ありふれないジェダイとクローン軍団で世界最強   作:コレクトマン

51 / 85
救済ネタを考えるのに結構時間を食ってしまった。orz


51話目です。


狂気の愛と父親の願い

 

 

中村恵里

 

 

ごく普通の一般家庭の娘として産まれた彼女は両親と共に幸せな日々を送っていたが、ある事件を切っ掛けに彼女の幸せが崩壊してしまう。

 

 

 

幼い時に公園で父親と遊んでる時に車道に出てしまい、運悪く黒色の普通の乗用車が居眠り運転でやって来てしまう。それに気付いた恵里の父親が恵里を庇い、代わりに退かれてしまい、この世から去ってしまう。

 

 

 

交通事故で父親に庇われて助かったが、その事故以降、彼女の人生は一変した。父親を失い、父親に依存していた母親に恨まれて毎日罵倒や虐待受けてた。そんなある日、小学生高学年になった時に母親が愛人の男を作り、その男も家に住み始めた。

 

 

 

しかし、その男が恵里を見る目が段々怖くなり身の危険を感じた。恵里は髪を短髪にして男の子口調に変えて一人称を私から僕に変えて女として見られない様に努力したその結果、クラスでは孤立してしまった。

 

 

 

だがある日、母親が居ない隙にその男は恵里を強姦しようとするが、急所を蹴って何とか振り払い近所に助けを求めて警察を呼んでもらい、男は逮捕される。しかし、それを知って家に帰って来た母親は心配するどころか恵里に対し男を誘惑したと夫だけで無くまた私の全てを奪う泥棒猫等と言い放つ。

 

 

 

暴力や罵倒をする男が捕まれば母親は元に戻ると信じていた恵里は絶望し、ある雨の日に川の橋から自殺しようとする。その時に偶然その場にいた天之河に止められ、経緯を話す。それを聞いた天之河が“俺が君を守るから”と言われ、この時に恵里は自分の本心を聞いてくれた天之河に対して何時しか思い焦がれる様になり、やがて彼女は天之河に恋をしている事に気付いた。

 

 

 

それ以降、天之河と一緒になる為に母親を脅したり猫を被ってクラスと仲良くしたりして天之河の隣にいる為に暗躍をする。そしてこの世界に転移した時もそうだった。

 

 

 

しかし、彼女にとって予想外な人物が現れる。それが前世の記憶を持つ藤原雷電だった。雷電は天之河に取って大切な友と語っているが、その本人は全くの真逆で天之河を嫌がっていた。この時に彼女は雷電の事を救ってくれた天之河に酷い態度を取る奴としか認識してなかった。

 

 

 

そしてこの世界に転移しても雷電は天之河の意見に反対したり、雷電が召喚したクローン達にも天之河と対立したりと、恵里は初めて雷電の事を憎んだ。そんなある日、初めてオルクス大迷宮で実戦訓練の受ける前夜で偶然にも雷電とあった。

 

 

 

この時に恵里は、雷電に何故天之河に対してキツい態度だったり、ぶつかってばかりなのかを聞き出した。その時に雷電から天之河に対する本心を聞き出せた。雷電は天之河の事を完全に嫌いであることを……

 

 

 

だが、この時に彼女は雷電から思いがけない一言に戸惑いを覚える。

 

 

“……まぁ、アレだ。俺はあいつのことを嫌いであることは変わりないが、中村の場合はあいつの事はどうなんだ?”

