ありふれないジェダイとクローン軍団で世界最強 作:コレクトマン
53話目です。
死神との契約、消えた愛子
「くそっ!くそっ!何なんだよ!ふざけやがって!」
「うるさいぞ!少し静かにしてろ!」
雷電たちが次の大迷宮があると思われるグリューエン大火山に向かって行ったその頃の檜山は、雷電が技能で召喚した基地の牢屋代わりにしている兵舎に監禁されていた。壁に拳を叩きつけながら、押し殺した声で悪態をつく檜山。檜山の瞳は、憎しみと動揺と焦燥で激しく揺れていた。それは、もう狂気的と言っても過言ではない醜く濁った瞳だった。
そして、それに対して怒声で注意する監視役のクローン達。この基地は警備レベルは最大に設定されている為、檜山が逃げ出そうにも逃げられないのだ。雷電が言っていた様に、もし、元の世界に戻れる手段が見つかって地球に戻った後に裁判に掛けられるの覚悟する他になかった。
しかし、そんな檜山にある転機が訪れる。突如と基地の非常警報が発令し、基地内にいるクローン達は警戒体勢に入る。その時に檜山を監視していたクローン達が何者かによって首を刎ねられる。そして死体は残らずポリゴン状に四散する。檜山自身、一体何が起こっているのか理解できていなかった。そして檜山を閉じ込めていた扉が開き、そこから黒いローブを着た一人の男性が入って来た。
檜山から見た視点で特徴を上げるのなら。顔に古傷があり、見ただけで全てを魅了し、何もかもその瞳の中へと沈んでしまいそうな翠の瞳をもつ白髪の男性。檜山にとってはそれがまるで死神の様に見えた。その際に檜山はその死神につい声を掛けてしまう。
「な……何だよ、お前は!?」
「こらこら、小生を見てあまり怖がるものではないよ?もっとも、それを怖がるなと言うのは無理があるがね……キヒヒッ!」
不気味な笑みと笑をする死神。檜山は最早考えるの止め、一体何しに来たのかを問い出すのだった。
「……一体、俺に何の様なんだよ」
「キヒッ……そう邪険にしなくとも君を取って食いはしないよ。小生としては君に手伝ってもらいたいだけさ」
「俺に……だと?」
「そう……小生の目的の為に君に手伝ってもらいたいだけ。それを了承してくれるのなら、君の望みを一つだけ叶えて上げるよ?」
死神から持ちかけられた提案。檜山はそれを悪魔との契約みたいに思えたが、逆にこれはチャンスと見ていた。雷電によってこの基地に幽閉され、裁判に掛けられる運命を辿るかと思われたが、天は檜山を見捨ててはいなかった。その死神の提案を呑むことにしたのだ。
「分かった。その代わり、絶対に約束を守れよ?」
「小生としては目的を果たすのを手伝ってくれれば何でも構わないのだがね?最も、君は仲間を切り捨てる覚悟があればだがね?キヒッ…!」
檜山は、己の目的の為に新たな共犯者を睨みつける。その視線を受けながらも、目の前の死神は変わらず口元を裂いて笑う。
檜山は、その死神の目的を知っているわけではなかったが、今の言葉で、その目的の中には確実にクラスメイト達を害するものが含まれていると察することができた。自分の目的のために、苦楽を共にした仲間をいともあっさり裏切ろうというのだ。そして、その事に何の痛痒も感じていないらしいと知り、改めて背筋に悪寒が走る。
(相変わらず気持ち悪い奴だ……だが、俺ももう後戻りは出来ない……俺の
檜山は自分の思考が、既にめちゃくちゃであることに気がついていない。最初の共犯者である恵里に指示されるままにやってきた事から目を逸らし、常に自分の行いを正当化し、その根拠を全て香織に求める。
そして次の共犯者が新たにやって来た死神だった。その死神の目的が何であれ、己の目的の果たす為に何でも利用するつもりだった。
