ありふれないジェダイとクローン軍団で世界最強 作:コレクトマン
57話目です。
解放者が残した神代魔法を習得する為に雷電達一行はそれぞれの乗り物でグリューエン大火山に到着していた。しかし、グリューエン大火山には厄介なものが存在していた。それは、巨大積乱雲のように巨大な渦巻く砂嵐に包まれているのだ。この時にハジメは“……まるでラピュ◯だな”と呟き、雷電も“……完全にラ◯ュタだな”と呟くのだった。
しかも、この砂嵐の中にはサンドワームや他の魔物も多数潜んでおり、視界すら確保が難しい中で容赦なく奇襲を仕掛けてくるというのだ。並みの実力では“グリューエン大火山”を包む砂嵐すら突破できないというのも頷ける話である。
しかし、今回はその対策としてなのか、雷電がスピーダーから降り、スピーダーをハジメが持つ“宝物庫”に収納させ、新たな乗り物である“HAVw A6ジャガーノート”、別名クローン・ターボ・タンクを召喚させて乗り換えるのだった。そして清水やデルタ、不良分隊もスピーダーから降り、ジャガーノートに乗り換えるのだった。
雷電が新たに召喚した
今回は悠長な攻略をしていられない。表層部分では静因石はそれ程とれないため、手付かずの深部まで行き大量に手に入れなければならない。深部まで行ってしまえば、おそらく今までと同じように外へのショートカットがあるはずだ。それで一気に脱出してアンカジに戻る算段だ。
ハジメとしては、アンカジの住民の安否にそれほど関心があるわけではないのだが、助けられるならその方がいい。そうすれば、少なくとも仲間である香織達は悲しまないし、ミュウに衝撃の強い光景を見せずに済む。もっとも、雷電のお人好しが伝染したものであると自覚しているものの、悪い気がしなかった。
ハジメは、そんな事を考えながら気合を入れ直し、巨大砂嵐に突撃した。なお、先方はハジメのブリーゼで、後方は雷電のジャガーノートの順である。
砂嵐の内部は、まさしく赤銅一色に塗りつぶされた閉じた世界だった。“ハルツィナ樹海”の霧のようにほとんど先が見えない。物理的影響力がある分、霧より厄介かもしれない。ここを魔法なり、体を覆う布なりで魔物を警戒しながら突破するのは、確かに至難の業だろう。
太陽の光もほとんど届かない薄暗い中を、ブリーゼの緑光石のヘッドライトとジャガーノートのヘッドライトが切り裂いていく。時速は三十キロメートルくらいだ。事前の情報からすれば五分もあれば突破できるはずである。
と、その時にシアのウサミミがピンッ!と立ち、一拍遅れてハジメも反応した。ハジメは“掴まれ!”と声を張り上げながら、ハンドルを勢いよく切る。
直後、三体のサンドワームが直下より大口を開けて飛び出してきた。ハジメは、四輪にS字を描かせながらその奇襲を回避し、構っていられるかとそのまま遁走に入る。四輪の速度なら、いちいち砂嵐の中で戦うよりも、さっさと範囲を抜けてしまった方がよい。
一方の雷電が操縦するジャガーノートも、隠れていた四体目のサンドワームからの奇襲にあっていたが、ジャガーノートの車体が大きすぎた為か、サンドワームは丸呑みする事ができずに体当たり程度に終わった。その際にジャガーノートから重レーザー砲塔による反撃で、襲撃して来た四体目のサンドワームは、いとも簡単に排除される。
残ったサンドワーム達を無視して爆走する四輪を、更に左右から二体のサンドワームが襲いかかろうとした。タイミング的に真横からの体当たりを受けそうだ。たかだか体当たりで車体が傷つくことはないが、横転の可能性はある。なので、“気配感知”で奇襲を掴んだハジメは、咄嗟に車体をドリフトさせて回避しようとした。が、ここでジャガーノートからオープン・チャンネルを通して、清水の声が届く。
《ハジメ、そのまま真っ直ぐ走れ。こっちはミサイルでサンドワームを蹴散らす》
「清水か?……って、ちょっと待て!?ミサイルって!?」
ハジメは、清水から告げられた言葉に耳を疑った。そしてハジメが運転するブリーゼの後方でジャガーノートが実体弾発射装置ことミサイル・ランチャーが展開され、そこからミサイルが発射される。ハジメはミサイルの爆撃に巻き込まれない様、清水に言われた通りに真っ直ぐ走り抜ける。そしてジャガーノートから放たれたミサイルによって、ハジメを襲おうとする左右のサンドワームが蹂躙される。
ミサイルによる爆撃で、二体のサンドワームが倒された後にハジメは清水に文句を言う。
「おいっ清水!いきなりミサイルをぶっ放す奴があるか!?危うくこっちも巻き込まれるかと思ったぞ!?」
