ありふれないジェダイとクローン軍団で世界最強   作:コレクトマン

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ストックが切れたので少し遅れます


5話目です


闇の暗雲、オルクス大迷宮

 

 

他の皆が就寝している真夜中の時間に俺は起きた。エレクトロ・ロングバトンの開発の疲れがまだ残っていたのか余り寝付けなかった。一旦夜風でも当たってからもう一度寝ようと部屋を出て廊下を歩いている時に偶然にもクラスの中で図書委員を務めている“中村 恵里”の姿があった。

 

 

「あ……藤原くん。起きてたの?」

 

「ん?中村か。まあ少しな……夜風でも当たろうと思って丁度外へ向かおうとしていたところだ」

 

 

“そう…”と中村が呟いた時に僅かだが、彼女自身から強い好意と執着心、そして俺に対する憎しみを感じ取れた。一体誰に好意を抱き、執着しているのかは分からないが、俺に対して憎んでいるとなるとこれはこれで危険だった。すると中村から俺にこんな質問をして来た

 

 

「藤原くん、一つ良いかな?」

 

「俺に、何かあるのか?」

 

「うん、藤原くんはどうして天之河くんとぶつかってばかりなの?」

 

 

ここであいつ(天之河)を出してくるとは、どうやら彼女は天之河に対して好意を抱きながらも自分の者にしたいという執着心……いや、もはや執着心以前の問題で天之河を自分の者にする為なら手段を選ばない独占欲の持ち主なのだろう。…もし彼女がフォース感応者だとしたら完全に間違いなく暗黒面に堕ちるだろう。とりあえず俺は彼女の問いに答えるのであった。

 

 

「天之河か……何でぶつかってばかりだというと、正直に言えば生理的に俺は彼奴のことが嫌いなんだ」

 

「え…?」

 

「あいつは確かに成績優秀でスポーツ万能。そして正義感がある。そこは理解出来るし、あいつの良いところだ。…だが、あいつは自分自身の欠点とまるで向き合っていないんだ。その欠点は二つ。ご都合解釈と目の前の現実を直視出来ていないことだ。イシュタルが言った様に、この世界の人間族が滅亡の危機に瀕している状況の中で、あいつはクラスを元の世界へ戻すよりもこの世界を救う方を取った。生徒や世界の大局を見ず、視野を狭めてだ」

 

 

俺は中村の問いを隠さずに答えた。その時の中村の表情は変わっていなかったが、その裏の表情では俺に対しての怒りと憎しみが渦巻いていた。正直に話したらここまで殺意が溢れ出るとは思いもしなかった。流石にこの状況は危険であると思い、急遽話題を変えるのであった。

 

 

「……まぁ、アレだ。俺はあいつのことを嫌いであることは変わりないが、中村の場合はあいつの事はどうなんだ?」

 

「え…!?わ、私?」

 

「あぁ、俺は人の恋路……というのか?それを邪魔する程無粋じゃない。あいつを振り向かせられるかは中村次第だ」

 

 

中村は俺がこのような事を言うのを想定していなかったのか言葉が上手く繋げられなかった。しかし、まさか天之河に好意を抱いているとは思わなかったが、中村の場合は満更でもなかった様だ。だが、念には念で彼女には釘を刺しておく必要がある。

 

 

「しかしだ、もしあいつを振り向かせる為にクラスを利用して危険に晒すというのなら話は別だ。もしそうなったら、その時は俺が止める。…まぁ、そうでなければあいつに振り向いてもらえるまで頑張れ、応援はする。……じゃあ、もう戻るよ」

 

 

そう言い残して俺はこの場を後にするのであった。一応彼女も俺の心の中の警戒リストにいれて置いて明日に備えておく。明日のオルクス大迷宮での実戦訓練で何も起きなければ良いんだが……。

 

 

雷電Side out

 

 

 

翌日の朝、僕たちはオルクス大迷宮の正面入り口付近に集まっていた。僕ら以外……というより、雷電が召喚したクローン・トルーパー達の数が異常だった。…いや、クローンだからこれだけの数がいても不思議じゃないけど、他のみんなからすれば異常すぎる数なのかもしれない。一応彼から何人くらい召喚したのか聞いてみたら一個中隊……つまり、120人前後のクローン・トルーパーがこの実戦訓練で僕らに万が一が起きた時の中隊だそうだ。その中隊のうち20人は青い模様を施したアーマーを身に着けた重武装のARCトルーパーだった。

