ありふれないジェダイとクローン軍団で世界最強 作:コレクトマン
49話目です。
ハジメが一人でストーム・トルーパー達を無双し、戦闘が終わった後に俺はシアのところに向かい、騎士の男ことメルドさんの容態を確認した。
「シア、メルドさんの容態はどうだ?」
「危なかったです。あと少し遅ければ助かりませんでした。…でも、良かったのですか?貴重な神水を使ったりして?」
「この人には俺とハジメが色々とお世話になったからな。死なせるのは惜しいし、教会からメルドさん以外の教育係が送られると考えれば、助けた方がいいからな。そうでないとその次に送られる教育係が狂信者だったら、間違った事を教えられ、勇者達と戦わなければならない事だけは避けたいからな。まぁ、あの様子を見る限り、メルドさんもきちんと教育しきれていないようだが……人格者であることに違いはないからな」
そう呟く中、ハジメはストーム・トルーパー達を一掃し終えてこっちに戻って来た。他にも坂上に支えられつつクラスメイト達と共に歩み寄ってくる。そして天之河が、未だハジメを睨みつけている。
「……ハジメ」
「ユエ。ありがとな、頼み聞いてくれて。遠くでも見ていたが、凄い魔法だったな」
「んっ……“蒼天”に重力魔法を組み合わせたオリジナル魔法。限定空間での炎属性は空気と熱の調整が難しい。…少し疲れた。ハジメ成分の補充が今すぐ必要」
「ハジメ成分って何だよ……」
「ユエさん……空気読んでくださいよ」
既に病気と言ってもいいくらい、いつも通り二人の世界を作り始めたハジメとユエに、俺とシアがツッコミを入れて正気に戻す。
何やら、天之河とは違う意味で睨む視線が増えたような気がするハジメ。特に、天之河達とは別方向から来る視線に、俺とハジメは自分の背筋が粟立った。
「ハジメくんに藤原くん……いろいろ聞きたい事はあるんだけど、取り敢えずメルドさんはどうなったの?見た感じ、傷が塞がっているみたいだし呼吸も安定してる。致命傷だったはずなのに……」
「あぁ、それか。それは衛生兵達が持っているバクタ液の上位互換の回復薬を飲ませたからだな。飲めば瀕死でも一瞬で完全治癒するって代物らしい」
「そ、そんな薬、聞いたことないよ?」
「そりゃ伝説になってるくらいだしな……普通は手に入らない。だから、八重樫は治癒魔法でもかけてもらえ。魔力回復薬はやるから」
「え、ええ……ありがとう」
俺達に声をかけられ、未だに記憶にあるハジメとのギャップに少しどもりながら薬を受け取り礼をいう八重樫。ハジメは、そんな八重樫の反応を特に気にするでもなく、白崎にも魔力回復薬を投げ渡した。あわあわと言いながらも、きっちり薬瓶をキャッチした香織も、ハジメに一言礼を言って中身を飲み干す。リポビ○ンな味が広がり、少しずつ活力が戻ってくる。白崎さえ回復すれば、クラスメイト達も直ぐに治癒されるだろう。
取り敢えず、メルドは心配ないとわかり安堵の息を吐く白崎達。そして白崎は近寄り、今まで抑えていた感情を少しずつ解放する。
「ハジメくん……生きててくれた。……ぐすっ、ありがどうっ。あの時、守れなぐて……ひっく……ゴメンねっ……ぐすっ」
流石のハジメでもどう対処すべきか困っていた。ハジメは雷電に助けを求めたが、その時に俺はハンドサインで×の字を作り、“無理だ”と伝える。
クラスメイトのうち、女子は白崎の気持ちを察していたので生暖かい眼差しを向けており、男子の中でも何となく察していた者は同じような眼差しを、近藤達は苦虫を噛み潰したような目を、天之河と坂上は白崎が誰を想っていたのか分かっていないのでキョトンとした表情をしている。鈍感主人公を地で行く天之河と脳筋の坂本、八重樫の苦労が目に浮かぶ。
ユエに関してはいつにも増して無表情でジッと白崎を見つめている。
ハジメは、目の前で顔をくしゃくしゃにして泣く香織が、遠藤に聞いていた通り、あの日からずっと自分の事を気にしていたのだと悟り、何とも言えない表情をした。ハジメは、困ったような迷うような表情をした後、苦笑いしながら香織に言葉を返した。
「……心配かけた様だな?まぁ、この通りしっかり生きてっから、白崎が謝る必要はないしな。……だから泣かないでくれ」