その数十分後には基地内のクローン達は全滅し、檜山もまたその場から消えてしまったのだった。それを知れ渡るのは少し先の話になる。
檜山Side out
時間は少し進む。
天之河達が、“宿場町ホルアド”にて、雷電たちとの再会によって受けた衝撃と別れによる複雑な心情を持て余していた夜から三週間ほど経った。
現在、天之河達の早急に対処しなければならない欠点、“人を殺す”ことについて浅慮が過ぎるという点をどうにかしなければこれ以上戦えないという事で、彼等は王都に戻って来ていた。魔人族との戦争にこのまま参加するならば、“人殺し”の経験は必ず必要となる。克服できなければ、戦争に参加しても返り討ちに遭うだけだ。
もっとも、考える時間はもうあまり残されていないと考えるのが妥当だ。ウルの町での出来事は、既に天之河達の耳にも入っており、自分達が襲撃を受けたことからも、魔人族の動きが活発になっていることは明らかで、開戦が近い事は誰もが暗黙の内に察している事だった。従って、天之河達は出来るだけ早く、この問題を何かしらの形で乗り越えねばならなかった。
そんな天之河達はというと、現在ひたすらメルド団長率いる騎士達と他のクローン達とで対人戦の訓練を行っていた。坂上や近藤達、永山達も、ある程度の覚悟はあったものの、実際にハジメが魔人族の女の頭を撃ち抜く瞬間を見て、自分にも出来るのかと自問自答を繰り返していた。時間はないものの、無理に人殺しをさせて壊れてしまっては大事なので、メルド達騎士団やクローン達も頭を悩ませている。
そんな、ある意味鬱屈した彼等に、その日、ちょっとした朗報が飛び込んできた。
愛子達の帰還だ。普段なら、天之河のカリスマにぐいぐい引っ張られていくクラスメイト達だったが、当の勇者に覇気がないので皆どこか沈みがちだった。手痛い敗戦と直面した問題に折れてしまわないのは、八重樫や永山といった思慮深い者達のフォローと鈴のムードメイクのおかげだろうが、それでも心に巣食ったモヤモヤを解決するのに、身近な信頼出来る大人の存在は有難かった。皆、いつだって自分達の事に一生懸命になってくれる先生にとても会いたかったのだ。
愛子の帰還を聞いて、真っ先に行動したのは八重樫だ。八重樫は、愛子の帰還を聞いて色々相談したい事があると、先に訓練を切り上げた。ハジメや雷電に対して何かと思うところのありそうなクラスメイト達より先に会って、愛子が予断と偏見を持たないように客観的な情報の交換をしたかったのだ。
ハジメから譲り受けた漆黒の鞘に収まる、これまた漆黒の刀身に鋒両刃造りの刀を腰のベルトに差して、王宮の廊下を颯爽と歩く八重樫。そんな彼女の姿に、何故か男よりも令嬢やメイドが頬を赤らめている。世界を超えても八重樫が抱える頭の痛い問題だ。自分より年上の女性に“お姉様ぁ”と呼ばれるのは本当に勘弁して欲しいのだ。
八重樫は、ウルの町でハジメ達が色々やらかした事を聞いていたので、愛子からハジメについてどう思ったかも直接聞いてみたかった。愛子の印象次第では、今も考え込んでいる天之河の心の天秤が、あまり望ましくない方向に傾くかもしれないと思ったからだ。どこまでも苦労を背負い込む性分である。
「きっと、ウルでも無茶苦茶して来たのでしょうね……こんな刀をポイッとくれちゃうくらいだし……全く、何が“ただ硬くてよく切れるだけ”よ。国宝級のアーティファクトじゃない」
そんなことを独り言ちながら、そっと腰の刀に手を這わせる八重樫。愛子の部屋を目指しながら、この刀のメンテナンスについて、国直営の鍛冶師達のもとへ訪れた時のことを思い出す。
