ありふれないジェダイとクローン軍団で世界最強 作:コレクトマン
61話目です。
海上での遭難、思わぬ再会
あの後のハジメ達はグリューエン大火山のマグマの中を丸一日分、漂流されていた。その間、船内はこれでもかというくらいに荒れ続けた。いつまでもユエの“絶禍”に吸い寄せられた状態で体を固定しているわけにもいかず、荒れる船内で試行錯誤した末、ハジメは、何とか生成魔法で重力石を生成し浮遊する座席を作成した。相変わらず、ゴガンッゴガンッ!とあちこちの壁にぶつかる音を響かせ玩具のように振り回される潜水艇だったが、この浮遊座席により、ある程度シェイクされるのは防ぐことができた。
そしてユエとシアは、ハジメの左右にヒシッとしがみつきながら、緑光石の淡い光が照らす船内で眠れぬ時間を過ごしたのである。なお、雷電達は揺れる船内で壁にロープを括り付け、身体を固定した後に仮眠を取り、何時問題が起きても対応できる様に備えていた。
この時にハジメは、もしやこのままこの星のマントルまで行くんじゃないだろうな?と冷や汗と共に疑いを持ち始めた頃に、遂に先の知れない地下の旅にも終わりが来た。これまでで最大の衝撃がハジメ達を襲ったのである。その衝撃は凄まじく“金剛”の防御を貫いて直接潜水艇にダメージを与えるほどだった。そして、その衝撃と共に、潜水艇は猛烈な勢いで吹き飛ばされた。
激しい衝撃に、急いで“金剛”を張り直し、ハジメは、何事かとクロスビットにも搭載されている遠隔カメラの機能をもつ鉱石“遠透石”で周囲を確認した。そうして目に入った光景は、マグマで満たされた赤の世界ではなく、蛇のようにのたうつマグマと猛烈な勢いで湧き上がる気泡で荒れ狂った“海”だった。
どうやらハジメ達は、何処かの海底火山の噴出口から、いわゆるマグマ水蒸気爆発に巻き込まれて盛大に吹き飛ばされたらしかった。その衝撃で、船体が著しく傷ついたわけだが、何とか浸水を免れたのは不幸中の幸いというべきか、それとも流石ハジメのアーティファクトと称えるべきか微妙なところだ。
九死に一生を得て、何とか地上に戻れたことに安堵したハジメ達だったが、その後も、受難は続いた。
噴火によりくるくると回りながら、海中へと放り出されたハジメ達は、少し呆然としつつも、直ぐに潜水艇の制御を取り戻し航行を開始した。両翼や船尾が大破していたが、魔力の放出による航行も出来るので、スクリューや両翼・船尾を使った航行に比べると圧倒的に燃費は悪いものの問題はなかった。
再び、噴火に巻き込まれては堪らないと、急いでその場を離れたハジメ達だったが、そんなシャチ型の潜水艇を付け狙う巨大な影があった。それは、巨大なイカっぽい何か。体長三十メートルはあり、三十本以上の触手をうねうねさせている姿は、海の怪物クラーケンを彷彿とさせる。
そんな怪物が、潜水艇に容赦なく襲い掛かった。触手に絡め取られ、あわや円形に並んだ鋭い牙に噛み砕かれるかという所で、潜水艇搭載の武装(魚雷など)とユエの魔法で撃退した。
しかし、クラーケンモドキを退けても、まだ、終わらない。今度は、サメの群れに襲われたのだ。そのサメも魔物の一種で、連携を取りながら水の竜巻を放って来るという鬱陶しいことこの上ない敵だった。
遂には潜水艇に搭載していた武装も尽き、ユエの魔法頼りとなったが、雷電が技能の派生である“共和国軍武器・防具召喚”で水中戦に特化したスーツとアーマーである“クローン・スキューバ・アーマー”を召喚し、そのアーマーに着替えて酸素ボンベを背負いながらも、雷電が潜水艇から出て、襲撃しているサメ型の魔物を蹴散らす為にライトセーバーを片手に戦闘を開始するのだった。
戦闘の際にユエの魔法の援護があってか、戦闘はかなり楽だった。その間に雷電は魔物を数匹ぐらい倒した後に技能の“共和国軍兵器召喚”で“1人乗り潜水艇デヴィルフィッシュ”を召喚し、それに乗り込んで残りの魔物を倒すのだった。