 

 

「すっごい規模の数だ……」

 

「これ全部、雷電が召喚した奴?」

 

「嘘だろ…おい…?」

 

 

流石にクラスのみんなも雷電が召喚したクローン達を見て驚いていた。まぁ……スターウォーズ知っている人や知らない人でも本物のクローン・トルーパーの軍団と会えるなんて想像出来る筈がないからね。そう考えていると雷電が新たに召喚した名前付きクローンがいた。一人は赤いストライプ模様が施されたフェーズⅠクローン・トルーパー・アーマーを身に着けたARCトルーパー“キャプテン・フォードー”だ。どうやら彼があの一個中隊の指揮官の様だ。

 

 

「将軍、全員準備完了です!」

 

「よろしい……メルド騎士団長、こっちの準備は完了だ」

 

「分かった。……にしても改めて思うが、本当に君が召喚した兵士なんだな?」

 

「まぁ…人間を召喚、というよりは複製人間を召喚するのは多分この歴史に置いて初めてであるかもしれないが彼らはちゃんとした人だ、使い捨ての消耗品じゃない」

 

「分かっている。味方がこんなにも多ければ心強いものだ」

 

「そうだな。……よし、ランコア大隊のコマンダー達。そしてドミノ分隊。俺たちが戻るまでここで待機してくれ」

 

「「「サー、イエッサー!」」」

 

 

コルト達以外にも雷電が召喚したドミノ分隊。“エコー”に“ファイヴス”、“ヘヴィー”に“カタップ”、そして“ドロイドベイト”の5人。エコーとファイヴスはコルト達と同じARCトルーパーである。彼らを召喚した理由は雷電曰く、万が一俺がいないときの場合に備えてのクラスを守る精鋭部隊だそうだ。流石にいくらなんでも過保護的過ぎ何じゃないかなと思った。すると雷電が挨拶して来た。

 

 

「おはようハジメ、そっちはどうだ?」

 

「うん、ぼちぼちってところかな?それと昨日コルトから聞いたけど、これ本当に貰っても良いの?」

 

「ハンド・ブラスターの事か?いや良いんだ。お前に万が一何か起きた場合はそれで己自身を守れる筈だ。それに、何かとフォースがざわついてな。何か良くないことが起こりそうなんだ」

 

 

 

良くない事?それが一体何なのか聞いてみようとした時に白崎さんが態々こっちに挨拶しに来てくれた。

 

 

「南雲くん、藤原くん。おはよう!」

 

「し……白崎さん!?」

 

「白崎か。八重樫と一緒にいると思ったが、態々俺たちに挨拶を?」

 

「うん。雫ちゃんにはもう説明してあるから南雲くん達に挨拶しておきたくって」

 

 

そう言われると流石に少しばかり照れてしまう僕であった。……でも、少し嬉しいと思ったのも事実だし、今回ばかりは良いよね?

 

 

「あーうん、おは……!」

 

「……っ!」

 

 

白崎さんに挨拶しようとしたその時に急に視線の様なものを感じた。そしてそれに気付いた雷電もロングバトンを取り出して何かに警戒しながらも周囲を見渡した。しかし、誰もいなかった。

 

 

「どうしたの南雲くん、藤原くん?」

 

「い……いや、何でもない」

 

「あぁ…どうやら気のせいだった様だ」

 

 

誰かの視線を感じたのは気のせいだとしても雷電は警戒を解かなかった。そして雷電は僕にあることを伝える。

 

 

「ハジメ、今回の実戦訓練は嫌な予感がする。周りには気をつけろ。特に、()()には要注意だ」

 

 

そう告げた後に雷電はクローン一個中隊を率いて大迷宮へ進軍するのであった。その時の僕が彼の言った言葉の意味を理解したのは、迷宮で起きる悲劇の後である事を今の僕は知る由もなかった。

 

 

 

迷宮の中は縦横5メートル以上ある通路で、明かりもないのに周りの一部は薄ぼんやり発光しており、松明や明かりの魔法具がなくてもある程度視認が可能な明るさだった。その発光している物の正体は“緑光石”と呼ばれる特殊な鉱物で、それが壁に多数埋まっていた。オルクス大迷宮は、巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているらしい。その薄ぼんやり発光している場所でも雷電率いるクローン軍やメルド団長率いるベテラン騎士団員がクラスメイト達を守る様に陣形を固めながら進んでいた。これほど防御が固い陣形を組みながら進むというのは何かと変な気分だな?そう思っていた矢先、物珍しげに辺りを見渡している一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。