この刀、八重樫は単純に黒刀と呼んでいるが、黒刀をこの国の筆頭鍛冶師に見せたときのことだ。最初は、“神の使徒”の一人である八重樫を前に畏まっていた彼だったが、鑑定系の技能を使って黒刀を調べた途端、態度を豹変させて、八重樫の肩を掴みかからんばかりの勢いで迫って来たのだ。そして、どこで手に入れたのか、誰の作品なのかと、今までの態度が嘘のように怒涛の質問、いや、尋問をして来たのである。
目を白黒させる八重樫が何とか筆頭を落ち着かせ、何事かと尋ね返した。すると彼曰く、これほどの剣は王宮の宝物庫でも、聖剣くらいしか見たことがない。出力や魔力を受けるキャパシティという点では聖剣に及ばないが、武器としての機能性・作りの精密性では上をいっているという。
そして、詳しく調べた結果、黒刀は魔力を流し込むことで、最大六十センチほど風の刃で刃先を伸長したり、刀身の両サイドに更に二本の風の刃を形成したり、更にはその刃を飛ばすことも出来るということが分かった。
また、鞘の方にも仕掛けがあり、同じく魔力を流し込むことで雷を纏わせることが出来たり、その状態で鯉口付近にある押し込み式のスイッチを押すことで鐺こじり(鞘の先端部分)から高威力の針を射出できたりすることもわかった。
刃の部分はアザンチウム製なのでまず欠けることもなく、メンテナンスも殆どいらないという。強いて言うなら、消費した針を補充するくらいだ。
ただ、問題があるとすれば、魔力を流し込むための魔法陣がないことである。それも当然だ。ハジメは、直接魔力を操れるし、元々誰かに譲渡する予定などなかったのである。なので、雫が使う分においては、“ただ硬くてよく切れるだけ”という言葉は間違っていない。
そして、これだけの機能を備えていて何故か
これほどの機能性・精密性をもった武器は作れないが、使えるようにするくらいはしてみせる!と。要は、何とかして使用者の魔力を流し込めるようにしようというわけだ。結果、三日三晩一睡もせず、筆頭鍛冶師を中心に国直属の鍛冶師達が他の仕事を全てほっぽり出して総出で取り組んだ結果、何とか魔法陣を取り付けることに成功した。
これで、八重樫も詠唱を行うことで黒刀の能力を引き出すことができるようになった。その後、ほとんど全ての鍛冶師達が魔力を枯渇させて数日間寝込んだが、彼等の表情は実に晴れやかだったという。
職人魂の凄まじさを思い出して遠い目をしていると、目的地である愛子の部屋に到着した。ノックをするが、反応はない。国王達への報告をしに行っていると聞いていたので、まだ、戻ってきていないのだろうと、八重樫は、壁にもたれて愛子の帰りを待つことにした。
愛子が帰ってきたのは、それから三十分ほどしてからだ。廊下の奥から、トボトボと何だかしょげかえった様子で、それでも必死に頭を巡らせているとわかる深刻な表情をしながら前も見ずに歩いてくる。
そして、そのまま自分の部屋の扉とその横に立っている八重樫にも気づかず通り過ぎようとした。八重樫は一体何があったのだと、訝しそうにしながら愛子を呼び止めた。
「先生……先生!」
「ほえっ!?」
奇怪な声を上げてビクリと体を震わせた愛子は、キョロキョロと辺りを見回し、ようやく八重樫の存在に気がつく。そして、八重樫の元気そうな姿にホッと安堵の吐息を漏らすと共に、嬉しそうに表情を綻ばせた。
「八重樫さん! お久しぶりですね。元気でしたか? 怪我はしていませんか? 他の皆も無事ですか?」
今の今まで沈んでいたというのに、口から飛び出るのは生徒への心配事ばかり。相変わらずの愛ちゃん先生の姿に、自然と八重樫の頬も綻び、同時に安心感が胸中を満たす。しばし、二人は再会と互いの無事を喜び、その後、情報交換と相談事のため愛子の部屋へと入っていった。
しかし、その頃のクローン・コマンダー達は王国にて厄介なことなってしまっていることを二人は知らなかった。