魔物達を撃退できた後に雷電がハジメ達に先に海面に浮上すると告げた後にデヴィルフィッシュで海面へと移動する。そして海面に到着した雷電は“共和国軍兵器召喚”で共和国宇宙軍主力艦である“ヴェネター級スター・デストロイヤー”を召喚し、アセンション・ケーブルを使ってヴェネター級に乗り込むのだった。
ヴェネター級に乗り込んだ雷電は、この船を動かす為の兵士を9000人を召喚させた後に“念話”でハジメにこちらの魔力を辿って、海面に上がって来てくれと指示を出す。そして数分後、ハジメ達が乗る潜水艇が海面に上がり、ハジメ達を潜水艇ごとヴェネター級へと回収するのだった。
ハジメ達を回収した後、見渡す限り海しかない場所で、方角的に大陸があるであろう方向へ進んだ。進む際に、ヴェネター級は海水に着水したまま航行していた。デュラスチールを装甲に使っている為に出来れば海水に浸からせるのはNGなのだが、他の船と接触した時の場合の事を考えて苦し紛れの偽造である。因みに、回収したハジメの潜水艇は下部のハンガーに収納され、そこでハジメとクローン・トルーパー・フライト・クルー等が潜水艇の修繕作業が半日も掛けて修繕を完了させるのだった。
無事に海面から出てから更に二日も経ち、“グリューエン大火山”攻略から現在まで三日も経った。“グリューエン大火山”攻略は、まさに怒涛の展開だった。どう考えてもハジメ達以外では生き残れる可能性はないと言える状況だった。思わず、ハジメが、某男女平等パンチの使い手の如く“不幸だー!”と叫びたくなったのも頷けるだろう。なお、食料に関してはヴェネター級の甲板の上で釣りをし、魚を釣り上げてそれを食料にしていたので問題はなかったものの、三日間も同じ魚料理では飽きるのだが、生きる為に島に着くまでは我慢するハジメ達だった。
この三日間の間、ハジメの左腕の義手の修繕を終えた後に暇がてらに清水とデルタ、不良分隊専用にハジメと清水が元いた世界こと地球で生産されている銃の一つ、“HK416”をベースに独自に改良を施し、ハジメお手製のカスタムライフルのHK416改こと“5.56mm MkⅢアサルトライフル”を七梃も錬成で製造する。更には対ファースト・オーダー戦を想定してプラストイド合金製複合材のアーマーを貫通、又は破壊できるショットガン“AA-12”もMkⅢアサルトライフルとは少なめに三梃だけ錬成で製造し、弾薬も12ゲージバックショット弾を加え、ハジメお手製のオリジナル弾である“12ゲージ小型グレネード弾”を錬成して作り出した。
この12ゲージ小型グレネード弾は、別名“12ゲージ榴弾”と呼ばれる様になり、バックショット弾と12ゲージ榴弾をそれぞれ900個も錬成で作り出し、いずれファースト・オーダー戦以外にも迷宮攻略においても役に立つだろう。
そんなこんなで三日間も海の上を漂いながらも何時島に辿り着くか分からない長い航海を続けるのだったのだが、突如とそれは終わりを迎えたのだ。ヴェネター級の甲板の上で見たこともない魚の丸焼きに舌鼓を打っていたシアのウサミミが、突如、ピコンッ!と跳ねたかと思うと、忙しなく動き始めた。次いで、ハジメも“ん?”と何かの気配を感じたようで、全長六十センチ近くある魚を頬張りながら、視線を動かした。雷電もフォースの揺らぎを感じ取り、何かが近づいていることに気付き、その感じ取った方角に目を向ける。
直後、ヴェネター級を囲むようにして、先が三股になっている槍を突き出した複数の人が、ザバッ!と音を立てて海の中から一斉に現れた。数は、二十人ほど。その誰もが、エメラルドグリーンの髪と扇状のヒレのような耳を付けていた。どう見ても、海人族の集団だ。彼らの目はいずれも、警戒心に溢れ剣呑に細められている。艦橋にいるクローン達も突如の海人族出現に驚いたが、瞬時に危険な状況であると判断し、船内にいるクローン達にスクランブル警報を発令し、即座にクローン達が武装し、甲板上に集結する。
