ありふれないジェダイとクローン軍団で世界最強   作:コレクトマン

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後編が無事に完成しましたので投稿です。


48話目です。



無能とジェダイの無双 後編

 

 

その頃、戦闘不能の天之河達はユエ達に守られていた。白髪眼帯の少年二人の内一人の正体を直ぐさまハジメは見抜けず、正体不明の何者かが突然、突如と出現したゴーレム達を相手に歯牙にもかけず殲滅したとしか分からなかった。

 

 

「何なんだ……一人は雷電であることは分かるが、もう一人は全く分からない。彼は一体、何者なんだ?」

 

「雷電の奴……生きていたのか」

 

 

天之河と坂上が動かない体を横たわらせながら、そんな事を呟く。今、周りにいる全員が思っていることだった。その答えをもたらしたのは、先に逃がし、けれど自らの意志で戻ってきた仲間、遠藤だった。

 

 

「まぁ、信じられないだろうけど……あいつは南雲だよ」

 

「「「…は?」」」

 

 

遠藤の言葉に、光輝達が一斉に間の抜けた声を出す。遠藤を見て“頭大丈夫か、こいつ?”と思っているのが手に取るようにわかる。遠藤は、無理もないがその反応はないだろと思いながらも、事実なんだから仕方ないと肩を竦めた。

 

 

「だから、南雲だよ!あの日、橋から落ちた南雲ハジメだ!」

 

「南雲って…え?南雲が生きていたのか!?」

 

「しんじられねぇ…」

 

「迷宮の底で生き延びて、自力で這い上がってきたらしいぜ。ここに来るまでも、迷宮の魔物が完全に雑魚扱いだった。マジ有り得ねぇ!って俺も思うけど……事実だよ。まぁ……見た目とか、メッチャ変わってるから、無理もないよな。雷電もそうだけど……」

 

 

光輝が驚愕の声を漏らす。そして、他の皆も一斉に、現在進行形で殲滅戦を行っている化け物じみた強さの少年を見つめ直し……やはり一斉に否定した。“どこをどう見たら南雲なんだ?”と。そんな心情もやはり、手に取るようにわかる遠藤は、“いや、本当なんだって。めっちゃ変わってるけど、ステータスプレートも見たし”と乾いた笑みを浮かべながら、彼が南雲ハジメであることを再度伝える。

 

 

 

皆が、信じられない思いで、ハジメと雷電の無双ぶりを茫然と眺めていると、ひどく狼狽した声で遠藤に喰ってかかる人物が現れた。

 

 

「う、嘘だ!南雲は死んだんだ!そうだろ?みんな見てたじゃんか!生きてるわけない!適当なこと言ってんじゃねぇよ!」

 

「うわっ、なんだよ!ステータスプレートも見たし、本人が認めてんだから間違いないだろ!」

 

「何か細工でもしたんだろ!それか、南雲になりすまして何か企んでるんだ!あんな無能が生きている訳ねぇだろ!」

 

「一体何なんだよ、檜山!本当のことなんだから嘘言っても意味はないだろう!?」

 

 

ハジメの生存を否定する檜山。顔を青ざめさせ尋常ではない様子だ。周りにいる近藤達も檜山の様子に何事かと若干引いてしまっているようだ。

 

 

 

そんな錯乱気味の檜山に、比喩ではなくそのままの意味で冷水が浴びせかけられた。檜山の頭上に突如発生した大量の水が小規模な滝となって降り注いだのだ。呼吸のタイミングが悪かったようで若干溺れかける檜山。水浸しになりながらゲホッゲホッと咳き込む。一体何が!?と混乱する檜山に、冷水以上に冷ややかな声がかけられる。

 

 

「……大人しくして。あなた、ハジメの邪魔をする気?」

 

 

その物言いに再び激高しそうになった檜山だったが、声のする方へ視線を向けた途端、思わず言葉を呑み込んだ。なぜなら、その声の主、ユエの檜山を見る眼差しが、まるで虫けらでも見るかのような余りに冷たいものだったからだ。同時に、その理想の少女を模した最高級のビスクドールの如き美貌に状況も忘れて見蕩れてしまったというのも少なからずある。