雫Side out
一方の愛子教論の護衛を務めていた教官のハヴォックとブリッツ、そしてクローン・ショック・コマンダーのソーンがフォードーからコルトが戦死したことに少しばかり心を痛めていた。
「そうか……コルトが先に逝ったのか」
「はい、彼は学生達を逃がすべく自ら殿を……」
「カミーノ防衛戦では、彼の抵抗は虚しく、命を散らしてしまったが……今度は無事に守れた様だな」
「こちらとしてはアミダラ議員を守れなかった自分が悔やまれるな。だが、今度こそ任務を果たしてみせるさ!」
クローン達は、何時何処の戦場で死ぬのか分からない兵士でありながらも戦う為に造られた存在でもある。しかし、それらを召喚した雷電は彼等クローン達を使い捨ての兵士としてではなく、掛け替えのない戦友として召喚したのだ。その事にはクローン達も感謝している。
そして、今後の方針や行動についてコマンダー達とフォードーで互いに案を出し合うのだった。何故その様なことをするのかというと、数十分前に遡る。
愛子教論がハイリヒ王国の陛下にウルの町で起きたことへの報告をした際に、その陛下が下したことは南雲ハジメ、および藤原雷電を
もっともと言えばそこまでだが、ハジメや雷電の力は強大だ。僅か数人で六万以上の魔物の大群を、未知のアーティファクトや新たに召喚したクローンの軍勢で撃退した。ハジメの仲間も、通常では有り得ない程の力を有している。にもかかわらず、聖教教会に非協力的で、場合によっては敵対することも厭わないというスタンス。王国や聖教教会が危険視するのも頷ける。
しかし、だからといって、直ちに異端者認定するなど浅慮が過ぎるというものだ。異端者認定とは、聖教教会の教えに背く異端者を神敵と定めるもので、この認定を受けるということは何時でも誰にでもハジメ達の討伐が法の下に許されるという事だ。場合によっては、神殿騎士や王国軍が動くこともある。
そして、異端者認定を理由にハジメに襲いかかれば、それは同時に、ハジメからも敵対者認定を受けるということであり、あの容赦のない苛烈な攻撃が振るわれるということだ。その危険性が上層部に理解出来ないはずがない。にもかかわらず、愛子教論の報告を聞いて、その場で認定を下したというのだ。コマンダー達が驚くのも無理はない。
「しかし、今後の方針はどうするかだな。いくら将軍達が教会に従わない大きな力とはいえ、結果的にウルの町を救っている上に俺や愛子教論がいくら抗議をしてもまるで取り合ってもらえない分話にならん。コマンダー・ナグモはこういう事態も予想して、ウルの町で唯でさえ高い“豊穣の女神”の名声を更に格上げしたのにも関わらず、だ。一応護衛騎士団の人に聞いてみたが“豊穣の女神”の名と“女神の双剣”の名は、既に、相当な広がりを見せているそうだ。今、将軍達を異端者認定することは、愛子教論達を救った“豊穣の女神”そのものを否定するに等しい行為でもある。愛子教論の抗議をそう簡単に無視することなど出来ないはずなのだが、それでも彼等は強硬に決定を下した。……正直に言って明らかにおかしいな。…今、思えば、イシュタル達はともかく、陛下達王国側の人達の様子が少しおかしかった」
「……それは、気になりますね。彼等が何を考えているのか……ですが、取り敢えず考えないといけないのは、唯でさえ強いコマンダー・ナグモやフジワラ将軍に
「……そうだな。おそらくは俺達が派遣させられる可能性があるが、もっともな話……」
「ええ。間違いなく学生達の誰かでしょう。本当に馬鹿げている……」