 

 

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

 

メルド団長の言葉通り、ラットマンと呼ばれた魔物が結構な速度で飛びかかってきた。灰色の体毛に赤黒い目が不気味に光る。ラットマンという名称に相応しく外見は鼠っぽいが……二足歩行で上半身がムキムキだった。正直言って気持ち悪い。前衛に立つ白崎さんと八重樫さんの頬がかなり引き攣っている。やはりどんな人間でもあの様なムキムキな魔物を見るのは相当気持ち悪いらしい。僕とて同じ気持ちだ。

 

 

 

そんな前衛の中で天之河君、坂上君、八重樫さん、雷電の4人が迎撃する。その合間に白崎さんと特に親しい女子2人、図書委員を務める中村 恵里と元気っ子の谷口 鈴が詠唱を開始。天之河君は純白に輝くバスタードソード“聖剣”を視認も難しい程の速度で振るって数体をまとめて葬っていた。そして雷電はフォースによる未来予知の通りにエレクトロ・ロングバトンで確実に敵を感電死させて倒していた。……アレは本当に作った甲斐があったよ。坂上君は空手部らしく天職が“拳士”であることから籠手と脛当てを付けている。これもアーティファクトで衝撃波を出すことができ、また決して壊れないのだ。坂上君はどっしりと構え、見事な拳撃と脚撃で敵を後ろに通さない。無手でありながら、その姿は盾役の重戦士の様だ。八重樫さんは日本の武士らしい“剣士”の天職持ちで刀とシャムシールの中間のような剣を抜刀術の要領で抜き放ち、一瞬で敵を切り裂いていく。その動きは洗練されていて、騎士団員やクローン兵達を感嘆させるほどである。そうしている間に白崎さん達の詠唱が響き渡った。

 

 

「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ──“螺炎”」」」

 

 

3人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎がラットマン達を吸い上げるように巻き込み燃やし尽くしていく。ラットマン達は断末魔の悲鳴を上げる前にパラパラと降り注ぐ灰へと変わり果て絶命する。流石のクローン達も明らかなオーバーキルには少しばかり引いた様だ。

 

 

「あー……もうそのへんでいいぞー」

 

 

そうメルド団長が僕たちに指示を出して灰と変わり果てたラットマンの亡骸を調べる。

 

 

「勇者組に一階層の雑魚は弱過ぎるな。まぁ今回は訓練だからいいが……」

 

「だが、流石にこれはやり過ぎだな。いくら何でも火力が強過ぎる。もし大火力の強力な魔法や大技を出せばこの迷宮でも崩落する可能性がある」

 

「あぁ、そうだな。…それと魔物の体内にある魔石の回収を忘れるな。特に魔法組は注意すること!さっきみたいな魔法をバンバン使えばすぐに魔力がなくなるからな」

 

 

フォードーとメルド団長がそう僕たちに教えながらも魔物と戦闘する際に交代制で進み続けるのであった。因みにこの迷宮は一体何階層まであるのか予想も出来なかった。そう考えて進み続けていると、次は僕の番が回って来た。僕が相手をするであろう狼型の魔物の方を見るともう既に瀕死状態であった。

 

 

「どうだ?だいぶ弱らせておいたがこれなら倒せるだろう?非戦闘職とはいえ身を守れる位にはなってもらわないと困るからな」

 

 

そうメルド団長の気遣いだった。確かに倒しやすいのは変わりないけど、逆にこれじゃあ一方的で倒しづらい!!そう思った時に雷電がやって来て僕に話しかけて来た。

 

 

「ハジメ、そろそろコルトから受けた訓練の成果を見せて良いんじゃないか?」

 

「まぁ……そのつもりだけど、アレはもう倒してあるようなもんじゃんか。少し可哀想だけど…念の為…!」

 

 

その時に僕は両手の平を重ね合わせ、錬成師の何かを作りだす技を応用した錬成を繰り出す。

 

 

「錬成!」

 

 

そして重ねていた手を離し、片手を地面に付けて錬成を行う。すると弱り切った魔物の下から刺のスパイクが生成され、その魔物の胴体を貫いた。そう、僕が錬成したのは先の尖ったスパイクだ。この錬成を応用した技術は指導してくれたコルトが偶然発した言葉が始まりだった。

 

 

 

“しかし錬成か……それだったら塹壕や妨害用のフェンスも作れるな”

 

 