《清水ではない、シャドウだ!それに、ミサイルはサンドワームしか狙っていない。お前の事だからこの程度のミサイル、簡単に躱せるだろうと考えて撃っただけの事だ》
「だからって心臓に悪いことをしてんじゃねぇよ!」
ハジメと清水が口喧嘩?をしている最中、最後の一体のサンドワームが、今度はジャガーノートの背後から襲おうと迫ってくる。それに感づいた雷電は、回避する様にジャガーノートを右側に右折させる。
サンドワームにとってデカい障害だったジャガーノートが右折した事で、サンドワームの標的がハジメ達が乗る四輪を狙い始める。地中を進む速度は中々のものだ。鬱陶しくなったハジメは、四輪のギミックを起動させる。車体後部からガコン!と音が響いたかと思うと、パカリと一部が開き、そこから黒く丸い物体が複数転がりでた。
それらは、真後ろから四輪を追跡していた最後のサンドワームが、四輪から出た黒い物体──手榴弾と交差した瞬間、大爆発を起こして、サンドワームを半ばから吹き飛ばした。上半身がちぎれ飛び、宙をくるくると舞ったあと、砂嵐の中へと消えていく。
「うひゃあー、すごいですぅ。ハジメさん、この四輪って一体いくつの機能が搭載されているんですか?」
派手に飛び散ったサンドワームを後部の窓から眺めながら、シアがハジメに尋ねた。ハジメは、ニヤッと悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「最終的に変形して人型汎用兵器――巨大ゴーレムになる」
「「「……」」」
《いやっ…洒落にならんだろ……》
そんな馬鹿なと言いたいところだが、ハジメならやりかねないと、尋ねたシアだけでなくユエとティオも無言になってキョロキョロと車内を見回し始めた。そして、オープン・チャンネルでそれを聞いていた雷電はハジメに対してツッコミを入れるのだった。ハジメは“冗談だって。流石に、そんな機能はついてねぇよ……憧れるけどな”と苦笑いする。ハジメなら、いつかやらかすに違いないと、ユエ達は確信した。
そんな余裕のハジメ達の前には、その後も、赤銅色の巨大蜘蛛やアリのような魔物が襲いかかってきた。しかし、四輪とジャガーノートの武装やユエとティオの攻撃魔法の前に為す術なく粉砕され、その進撃を止めることは叶わなかった。そうしてハジメ達は、数多の冒険者達を阻んできた巨大砂嵐を易々と突破したのだった。
ボバッ!と、そんな音を立てて砂嵐を抜け出たハジメ達の目に、まるでエアーズロックを何倍にも巨大化させたような岩山が飛び込んできた。砂嵐を抜けた先は静かなもので、周囲は砂嵐の壁で囲まれており、直上には青空が見える。竜巻の目にいるようだ。
“グリューエン大火山”の入口は、頂上にあるとの事だったので、進める所まで四輪で坂道を上がっていく。露出した岩肌は赤黒い色をしており、あちこちから蒸気が噴出していた。活火山であるにも関わらず、一度も噴火したことがないという点も、大迷宮らしい不思議さだ。
やがて傾斜角的に四輪やジャガーノートでは厳しくなってきたところで、ハジメ達は四輪を降り、雷電達もジャガーノートから降りて徒歩で山頂を目指すことになった。
「うわぅ……あ、あついですぅ」
「ん~……」
「確かにな。……砂漠の日照りによる暑さとはまた違う暑さだ。……こりゃあ、タイムリミットに関係なく、さっさと攻略しちまうに限るな」
「俺としては、前世で火山の星の調査をした事があるからある程度慣れていると思ったが……やっぱり、そう簡単にはいかないか……」
「ふむ、妾は、むしろ適温なのじゃが……熱さに身悶えることが出来んとは……もったいないのじゃ」
「……あとでマグマにでも落としてやるよ」
「……それはそうと雷電、一応ジャガーノートは乗員を除いて300人位は乗せられる区画があった筈だが、その区画に採取した静因石をそこに収納できないか?」
「それは難しいだろうな。無事に攻略し、外へと繋がる転移魔法があるとしても、入り口付近に戻る訳じゃない場合もある。些か面倒だが、このジャガーノートは勿体無いが、ここで爆破してから先に進もうと思う」
外に出た途端、襲い来る熱気に、ティオ以外の全員がうんざりした表情になる。冷房の効いた快適空間にいた弊害で、より暑く感じてしまうというのもあるだろう。異世界の冒険者、あるいは旅人だというのに、現代日本の引きこもりのような苦悩を味わっているのは……自業自得だ。
清水が静因石を採取した後にジャガーノートに詰め込めないから遺伝に聞いてみたが、結論からして無理だった。そして、ジャガーノートはここで使い捨てると同時に、技術漏洩が起きない様に爆破してから登山する事になった。