 

 

そう、雷電は恵里が天之河に対して好意を抱いている事に気付いていたのだ。猫をかぶりながらも他のクラスメイト達や友達という名の手段である谷口にも天之河に対する思いを知られていない筈が、何故か雷電だけに知られていた。雷電はそれを理由に脅迫してくると思いきや……

 

 

“俺は人の恋路……というのか?それを邪魔する程無粋じゃない。あいつを振り向かせられるかは中村次第だ。しかしだ、もしあいつを振り向かせる為にクラスを利用して危険に晒すというのなら話は別だ。もしそうなったら、その時は俺が止める。…まぁ、そうでなければあいつに振り向いてもらえるまで頑張れ、応援はする”

 

 

なんと、警告と同時に恵里の恋路を応援してくれる何て彼女自身、夢にも思わなかった。この時に彼女は考えた。雷電以外でここまで僕を見てくれた人は死んだ父親以外にいなかった。そして恵里は、雷電のことを死んだ父親の様な優しさがある人と再認識するのだった。

 

 

 

しかし……そう改めて思ったのも束の間、実戦訓練当日。ベヒモス初戦で、檜山がハジメに対する嫉妬によりハジメを魔法でワザと誤射し、雷電はハジメを助けようと行動するも橋が崩れ落ち、ハジメ諸共、雷電も奈落へと落ちてしまう。

 

 

 

恵里は父親の様な優しさを持つ雷電が死んでしまったことに対してある違和感を覚える。それは、何かが空っぽだった穴を埋めてくれた筈が、また空っぽになってしまった喪失感だった。一体何の喪失感だったのか彼女自身理解できなかった。そして恵里は檜山を利用してでもその喪失感を知ろうと誰にも悟られないよう猫を被りながら天之河に接近しようと訓練を続けるのだった。

 

 

 

そして今日の実戦訓練で、魔人族と配下の魔物達と遭遇してしまい、撤退するも追いつかれてしまい絶体絶命の状況に陥ってしまう。天之河が敗れてしまい、中村は天之河の生存の為に魔人族の案を呑もうと勧める。そしてメルドが最後の力を振り絞り、魔人族を道連れにしようとするも逆に返り討ちに合い、倒れてしまう。この時に天之河がキレて、一気に形勢が逆転したかに見えた。

 

 

 

しかし、天之河が魔人族の事を人として再認識した瞬間、殺すの躊躇ってしまう。その隙に魔人族は魔物達に恵里達を殺す様に指示を出した。この時に一体の猫型の魔物が八重樫の背後を取り、不意打ちしようとした時に谷口が八重樫を庇った。この時に恵里は偽りの友達である谷口が死んでもどうでもいいと思ったが、何故か雷電との会話を思い出し、そして恵里は知らず知らずの内に谷口の前に出て、谷口の代わりに黒い触手に貫かれていた。

 

 

 

彼女自身、一体何をやっているのか理解できなかった。天之河に見てもらいたかったから?偽りの友達である谷口に情が湧いたのか?思考がぐるぐるとこんがらがって何も考えられない状態になった時に天之河が今頃になって助けに来たと同時に心配の声をかけるが……

 

 

“雫、大丈夫か!?”

 

“光輝!私は大丈夫、でも恵里が……”

 

“大丈夫だ!誰も死なせない!今の俺なら…”

 

 

天之河が最初の名を呼んだのが幼馴染である八重樫だけだった。まるで恵里は二の次であるかの様に。この時に彼女は、天之河に対する思いに一部亀裂が生じてしまう。その側で恵里はクローン・トルーパー・メディックの治療を受けてたが、バクタ液が足りなかった為に出血が止まらなかった。鈴は泣きながら必死に恵里を呼び掛けた。

 

 

 

この時に彼女は死にかけながらも走馬灯の様に自分の人生を振り方ってた。父が死んで、母に憎まれて、母の新しい恋人にレイプされかけ、中村を心配してくる人は誰も、誰も居ない。しかも天之河は橋で自殺しようとした自分に“もう一人じゃない。俺が恵里を守ってやる”と言ってくれた癖に貫かれた彼女の事よりも八重樫を心配した。本当は分かってた。心配してくれていると思っていた天之河を、その時の自分のヒーロー願望を満たしたいだけという事を……

 

 

 