 

 

 

それは、光輝達も同じだったようで、突然現れた美貌の少女に男女関係なく自然と視線が吸い寄せられた。鈴などは明からさまに見蕩れて“ほわ~”と変な声を上げている。単に、美しい容姿というだけでなく、どこか妖艶な雰囲気を纏っているのも、見た目の幼さに反して光輝達を見蕩れさせている要因だろう。

 

 

 

…と、その時、カトレアは雷電たちを相手にしながらも仲間達に注意を向けさせればなんとかなると思ったのか、魔物達に天之河達に襲いかかるよう指示を出した。魔物が数体、天之河達に向かってくる。

 

 

「また来た!結界の修復!」

 

「ぐっ…死んでも通すもんか!」

 

 

谷口が咄嗟にシールドを発動させようとする。度重なる魔法の行使に、唯でさえ絶不調の体が悲鳴を上げる。ブラックアウトしそうな意識を唇を噛んで堪えようとするが……そんな谷口をユエの優しい手つきが制止した。頭をそっと撫でたユエに、谷口が“ほぇ?”と思わず緩んだ声を漏らして詠唱を止めてしまう。

 

 

「……大丈夫」

 

 

ただ一言そう呟いたユエに、谷口は、何の根拠もないというのに“ああ、もう大丈夫なんだ”と体から力を抜いた。自分でも、なぜそうも簡単にユエの言葉を受け入れたのかは分からなかったが、まるで頼りになる姉にでも守られているような気がしたのだ。

 

 

 

ユエが視線を谷口から外し、今まさにその爪牙を、触手を、メイスを振るわんとしている魔物達を睥睨する。そして、ただ一言、魔法のトリガーを引いた。

 

 

「“蒼龍”」

 

 

その瞬間、ユエ達の周りに魔力が集まり、頭上から直径一メートル程の青白い球体が発生した。そして、その球体から蒼い龍が出現し、今まさにメイスを振り降ろそうとしていたブルタールモドキ達に襲いかかるとそのまま呑み込み、一瞬で灰も残さず滅殺した。

 

 

 

ゴァアアアアア!!!

 

 

 

爆ぜる咆哮が轟くと、その直後にたじろぐ魔物達の体が突如重力を感じさせず宙に浮いたかと思うと、次々に蒼龍の顎門へと向けて飛び込んでいった。突然の事態にパニックになりながらも必死に空中でもがき逃げようとする様子から自殺ではないとわかるが、一直線に飛び込んで灰すら残さず焼滅していく姿は身投げのようで、タチの悪い冗談にしか見えない。

 

 

「なに、この魔法……」

 

 

流石の谷口と中村もこの光景に唖然とする他になかった。他のクラスメイトも同様である。

 

 

 

一方のシアは重傷で倒れているメルドを治療を行う為に神水を使おうとした時にユエが魔法を使っている所を見ていた。

 

 

「流石ユエさんです。まだ微かに息がありますね。これならハジメさんの回復役で…」

 

 

シアがメルドに神水を飲ませようとした時に、ブルタール擬きが棍棒でメルド諸共叩き潰そうとする。しかし、シアは攻撃してくる魔物に対してライトセーバーで棍棒ごとブルタール擬きごと斬り裂く。

 

 

「邪魔しないでもらいます?」

 

 

そう言いながら先に襲ってくる魔物を殲滅してからメルドに神水を飲ませることにした。

 

 

 

そしてハジメはシュラークを回収し、雷電たちの所に向かいながらもシアの殲滅力の高さに少し不安げだった。

 

 

「シアの奴、雷電の弟子とはいえメルドも巻き添えにしてないよな…?」

 

 

若干不安を抱えながらもハジメは急いで雷電の加勢に向かうのだった。

 

 

 

カトレアは今のままではマズいと判断したのか、今度の標的を白崎達に変え、魔法で最初にハジメに殺られたキメラの尻尾である蛇の部分を独立させて、白崎達に襲わせるよう指示を出す。キメラの尻尾部分の蛇の魔物が白崎達に襲いかかろうとしていることに気付いた八重樫は殺意を撒き散らしながら迫り来る魔物に歯噛みしながら半ばから折れた剣を構えようとする。