ハジメ達を含むクローン軍と海人族。一触即発の状況の中、海人族の一人、ハジメの正面に位置する海人族の男が槍を突き出しながら、ハジメに問い掛けた。
「お前達は何者だ?なぜ、ここにいる?その乗っているものは何だ?」
ハジメは、頬を膨らませながら目一杯詰め込んだ魚肉を咀嚼し飲み込むので忙しい。敵対するつもりはないので、早く返答しようと思うのだが、如何せん、今食べている魚は弾力があってずっしりとボリュームのある強敵。今しばらく飲み込むのに時間がかかる。
ハジメとしては、至って真面目な態度を取っているつもりなのだが、どう見ても、槍を突きつけられ、包囲までされているのに余裕の態度で食事を優先しているふてぶてしい奴にしか見えなかった。
尋問した男の額に青筋が浮かぶ。どうにも、ただ海にいる人間を見つけたにしては殺気立ち過ぎているようで、そのことに疑問を抱きつつも、一触即発の状況を打開しようと、ハジメの代わりにシアが答えようとした。
「あ、あの、落ち着いて下さい。私達はですね……」
「黙れ! 兎人族如きが勝手に口を開くな!」
やはり兎人族の地位は、樹海の外の亜人族の中でも低いようだ。妙に殺気立っていることもあり、舐めた態度をとるハジメ(海人族にはそう見える)に答えさせたいという意地のようなものもあるのだろう。槍の矛先がシアの方を向き、勢いよく突き出された。
身体強化したシアに、海人族の攻撃が通るわけがないのだが、突き出された槍はシアが躱さなければ、浅く頬に当たっている位置だ。おそらく、少し傷を付けてハジメに警告しようとしたのだろう。やはり、少々やりすぎ感がある。海人族はこれほど苛烈な種族ではなかったはずだ。
だが、例えどんな事情があろうとそれは完全に悪手だった。雷電は、海人族の槍がシアの頬に当たる前にフォースで動きを止め、そしてフォース・プルで槍だけを引き寄せ、海人族から槍を奪い取る。そして奪い取った槍を手の握力だけで圧し折った。
「「「なぁっ!?」」」
流石の海人族も面を喰らった様な顔をしていた。そんな海人族を如何でもいいかの様に雷電はこの面倒ごとに呆れていた。
「(これはまた…荒事前提の交渉になりそうだ) ……落ち着け、俺達はお前たちの敵ではない。それとハジメ、それを早く飲み込まないと会話すらならないだろう?」
「ちょっふぉまふぇ、ふぐのみふぉむ」
“ちょっと待て、直ぐに飲み込む”とでも言ったんだろうが、口に含んでいるせいでうまく言えてない。あと、ユエが急いで飲み込もうとしているハジメを見て微笑ましそうにしているのも、ちょっと今はやめてほしい。周りから、もはや殺気のようなものまで感じる。できるだけ早く、穏便に済ませた方がいいだろう。
「……先ず言っておくことがある。俺達は別に海人族とはあまり争いたくない。だから、穏便に話し合いといかないか?そっちから手を出されると、こちらとしては反撃せざるを得ない」
ハジメ達もミュウとおなじ海人族をあまり傷つけたくはない。それが原因でミュウが悲しむというのも、あまりいい気はしない。ただ、海人族の兵士たちは相当警戒心が高いようで、雷電の言葉をまるっきり信じてくれようとしない。それどころか、投擲用らしき短い銛を構えだした。
「そうやって、あの子も攫ったのか? また、我らの子を攫いに来たのか!」
「もう魔法を使う隙など与えんぞ! 海は我らの領域。無事に帰れると思うな!」
「手足を切り落としてでも、あの子の居場所を吐かせてやる!」
「安心しろ。王国に引き渡すまで生かしてやる。状態は保障しないがな」
何やら尋常でない様子だ。警戒心というより、その目には強烈な恨みが含まれているように見える。“我らの子を攫う”という言葉から、彼等が殺気立っている原因を何となく察するハジメと雷電。もしかするとミュウ誘拐の犯人と勘違いされているのかもしれない。見たことのない乗り物に乗り、兎人族の奴隷を連れ、海人族の警戒範囲をうろつく人間……確かに誤解されてもおかしくないかもしれない。