そう思っていた時、恵里は死んだ雷電の事を思い浮かべてしまう。何故雷電の事を思い浮かんでしまったのか彼女自身理解できなかったが、どうせなら死んだ父親の様に優しく接してもらいたかったと思った。

 

 

 

恵里がそう思ってた時に天井が崩落し、一本の漆黒の杭が魔物達に突き刺さる。そして、その崩落した天井から一人のクローンが降下し、八重樫達を助けた後にその次に白髪の少年が降りて来た。その時に香織はその少年が奈落に落ちて死んだ筈のハジメである事を理解していた。そして助けに来たクローンはヘルメットを取り外し、その素顔を晒した瞬間、八重樫はその人物が雷電である事を理解した。

 

 

 

雷電たちは仲間を連れて助けに来た様だった。その時に雷電が恵里達のところに向かい、谷口に一声かけた後に何かを取り出し、恵里に神水を回復薬だと伝えて飲ませたのだが、血が行き場を失った結果なのか吐血し、神水ごと吐き出して咽せてしまう。

 

 

 

その最中、恵里は走馬灯に雷電が見えて来て、死が段々と近づいてくる事を理解したのか。彼女自身“死にたくない”という思いが強まった。そんな願いが叶ったのかふと雷電の声が聞こえた気がした。

 

 

“中村……死ぬなよ。絶対に助け出す”

 

 

その言葉が聞こえた瞬間、彼女はそれを現実の声だと理解したと同時に、雷電が回復薬を口に含み恵里に口移しで飲ませたのだ。その瞬間、致命傷であった傷が瞬時に消え、彼女は驚きのあまり上手く口で表現できなかった。助けてくれた雷電に恵里は御礼を言おうとするも、先ほどの口移しの羞恥心が残っていたのか、思う様に喋る事が出来なかった。その時に雷電は優しい声で恵里に労いと休む様にこういった……

 

 

“中村、傷のことは谷口から聞いた。この絶望的な状況でよく生きててくれた。それも友達を助ける為に自らを身を投げ出す覚悟は賞賛に与えするが、お前が死ねば悲しむ奴はいることを忘れるな。後は俺たちに任せてゆっくり休め”

 

 

そう言葉を残し、雷電は戦っているハジメと不良分隊の所へと向かうのだった。この時に恵里の心の中では不思議な感覚が埋まっていた。それは彼女が一度体験した感覚である“恋”が今度は雷電に対して小さく芽生え始めたのだ。この時の彼女は状況が状況だった為、それが何なのか理解できなかった。

 

 

 

雷電たちが救援に駆けつけてから状況は一変した。ハジメが魔人族に止めを刺した後にクローン達と似た装備をした兵士達ことファースト・オーダーのストーム・トルーパー達が攻めて来たのだ。しかし、これをハジメ一人で一掃する。圧倒的な戦闘力を身につけて帰って来たことに驚きの連発で疲れたのは恵里自身の余談である。

 

 

 

ハジメに惚れいていた香織はハジメが生きていたことに嬉しさを隠せないでいた。彼女自身が天之河の恋人候補から遠ざけただけでもそれで良しと思った。………雷電に助けられるまでは……

 

 

 

無論、天之河はご都合解釈をフル稼働させハジメと香織を引き離そうとし、そして無抵抗の相手(天之河視点では)を殺したハジメを止めようとしなかった雷電にも非難の声を上げる。その時に恵里の心に何かがざわついた。それは怒りだった。その怒りは天之河に向けらているものだった。彼女は一度だって天之河に対して本気で怒ることは無かった。それは何故か?

