ありふれないジェダイとクローン軍団で世界最強   作:コレクトマン

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久しぶりの投稿でネタを入れ過ぎた。…しかし、後悔はない。


62話目です。


母娘の再会、謎の葬儀屋(アンダーテイカー)

 

 

正直に言って寿命が縮んだと思わせるくらいにビックリした。何せ、向こう(アンカジ)にいる筈のミュウがこのエリセンの上空から落下する様にやって来たのだから。その結果、ミュウはハジメのお叱りを受けていた。それも当然である、ミュウはハジメに会いたいが故にパラシュート無しでの降下をしたのだ。

 

 

「ひっぐ、ぐすっ、ひぅ」

 

 

あれから数分後、ハジメからしこたま叱られたミュウは泣きべそをかいていた。周りの観衆や警備兵たちも、妙に静まり返っている。主な理由はさらわれたはずの海人族の少女が突然空から降ってきたり、俺達がそれを思い切り跳躍してミュウをキャッチしたり、今度は黒竜が背中に人を乗せて空から降りてきたというのもあるのだろうが、やはりミュウの()()()()()が原因だろう。

 

 

「ぐすっ、パパ、ごめんなしゃい」

 

「もうあんな危ない事しないって約束できるか?」

 

「うん、しゅる」

 

「よし、ならいい。ほら、来な」

 

「パパぁー!」

 

 

そう、ミュウがハジメのことを“パパ”と呼んでいることに困惑を隠せないでいる感じである。因みに、先ほどの隊長格の人物には雷電が今度こそ懇切丁寧に説明した。イルワからの依頼書と俺達が“金”ランクの冒険者である証も見せて。

 

 

 

それで、隊長も一応は納得してくれた。まぁ、後にもいろいろと事情聴取されそうな気もするが。

だが、今はハジメたちの方はそっとしておくとしよう。どうやら、ティオと香織も相当心配していたようで、ハジメに抱きついている。

 

 

 

そしてシルヴィもまた、清水と無事に再会できたことに喜び、香織達と同様に主人である清水に抱きつくのだった。……どうやら清水もハジメと同じ様にそっとしておく必要がありそうだ。それを見ていたデルタと不良分隊(主にスコーチとレッカー)は、そんな清水に対してちょっとばかしの茶化しを入れてからかうのだった。

 

 

「……そろそろいいか?」

 

 

そこに、隊長がちょっと複雑そうに声をかけてくる。先ほどから放置されたのは納得いかないが、なにやら大変なことがあったのは察したからどう声をかければいいかわからない、ということか。

まぁ、先ほどまでの警戒心丸出しの声とは違って、一定の敬意は払っているようだが。

 

 

「あぁ、すまない。こっちもいろいろとあってな。それじゃあ、まずはあの子の母親に会わせてもらってもよろしいだろうか?諸々の事情聴取とかは、せめてその後にしてくれると助かる。どのみち、しばらくはエリセンに滞在する予定はあるからな」

 

 

正直、報告したところで、って話ではあるが。俺達の知ってることなんて、もうとっくに王都に報告されているだろう。おそらく、救援を送る準備をしているはずだ。

 

 

「あぁ、それくらいはかまわない。それと、その子は母親の状態を?」

 

「いや、知らない。でも、心配はいらないだろ。こちらには最高の治療師と、最高の薬もある。その点については問題ない」

 

「そうか、わかった。では、落ち着いたらまた尋ねさせてもらおう」

 

 

そう言って、隊長はサルゼと名乗り、野次馬を散らして事態の収拾に入った。どうやら、職務に忠実な人間のようだ。先ほどの高圧的な態度も、自分が隊長だと自覚しての行動だったらしい。とりあえず、ミュウと話したそうにしている者たちを視線で制して、ハジメたちに呼びかける。

 

 

「ハジメ、ミュウ、そろそろ行こう。ミュウ、君の母親のところまで案内を頼めるか?」

 

「わかったの、ライデンおじちゃん!パパ、パパ!早くお家に帰るの!ママが待ってるの!ママに会いたいの!」

 

「そうだな……早く、会いに行こう」

 

 

雷電からミュウの母親のところまでの道案内を頼まれたミュウは、ハジメの手を懸命に引っ張り、早く早く!とハジメを急かす。彼女にとっては、約二ヶ月ぶりの我が家と母親なのだ。無理もない。道中も、ハジメ達が構うので普段は笑っていたが、夜、寝る時などに、やはり母親が恋しくなるようで、そういう時は特に甘えん坊になっていた。

 

 

 

ミュウの案内に従って彼女の家に向かう道中、顔を寄せて来た香織が不安そうな小声で尋ねる。

 

 

「ハジメくん。さっきの兵士さんとの話って……」

 

「いや、命に関わるようなものじゃないらしい。ただ、怪我が酷いのと、後は、精神的なものだそうだ……精神の方はミュウがいれば問題ない。怪我の方は詳しく見てやってくれ」

 

「うん。任せて」

 

 

そんな会話をしていると、通りの先で騒ぎが聞こえだした。若い女の声と、数人の男女の声だ。

 

 