 

 

「八重樫、取れ!」

 

 

その時にハジメは宝物庫から何時の間に作ったのか一本の黒い鞘を収めた刀を八重樫に投げ渡す。八重樫はハジメから刀を受け取ったと同時に白崎に謝罪しながらも安全な場所に白崎を突き飛ばす。そして蛇型の魔物は八重樫に噛み付こうとするが、八重樫の本来の獲物(武器)を手にした影響か、抜刀術で魔物を一瞬で斬殺する。

 

 

 

八重樫は初めて使うハジメお手製の刀に驚いていた。その刀は軽量でありながらも鋭い切れ味を誇っていた。これを驚くなというのは無理がある。

 

 

 

全ての魔物を使い切り、完全に不利な状況に追い込まれてしまったカトレア。しかし、この状況を打開できなくても、逃げ出す隙を作ることが出来るが、たとえ出来なくとも道ずれに出来ると判断し、ある上級魔法を放とうと詠唱を始める。

 

 

「地の底に眠りし金眼の蜥蜴、大地が産みし魔眼の主、宿るは暗闇見通し射抜く呪い、もたらすは永久不変の闇牢獄、恐怖も絶望も悲嘆もなく、その眼を以て己が敵の全てを閉じる」

 

「この詠唱は…っ!まずい!」

 

 

天之河はカトレアの詠唱に聞き覚えがあった。しかしカトレアは気にせず詠唱を続ける。

 

 

「残るは終焉、物言わぬ冷たき彫像」

 

 

そうして詠唱を終える寸前なのか、カトレアの頭上には魔力が収束していた。この時に天之河はハジメと雷電達に警告する。

 

 

「南雲、雷電!その魔法は絶対くらうなよ!石化系の上級魔法だ!」

 

「石化?…だとしたら不味いな。ハンター、一旦部下達を俺の所に集まれ。敵の魔法を防ぐ」

 

「了解です、将軍。お前たち、聞いての通りだ。集まれ」

 

 

雷電の指示で不良分隊は雷電の所に集まり、カトレアの魔法に対策をとった。しかし、カトレアは狙いは雷電たちではなく、ハジメの方だった。片方を潰せば勝手に瓦解すると判断したのだ。そうしてカトレアの詠唱が終わりを迎えようとしていた。

 

 

「ならばものみな砕いて、大地に返せ──“落牢”!!」

 

 

カトレアが奥の手として放った上級魔法が、ハジメの直ぐ傍で破裂し、石化の煙がハジメを包み込んだ。

 

 

「ハジメくん!」

 

「南雲君!?」

 

「南雲…!」

 

 

雷電の思惑がハズレたのにも関わらず、雷電の表情は一切変わっていなかったのに対し、天之河達が息を飲み、香織と雫が悲鳴じみた声でハジメの名を呼ぶ。そしてミュウもまたハジメの名を呼ぶ。

 

 

()()!」

 

「パ……ッ!?」

 

 

ミュウから爆弾発言を聞いた白崎は一瞬固まった。あのハジメに子供が出来ていたことに驚きを隠せないでいる白崎であった。そんな中、カトレアは無双していた雷電の相棒であるハジメが石化魔法にかかのにも拘らず焦る様子すら見せないでいたことに疑問に思った。しかし、その疑問はすぐに分かることになる。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「……冗談だろ?一体どんなトリックを使ったんだい」

 

「“魔力放射”だ。所詮は煙、魔力と一緒に押し返せばいい」

 

「上級魔法を押し返す程の魔力だなんて……あんた本当に人間?」

 

「どうだろうな?、実は俺も雷電も、自分自身疑わしいんだ」

 

「俺もかよ。……まぁ、事実上そうなんだがな」

 

 

雷電はそうぼやきながらもハジメと合流する。この時にカトレアは悟った。ハジメ達と出会った時点で既に詰んでいたことを。そんな中、白崎は八重樫の肩を掴みながらミュウの爆弾発言に何かしらの怒りを感じていた。その証拠に白崎の背後から般若の顔をした何かが出ていた。八重樫も今の白崎の様子に驚きを隠せないでいた。