そう言って白崎を見るハジメの眼差しは、いつか見た“守ってくれ”と言った時と同じ白崎を気遣う優しさが宿っていた。その眼差しに、あの約束を交わした夜を思い出し、胸がいっぱいになる白崎。そして……
「ハジメく〜〜んっ!!」
思わずワッと泣き出し、そのままハジメの胸に飛び込んでしまった。胸元に縋り付いて泣く白崎にどうしたものかと両手をホールドアップしたまま途方に暮れるハジメ。他のクラスメイトだったら、問答無用に鬱陶しいと投げ飛ばすか、ヤクザキックで意識を刈り取るかするのだが、ここまで純粋に変わらない好意を向けられると、奈落に落ちる前のこともあり、邪険にしづらい。
ただ、ユエの手前、ほかの女を抱きしめるのははばかられたので、銃口を突きつけられた人のように両手をホールドアップさせたまま、香織の泣くに任せるという中途半端な対応になってしまった。実に、ハジメらしくない。
傍らにいる八重樫から“私の親友が泣いているのよ!抱きしめてやんなさいよぉ!”という視線が叩きつけられているが、無言で見つめてくるユエの視線もあるので身動きが取りづらい。それに対して雷電やデルタ分隊、不良分隊に清水はただ暖かい目で見送るしか無かった。ハジメは仕方なく間をとって、ポンポンと軽く頭を撫でるに止めてみた。本当に、いつになくヘタレているハジメだった。
「……ふぅ、香織は本当に優しいな。クラスメイトが生きていた事を泣いて喜ぶなんて……でも、南雲は無抵抗の人を殺したんだ。雷電も何故ハジメを止めなかったのかを事も含めて話し合う必要がある。もうそれくらいにして、南雲から離れた方がいい」
クラスメイトの一部から“お前、空気読めよ!”という非難の眼差しが天之河に飛んだ。この期に及んでこの男は、まだ白崎の気持ちに気がつかないらしい。何処かハジメを責めるように睨みながら、ハジメに寄り添う白崎を引き離そうとしている。単に、白崎と触れ合っている事が気に食わないのか、それとも人殺しの傍にいることに危機感を抱いているのか……あるいはその両方かもしれない。
「ちょっと、光輝!南雲君達は、私達を助けてくれたのよ?そんな言い方はないでしょう?」
「だが、雫。彼女は既に戦意を喪失していたんだ。殺す必要はなかった。南雲がしたことは許されることじゃない」
「あのね、光輝、いい加減にしなさいよ?大体……」
天之河の物言いに、八重樫が目を吊り上げて反論する。クラスメイト達は、どうしたものかとオロオロするばかりであったが、檜山達は、元々ハジメが気に食わなかったこともあり、天之河に加勢し始める。しかし、クラスメイト以外にも例外は存在する。それはクローン達だった。
「貴様、本当にそう思っているのか!?」
「将軍達が助けに来なければ、お前たちは今頃死んでいたのかもしれないんだぞ!」
「あの時、貴様が魔人族に止めを刺さなかったからこの様な事態を引き起こした事を忘れたのか!!」
そうしてクローン達も天之河の意見に反発して次第に、ハジメや雷電の行動に対する議論が白熱し始めた。白崎は、既にハジメの胸元から離れて涙を拭った後だったが、先程のハジメの様子にショックを受けていたこともあり、何かを考え込むように難しい表情で黙り込んでいた。
そんな彼等に、今度は比喩的な意味で冷水を浴びせる声が一つ。
「……くだらない連中。ハジメ、もう行こう?」
「あー、うん、そうだな」
絶対零度と表現したくなるほどの冷たい声音で、天之河達を“くだらない”と切って捨てたのはユエだ。その声は、小さな呟き程度のものだったが、天之河達の喧騒も関係なくやけに明瞭に響いた。一瞬で、静寂が辺りを包み、天之河達がユエに視線を向ける。
ハジメは元々、遠藤から話を聞いて白崎への義理を果たすために来ただけなので用は済んでいる。なので、ハジメの手を引くユエに従い、部屋を出ていこうとした。雷電たちも、周囲を気にしながら追従する。
そんなハジメ達に、やっぱり天之河が待ったをかけた。
「待ってくれ。こっちの話は終わっていない。南雲の本音を聞かないと仲間として認められない。それに、君は誰なんだ? 助けてくれた事には感謝するけど、初対面の相手にくだらないなんて……失礼だろ?一体、何がくだらないって言うんだい?」
「……」
天之河が、またズレた発言をする。言っている事自体はいつも通り正しいのだが、状況と照らし合わせると、“自分の胸に手を置いて考えろ”と言いたくなる有様だ。ここまでくれば、何かに呪われていると言われても不思議ではない。