そう話しながらも今後の方針と行動として99号を除くドミノ分隊はすぐに将軍達の所に急行し、将軍達が異端者認定されられていると報告すると同時に共に行動するよう指示を出すのだった。そしてコマンダー・ソーン率いるショック・トルーパー達とハヴォック率いる部隊は引き続き愛子教論の護衛に回るのだった。そして残ったブリッツとフォードーは学生達の教導の為に行動すると決めた後にそれぞれ持ち場に戻るのだった。
クローン・コマンダー達Side out
時刻は、夕方。
鮮やかな橙色をその日一日の置き土産に、太陽が地平の彼方へと沈む頃、愛子は一人誰もいない廊下を歩いていた。廊下に面した窓から差し込む夕日が、反対側の壁と床に見事なコントラストを描いている。
夕日の美しさに目を奪われながら夕食に向かう愛子だったが、ふと何者かの気配を感じて足を止めた。前方を見れば、ちょうど影になっている部分に女性らしき姿が見える。廊下のど真ん中で、背筋をスっと伸ばし足を揃えて優雅に佇んでいる。服装は、聖教教会の修道服のようだ。
その女性が、美しい、しかしどこか機械的な冷たさのある声音で愛子に話しかけた。
「はじめまして、畑山愛子。あなたを迎えに来ました」
愛子はその声に何故だか背筋を悪寒で震わせながらも、初対面の相手に失礼は出来ないと平静を装う。
「えっと、はじめまして。迎えに来たというのは……これから生徒達と夕食なのですが」
「いいえ、あなたの行き先は本山です」
「えっ?」
有無を言わせぬ物言いに、思わず愛子が問い返す。と、そこで女性が影から夕日の当たる場所へ進み出てきた。その人物を見て、愛子は息を呑む。同性の愛子から見ても、思わず見蕩れてしまうくらい美しい女性だったからだ。
夕日に反射してキラキラと輝く銀髪に大きく切れ長の碧眼、少女にも大人の女にも見える不思議で神秘的な顔立ち、全てのパーツが完璧な位置で整っている。身長は、女性にしては高い方で百七十センチくらいあり、愛子では軽く見上げなければならい。白磁のようになめらかで白い肌に、スラリと伸びた手足。胸は大きすぎず小さすぎず、全体のバランスを考えればまさに絶妙な大きさ。
ただ、残念なのは表情が全くないことだ。無表情というより、能面という表現がしっくりくる。著名な美術作家による最高傑作の彫像だと言われても、誰も疑わないだろう。それくらい、人間味のない美術品めいた美しさをもった女だった。
その女は、息を呑む愛子に、にこりともせず淡々と言葉を続けた。
「あなたが今からしようとしていることを、主は不都合だと感じております。あなたの生徒がしようとしていることの方が“面白そうだ”と。なので、時が来るまで、あなたには一時的に、退場していただきます」
「な、なにを言って……」
ゆっくり足音も立てずに近寄ってくる美貌の修道女に、愛子は無意識に後退る。その時、修道女の碧眼が一瞬、輝いたように見えた。途端、愛子は頭に霞がかかったように感じた。思わず、魔法を使うときのように集中すると、弾かれた様にモヤが霧散した。
「……なるほど。流石は、主を差し置いて“神”を名乗るだけはあります。私の“魅了”を弾くとは。仕方ありません。物理的に連れて行くことにしましょう」
「こ、来ないで!も、求めるはっ……うっ!?」
得体の知れない威圧感に、愛子は咄嗟に魔法を使おうとする。しかし、詠唱を唱え終わるより早く、一瞬で距離を詰めてきた修道女によって鳩尾に強烈な拳を叩き込まれてしまった。崩れ落ちる愛子は、意識が闇に飲まれていくのを感じながら、修道女のつぶやきを聞いた。
「ご安心を。殺しはしません。あなたは優秀な駒です。あのイレギュラーを排除するのにも役立つかもしれません」
愛子の脳裏に、白髪眼帯の少年が思い浮かぶ。そして、届かないと知りながら、完全に意識が落ちる一瞬前に心の中で彼の名を叫んだ。
────南雲君!