 

 

「……参ったね、最初から詰みだったわけだ」

 

「そうなるな。それに、お前たち魔人族が何故この大迷宮にいるのか気になるがな?」

 

「見れば分かるだろう?勇者一味を殺そうとしていたんだよ。最初はクローン達を含めて魔人族側への勧誘だったんだけどね。勇者が想定より厄介で予定を変更したのさ」

 

 

そうカトレアが言うが、ハジメもそうだが、主に雷電はフォースで相手の嘘を見抜ける為にカトレアが言っていることは本当であるが、他にもまだ隠していることをフォースを通して見抜いていた。

 

 

「……どうやら本当でありながら、他にもこの大迷宮に用があった様だな」

 

「どういう意味だい?」

 

「俺には嘘は通用しない。勧誘の件は本当の様だが、それは本来の目的ではないだろ?そもそも、勧誘なら大迷宮の深部でする必要はないからな。大方、この大迷宮の攻略なのだろう?」

 

「その辺はあんたらの想像に任せるよ。他に喋ることなんてあたしには無いよ。そもそも、人間族の有利になるような事を話すと思うかい?バカにされたもんだね?」

 

 

そう返答を返したカトレアに対してハジメはドンナーでカトレアの両足を撃ち抜く。

 

 

「…っ!?ぐぁぁあ!!」 

 

 

悲鳴を上げて崩れ落ちるカトレア。魔物が息絶え静寂が戻った部屋に悲鳴が響き渡る。情け容赦ないハジメの行為に、背後でクラスメイト達が息を呑むのがわかった。しかし、ハジメはそんな事は微塵も気にせず、ドンナーを魔人族の女に向けながら再度話しかけた。

 

 

「人間族……もとい、この世界の人間達のことなんて知った事か。俺は知りたいから聞いているんだ。それに、質問は既に尋問に変わっているんだ。さっさと答えろ」

 

「くっ……この程度で口を割るとでも思うのかい?「…“神代魔法”だろ?お前たちの狙いは?」

……っ!?」

 

 

口を割るつもりもない筈が、雷電によって目的を見抜かれたカトレアは驚きを隠せなかった。図星を突かれたカトレアを無視して雷電は語り続ける。

 

 

「お前が連れて来た魔物達は戦ってみて分かったが、あれは“神代魔法”の産物なのだろ?魔人族の魔物が急に強くなった理由もそれで説明がつく。魔人族の中に七大迷宮を攻略した人物がいるという事だ。そもそも神代魔法は強力だから故に、すぐに他の神代魔法を手に入れようと動くはず。そんな中、勇者達がオルクス大迷宮にいる情報を耳にし、勇者達の調査・勧誘と並行して大迷宮攻略に動いたということだ。そもそも、大迷宮の攻略は骨が折れるくらい困難を極めるからな。そしてお前の最終目的は、オスカー・オルクスの隠れ家を見つける事。…違うか?」

 

「…っ。そこまで知っているという事は、あんた等も迷宮の攻略者ってことか。“あの方”と同じなら、その強さも納得がいくよ。そしてあのファースト・オーダーとか言う連中がジェダイには注意しろと言った理由もそれか……」

 

「“あの方”…か。大方あの魔物はそいつからの贈り物だったわけか」

 

「それだけではない。あのファースト・オーダーも魔人族と繋がっている事も判明した。これは思ってもいない収穫だ」

 

 

カトレアから少ない情報を収集した雷電たち。するとまたもや魔法陣がカトレアの背後から出現し、その魔法陣から何者かが転移してくる。

 

 

その正体は、現在魔人族から雇われている一人の賞金稼ぎ“ジャンゴ・フェット”だった。

 

 

「ジャンゴ!?」

 

「魔人族から依頼で様子を見に来たんだが、どうやら手遅れの様だな?」

 

「…ちっ。よりによってあんたかい、ジャンゴ」

 

「文句言うな。俺はクライアントからカトレアが無事なら可能な限り連れ帰れという依頼を受けている。無理だった場合は形見でも回収しろと言われているからな」

 