 

コルトが何気なく塹壕やフェンスの事を呟いたのが切っ掛けだった。特にフェンスについてだ。敵歩兵を足止めするには刺付きのフェンスを使うだろう。しかし、僕が目をつけたのはフェンスの刺だ。その刺だけを敵の間近で錬成して足を止める、もしくは止め用に使えることを思いついたのだ。そして今に至り、僕は錬成の応用で魔物を倒したのだ。これにはメルド団長も僕の戦い方に感心していた。

 

 

「ほぉ…中々面白い戦い方をする。まさか錬成を攻撃に転用するとは思いつきもしなかったぞ。錬成師に実戦向けの能力はないと思っていたが…」

 

「それだけハジメは成長しているってことだ。見ていたぞ、ハジメ。まさか錬成をあんな風に攻撃に転用するとは思わなかったぞ。これもコルトの指導の賜物か?」

 

 

道中で雷電がやって来て僕の錬成の応用に対して褒めてくれた。

 

 

「まぁ…ね。とりあえず、何とかなったかな?」

 

「今はな。お疲れさん、ハジメ……!」

 

 

その時に雷電が何かを感じたのか途中で会話を止めた。すると僅かだけど足音の様な音が聞こえた。それも徐々に近づいてくる。しかし雷電はそれが何なのか既に分かっていた。

 

 

「ハジメ!8時60度だ!」

 

「っ!」

 

 

それは先ほど錬成で倒した魔物と同じ狼型の魔物だった。既にその魔物は僕めがけて飛びかかって来た。しかし魔物よりも先に僕は咄嗟にコルトから貰ったDC-17ハンド・ブラスターを引き抜いてそのまま魔物の頭部に狙いを定めて引き金を引いた。ハンド・ブラスターから放たれたエネルギー弾がそのまま魔物の頭部に直撃し、その魔物は撃たれた反動で逆に跳ね返された様に後ろに倒れ込んで絶命した。一応念を入れて二~三発撃ち込んで確実に止めをさした。

 

 

「ふぅ…オールクリア!……なんてね」

 

「見事な立ち回りだ。ブラスターの取り扱いも上手くなったようだな。他のトルーパーにも引けを取らないな。上手く成長すれば自分と同じARCトルーパーになれるかもしれんな」

 

「……よかったなハジメ。ARCトルーパーのフォードーからの御墨付きだ。誇っても良いぞ」

 

 

まさかフォードーから御墨付きを貰えるなんて思いもしなかった。流石にこれには僕でも照れるくらいに恥ずかしかった。その後に八重樫さんと坂上君が感心した様に言ってくれた。白崎さんも僕の戦いを見守ってくれていた。……でも実際に見守ってもらうとなると流石に恥ずかしいと思った矢先にまた視線の様なものを感じた。…何だろう、とてもいやな予感がする。

 

 

ハジメSide out

 

 

 

迷宮での実戦訓練を始めてから俺たちは既に二十階層に到達していた。その道中にロックマウントという魔物が現れ、ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”で魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。それを食らってしまった天之河達前衛組が一瞬硬直してしまった。この状況を見てマズいと思った俺は天之河達前衛組の前に立ち、ロックマウントの攻撃に備える。ロックマウントはそんなのお構いなしに突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ白崎達後衛組に向かって投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、岩が白崎達へと迫る。

 

 

「させるか!」

 

 

白崎達が詠唱する前に俺はフォースを使い、投げられてきた岩をその場で静止させる。すると投げられた岩に変化が起きた。そう、投げられた岩もロックマウントだったのだ。大方白崎達に対して某三代目大泥棒の飛び込みダイブで白崎達を襲おうとしたのだろうが、今自分がどうなっているのか理解するのに手一杯なのだろう。…だが時間を掛けるわけにもいかず、すまないがお呼びじゃないという感じでフォースを使ってロックマウントを壁に叩き付ける。そして止めを刺す様にエレクトロ・ロングバトンをロックマウントの頭を突く。その結果、ロックマウントは電磁モジュールから送られる電力エネルギーによって感電し、そのまま脳が焼き切られて絶命する。

 

 

「よし……何とかなったか。後はもう一体か」

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ──“天翔閃”!」

 

「なっ!?…馬鹿、ここで大技を使うな!」

 

 