そんなこんなで、暑い暑いと文句を言いながらも素早く山頂を目指し、岩場をひょいひょいと重さを感じさせず、どんどん登っていく。結局、ハジメ達は、一時間もかからずに山頂にたどり着いた。なお、清水やデルタ、不良分隊はアセンション・ケーブルを利用して、何とかハジメ達に付いて行くのだった。
たどり着いた頂上は、無造作に乱立した大小様々な岩石で埋め尽くされた煩雑な場所だった。尖った岩肌や逆につるりとした光沢のある表面の岩もあり、奇怪なオブジェの展示場のような有様だ。砂嵐の頂上がとても近くに感じる。
そんな奇怪な形の岩石群の中でも群を抜いて大きな岩石があった。歪にアーチを形作る全長十メートルほどの岩石である。
ハジメ達は、その場所にたどり着くと、アーチ状の岩石の下に“グリューエン大火山”内部へと続く大きな階段を発見した。ハジメは、階段の手前で立ち止まると肩越しに背後に控えるユエ、ティオ、雷電、シア、清水、デルタ、不良分隊の顔を順番に見やり、自信に満ちた表情で一言、大迷宮挑戦の号令をかけた。
「やるぞ!」
「んっ!」
「うむっ!」
「無論だ」
「はいです!」
「あぁ…」
「デルタ、行くぞ!」
「「「了解!」」」
「よし…不良分隊、地獄の釜に突入するぞ!」
「了解です!」
「ハハハーっ!腕がなるぜ!!」
「フッ……」
それぞれ意気込んだ様子で神代魔法と静因石を得る為にグリューエン大火山に入るのだった。
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グリューエン大火山】の内部は、【オルクス大迷宮】や【ライセン大迷宮】以上に、とんでもない場所だった。
難易度の話ではなく、内部の構造が、だ。
まず、マグマが宙を流れている。亜人族の国フェアベルゲンのように空中に水路を作って水を流しているのではなく、マグマが宙に浮いて、そのまま川のような流れを作っているのだ。空中をうねりながら真っ赤に赤熱化したマグマが流れていく様は、まるで巨大な龍が飛び交っているようだ。
また、当然、通路や広間のいたるところにマグマが流れており、迷宮に挑む者は地面のマグマと、頭上のマグマの両方に注意する必要があった。
しかも……
「うきゃ!」
「おっと、大丈夫か?」
「はう、有難うございます、マスター。いきなりマグマが噴き出してくるなんて……察知できませんでした」
「ここは火山内だからな。俺と雷電以外、何処からマグマが噴き出してくるか分からないからな…」
と、シアが言うように、壁のいたるところから唐突にマグマが噴き出してくるのである。本当に突然な上に、事前の兆候もないので察知が難しい。まさに天然のブービートラップだった。雷電とハジメが“熱源感知”を持っていたのは幸いだ。それが無ければ、警戒のため慎重に進まざるを得ず攻略スピードが相当落ちているところだった。
そして、なにより厳しいのが、茹だるような暑さ──もとい熱さだ。通路や広間のいたるところにマグマが流れているのだから当たり前ではあるのだが、まるでサウナの中にでもいるような、あるいは熱したフライパンの上にでもいるような気分である。“グリューエン大火山”の最大限に厄介な要素だった。
ハジメ達が、ダラダラと汗をかきながら、天井付近を流れるマグマから滴り落ちてくる雫や噴き出すマグマをかわしつつ進んでいると、とある広間で、あちこち人為的に削られている場所を発見した。ツルハシか何かで砕きでもしたのかボロボロと削れているのだが、その壁の一部から薄い桃色の小さな鉱石が覗いている。
「お?静因石……だよな?あれ」
「うむ、間違いないぞ、ご主人様よ」
ハジメの確認するような言葉に、知識深いティオが同意する。どうやら、砂嵐を突破して“グリューエン大火山”に入れる冒険者の発掘場所のようだ。
「……小さい」
「ほかの場所も小石サイズばっかりですね……」
ユエの言うと通り、残されている静因石は、ほとんどが小指の先以下のものばかりだった。ほとんど採られ尽くしたというのもあるのだろうが、サイズそのものも小さい。やはり表層部分では、静因石回収の効率が悪すぎるようで、一気に、大量に手に入れるには深部に行く必要があるようだ。
ハジメは、一応、“鉱物系探査”で静因石の有無を調べ、簡単に採取できるものだけ“宝物庫”に収納すると、ユエ達を促して先を急いだ。
暑さに辟易しながら、七階層ほど下に降りる。記録に残っている冒険者達が降りた最高階層だ。そこから先に進んだ者で生きて戻った者はいない。気を引き締めつつ、八階層へ続く階段を降りきった。
その瞬間……
ゴォオオオオ!!!