亜人族は、種族における結束や情が非常に強い。他種族間でもそうだが、特に同種族において、その傾向は顕著だ。シアのために一族総出で樹海を飛び出したハウリア族しかり、族長を傷つけられて長老会議の決定を無視してまで復讐に飛び出した熊人族しかり。海人族も例に漏れず、例え他人の子であっても自分の子と変わらないくらい大切なのだろう。
ハジメは内心、“わざわざ俺を父親扱いしなくても、父親っぽい奴等が沢山いるじゃねぇか”と少し拗ねの入った文句を、ここにはいないミュウに向けて苦笑い混じりに呟いた。そして、ハジメは、ミュウの名前を出して誤解を解こうとした時に、雷電はクローン達にある指示を出す。
「……やっぱりこうなるか。こういう交渉の時だけは荒事になるのはジェダイの宿命か?」
「おいっ雷電、お前、こうなることを知っていたのか?」
「出来ればこうなっては欲しくなかったけどな……くるぞ」
「やれぇ!!」
雷電が海人族が攻撃してくることを告げると同時に海人族はモリを次々と投擲し始めてしまった。下半身を海に付けて立ち泳ぎしながらだというのに、相当な速さで飛来するモリは、なるほど、確かに殺すつもりはないようで肩や足を狙ったものばかりだ。しかもご丁寧に、水中から船を突き上げているらしく、船体が激しく揺れている。
普通の人間なら、バランスを崩して回避行動が間に合わずモリに射抜かれるか、海に落ちて海人族に制圧されるかが関の山だろう。しかし、それはあくまで普通の人間なら。
「シア」
「はいですぅ!」
雷電がシアに掛け声を掛けたと同時に全方位から飛んで来た銛を雷電とシアはフォースで銛の動きを止める。フォースを魔法と見分けがつかない海人族達が驚愕している間に、ユエは雷球を二十個ほど周囲に浮かべる。海人族達は、雷電達に気を取られている時にユエの周りに漂うバチバチと放電する雷球を目撃する。
「っ!?た、退避ぃいい!!」
悲鳴じみた号令が響く。サッと青ざめさせた彼等は急いで逃げようと踵を返した。が、時すでに遅し。
ビィシャアアア!! バリバリバリッ!!
雷球は、それぞれ別方向に飛び、海人族達を一人も逃さず……ほどよく感電させた。そこかしこで“アバババババババッ!?”という悲鳴が聞こえ、しばらくすると、プカーと二十一人の海人族が浮かび上がった。流石の雷電や清水、クローン達も“これは酷い”と思わざる負えなかった。
「ユエ、お疲れさん」
「ん……ハジメ、この人達が言っていたのって」
「まぁ、ミュウのことだろうな」
「エリセンに行っても色々ありそうですね。流石ハジメさん。何の問題もなく過ごせた町が皆無という……」
「やめてくれよ、シア。実は、ちょっと気にしてたんだ……ちくしょう。ミュウがいれば何の心配もなかったのに……」
「まぁ、仕方ないさ。今回の場合、向こうは切羽詰まっていたんだからな?……とりあえず、浮かんでいる海人族を回収しよう」
ハジメは頭を抱えながら溜息を吐き、雷電はそんなハジメにフォローを回すのだった。そんな感じで、雷電達は土左衛門になっている海人族達の回収に動き出した。
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全ての海人族を回収した後に、船内の収容所に白目を剥いてアフロになっている海人族達を乗せ海原を進む。
ユエが気をきかせて、一人だけ雷撃を弱くしておいたので直ぐに目を覚まさせ事情を説明し港に案内させた。
ハジメが、当初ミュウの名と特徴を知っていたことに、やはり貴様が犯人か!と暴れた海人族の男だったが、ハジメがついイラっとして大人しくなるまで無表情で往復ビンタを繰り返すと、改心してきちんと話を聞いてくれるようになった。