天之河が一階層でフォードー達が言っていた事を忘れていたのかここで大技を使って曲線を描く極太の輝く斬撃を放つ。その斬撃はもう一体のロックマウントを縦に両断して葬り、更に奥の壁を破壊し尽くしてようやく止まった。本人はみんなに襲いかかって来た魔物を倒したと思い込んでいる様だが、メルド騎士団長やフォードーは違った。天之河は皆に“もう大丈夫だ!”と声を掛けようとした時にメルドの鉄拳よりも先にフォードーの拳が入った。

 

 

「ぶっ!!?クローン!?」

 

「貴様何を考えているんだ!前に言った事を忘れたのか!?ここでは大技や強力な魔法は厳禁だとあれほど言っただろうが!」

 

「…し、しかしだ。香織達が危険な目にあったのは事実だろう?!俺は彼女達を助けようと……」

 

「フォードーの言う通りだこの馬鹿者が。あんな大技を使って洞窟が崩壊したらどうするんだ」

 

「うっ。す…すいません……」

 

 

クローンに反発するもメルド騎士団長には頭が上がらない天之河。こればかりはいくら何でも天之河の視野の狭さには本当に苛立ちを隠せないでいた。とりあえず気分を落ち着かせようと天之河が放った場所を見て見るとそこにはパラパラと部屋の壁から破片が落ちる光景だけが残されていた。すると白崎がその場所にこの洞窟の光に反射するかの様に輝く鉱石を発見した。

 

 

「…あれ?何だろう…宝石?スゴくキラキラしてる」

 

「ん?…本当だ。メルド団長、アレは一体?」

 

「ほぉ、あれは“グランツ鉱石”だな。大きさも中々だ。あれ程大きいのがここで見つかるのも珍しいな。あの鉱石は言わば宝石の原石みたいなものだ。特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気の代物だ」

 

「キレイ……」

 

 

確かにあの鉱石の純度は中々のものだ。メルド騎士団長が頷けるのも分かるな。この時に俺はこの世界にカイバー・クリスタルと同等の鉱石が存在するんじゃないのかと少しばかり考え込んでしまう。その時に勝手に行動する者が現れる。

 

 

「へぇ?香織、お前アレほしいのか?じゃあオレが取って来てやるよ」

 

「え?檜山くん…?」

 

 

そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに気付いて慌てたのはメルドとフォードーだ。

 

 

「だ…駄目だよ檜山くん!」

 

「貴様!!何勝手なことをしている!!」

 

「大丈夫っスよ。こーゆーの得意なんで」

 

「違う!!いいから早く降りてこい!!」

 

「…っ!!檜山…!ちっ……あの馬鹿が!」

 

 

俺はメルド騎士団長が怒鳴っている声を聞いて考え込むの止め回りを見渡すと檜山が勝手にグランツ鉱石に手を出そうとしていた。クローン達も檜山に降りるよう指示を出すも全く聞く気もなかった。その時に俺は檜山がグランツ鉱石を掴む前に檜山をこっちに引き寄せる為にフォース・プルを使った。

 

 

「オラッ楽勝楽勝……うおっ!?」

 

 

しかし一歩遅く、既に檜山はフォース・プルで俺たちの方に引き寄せられる前にグランツ鉱石に()()()()()。檜山をこちらに引き寄せた時には既に魔法陣が展開していた。

 

 

「いかん、トラップだ!」

 

「くっ!魔法陣から離れようにも間に合わん。全トルーパー戦闘準備!生徒達を守れ!」

 

「「「サー、イエッサー!」」」

 

 

即座にフォードーはクローン達に指示を出して生徒達を囲む様に守りに着く。部屋の中に光が満ち、俺達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

 

 

 

場所は変わって、俺達は空気が変わったのを感じた。次いで、ドスンという音と共に皆は地面に叩きつけられた。俺は体制を崩さないで着地し、辺りを見渡す。クラスメイトのほとんどは尻餅をついていたが、メルドや騎士団員達、フォードーにクローン達、そして光輝達など一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。

 

 

「どこだここは…石橋の上…?」

 

「いや……今は場所を把握するより厄介な事になった様だ。見ろ、あの黒い魔法陣を!」

 

 

俺が指を指した正面の通路側には黒い魔法陣があり、その魔法陣からは一体の巨大な黒い魔物が出現する。その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルドの呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。

 

「まさか、ベヒモス……なのか」

 

 

メルドのその言葉に俺は思わず耳を疑った。どうやら俺の嫌な予感はこの様な形で当たってしまったのだ。しかし、これはほんの序曲でしかないという事を今の俺には知る由もなかった。

 

 

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