強烈な熱風に煽られたかと思うと、突如、ハジメ達の眼前に巨大な火炎が襲いかかった。オレンジ色の壁が螺旋を描きながら突き進んでくる。
「“絶禍”」
そんな火炎に対し、発動されたのはユエの魔法。ハジメ達の眼前に黒く渦巻く球体が出現する。重力魔法だ。ただし、それは対象を地面に押しつぶす為のものではなかった。
人など簡単に消し炭に出来そうな死の炎は、直径六十センチほどの黒く渦巻く球体に引き寄せられて余すことなく消えていく。余波すら呑み込むそれは、正確には消滅しているのではない。黒く渦巻く球体──重力魔法“絶禍”は、それ自体が重力を発生させるもので、あらゆるものを引き寄せ、内部に呑み込む盾なのだ。
火炎の砲撃が全てユエの超重力の渦に呑み込まれると、その射線上に襲撃者の正体が見えた。
それは、雄牛だ。全身にマグマを纏わせ、立っている場所もマグマの中。鋭い二本の曲線を描く角を生やしており、口から呼吸の度に炎を吐き出している。耐熱性があるにも程があると思わずツッコミを入れたくなる魔物だった。
マグマ牛は、自身の固有魔法であろう火炎砲撃をあっさり無効化されたことに腹を立てたのか、足元のマグマをドバッ!ドバッ!と足踏みで飛び散らせながら、突進の構えを取っている。
そんなマグマ牛に向かって、ユエの展開していた超重力の渦が、突如、マグマ牛に向かって弾けとんだ。その瞬間、圧縮されていた火炎は砲撃となって一直線にマグマ牛へと疾走する。レーザーのごとき砲撃はそれを放ったマグマ牛のものより圧縮された分威力がある。
今まさに、突進しようとしていたマグマ牛は出鼻をくじかれ、ユエにより、文字通りお返しとばかりに放たれた砲撃の直撃を受けた。
ドォゴオオ!!