「……だったら、あたしの考えている事くらい分かるだろう?人間族の捕虜になるつもりは無いよ。それと、これをミハイルに…」

 

 

そう言ってカトレアはロケットペンダントをジャンゴに投げ渡す。ジャンゴはロケットペンダントを回収した後に察した。カトレアはここで死ぬつもりなのだと…

 

 

「…分かった。こいつはお前の恋人に渡しておく」

 

「人間のあんたに頼むのはしゃくだけど……頼んだよ」

 

 

ジャンゴは依頼を果たす為にこの場を後にしようとした時、天之河がジャンゴを呼び止める。

 

 

「待てっ!お前は彼女を助けに来たんじゃないのか!?」

 

「クライアントからは飽くまでも()()()()()と言われている。本人が助からないと判断し、そういったんなら、形見を俺に預けた時点で分かっている筈だが?」

 

「…本当に何も分かってない坊ちゃんだね?さっきも言った様にこれは戦争なんだよ」

 

「だからって、味方を見捨てる理由には「別に俺はこいつらの仲間じゃない」……っ!」

 

「俺は賞金稼ぎだ。飽くまで魔人族から依頼を受け、仕事をこなすだけだ。それに、お前にとやかく言われる筋合いはない」

 

 

ジャンゴはそう天之河に対して冷たく言葉を言い放つ。そしてジャンゴは天之河から雷電たちに向けてある警告を告げる。

 

 

「ジェダイにハジメ、一応数分後に例のファースト・オーダーとか言う連中が一個大隊の兵士がこの大迷宮にピンポイントで転移してくるぞ。恐らく、俺の仕事が失敗した事を想定しての置き土産だろうな?」

 

「マジか……つーかそんな事、俺達の前で話して大丈夫なのか?」

 

「俺のクライアントは魔人族だけだ。ファースト・オーダーは別だ」

 

 

そう言ってそのまま転移魔法でジャンゴはこの場から去る。そしてカトレアもジャンゴが去ったの確認したのを確認した後にハジメに直ぐに殺す様に言う。

 

 

「もう、いいだろ?ひと思いに殺りなよ。あたしは、捕虜になるつもりはないからね。…もっとも、こんな所で死ぬのは悔しいが……いつかあたしの敵を恋人がとってくれる」

 

「いいだろう。そいつも敵ならあの世で再会させてやるよ。魔人族であれ、敵が俺達の行く手を遮るなら俺達は神だって殺す。その神に踊らされてる程度の奴では、俺達には届かない」

 

 

互いにもう話すことはないと口を閉じ、ハジメは、ドンナーの銃口を魔人族の女の頭部に向けた。

 

 

 

しかし、いざ引き金を引くという瞬間、大声で制止がかかる。

 

 

「待て!止めろ、南雲!彼女はもう戦えないんだぞ!殺す必要はないだろ!」

 

「……」

 

 

ハジメは、ドンナーの引き金に指をかけたまま、“何言ってんだ、アイツ?”と訝しそうな表情をして肩越しに振り返った。光輝は、フラフラしながらも少し回復したようで何とか立ち上がると、更に声を張り上げた。

 

 

「捕虜に、そうだ、捕虜にすればいい。無抵抗の人を殺すなんて、絶対ダメだ。俺は勇者だ。南雲も仲間なんだから、ここは俺に免じて引いてくれ」

 

 

余りにツッコミどころ満載の言い分に、ハジメは聞く価値すらないと即行で切って捨てた。魔人族のカトレアも天之河の甘さに呆れる他に無かった。

 

 

「人間族は厄介なのを抱えてるね……あの坊ちゃんの様な甘ちゃんをさ?」

 

「言っただろ?人間族の事なんて知らねぇよ」

 

 

ハジメの言葉を皮切りに“ドパンッ!”と乾いた破裂音が室内に木霊する。解き放たれた殺意は、狙い違わず魔人族の女の額を撃ち抜き、彼女を一瞬で絶命させた。

 

 

 