ユエは、既に光輝に見切りをつけたのか、会話する価値すらないと思っているようで視線すら合わせない。天之河は、そんなユエの態度に少し苛立ったように眉をしかめるが、直ぐに、いつも女の子にしているように優しげな微笑みを携えて再度、ユエに話しかけようとした。
このままでは埓があかないどころかユエを不快にさてしまうと感じたハジメは、面倒そうな表情で溜息を吐きながらも代わりに少しだけ答えることにした。
「天之河。存在自体が色んな意味で冗談みたいなお前をいちいち構ってやる義理も義務もないが、それだとお前はしつこく絡んできそうだから、少しだけ指摘させてもらう」
「指摘だって?俺が、間違っているとでも言う気か?俺は、人として当たり前の事を言っているだけだ」
ハジメから心底面倒です!という表情を向けられ、不機嫌そうにハジメに反論する天之河に取り合わず、ハジメは言葉を続けた。
「誤魔化すなよ」
「いきなり何を……」
「お前は、俺があの女を殺したから怒っているんじゃない。人死にを見るのが嫌だっただけだ。だが、自分達を殺しかけ、騎士団員を殺害したあの女を殺した事自体を責めるのは、流石に、お門違いだと分かっている。だから、無抵抗の……相手を殺したと論点をズラしたんだろ?見たくないものを見させられた、自分が出来なかった事をあっさりやってのけられた……その八つ当たりをしているだけだ。さも、正しいことを言っている風を装ってな。タチが悪いのは、お前自身にその自覚がないこと。相変わらずだな。その息をするように自然なご都合解釈」
「ち、違う!勝手なこと言うな…お前が、無抵抗の人を殺したのは事実だろうが!」
「敵を殺す、それの何が悪い?」
「なっ!?何がって、人殺しだぞ!悪いに決まってるだろ!」
天之河がそう言い返す中、不良分隊のクロスヘアが天之河に対して煽る様に声を掛ける。
「ほぉ?オタクの理屈や常識が正しいんだってなら、
クロスヘアの煽りに天之河が口を開く前に坂上がクロスヘアの物言いに怒りを覚えたのかクロスヘアに突っ掛かる。
「お前な、光輝にそんな言い方はねぇだろ!光輝だって俺達の事を考えて言っているんだ!」
「うるせぇな、オメェはよっ!」
「なっ!?がぁっ……!!」
その時に坂上よりも巨体なレッカーが議論に介入して来て、坂上の首元を掴み、片手で軽々と持ち上げる。クラスメイト達も雷電が新たに召喚したクローンが天之河達に対して敵対したのではないのかと不安が一気に込み上がるのだった。
「りゅ…龍っち!?」
「なっ!?お前、龍太郎を離せ!」
天之河がレッカーから龍太郎を救おうと行動するも、クロスヘアに邪魔される。
「引っ込んでな…!」
「何だとっ!?」
「あぁ…皆、止めようよ…」
そうして激突する中、天之河は未だに回復しきれてない為か、それともハジメから指摘された事にまだ戸惑いを隠し切れてない為か、クロスヘアに一方的にやられるだけであった。不良分隊の中で一番利口であるテックが喧嘩を止めようとするが、天之河達は殆ど聞く耳を持たなかった。
ハンターは天之河の甘さとご都合解釈に呆れるほかになかった。俺に至っては逆に怒りが込み上がっていた。ハンターがレッカー達に喧嘩をやめるよう命令しようとした時に俺は代わりにやると伝え、喧嘩している天之河達の前で怒りと殺意をピンポイントで放出する。
「「「っ!?」」」
「お前たち、いいかげんにしろ。それとレッカー、坂上を降ろせ。今…すぐにだ…」
「りょ…了解!(将軍、マジで怒ると怖ぇや…!)」
レッカーは雷電の怒りにびびったのか、すぐに坂上を手放して地面に降ろすのだった。それを確認した俺は怒りと殺意を静める。クラスメイト達からの目線で見れば雷電の怒りの素顔が一瞬、本物の鬼の顔に変わった様に見えたのは余談だ。
「お前たち、こんな時にくだらない事で仲間割れするな。それと天之河、今回ばかりお前にも責任がある。お前は人を殺す覚悟がない所為でコルトを含めて多くのクローン達が戦死した。ハジメの言う通り、敵を殺せなかった自分への怒りを俺やハジメに向けているだけだ。それも元いた世界の常識を持ちかけて自分の正しさを強調してな」