爆音と共に空間が激しく振動し、マグマ牛の立っていたマグマが爆撃されたように吹き飛んだ。マグマ牛は、衝撃により後方へ吹き飛ばされ、もんどり打って壁に叩きつけられる。しかし、“ギュォオオ!!”と悲鳴とも怒りの咆哮ともつかない叫びを上げると、すぐさま起き上がり、今度こそ、侵入者を排除せんと猛烈な勢いで突進を開始した。
「むぅ……やっぱり、炎系は効かないみたい」
「まぁ、マグマを纏っている時点でなぁ……仕方ないだろ」
火炎の砲撃を返したユエが不満そうな声を上げる。それに苦笑いしながらドンナーを抜こうとしたハジメにシアが待ったをかけた。
「ハジメさん、私にやらせて下さい!」
既にドリュッケンを手に気合充分な感じで鼻息を荒くしているシアに、いつになく積極的だなぁと疑問を抱いたハジメだったが、シアがドリュッケンに仕込んでいる魔力を魔眼石で見て、新機能を試したいのだと察し手をヒラヒラさせて了承の意を伝える。
シアは、“よっしゃーですぅ!殺ったるですぅ!”と気合の声を上げると、トットッと軽くステップを踏み、既に数メートルの位置まで接近していたマグマ牛に向かって飛びかかった。この時に雷電は言葉使いが荒くなったシアに少しばかり不安になったのは余談だ。
体を空中で一回転させ遠心力をたっぷり乗せると、正面から突っ込んできたマグマ牛に絶妙なタイミングでドリュッケンを振り下ろす。狙い違わず、振り下ろされたドリュッケンは、吸い込まれるようにマグマ牛の頭部に直撃した。と、その瞬間、直撃した部分を中心にして淡青色の魔力の波紋が広がり、次いで、凄まじい衝撃が発生。マグマ牛の頭部がまるで爆破でもされたかのように弾けとんだ。
シアは、打ち付けたドリュッケンを支点にして空中で再び一回転すると、そのまま慣性にしたがって崩れ落ちながら地を滑るマグマ牛を飛び越えて華麗に着地を決めた。
「お、おうぅ。ハジメさん、やった本人である私が引くくらいすごい威力ですよ、この新機能」
「ああ、みたいだな……“衝撃変換”、どんなもんかと思ったが、なかなか……」
ハジメだけでなく、ユエやティオも思わず感心の声を上げてしまうくらい、なかなかの威力を発揮したシアの一撃。それは、ハジメが口にしたように、“衝撃変換”という固有魔法のおかげだ。
この“衝撃変換”は、ハジメが手に入れた新たな固有魔法で、魔力変換の派生に位置づけられている。効果は文字通りで魔力を衝撃に変換することが出来るというものだ。
先日、“オルクス大迷宮”にいてハジメが問答無用でミンチにしたあの馬頭の能力を、実は杭を回収する時にこっそりと一緒に回収していた肉を喰らうことで手に入れたのだ。因みに雷電もその肉を喰らってハジメ同様に技能を手に入れている。
並みの魔物では、もう能力どころかステータスも変動しないハジメであったが、ハジメが光輝達の位置を掴む原因となった光輝の限界突破の波動は相当なもので、それでも倒せなかった馬頭なら、あるいは効果があるのではと思い喰らってみたのだが……案の定、ステータスは目立つほど上昇しなかったものの、ハジメは馬頭の固有魔法を手に入れることが出来たのである。
その“衝撃変換”を、生成魔法で鉱石に付加し、それを新たにドリュッケンに組み込んだというわけだ。
マグマ牛の爆ぜた頭部を興味深げに見つめるハジメだったが、ユエに促され、先を急いだ。
その後、階層を下げる毎に魔物のバリエーションは増えていった。マグマを翼から撒き散らすコウモリ型の魔物や壁を溶かして飛び出てくる赤熱化したウツボモドキ、炎の針を無数に飛ばしてくるハリネズミ型の魔物、マグマの中から顔だけ出し、マグマを纏った舌をムチのように振るうカメレオン型の魔物、頭上の重力を無視したマグマの川を泳ぐ、やはり赤熱化した蛇など……
生半可な魔法では纏うマグマか赤熱化した肉体で無効化してしまう上に、そこかしこに流れるマグマを隠れ蓑に奇襲を仕掛けてくる魔物は厄介なこと極まりなかった。なにせ、魔物の方は、体当りするだけでも人相手なら致命傷を負わせることが出来る上に、周囲のマグマを利用した攻撃も多く、武器は無限大と言っていい状況。更に、いざとなればマグマに逃げ込んでしまえば、それだけで安全を確保出来てしまうのだ。
例え、砂嵐を突破できるだけの力をもった冒険者でも、魔物が出る八階層以降に降りて戻れなかったというのも頷ける。しかも、それらの魔物は、倒しても魔石の大きさや質自体は“オルクス大迷宮”の四十層レベルの魔物のそれと対して変わりがなく、貴重な鉱物である静因石も表層のものとほとんど変わらないとあっては、挑戦しようという者がいないのも頷ける話だ。