その瞬間、一発の青い光弾がその修道女に襲いかかるが、修道女はそれを魔法陣で防ぐ。そして一人の鎧を着た男性ことクローン・ショック・コマンダーのソーンが愛用しているZ-6ロータリー・ブラスター・キャノン“ハンマー”を持ちながらその修道女にタックルをぶちかまし、愛子との距離を離すのだった。そして彼の下にクローン・ショック・トルーパー達やハヴォックが集まり、その修道女と対峙する。
「ハヴォック!お前は愛子教論を連れてこの国から脱出しろ!」
「イエッサー!そいつはただの修道女じゃない、死ぬなよ!」
ハヴォックはそう言って気を失った愛子を担いでこの場から離れる。そして残ったソーン達は謎の修道女に対する殿に打って出るのだった。そして修道女はソーン達を見るや否や、まるで人としてみない視線を向けるのだった。
「あなた方があのもう一人のイレギュラーのクローンというものですか。人によって造られし偽りの人間擬きが……」
「悪いが、そういう煽りは俺達には聞かないんでな」
「でしょうね。……ならば、あなた方の未来の兵隊達によって排除されるといいでしょう」
そういって修道女は後方の地面から魔法陣を展開し、そこからファースト・オーダーのストーム・トルーパー達をソーンが率いる一個分隊に対して三倍程の数の一個小隊を召喚するのだった。
「こいつらは…!将軍達が戦っていたストーム・トルーパーと言う奴か…!」
「古い世代は新しい世代によって滅びるのも一つの真理。ならばこそ、あなた達はここで処分します。ストーム・トルーパー、旧世代のクローン達を排除しなさい」
「くそっ!お前たち、何として愛子教論を抱えたハヴォックが逃げ出す時間を稼ぐぞ!」
そうしてソーン率いるクローン・ショック・トルーパー達は謎の修道女が召喚したストーム・トルーパー達と交戦するのだった。
……しかし、多勢に無勢であることには変わりなく、更には修道女からストーム・トルーパーを更に召喚させ、ソーン達を包囲させて攻撃させる。圧倒的な数の暴力に次々とソーンを除くクローン達が倒れて行く。
そして最後の一人ソーンはストーム・トルーパーのブラスターに被弾したのにも関わらず、ハンマーで殴りつけたり、光弾を連射させたりして“共和国の為に!!”と言葉を発して最後の最後まで抵抗を続けた。しかし、圧倒的な敵の物量にソーンは敵のブラスターを何発も貰い受け、そして最後の一発がソーンに当たり、その場で倒れ込み、絶命してしまう。なお、ソーン達が倒したストーム・トルーパーの数は二個分隊に相当する。
「時間を取られましたね……ご苦労でした。畑山愛子のことは私が対処します」
修道女はストーム・トルーパー達に労いの言葉を送った後にストーム・トルーパー達に証拠隠滅を行わせ、そして修道女は愛子を連れて逃げたハヴォックの後を追うのだった。
その頃、愛子を担いで逃げているハヴォックは逃走したのはいいものの、何時追いつかれるの時間の問題だった為に愛子をとある客室近くの廊下に寝かせ、少し離れた所で迎え撃つことにした。
「……恐らく、ソーン達が全滅した可能性があるな。クソッタレ…!来るなら来い!」
「いえ、その必要はありません」
「何っ!?」
ハヴォックは咄嗟に声が聞こえた方角にブラスターを向けるが、それよりも早く、謎の修道女がハヴォックのヘルメットの隙間である首元にナイフを突き刺す。突然の出現に理解できないままハヴォックは何も言えずにそのまま絶命する。
「ようやくです。あとは彼女を本山に運ぶだけ……?」
ハヴォックを片付けた後に愛子を、まるで重さを感じさせないように担いだ修道女は、ふと廊下の先に意識を向けて探るように視線を這わせた。しばらく、じっと観察していた修道女は、おもむろに廊下の先にある客室の扉を開く。
そして、中に入り部屋全体を見回すと、やはり足音を感じさせずにクローゼットに近寄り、勢いよく扉を開けた。しかし、中には何もなく、修道女は首を傾げると再び周囲を見渡し、あちこち見て回った。やがて、何もないと結論づけたのか愛子を担ぎなおすと、踵を返して部屋を出て行った。
静寂の戻った部屋の中で、震える声がポツリと呟く。
「……知らせないと……誰かに」
部屋の中には誰もいない。しかし、何処かに遠ざかる足音がほんの僅かに響き、やがて、完全に静寂を取り戻した。
檜山の末路について(死亡は確定済み)
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雷電に首を刎ねられる
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激昂した恵里に殺される
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原作通り