 

 

 

彼女は思い当たる原因を知っていた。それは、雷電の存在だった。彼がいる所為で恵里自身、何かが変わってしまった。雷電に対して怒りたいものの、雷電が来なければ死んでいたのもまた事実だった為に何とも言えず、答えがあやふやでまともな判断が付きにくかった。

 

 

 

そうして大迷宮の入場ゲートに戻って来れたと同時に香織がハジメに付いて行くと言い、ハジメに告白する。しかし、ハジメは香織に思いに答えられないというが、それでも諦める香織ではなかった。ハジメの恋人でもあるユエも香織に“付いて来るといい”と言って香織を仲間であり、ハジメの恋のライバルとして認められたのだった。

 

 

 

しかし、それでも天之河は香織をハジメから引き離そうとする。事もあろうことかユエ達も含めてである。だが、この時に天之河や恵里はある誤算を知る事になる。

 

 

 

それは、天之河が雷電の堪忍袋の尾を踏んづけて切ってしまったことだ。

 

 

 

その切っ掛けとなったのは兎人族のシアという亜人族だった。雷電にとってシアは弟子でもあり、より大切な人であった事を知った瞬間、恵里は心を痛めた。今でも天之河の事を好きだというのに何故か好きになれなかった。それに対して雷電は父親の様に優しく、死にかけだった命を救ってくれた。この差が一体何なのか考えている内に、天之河は雷電との仲が拗れ、しまいには決闘しろと言い張るのだった。

 

 

 

その時に雷電の目付きと眼の色が変わった。瞳の色は赤だったのに対して黄金色に輝き、まるで怒りと憎しみが渦巻く嵐が瞳の中で起きているかの様に見えた。優しかった雷電の面影は消え、今いるのは愛する人を侮辱した輩を殺す眼になり、恵里は雷電の余りの変わりように恐怖を覚え、上手く口を動かす事が出来なかった。

 

 

 

雷電は左手を天之河の方に翳し、手で握り潰す様な仕草をした瞬間、天之河が苦しみ始め、酸素を求めて自分の首を掴みながらも藻掻いていた。雷電が天之河に対して何かしたのは確かだったが、魔法でもない何かでは止めようにも止められなかった。そんな天之河に対して雷電が言った。

 

 

“戦いは、常に自分の思い描いた通りにはならないものだ。だから、お前のご都合解釈すら役に立たん。それでもまだそう考えているのなら、愚かにも程がある。お前が俺達の行く手を阻むのなら……今、この場で殺してやろうか?”

 

 

それは天之河に対する雷電からの死刑宣告だった。このままでは天之河が雷電に殺されてしまう。しかし、恵里はこの時に天之河がどうなってもいいと思ってしまう。思う筈の無い気持ちに彼女はこんがらがってしまい、どうしたらいいのか分からなかった。そして雷電が天之河を殺そうとしたその時に彼女自身の感情が爆発し、雷電に静止を掛けると同時に恵里の本当の素を皆の前に晒してしまうのだった。

 

 

 

その後は自分自身何を言っているのか理解できず、彼女の本来の素をこれ以上見られたくなかったのか、この場から逃げる様に勇者達が利用している宿へと向かい、自分の部屋に閉じこもるのだった。閉じこもった恵里の思考は、一体何処で間違ったのかのか?と、ただ己自身に自問自答を繰り返すばかりだった。

 

 

 

……一体、何が行けなかったの?

 

 

 

心身共に近づけず、天之河を見つめ続けることしか出来なかったえは、それ故に色々と気がつき始めた。……否、この世界に転移される前の地球で最初から気付いていたのかもしれない。

 

 

 

親しそうに話しかけてくれるクラスの女子は“光輝の頼みだから”そうしているだけだということを。

 

 

 

天之河の隣には、あの早朝の鉄橋で言葉を交わしたときよりもずっと前から、“特別”が侍っており、自分の居場所などなかったということを。

 

 

 

天之河にとって、自分は既に終わった人なのだということを。

 

 

 

結局、自分には居場所などなかった。“特別”など幻想に過ぎなかったのだということを。

 

 

 

それに気がついた途端、恵里は毎日狂ったように……否、文字通り狂いながら同じことを考え続けた。

 

 

――もう一人じゃないって言ったよね?