静寂が辺りを包む。クラスメイト達は、今更だと頭では分かっていても同じクラスメイトが目の前で躊躇いなく人を殺した光景に息を呑み戸惑ったようにただ佇む。そんな彼等の中でも一番ショックを受けていたのは白崎のようだった。

 

 

 

人を殺したことにではない。それは、白崎自身覚悟していたことだ。この世界で、戦いに身を投じるというのはそういうことなのだ。迷宮で魔物を相手にしていたのは、あくまで実戦()()なのだから。

 

 

 

だから、殺し合いになった時、敵対した人を殺さなければならない日は必ず来ると覚悟していた。自分が後衛職で治癒師である以上、直接手にかけるのは八重樫や天之河達だと思っていたから、その時は、手を血で汚した友人達を例え僅かでも、一瞬であっても忌避したりしないようにと心に決めていた。

 

 

 

白崎がショックを受けたのは、ハジメに人殺しに対する忌避感や嫌悪感、躊躇いというものが一切なかったからである。息をするように自然に人を殺した。白崎の知るハジメは、弱く抵抗する手段がなくとも、他人の為に渦中へ飛び込めるような優しく強い人だった。

 

 

 

その“強さ”とは、決して暴力的な強さをいうのではない。どんな時でも、どんな状況でも“他人を思いやれる”という強さだ。かつて大迷宮の奈落に落ちた日に雷電が通信して来てハジメの生存を知ったと同時にハジメから白崎が知る南雲ハジメじゃないと告げられた。だからこそ、無抵抗で戦意を喪失している相手を何の躊躇いも感慨もなく殺せる。ハジメが言ってた通り、自分の知るハジメとは余りに異なり衝撃だったのだ。

 

 

 

八重樫は、親友だからこそ、白崎が強いショックを受けていることが手に取るようにわかった。そして、日本にいるとき、普段から散々聞かされてきたハジメの話から、白崎が何にショックを受けているのかも察していた。

 

 

 

八重樫は、涼しい顔をしているハジメを見て、確かに変わりすぎだと思ったが、何も知らない自分がそんな文句を言うのはお門違いもいいところだということもわかっていた。なので、結局、何をすることも出来ず、ただ白崎に寄り添うだけに止めた。

 

 

 

だが、当然、正義感の塊たる勇者の方は黙っているはずがなく、静寂の満ちる空間に押し殺したような光輝の声が響いた。

 

 

「…何故殺したんだ。殺す必要があったのか…?」

 

 

ハジメは、シアの方へ歩みを進めながら、自分を鋭い眼光で睨みつける光輝を視界の端に捉え、一瞬、どう答えようかと迷ったが、次の瞬間には、そもそも答える必要ないな!と考え、さらりと無視することにした。

 

 

 

そう考えていたその時、この階層に大型の魔法陣が出現し、ジャンゴの言ってた通り、そこからファースト・オーダーのストーム・トルーパー達が多数も現れた。

 

 

 

クラスメイト達はストーム・トルーパーを見て、最初は“クローン達の仲間か?”と思われたが、クローン達は逆にストーム・トルーパー達を敵と認識してブラスターを構えていた。ジャンゴが言ってた事が本当であった事を認識した雷電たち。

 

 

「どうやらジャンゴが言っていた事は本当の様だな?」

 

「その様だ。どっちみち、ここで殲滅しないと安全が確保できないのも事実だな。それと雷電、こいつらの相手は俺がする」

 

「何だ?ゴーレム達を相手していたのに不完全燃焼なのか?」

 

「そんなところだ。ここで完全に燃焼させる」

 

 

雷電は“程々にな…”と言って不良分隊と共にこの場を離れる。そしてハジメはドンナーとシュラークを構える。その時、ポールドロンを装備した隊長格のストーム・トルーパーが一人で挑んでくるハジメに対して甘く見られている事に腹を立てる。

 

 

「おのれ…!我々相手に一人で挑んで来ようとは!その蛮勇が如何に愚かな事である事を思い知らせてやるぞ!」

 

「てめぇらの御託なんざ知らねぇよ。こちとら少しばかり不完全燃焼気味なんだ。悪いが、こっちの我が儘に付き合ってもらうぞ」

 

 