「レミア、落ち着くんだ! その足じゃ無理だ!」

 

「そうだよ、レミアちゃん。ミュウちゃんならちゃんと連れてくるから!」

 

「いやよ! ミュウが帰ってきたのでしょう!? なら、私が行かないと! 迎えに行ってあげないと!」

 

 

どうやら、家を飛び出そうとしている女性を、数人の男女が抑えているようである。おそらく、知り合いがミュウの帰還を母親に伝えたのだろう。

 

 

 

そのレミアと呼ばれた女性の必死な声が響くと、ミュウが顔をパァア! と輝かせた。そして、玄関口で倒れ込んでいる二十代半ば程の女性に向かって、精一杯大きな声で呼びかけながら駆け出した。

 

「ママーー!!」

 

「ッ!? ミュウ!? ミュウ!」

 

 

ミュウは、ステテテテー!と勢いよく走り、玄関先で両足を揃えて投げ出し崩れ落ちている女性──母親であるレミアの胸元へ満面の笑顔で飛び込んだ。

 

 

 

もう二度と離れないというように固く抱きしめ合う母娘の姿に、周囲の人々が温かな眼差しを向けている。

 

 

 

レミアは、何度も何度もミュウに「ごめんなさい」と繰り返していた。それは、目を離してしまったことか、それとも迎えに行ってあげられなかったことか、あるいはその両方か。

 

 

 

娘が無事だった事に対する安堵と守れなかった事に対する不甲斐なさにポロポロと涙をこぼすレミアに、ミュウは心配そうな眼差しを向けながら、その頭を優しく撫でた。

 

 

「大丈夫なの。ママ、ミュウはここにいるの。だから、大丈夫なの」

 

「ミュウ……」

 

 

まさか、まだ四歳の娘に慰められるとは思わず、レミアは涙で滲む瞳をまん丸に見開いて、ミュウを見つめた。

 

 

 

ミュウは、真っ直ぐレミアを見つめており、その瞳には確かに、レミアを気遣う気持ちが宿っていた。攫われる前は、人一倍甘えん坊で寂しがり屋だった娘が、自分の方が遥かに辛い思いをしたはずなのに、再会して直ぐに自分のことより母親に心を砕いている。

 

 

 

驚いて思わずマジマジとミュウを見つめるレミアに、ミュウは、ニッコリと笑うと、今度は自分からレミアを抱きしめた。体に、あるいは心に酷い傷でも負っているのではないかと眠れぬ夜を過ごしながら、自分は心配の余り心を病みかけていたというのに、娘はむしろ成長して帰って来たように見える。

 

 

 

その事実に、レミアは、つい苦笑いをこぼした。肩の力が抜け、涙も止まり、その瞳には、ただただ娘への愛おしさが宿っている。再び抱きしめ合ったミュウとレミアだったが、突如、ミュウが悲鳴じみた声を上げた。

 

 

「ママ! あし! どうしたの! けがしたの!? いたいの!?」

 

 

どうやら、肩越しにレミアの足の状態に気がついたらしい。彼女のロングスカートから覗いている両足は、包帯でぐるぐる巻きにされており、痛々しい有様だった。

 

 

 

これが、サルゼが言っていたことであり、エリセンに来る道中でハジメが青年から聞いていたことだ。ミュウを攫ったこともだが、母親であるレミアに歩けなくなる程の重傷を負わせたことも、海人族達があれ程殺気立っていた理由の一つだったのだ。

 

 

 

ミュウは、レミアとはぐれた際に攫われたと言っていたが、海人族側からすれば目撃者がいないなら誘拐とは断定できないはずであり、彼等がそう断言していたのは、レミアが実際に犯人と遭遇したからなのだ。

 

 

 

レミアは、はぐれたミュウを探している時に、海岸の近くで砂浜の足跡を消している怪しげな男達を発見した。嫌な予感がしたものの、取り敢えず娘を知らないか尋ねようと近付いたところ……男は“しまった”という表情をして、いきなり詠唱を始めたらしい。

 

 

 

レミアは、ミュウがいなくなったことに彼等が関与していると確信し、何とかミュウを取り返そうと、足跡の続いている方向へ走り出そうとした。

 

 

 

しかし、もう一人の男に殴りつけられ転倒し、そこへ追い打ちを掛けるように炎弾が放たれた。幸い、何とか上半身への直撃は避けたものの足に被弾し、そのまま衝撃で吹き飛ばされ海へと落ちた。レミアは、痛みと衝撃で気を失い、気が付けば帰りの遅いレミア達を捜索しに来た自警団の人達に助けられていたのだ。

 

 

 

一命は取り留めたものの、時間が経っていたこともあり、レミアの足は神経をやられていて、もう歩くことも今までのように泳ぐことも出来ない状態になってしまった。当然、娘を探しに行こうとしたレミアだが、そんな足では捜索など出来るはずもなく、結局、自警団と王国に任せるしかなかった。

 

 

 

そんな事情があり、レミアは現在、立っていることもままならない状態なのである。

 

 

 

レミアは、これ以上、娘に心配ばかりかけられないと笑顔を見せて、ミュウと同じように“大丈夫”と伝えようとした。しかし、それより早くミュウは、この世でもっとも頼りにしている“パパ”に助けを求めた。