「なっ!?違う、俺は人として当たり前のことを言っているだけだ!」
「そんな常識、この世界には通用しないという事をいい加減に理解しろと言っているんだ!!」
俺は天之河の自分への正当性という名のご都合解釈にしびれを切らし、怒りを混ぜ込んだ言葉を放った。普段怒る事はない雷電を目の当たりにしたクラスメイト達は雷電の事を初めて怖いと認識したのだった。そんなクラスメイト達を無視して、言葉を続ける。
「お前は何時もそうだ!そのくだらないご都合解釈の所為でいったいどれだけの仲間を犠牲にしたんだ!コマンダー・コルトはお前たちを魔人族から逃がしたというのに、回復も済んでいない状況で追いついて来た魔人族と魔物達を相手にするなんざ、愚策にも程があるだろうが!」
「だ…だが!あの時は戦わなければいずれ香織達が死んでいた筈だ!」
「実際にクローン達やメルド騎士団の者たちが死んで、その白崎達が死にかけたんだろうが!何でもそのくだらないご都合解釈で言い訳するな!!対人戦において人を殺すという恐怖に負けて逃げ出したお前にとやかくいう資格はない!」
「なっ、俺は逃げてなんて……」
裏話ではあるが、ハジメ達がピンポイントであの場所に落ちてこられたのは偶然ではない。ちょうど上階を移動している時に莫大な魔力の奔流を感じて天之河達だと察したハジメが、感知系能力をフル活用して階下の気配を探り、錬成とパイルバンカーで撃ち抜いたというのが真相である。
そして、その時感じた魔力の奔流とは、天之河の“覇潰”だった。感じた力の大きさからすれば、あの状態の天之河なら魔人族の女を討てたはずだと、ハジメ達はわかっていた。なので、その後の現場の状況と合わせて天之河が人殺しを躊躇い、その為にあの窮地を招いたのだと看破していたのだ。それが、俺の言う“恐怖に負けて逃げ出した”という言葉である。
天之河が、俺に反論しようとすると、そこへ深みのある声が割って入った。
「よせ、光輝」
「メルドさん!」
メルドは、少し前に意識を取り戻して、天之河達の会話を聞いていたようだ。まだ少しボーとするのか、意識をはっきりさせようと頭を振りながら起き上がる。そして、自分の腹など怪我していたはずの箇所を見て、不思議そうな顔で首を傾げた。
白崎が、メルドに簡潔に何があったのかを説明する。メルドは、自分が何やら貴重な薬で奇跡的に助けられたことを知り、そして、その相手がハジメと雷電であると聞いて、ハジメと雷電の生存を心底喜んだ。また、救われたことに礼を述べながら、あの時、助けられなかった事を土下座する勢いで謝罪するメルドに、俺は謝罪の必要は無いと伝え、ハジメは居心地悪そうにして謝罪を受け取った。
ハジメとしては、全く気にしていなかったというか、メルドが言った“絶対助けてやる”という言葉自体忘却の彼方だったのだが……深々と頭を下げて謝罪するメルドを前に空気を読んだのだ。
ハジメとのやり取りが終わると、メルドは、天之河に向き直り、ハジメにしたのと同じように謝罪した。
「メ、メルドさん?どうして、メルドさんが謝るんだ?」
「当然だろ。俺はお前等の教育係なんだ……なのに、戦う者として大事な事を教えなかった。人を殺す覚悟のことだ。時期がくれば、偶然を装って、賊をけしかけるなりして人殺しを経験させようと思っていた……魔人族との戦争に参加するなら絶対に必要なことだからな……だが、お前達と多くの時間を過ごし、多くの話しをしていく内に、本当にお前達にそんな経験をさせていいのか……迷うようになった。それを代わり務めてくれたのは今は亡きコルト達だった。それも本格的な対人戦闘訓練を天之河達にしてくれた。騎士団団長としての立場を考えれば、早めに教えるべきだったのだろうがな……もう少し、あと少し、これをクリアしたら、そんな風に先延ばしにしている間に、今回の出来事だ……私が半端だった。教育者として誤ったのだ。そのせいで、お前達を死なせるところだった……申し訳ない」
そう言って、再び深く頭を下げるメルドに、クラスメイト達はあたふたと慰めに入る。どうやら、メルドはメルドで天之河達についてかなり悩んでいたようだ。団長としての使命と私人としての思いの狭間で揺れていたのだろう。