そして、ミュウが現在、アンカジまで戻ってきていることを話すと、一度エリセンまで行き、そこで同行者を決めて一緒にアンカジまで行って欲しいと頼まれた。海人族としても、真偽の確かめようがないハジメの話を鵜呑みにしてミュウの手掛かりかもしれないハジメ達だけをアンカジに行かせるわけにはいかないのだろう。
目の前でエリセンに案内している青年の他にも、先程、ハジメに吠えた者達は直接ミュウを知っている者達だったらしい。ミュウ誘拐の折、母親が負傷したこともあって余計感情的になっていたようだ。ミュウと再会した時に、そんな知り合い達をぶっ飛ばした挙句、適当に放置しましたというのも気が引けたので、ハジメは仕方なく青年の頼みを聞くことにした。
そうして、海の上を航海すること数時間……
「あっ、ハジメさん!マスター!見えてきましたよ!町ですぅ!やっと人のいる場所ですよぉ!」
「ん?おぉ、ほんとに海のド真ん中にあるんだなぁ」
「……あれが海上の町“エリセン”か。なんだが、惑星カミーノの首都ティポカシティの事を思い出すな」
シアが瞳を輝かせながら指を指し“エリセン”の存在を伝える。視線を向けたハジメの眼にも、確かに海上に浮かぶ大きな町が見え始めた。雷電はエリセンを見て、何故かクローン達の生まれ故郷である惑星カミーノの首都ティポカシティのことを思い出していた。
エリセンに入港しようと考えたが、ヴェネター級では大きすぎるが故に目立ちすぎる。そこで修繕を終えてあるハジメの潜水艇で向かうことになった。そうしてハジメの潜水艇は、桟橋が数多く突き出た場所へ向かう。そして、見たこともない乗り物に乗ってやって来たハジメ達に目を丸くしている海人族達や観光やら商売でやって来たであろう人間達を尻目に、空いている場所に停泊した。
すると、すぐ傍に来たことで、潜水艇の荷台に白目をむいて倒れる数十人の海人族達を目撃した海人族達が、大声で騒ぎ出した。ハジメは、事情説明をしてくれる青年がいるので、大丈夫だろうと考え、取り敢えず、青年と協力して桟橋に気絶中の彼等を降ろしていく。
そうこうしているうちに、完全武装した海人族と人間の兵士が詰めかけてきた。青年が、事情を説明するため前に進み出て、何やらお偉いさんらしき人と話し始める。ハジメは、早く、アンカジに戻って香織達と合流したかったので、心の中で“さっさと同行者決めろや!”と多少イラつきながら、その様子を見守っていた。ハジメのとなりにいた雷電が、イラついているハジメを“落ち着けよ”と宥める。
しかし、穏便にいってくれというハジメの思いは、やはりそう簡単に叶いはしないらしい。何やら慌てている青年を押しのけ、兵士達が押し寄せてきた。狭い桟橋の上なので逃げ場などなく、あっという間に包囲されるハジメ達。
「大人しくしろ。事の真偽がはっきりするまで、お前達を拘束させてもらう」
「おいおい、話はちゃんと聞いたのか?」
「もちろんだ。確認には我々の人員を行かせればいい。お前達が行く必要はない」
にべもない態度と言葉。ハジメはイラっとしつつも、ミュウの故郷だと自分に言い聞かせて自制する。
「あのな。俺達だって仲間が待っているんだ。直ぐにでもアンカジに向かいたいところを、わざわざ勘違いで襲って来た奴らを送り届けに来てやったんだぞ?」
「果たして勘違いかどうか……攫われた子がアンカジにいなければ、エリセンの管轄内で正体不明の船に乗ってうろついていた不審者ということになる。道中で逃げ出さないとも限らないだろう?」
「どんなタイミングだよ。逃げ出すなら、こいつらを全滅させた時点で逃げ出しているっつうの」
「その件もだ。お前達が無断で管轄内に入ったことに変わりはない。それを発見した自警団の団員を襲ったのだから、そう簡単に自由にさせるわけには行かないな」
「殺気立って話も聞かず、襲ってきたのはコイツ等だろうが。それとも、おとなしく手足を落とされていれば良かったってか?……いい加減にしとけよ」
ハジメは剣呑に目を細めた。目の前の兵士達のリーダーらしき人間族の男は、ハジメから溢れ出る重い空気に眉をしかめる。