そして、なにより厄介なのは、刻一刻と増していく暑さだ。
「はぁはぁ……暑いですぅ」
「……シア、暑いと思うから暑い。流れているのは唯の水……ほら、涼しい、ふふ」
「むっ、ご主人様よ!ユエが壊れかけておるのじゃ! 目が虚ろになっておる!」
「不味いな……殆どがこの熱さにやられかけている様だ。清水、デルタに不良分隊、そっちは大丈夫か?」
「アーマーの空調機能があるとはいえ、正直きついな。……デルタや不良分隊はどうなんだ?」
「我々に関しては問題ない。…しかし、長期戦になると将軍等が限界が迎えるのも時間の問題だ」
「俺もデルタと同じ考えです。このままでは俺達以外がこの熱さに先に参ってしまう」
暑さに強いティオと雷電、デルタに不良分隊以外、ハジメ達ですらダウン状態だ。一応、冷房型アーティファクトで冷気を生み出しているのだが……焼け石に水状態。止めどなく滝のように汗が流れ、意識も朦朧とし始めているユエとシアを見て、ハジメもあご先に滴る汗を拭うと、少し休憩が必要だと考えた。
ハジメは、広間に出ると、マグマから比較的に離れている壁に“錬成”を行い横穴を空けた。そこへユエ達を招き入れると、マグマの熱気が直接届かないよう入口を最小限まで閉じた。更に、部屋の壁を“鉱物分離”と“圧縮錬成”を使って表面だけ硬い金属でコーティングし、ウツボモドキやマグマの噴射に襲われないよう安全を確保する。オルクス大迷宮の奈落に落ちた時に作ったセーフティー・ルームを同じ様に作り出したのだ。
「ふぅ……ユエ、氷塊を出してくれ。しばらく休憩しよう。でないと、その内致命的なミスを犯しそうだ」
「ん……了解」
ユエは、虚ろな目をしながらも、しっかり氷系の魔法を発動させ部屋の中央に巨大な氷塊を出現させた。気をきかせたティオが、氷塊を中心にして放射するように風を吹かせる。氷塊が発する冷気がティオの風に乗って部屋の空気を一気に冷やしていった。
「はぅあ~~、涼しいですぅ~、生き返りますぅ~」
「……ふみゅ~」
女の子座りで崩れ落ちたユエとシアが、目を細めてふにゃりとする。タレユエとタレシアの誕生だ。
ハジメは、内心そんな二人に萌えながら“宝物庫”からタオルを取り出すと全員に配った。
「ユエ、シア、だれるのはいいけど、汗くらいは拭いておけよ。冷えすぎると動きが鈍るからな」
「ハジメの言う通りだ二人とも。今の内に汗は拭いておこう」
「……ん~」
「了解ですぅ~」
間延びした声で、のろのろとタオルを広げるユエとシアを横目に、ティオがハジメに話かける。
「ご主人様と雷電は、まだ余裕そうじゃの?」
「俺の場合は少し特殊でな。火山の暑さは知っていたが、ここまでとなると厄介だが……」
「お前ほどじゃない。流石に、この暑さはヤバイ。もっといい冷房系のアーティファクトを揃えておくんだった……」
「ふむ、ご主人様でも参る程ということは……おそらく、それがこの大迷宮のコンセプトなのじゃろうな」
参るほどではないとは言え、暑いものは暑いので同じく汗をかいているティオがタオルで汗を拭いながら言った言葉に、ハジメが首をかしげる。
「コンセプト?」
「うむ。ご主人様から色々話を聞いて思ったのじゃが、大迷宮は試練なんじゃろ? 神に挑むための……なら、それぞれに何らかのコンセプトでもあるのかと思ったのじゃよ。例えば、ご主人様が話してくれた“オルクス大迷宮”は、数多の魔物とのバリエーション豊かな戦闘を経て経験を積むこと。“ライセン大迷宮”は、魔法という強力な力を抜きに、あらゆる攻撃への対応力を磨くこと。この“グリューエン大火山”は、暑さによる集中力の阻害と、その状況下での奇襲への対応といったところではないかのぉ?」
「……なるほどな……攻略することに変わりはないから特に考えたことなかったが……試練そのものが解放者達の“教え”になっているってことか」
ティオの考察に、“なるほど”と頷くハジメ。ドMの変態の癖に知識深く、思慮深くもあるティオに、普段からそうしていれば肉感的で匂い立つような色気がある上に理知的でもある黒髪美女なのに……と物凄く残念なものを見る眼差しを向ける。
しかし、ティオの首筋から流れた汗がツツーと滴り落ちて、その豊満な胸の谷間に消えていくのを目にすると、何となく顔を逸らした。そして、その視線の先に、同じように汗で服が張り付いて、濡れた素肌が見え隠れしているユエとシアがいることに気がつき、今度は、ユエに視線が吸い寄せられる。