 

――守ってくれるっていったよね?

 

――僕はあなたの特別だよね?

 

――ねぇ、どうして、同じ言葉を他の人にも言っているのかな?

 

――ねぇ、どうして、僕だけ見てくれないのかな?

 

――ねぇ、どうして、今、こんなに苦しいのに助けてくれないのかな?

 

――ねぇ、どうして、他の女にそんな顔を向けるのかな?

 

――ねぇ、どうして、僕を見る目が“その他大勢”と同じなのかな?

 

――ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして…………

 

 

嫉妬とも言える狂気は中村を追い込み、更に狂わせるかの様に雷電の事を思い出した。あの優しさは死んだ父親と似ていて、心が安らいだのだ。そして中村は気付いたのだ、雷電の様な優しさを欲している程に愛していることを。そう気付いた彼女はやがてある結論に到る。人の感情や行動など、やり方一つで、幾らでも変えられると母親から学んだ。

 

 

 

ならば、“居場所が奪われる前に無理心中すれば、ずっと一緒にいられる”と……

 

 

 

この時の恵理は自分でも思考が停止するくらいに自暴自棄になりかけていた。そして、雷電がこの部屋に向かって来ていることを彼女は気付きもしなかった。

 

 

恵里Side out

 

 

 

中村が逃げて閉じこもっていると思われる宿屋の個室で雷電は中村からフォースの暗黒面を感じ取っていた。それも危険な程に……

 

 

 

“嫉妬”……“依存症”……“狂気”……

 

 

 

狂気に関しては分からないが、嫉妬や依存症は天之河関係にあると思われたが、中村のフォースから雷電を思う気持ち“好意”を感じ取れた。何故中村にその様な思いを抱いているのかは謎だったが、今はそれどころではない。中村のドス黒い感情が今の中村を支配していた。

 

 

 

謝りに来ただけなのに既に修羅場の様な感覚を雷電は肌を通して感じ取っていた。ここで退いてしまえば中村は、確実に間違った方向へと向かってしまい、取り返しのつかない事になってしまう。

 

 

「これは、覚悟がいるな……」

 

 

そうさせない為に雷電は中村を止めることを決意し、謝罪を含め、対話をする為にドアを軽く叩き、そしてドアノブを手にかけてゆっくりとドアを開けるのだった。そこには窓から外を見上げている中村の姿があった。

 

 

「中村……」

 

「来てくれたんだね?藤原くん……」

 

 

中村は落ち着いた声で雷電に話すも、雷電は気を抜かないまま中村に天之河を殺しかけてしまった事を謝罪する。

 

 

「中村、その……すまなかった。まだ思いを告げてない天之河を殺しかけてしまった。中村にとっては許されない事かもしれない。だが、これだけは謝らせてくれ。……本当にすまなかった」

 

「ううん……気にしないで。色々と言いたい事はあるけど、僕は藤原くんの事を許すよ」

 

「中村……?」

 

 

嫌われる覚悟で謝ったが、予想外にも中村はそれを許したのだ。しかし、中村自身の狂気がまだ消えてはいなかった。

 

 

「僕はね……ずっと欲しかったんだ。僕の事を“特別”と思ってくれる()()()()()を……」

 

「居場所だと……?」

 

「その居場所の為に僕は頑張ったんだ。一生懸命頑張ったんだよ。……でも、駄目だった。どうしても駄目だったの。頑張っても頑張っても……神様はそれを否定して……僕の場所すら与えてくれない。そして思っていた光輝くんも……」

 

 

 

 

 

 

「ボクの事を否定するッ!!」

 

 

 

 

 

 

中村がそう口にすると同時に雷電と対面した瞬間、雷電は中村の瞳の変化に気付いた。中村の瞳が黒色から黄金色に変わっている事を。中村の狂気がフォースの暗黒面へと覚醒し、今の彼女は精神が不安定の状態である事を理解する。

