん達がいいの!みんなといるの!」
思いのほか強い拒絶が返ってきてハジメが若干たじろぐ。ミュウは、駄々っ子のようにシアの膝の上でジタバタと暴れ始めた。今まで、割りかし大人しい感じの子だと思っていたが、どうやらそれは、ハジメとシアの人柄を確認中だったからであり、信頼できる相手と判断したのか中々の駄々っ子ぶりを発揮している。元々は、結構明るい子なのかもしれない。
ハジメとしても信頼してくれるのは悪い気はしないのだが、どっちにしろ公的機関への通報は必要であるし、途中で【大火山】という大迷宮の攻略にも行かなければならないのでミュウを連れて行くつもりはなかった。なので、“やっーー!!”と全力で不満を表にして、一向に納得しないミュウへの説得を諦めて、ハジメが抱きかかえ、俺とシアに“付いて来てくれ”と頼まれた。個人的に気分が乗らないが、仕方なくハジメと同行し、ミュウを強制的に保安署に連れて行くことにした。
ミュウとしても、窮地を脱して奇跡的に見つけた信頼出来る相手から離れるのはどうしても嫌だったので、保安署への道中、ハジメの髪やら眼帯やら頬やらを盛大に引っ張り引っかき必死の抵抗を試みる。隣におめかしして愛想笑いを浮かべるシアがいなければ、ハジメこそ誘拐犯として通報されていたかもしれない。髪はボサボサ、眼帯は奪われて片目を閉じたまま、頬に引っかき傷を作って保安署に到着したハジメは、目を丸くする保安員に事情を説明した。
事情を聞いた保安員は、表情を険しくすると、今後の捜査やミュウの送還手続きに本人が必要との事で、ミュウを手厚く保護する事を約束しつつ署で預かる旨を申し出た。ハジメの予想通り、やはり大きな問題らしく、直ぐに本部からも応援が来るそうで、自分達はお役目御免だろうと引き下がろうとした。が……
「お兄ちゃん達は、ミュウが嫌いなの?」
幼女にウルウルと潤んだ瞳で、しかも上目遣いでそんな事を言われて平常心を保てるヤツはそうはいない。流石のハジメも、“うっ…”と唸り声を上げ、旅には連れて行けないこと、眼前の保安員のおっちゃんに任せておけば家に帰れる事を根気よく説明するが、ミュウの悲しそうな表情は一向に晴れなかった。特に俺の場合はミュウに対して謝る以外の言葉が見つからない為に、ただ謝るしかなかった。
見かねた保安員達が、ミュウを宥めつつ少し強引に俺達と引き離し、ミュウの悲しげな声に後ろ髪を引かれつつも、ようやく俺とハジメとシアは保安署を出たのだった。当然、あまり良い気分ではなく、シアは心配そうに眉を八の字にして、何度も保安署を振り返っていた。
やがて保安署も見えなくなり、かなり離れた場所に来たころ、未だに沈んだ表情のシアに俺が何か声をかけようとした。と、その瞬間……
ドォガァアアアン!!!!
背後で爆発が起き、黒煙が上がっているのが見えた。その場所は……
「なぁ、ハジメ。あの場所ってまさか…!」
「チッ、保安署か!」
そう、黒煙の上がっている場所は、さっきまで俺達がいた保安署があった場所だった。俺達は、互いに頷くと保安署へと駆け戻る。タイミング的に最悪の事態が脳裏をよぎった。すなわち、ミュウを誘拐していた組織が、情報漏えいを防ぐためにミュウごと保安署を爆破した等だ。焦る気持ちを抑えつけて保安署にたどり着くと、表通りに署の窓ガラスや扉が吹き飛んで散らばっている光景が目に入った。しかし、建物自体はさほどダメージを受けていないようで、倒壊の心配はなさそうだった。ハジメ達が、中に踏み込むと、対応してくれた保安員がうつ伏せに倒れているのを発見する。
両腕が折れて、気を失っているようだ。他の職員も同じような感じだ。幸い、命に関わる怪我をしている者は見た感じではいなさそうである。ハジメが、職員達を見ている間、ほかの場所を調べに行ったシアが、焦った表情で戻ってきた。
「ハジメさん!マスター!ミュウちゃんがいません!それにこんなものが!」
シアが手渡してきたのは一枚の紙。そこにはこう書かれていた。
“海人族の子を死なせたくなければ、白髪の兎人族を連れて○○に来い”
「ハジメさん、マスター、これって……」
「どうやら、あちらさんは欲をかいたらしいな……」
ハジメは、メモ用紙をグシャと握り潰すと凶悪な笑みを浮かべた。おそらく、連中は保安署でのミュウとハジメ達のやり取りを何らかの方法で聞いていたのだろう。そして、ミュウが人質として役に立つと判断し、口封じに殺すよりも、どうせならレアな兎人族も手に入れてしまおうとでも考えたようだ。
そんなハジメの横で、シアは、決然とした表情をする。
「ハジメさん!マスター!私、行きます!ミュウちゃんを助けに!」
「みなまでいうな。わーてるよ。こいつ等はもう俺の敵だ……御託を並べるのは終わりだ。全部ぶちのめして、ミュウを奪い返すぞ」
「はいです!」
「雷電、お前も……?雷電……っ!?」
その時に俺は確かな怒りを感じていた。何故五歳にも満たない子供が、こうも理不尽に不幸な目に合わなければいけないのか?余りにも理不尽過ぎることに俺自身、許せなかった。故に、俺の怒りの殺意が外に漏れ出していることに気付かなかった。
「お…おい、雷電!落ち着け…なっ?」
「ま、マスター!?お…落ち着いてくださいですぅ!?」
ハジメとシアに声をかけられて漸く俺は殺意が漏れ出ていることを自覚し、自制するのだった。そして冷静になったところで俺はある事をハジメに言う。
「ハジメ、お前の“念話”でを至急みんなをここに呼んでくれ。直ぐにミュウを奪還する為に行動する」
「おい、雷電。……気持ちは分かるが一応聞かせろ。お前、何を仕出かすつもりだ?」
「決まっているだろ、ハジメ?裏組織…いや裏社会にとっての第3次大戦だ……!」
ミュウを奪還する為の作戦を至急実行する為にハジメに無茶ぶりを言いながらも俺は“クローン軍団召喚”で新たに名前付きのクローンを五人も召喚した。因みにハジメは俺が第3次大戦と行った言葉に反応して“コ◯ンドーネタかよ!?”とツッコンだのは余談だ。
中村恵里が雷電たちの仲間入りする際にどのタイミングがよろしいか?
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グリューエン大火山に向かう時
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王都編が終わる直前の時