汗を拭くためか、大きく着崩された純白のドレスシャツから覗く素肌は、暑さのため上気しておりほんのり赤みを帯びている。汗で光る素肌はなんとも艶かしく、ユエの吐く普段より熱く荒い吐息と相まって物凄い色気を放っていた。
思わず、目を逸らすことも忘れて凝視していたハジメだが、不意に上げた視線がユエとバッチリと合った。ユエの艶姿に状況も忘れて見蕩れていた……どころか少々欲情までしてしまったハジメは、バツ悪そうに目を逸らそうとした。
しかし、目を逸らす一瞬前に、ユエが妖艶な微笑みを浮かべハジメの視線を捉える。そして、服を着崩したまま、まるで、猫のように背をしならせて、ゆっくり四つん這いでハジメに近付いて行った。ハジメの視線を捉えたまま離さない潤んだ瞳と、熱で上気した頬、そして動くたびにチラチラと覗く胸元の膨らみ……
ハジメの、すぐ眼前まで四つん這いでやって来たユエは、胡座をかいて座るハジメを下から上目遣いで見つめると、甘えるような、誘うような甘い声音で……
「……ハジメが綺麗にして?」
そんな事を言った。ハジメは手渡されたタオルを無意識に受け取る。視線はユエの瞳に固定されたままだ。ハジメは、内心で“やっちまった。この状態のユエには勝てる気がしない”と苦笑いしつつ、そっと、ユエの首筋に手を這わせようとして……シアからの抗議の声にその手を止めた。
「お・ふ・た・り・と・も!少しはTPOを弁えて下さい!先を急いでいる上に、ここは大迷宮なんですよ!もうっ!ほんとにもうっ!」
「ハジメ……気持ちは分かるが、俺達は今、この大火山を攻略中だと言う事を忘れるな」
「いや、まぁ、何だ。しょうがないだろ?ユエがエロかったんだ。無視できるはずがない」
「……ジッと見てくるハジメが可愛くて」
「やれやれ……ここでも二人のバカップルぶりは今でも健在か……」
「反省って言葉知ってます?私だって、マスターに見てもらおうときわどい格好していたのに……ぐすっ、自信なくしますよぉ~。ねぇ、ティオさんもそう思いますよね?」
「まぁ、二人は相思相愛じゃからのぉ。仕方ないのではないか?妾も場所など気にせず罵って欲しいのじゃ。……じゃが、まぁ、ご主人様は妾の胸に少し反応しておったしのぉ~。今回はそれで満足しておくのじゃ。くふふ」
相変わらず変態的な発言をするティオ。最初に、ティオの胸元を流れる汗に、ハジメがセクシーさを感じたことがバッチリばれていたらしい。それを聞いたシアが、“私は一瞥もされなかったのに!”と怒り出し、先程のTPOを弁えろと言ったことも忘れて、雷電の前で脱ぎだした。流石の雷電も、シアの大胆な行動に顔が赤くなる。ならば、妾もとティオまで脱ぎだし、取り敢えず鬱陶しかったのでゴム弾を発砲して黙らせるハジメ。
胸をモロ出ししてのたうつシアと気持ち悪い笑みを浮かべてのたうつティオを前に、ユエの汗を拭いつつ、ここに香織がいなくてよかったと内心ホッと息を吐くハジメ。そして何気に、ハジメのフォローのおかげで助かったと思いつつも、ここに恵里がいなくてよかったと内心そう思った雷電であった。
この時にアンカジに残っていた香織と恵里は、何かしらの電波を受信したのか“
ハジメSide out
ハジメ達がグリューエン大火山の攻略をしているその頃、表舞台から姿をくらましたキャスパー・マテリアルと数人の部下と
「……なるほど。今度は、ヘルシャー帝国に武器を売り込むという事ですね?」
「そうだ、最高指導者からの直々の命だ。お前たち商人を通して、我々が提供するブラスターや重火器をヘルシャー帝国に売り渡し、異端者である南雲ハジメ、藤原雷電を排除するために必要な事だ。断れば、貴様とて理解している筈だ」
「フフーン……一応、書類は拝見させてもらいますね」
キャスパーは、ファースト・オーダーの女性士官が提出した書類を目を通していた。その時に女性士官の通信機にある信号が入る。その内容は、キャスパー・マテリアルを含む商人の排除であった。要するに、キャスパーはファースト・オーダーの指示に従わないと判断されたのだった。そして書類を拝見したキャスパーはヘルシャー帝国に武器を売り込む事について女性士官に話すのだった。
「書類を拝見させてもらいました。いいでしょう、その依頼をこちらで承りましょう」
「いや、その必要性がなくなった」
「……と、言いますと?」