 

 

「中村……お前は……!」

 

「……でも、もうどうでもいい事だけどね?この時にボクは、ある事に気付いたんだ」

 

「ある事……だと?」

 

「そう。ボクはね……コウキくんもそうだったけど、今になってようやく分かったんだ。フジワラくん……いえ、ライデンくん、ボクはアナタの事が好きだってことをね?」

 

 

何故中村がフォースの暗黒面に目覚めたのかよりも、何故雷電の事を好意を抱いているのか最初は分からなかった。しかし、思い当たる節の事を考えれば少しずつ理解して来た。

 

 

「……最初の実戦訓練の前夜で、中村の気持ちを理解した時からか?」

 

「そうだね……あの時のボクはそれが何なのか分からなかった。けど、今になってようやく分かったんだ。ボクはコウキくん以外にもライデンくんの事が好きなんだって」

 

 

雷電はこの時に理解した。中村の依存症に気付かず、このまま放置していた事に自分自身を恥じるばかりだった。どうすれば中村の暴走を止められるのか考えている最中、中村から発するフォースの暗黒面から別のフォースを感じ取れた。それは知らない人物のフォースだった。

 

 

 

ただ、そのフォースは一体誰なのかと模索する中、そのフォースから僅かに声が聞こえる様な気がした。

 

 

 

“誰か、恵里を……娘を救ってくれ”

 

 

 

娘と言う単語が聞こえた時に雷電は理解したと同時に悟った。中村の中にいる別のフォースの正体は中村の前の死んだ父親であったことを。雷電は中村の家庭事情は詳しくは知らないが、世間話の噂くらいは聞いた事があったのだ。……どうやら、その父親は死してもなお、中村の事をずっと見守っていた様だ。そう理解した雷電は中村を助ける為にも対話を続けるのだった。

 

 

「中村……俺への気持ちは理解した。だが、良いのか?俺が言えた義理ではないが、お前には天之河の事を思っていたんじゃ……」

 

「うん……ライデンくんにボクの気持ちを分かってもらえた()()()()だけどね?」

 

「前までは……だと?」

 

「そう……ボクはもうつかれたんだ。ボクの本当の居場所はコウキくんじゃなかった。ライデンくん、あなたがそうだったの。ボクの本当の居場所であって、ボクの事を特別と見てくれるのは……」

 

 

どうやら中村は、依存対象を天之河から雷電に変わり、今でも狂おしい程の愛が向けられていた。そして雷電共々無理心中を果たそうとしている様だ。ここで選択を間違えれば、間違いなく中村が完全に壊れてしまう。そう判断した雷電は苦渋の行動を取る事にした。

 

 

「……だからか。俺もまた天之河と同じ様に中村を特別扱いせず、切り捨てられる事を恐れて、切り捨てられる前にせめて好きである俺を道ずれという事か……」

 

「そう……そうすればボクとライデンくんはあの世でもずっといっしょ。だから……ボクといっしょに死んで?」

 

 

そう言って中村は懐から果物ナイフを手に、少しずつ雷電へと近づく。すると雷電は中村にある事を聞き出す。

 

 

「死ぬ……か。なら聞くが、お前がそう頼んでいるのに()()()()()()()()()()?」

 

「えっ……?」

 

 

ふと中村は自分の触れると、何かの液体が流れていた。それは一雫の()だった。中村は知らず知らずの内に涙を流していたのだ。

 

 

「ウソ……どうして?」

 

「それは、お前はまだ死にたくない証拠でもあると同時に、間違った道を踏み外そうとしているがまだ引き返せる証拠でもある」

 

「何を……言って…いるの?ボクは……」

 

 

そう中村が戸惑う中、雷電は自ら彼女の所に近づく。そして彼女が持つ果物ナイフを手ごと掴み、それを自分の胸の方に向けさせる。

 

 

「な…何を……?」

 