メルドも、王国の人間である以上、聖教教会の信者だ。それ故に、“神の使徒”として呼ばれた天之河達が魔人族と戦うことは、当然だとか名誉なことだとか思ってもおかしくはない。にもかかわらず、天之河達が戦うことに疑問を感じる時点で、何とも人がいいというか、優しいというか、ハジメや雷電の言う通り人格者と評してもいいレベルだ。
メルドの心の内を聞き、押し黙る天之河。コルトやメルドからも言われた様にそう遠くないうちに人を殺さなければならないと言われ、魔人族の女を殺しかけた時の恐怖を思い出したようだ。それと同時に、たとえ賊であっても人である者を訓練のために殺させようとしていたメルドの言葉にショックも受けていた。賊くらいなら、圧倒出来るだけの力はあるので、わざわざ殺すなんて……と。
そんな感じで天之河をメルドに任せた後に俺は次に檜山の方に向ける。
「な……何だよ!?」
「檜山、お前の所業はクローンのイザナミから聞かされている。ベヒモス戦で撤退中のハジメに対して意図的に魔法を当て、橋から落とした。間違いないか!」
そう雷電から告げられた事に檜山は青ざめた。実は四ヶ月前の事、ハジメ達が落ちてから檜山は部屋にて自分がやった事に“俺は悪くない…”と何回も呪詛を唱える様に呟いていた。そんな時に中村が檜山に“素直に誤ったらどう?”と提案を持ちかける。それを聞いた檜山は中村の目的を聞いて、互いに利害が一致し、そして互いに利用する関係を築いたのだ。
そしてハジメ達が奈落に落ちた翌日、檜山は天之河達の前で自分の魔法が南雲に当たってしまったことを謝罪したのだ。無論、クラスメイト達も檜山の事を許せなかったが、天之河は檜山を許してしまったのだ。心を入れ替えて改心したとご都合解釈で判断したのだ。
そして檜山はハジメと一緒に落ちた雷電に恐怖しながらも苦し紛れに言い訳をする。
「あ……あぁ。だ、だがアレはワザとじゃないんだ!俺はあの時ベヒモス相手に焦っていたんだ!それに、天之河だって許してくれたんだ!俺は本当に……」
「…嘘をつくならまともな嘘を付け。……しかし、俺とて人の子だ。そこまで鬼じゃない。だが、お前には元の世界に戻った際に来るべき裁判を受けてもらう。それまで俺が建造する兵舎で監禁させてもらう。元の世界に戻ったら厳しい処罰を覚悟するんだな」
檜山のいい分すら聞かず、雷電はクローン二名に檜山を連行するよう指示を出す。その時に天之河が檜山が連行されるところを見たのか止めに入った。
「待つんだ雷電!檜山はちゃんと反省しながら皆の前で謝ったんだ。改心して、俺達と一緒に迷宮に挑む事で贖罪をしてい──」
そんな天之河に対して俺はフォース・スリープで強制的に眠らせる。これ以上、天之河の御託に付き合ってやる程、俺は暇ではなかった。
「たとえ犯人が謝罪したとしても、本心を見抜けないお前では奴が改心している事すら見抜けはしない。それに、それを決めるのは天之河、お前じゃない。ハジメだ。ハジメ、お前は檜山をどうしたい?」
俺はそうハジメに問いを投げた。そしてハジメは答えは決まっていたかの様にすぐに答えた。
「今更、檜山がどうなろうと俺の知った事じゃない。復讐なんざ興味はねぇ。俺の目的は元の世界の帰還だからな。お前の好きにしろ…」
「了解だ。…トルーパー、追加で悪いが、天之河を運んでくれ」
そうして天之河はクローンによって運ばれて行き、檜山は二人のクローンによって連行されるのだった。
「や、やめろ!放せ!」
「大人しくしろ!」
檜山はそれに抵抗するが、無意味である。
「いやだ……死にたくない!俺はまだ、死にたくないんだー!」
別に殺される事は無いのに対して檜山はそう叫ぶ他に無かった。そして檜山は後悔した。あの時、ハジメを橋から落とすんじゃなかったと思う一心であった。
檜山が連行されて行くの見送った俺はハジメ達とクラスメイト達を引き連れてこの迷宮から脱出するのだった。この時にユエが白崎に対して嘲笑したことに白崎はその意味を理解して対抗心を燃やしたのは別の話。
中村恵里が雷電たちの仲間入りする際にどのタイミングがよろしいか?
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グリューエン大火山に向かう時
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王都編が終わる直前の時