キャスパーの問いに答えず、代わりに女性士官はSE-44Cブラスター・ピストルをキャスパーに向けて引き金を引き、SE-44Cから赤い閃光がキャスパーに襲いかかるが、当たる前にダージが盾になり、特有の不死身さを見せる。キャスパーを仕留め損ねた女性士官は再びブラスター・ピストルの引き金を引こうとするが、それよりもチェキータの行動が早く、女性士官の顔面に膝蹴りを食らわせる。これを食らった女性士官は一撃で伸され、気を失う。
「キャスパー、何ぼうっとしてるの?連中は殺しに来たよ!」
そう言いながらもチェキータは、この世界に存在しないであろう武器である9mm拳銃のGLOCK19を取り出し、スライドを後方に引いた後に倒れた女性士官に近づき、頭部に二発撃ち込んで確実に止めを刺す。
「ファースト・オーダーは私達を切り捨てたようだよ」
「おっとと!度肝を抜かれちゃいましたよ、ダージがいなかったらやられていましたよ」
「………………」
そうキャスパーが言っている時にキャスパーの部下がチェキータの銃声に反応したのか応接室に集まる。まるで予めこうなる事を予想していたのかのように。そうしてキャスパー達は歩きながらも部下達に状況を確認する。
「他の敵は?」
「不明」
「人数」
「不明、指示を…」
「ここにいるのは不味い、ここから脱出する。敵は撃滅する、見つけ次第ぶち殺せ!ギルドや保安局も撒かないといけないし、めんどくさいな〜…」
そうぼやきながらもキャスパー達はこの建物から脱出を始めるのだった。
そして、ファースト・オーダーの突入部隊はキャスパー達がいるであろう建物に侵入した。すると突入部隊に
《FN-1536との通信途絶、恐らく死亡したと判断する。突入斑は南階段と北階段で武器商人を挟撃せよ。第一突入斑は南から回れ。第二突入斑、北階段の状況は?》
「準備良し」
第二突入斑は既に北階段を確保し、そこで待機していた。そして南階段から上の階へと昇り、階段へと繋がる通路でキャスパー達を待ち伏せする。
キャスパーの部下達は出口へと繋がる階段の通路に待ち伏せしていることを理解しており、そこで部下達が所持しているPDWの“FN P90”で威嚇射撃を行う。待ち伏せされていることを敵に悟られたストーム・トルーパー達は敵の弾幕が止むまで待った。その時にチェキータがコンバットナイフを片手にストーム・トルーパー達の懐に入り込む。
ストーム・トルーパー達は懐に入り込んで来たチェキータを応戦しようにも相手が素早すぎた為か逆にチェキータのコンバットナイフによって蹂躙される。そして数秒後にはストーム・トルーパー達の死体の山が出来上がっていた。
「戦いってのは厳しいもんだろう?うちの兵隊はな、場数が違うんだよ」
「はっ…やーね。何嬉しそうになっちゃってんのよ、キャスパー?」
「はい、実際嬉しいですよ。彼等との戦いは憧れでしたから。正確には、この世界の神ことエヒトの使徒。即ち、その使徒の軍隊とは思えない位の技術力を有する軍事組織、ファースト・オーダーの存在。僕の祖先も、嘗て解放者と呼ばれた者達と共に戦ったが、相当煮え湯を飲まされたと父から聞かされています。そんな相手に力比べしてみたいじゃないですか。でも、この程度だと肩透かしですね。ファースト・オーダーの指揮官にはもう少し頑張っていただけないと…」
「やれやれ……どうしてこんな風に育っちゃったんだか?昔は可愛かったんだけどねぇ」
そう語りながらも建物から脱出する為に移動を続けるキャスパー達。すると北側で待機していた第二突入斑のストーム・トルーパー達が第一突入斑が全滅した事をHQを通して挟撃は破綻した事を悟り、キャスパー達を追撃するのだった。そして後方を安全を確保していたダージと部下が敵を察知したのか銃を取り出し、出てくるストーム・トルーパー達を応戦する。
「おいおい、まだいるのかい?……まぁいい。殺せ殺せ」
そう指示を出しながらもこの建物から脱出し、今後の事を考えるキャスパーだった。
檜山の末路について(死亡は確定済み)
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雷電に首を刎ねられる
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激昂した恵里に殺される
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原作通り