彼の胸元のワッペンにはハイリヒ王国の紋章が入っており、国が保護の名目で送り込んでいる駐在部隊の隊長格であると推測できる。海人族側の、おそらく自警団と呼ばれた者達も、ハジメの雰囲気に及び腰になりながらも引かない様子だ。
ハジメとしては、ミュウの故郷であるし、大迷宮の一つ【メルジーネ海底遺跡】の正確な場所を知らないので、しばらく探索に時間がかかる可能性を考えると拠点となるエリセンで問題を起こしたくはなかった。アンカジにミュウがいるのは確実であるし、そうすれば疑惑も解けると頭ではわかっている。しかし、この世界におけるあらゆる理不尽に対して、ハジメは、条件反射ともいえる敵愾心を持っている。なので、そう簡単に言うことは聞く気にはなれなかった。
まさに、一触即発。
緊張感が高まる中、ハジメが、やはりミュウの故郷で暴れまわるわけにはいかないかと、譲歩しようとしたその時、シアと雷電が何かを感じ取る。
「ん?今なにか……」
「この気配……空からか?」
シアが、ウサミミをピコピコと動かしながらキョロキョロと空を見渡し始めた。雷電も感じ取った方角である空を見渡す。ハジメは、隊長格の男から目を逸らさずに“どうした?”と尋ねる。だが、それにシアが答える前に、ハジメにも薄らと声と気配が感じられた。
「――ッ」
「あ?なんだ?」
「なぁ、何か上から声が聞こえるのだが…?」
「――パッ!」
「おい、まさか!?」
「あぁ…ハジメ、問題発生だ。」
「――パパぁー!!」
ハジメが慌てて空を見上げると、何と、遥か上空から、小さな人影が落ちてきているところだった!
両手を広げて、自由落下しているというのに満面の笑みを浮かべるその人影は……
「ミュウッ!?」
そう、ミュウだ。ミュウがスカイダイビングしている。パラシュートなしで。よく見れば、その背後から、慌てたように落下してくる黒竜姿のティオとその背に乗った、やはり焦り顔の香織と恵里、シルヴィの姿が見えた。
ハジメと雷電は、落ちてくる人影がミュウだと認識するや否や“空力”と“縮地”を発動。その場から一気に跳躍した。その衝撃で桟橋が吹き飛び、兵士達が悲鳴を上げながら海に落ちたが知ったことではない。
一気に百メートル以上跳んだハジメと雷電は、更に“空力”を使ってミュウが落下して来る場所へ跳躍し、雷電がフォースでミュウの落下速度を落とし、ハジメは確実にミュウを腕の中に収めると、神業とも言うべき速度調整で落下し、衝撃の一切を完璧に殺した。
そして、ミュウを抱きしめたまま“空力”を使ってピョンピョンと跳ねながら地上へと戻る。内心、冷や汗を滝のように流しながら。
「パパッ!」
そんなハジメの内心など露ほどにも知らず、満面の笑みでハジメの胸元に顔をスリスリと擦りつけるミュウ。おそらく、上空で真下にハジメがいるとティオ辺りにでも教えられたのだろう。
そして、事故かあるいは故意かは分からないが、ハジメ目掛けて落下した。落下中の笑顔を見れば、ハジメが受け止めてくれるということを微塵も疑っていなかったに違いない。
だからといって、フリーフォールを満面の笑みで行うなど尋常な胆力ではない。そんな四歳児、いて堪るか!と内心ツッコミを入れながら、地上に降りたら盛大に叱ってやらねばなるまいと胸元のミュウを撫でながら、眉根を寄せるハジメであった。流石の雷電もミュウが空から振って来たことには驚いたが、もう二度とこんなことは起きないでほしいと思った。
檜山の末路について(死亡は確定済み)
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雷電に首を刎ねられる
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激昂した恵里に殺される
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原作通り