ハジメはそういってドンナーとシュラークをガン=カタの体勢で構える。ストーム・トルーパー達もそれぞれ部ラスターを構える。そしてハジメはストーム・トルーパー達に告げる。

 

 

「ここで俺に出会った不幸を呪え。さぁ…何処を撃ち抜かれたい?五秒以内に答えればリクエストに応えてやるぞ?」

 

「…殺れ!ファースト・オーダーに逆らった事を後悔させてやれ!」

 

 

隊長格のストーム・トルーパーの命令を合図に他のストーム・トルーパー達がF-11Dブラスター・ライフルをハジメに向けて撃ちまくる。しかし、ストーム・トルーパー達はハジメのありえない機動で躱しながらもこちらに向かってくる事を予想が出来なかった。

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

そして懐まで接近を許してしまい、ハジメに目を付けられた二人のストーム・トルーパーはドンナーとシュラークを顔もとに向けられてしまう。ここまで掛かった時間は、ハジメが宣言したどおり五秒ちょうどだった。

 

 

「時間切れだ…!」

 

 

ハジメは一切容赦することなくドンナーとシュラークの引き金を引き、近場の二人のストーム・トルーパーをヘルメットごと眉間を撃ち抜き、そして周りにいるストーム・トルーパー達を急所を撃ち抜く。空になった薬莢を排出しながらも次弾を装填し、再び射撃し、どこぞの髑髏の魔神皇帝の如くストーム・トルーパー達を次々と撃ち抜いていく。そしてある程度撃った後、ドンナーとシュラークに宝物庫からある拡張パーツを空中で出現させ、それを装着させる。

 

 

 

装着したそれはハジメが雷電たちに内緒で密かに作り上げたレーザーソードのレーザー刃発生装置だった。その出力は低く設定されているものの、ナイフくらいの刀身サイズのレーザー刃を展開する事が可能のアタッチメントパーツだった。本来ならドンナーとシュラークの装備ではないが、ハジメが万が一の事を考え急造で作った拡張パーツであった。

 

 

「まだだ、じっくり味わえ!」

 

 

そう言ってハジメは拡張パーツを取り付けられたドンナーとシュラークからレーザー刃を展開し、そのままストーム・トルーパー達に斬り掛かり、一気にその数を減らす。そして気付いた時には隊長格のストーム・トルーパー以外の者はハジメ一人によって殲滅されたのだった。

 

 

「なっ……バカな!?一個大隊のストーム・トルーパー部隊が全滅だと!?」

 

「後はお前だけだな?」

 

「…ちっ!舐めるな!!」

 

 

そして隊長格のストーム・トルーパーはブラスターを捨て、腰に懸架していたZ6暴動鎮圧用警棒を展開し、ハジメと接近戦を仕掛けるのだった。しかし、悲しいかな…ハジメはそんな相手を容赦する事無く、隊長格のストーム・トルーパーが持つZ6暴動鎮圧用警棒を防ぐと同時に弾き跳ばす。

 

 

 

ガラ空きになった隊長格のストーム・トルーパーにハジメはトドメの一発としてドンナーの引き金を引き、その隊長格のストーム・トルーパーの眉間を撃ち抜き、引導を渡すのだった。

 

 

 

そんなハジメ無双を見ていたクラスメイト達はそんなハジメを見てあまりの変わりようにもはや言葉で表現する事が出来ずにいた。そして雷電が召喚した不良分隊達は……

 

 

「おいおい……こいつは少し洒落にならんだろ」

 

「マジかよ。少しばかり自信を失くすぜ……」

 

「もはや彼の独壇場でしたね?実はジェダイだったというオチではなさそうですが……」

 

「……」

 

 

それぞれ思ったことを感想として呟き、これ以上は何も言えなかった。そして天之河は相変わらず何かぶつくさ言っている様子ではあったが、ハジメはそれを無視するのだった。

 

 

もっとも、そんなハジメの態度を相手が許容するかは別問題である……

 

 

中村恵里が雷電たちの仲間入りする際にどのタイミングがよろしいか?

  • グリューエン大火山に向かう時
  • 王都編が終わる直前の時
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