「たとえ俺と共に無理心中をしたところで、お前の中の口惜しさが消える事は無い。むしろお前が壊れてしまう時間を更に加速させてしまうだけだ。それに……俺は()()()()()()()()んだけどな」

 

「えっ……?」

 

 

雷電はいっその事、中村に己の過去を明かす事にした。前世の自分の生い立ちを……そして世界に否定され、仲間であったクローン達によって抹殺されたことを……

 

 

 

中村自身、雷電の前世をとても信じられずにいた。しかし、雷電が嘘をついている様には見えなかった。雷電の過去を聞けば聞く程、中村は雷電とは一つの共通点があった。それは、自分の居場所が世界によって否定されたことだった。もっとも、否定された世界に殺されてしまったのだが……そんな事を気にせず雷電は言葉を続ける。

 

 

「俺はクラスメイト達もそうだが、クローン達にハジメ達、そして弟子あるシアも死んでほしくはない。そして中村、お前もその内の一人でもある。だから……お前は死なないでくれ」

 

「な…何を……!?」

 

 

そう言って雷電は、恵里が持つ果物ナイフを自分の身体に深く突き刺すのだった。雷電の突然の行動に中村は理解できず、果実ナイフを手放した。何故自ら自傷する行動を取ったのかを理解できない中、雷電は突き刺した果物ナイフを抜いた後に投げ捨て、刺した傷を抑えながらそのまま壁越しに座り込む。

 

 

「何でなの……どうして自分でさしたの!?」

 

「ぐっ!……俺にとっての()()かもしれないな。お前を狂わせた本人である俺が、知らず知らずの内にお前を苦しめていたからな……」

 

「や……止めてよ。ボクは…そんなんじゃ……」

 

「中村……いや、この際名字で呼ぶのは止めだ。恵里…お前の本当の気持ちに気付いてやれずに……ごめんな?お前の気持ちにも答えられずに……」

 

 

雷電が自分自身で刺した傷口から大量の血が流れていた。この時に恵里は思ってしまった。本当に雷電の事が好きだというのにも関わらず無理心中を図ろうとしたのに、雷電は最後まで彼女の事を気に掛けていたのだ。例えそれが、自身の命を捨てることを厭わないほどに。…ならば、ただ黙って雷電が死ぬのを見ているだけでいいのか?“いい筈が無い!”そう思って行動した時には恵里の瞳の色は元の黒色に戻り、恵里から放たれていた狂気は消えていた。

 

 

「待って!お願い、お願いだから死なないで!!言葉だけ残して僕を置いていくなんてそんなのやだよ!?……また僕を一人にしないで!!」

 

「恵里……?フフッ……ようやく、元のお前に戻ったか……」

 

「えっ……?雷電……くん?」

 

 

雷電は恵里がフォースの暗黒面から切り離せたことに喜び、少しばかり安堵した。しかし、安心するのはまだ早かった。

 

 

「っ!?……ゴフッ!?」

 

「ら……雷電くん!?」

 

 

突然の嘔吐感が襲ってきて、思わず雷電は口に手を当てる。手を口から離すと逆流してきたのか鮮血が手のひらについていた。どうやら血が雷電が抑えている出血場所から行き場を失ったが為に吐血したのだろう。その時に恵里は雷電を助ける為に助けを呼びに向かうのだった。

 

 

「雷電くん、お願いだから死なないで!今、香織達を呼んでくるから!!」

 

 

そういって恵里は部屋を後にし、香織達に助けを求めに行ったのだった。その時に雷電は、恵里が間違った道を踏み外さなくて本当に良かったと安堵するばかりだった。そして恵里の父親であろうフォースからも“娘を……恵里をよろしく頼む”と言って父親の魂がフォースと一体となり、この世から去り、あの世へと旅立った。この時に雷電は返事は出来なかったものの、心では任せろと言い聞かせ、そのまま意識を落としてしまうのだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。