 

「パパぁ!ママを助けて!ママの足が痛いの!」

 

「えっ!?ミ、ミュウ?いま、なんて……」

 

「パパ!はやくぅ!」

 

「あら?あらら?やっぱり、パパって言ったの?ミュウ、パパって?」

 

 

混乱し頭上に大量の“?”を浮かべるレミア。周囲の人々もザワザワと騒ぎ出した。あちこちから“レミアが……再婚?そんな……バカナ”だの、“レミアちゃんにも、ようやく次の春が来たのね!おめでたいわ!”だの、“ウソだろ? 誰か、嘘だと言ってくれ……俺のレミアさんが……”だの、“パパ…だと!?俺のことか!?”だの、“きっとクッ○ングパパみたいな芸名とかそんな感じのやつだよ、うん、そうに違いない”だの、“おい、緊急集会だ!レミアさんとミュウちゃんを温かく見守る会のメンバー全員に通達しろ!こりゃあ、荒れるぞ!”などの、色々危ない発言が飛び交っている。

 

 

 

どうやら、レミアとミュウは、かなり人気のある母娘のようだ。レミアは、まだ、二十代半ばと若く、今は、かなりやつれてしまっているが、ミュウによく似た整った顔立ちをしている。復調すれば、おっとり系の美人として人目を惹くだろうことは容易く想像できるので、人気があるのも頷ける。

 

 

 

刻一刻と大きくなる喧騒に、“行きたくねぇなぁ…”と表情を引き攣らせるハジメ。その様子を見て何かと察し、内心苦笑いする雷電と清水、クローン達。ミュウがハジメをパパと呼ぶようになった経緯を説明すれば、あくまでパパ“代わり(内心は別としても)”であって、決してレミアとの再婚を狙っているわけではないと分かってもらえるだろうと簡単に考えていたのだが、どうやら、誤解が物凄い勢いで加速しているようだ。

 

 

 

だが、ある意味僥倖かもしれないとハジメは考えた。ミュウは母親の元に残して、ハジメ達は旅を続けなければならない。“メルジーネ海底遺跡”を攻略すれば、ミュウとはお別れなのだ。故郷から遠く離れた地で、母親から無理やり引き離されたミュウの寄る辺がハジメ達だったわけだが、母親の元に戻れば、最初は悲しむかもしれないが時間がハジメ達への思いを薄れさせるだろうと考えていた。周囲の人々の、レミア達母娘への関心の強さは、きっと、その助けとなるはずだ。

 

 

「パパぁ!はやくぅ!ママをたすけて!」

 

 

ミュウの視線が、がっちりハジメを捉えているので、その視線をたどりレミアも周囲の人々もハジメの存在に気がついたようだ。ハジメは観念して、レミア達母娘へと歩み寄った。

 

 

「パパ、ママが……」

 

「大丈夫だ、ミュウ……ちゃんと治る。だから、泣きそうな顔するな」

 

「はいなの……」

 

 

ハジメが、泣きそうな表情で振り返るミュウの頭をくしゃくしゃと撫でながら、視線をレミアに向ける。レミアは、ポカンとした表情でハジメを見つめていた。無理もないだろうと思いつつも、ハジメの登場で益々騒ぎが大きくなったので、ハジメは、取り敢えず、治療のためにも家の中に入ることにした。

 

 

「悪いが、ちょっと失礼するぞ?」

 

「え?…ッ!?あらら?」

 

 

ハジメは、ヒョイと全く重さを感じさせずにレミアをお姫様抱っこすると、ミュウに先導してもらってレミアを家の中に運び入れた。レミアを抱き上げたことに、背後で悲鳴と怒号が上がっていたが、無視だ。当のレミアは、突然、抱き上げられたことに目を白黒させている。

 

 

 

家の中に入ると、リビングのソファーが目に入ったので、ハジメはそこへレミアをそっと下ろした。そして、ソファーに座りハジメのことを目をぱちくりさせながら見つめるレミアの前にかしずき、香織を呼んだ。

 

 

「香織、どうだ?」

 

「ちょっと見てみるね……レミアさん、足に触れますね。痛かったら言って下さい」

 

「は、はい? えっと、どういう状況なのかしら?」

 

 

突然、攫われた娘が帰ってきたと思ったら、その娘がパパと慕う男が現れて、更に、見知らぬ美女・美少女が家の中に集まっているという状況に、レミアは、困ったように眉を八の字にしている。

 

 

 

そうこうしているうちに、香織の診察も終わり、レミアの足は神経を傷つけてはいるものの香織の回復魔法できちんと治癒できることが伝えられた。

 

 

「これで治療は終わりです。ただ、少し時間がかかります。デリケートな場所なので、後遺症なく治療するには、三日ほど掛けてゆっくり、少しずつ癒していくのがいいと思います。それまで、不便だと思いますけど、必ず治しますから安心して下さいね」

 

「あらあら、まあまあ。もう、歩けないと思っていましたのに……何とお礼を言えばいいか……」

 

「ふふ、いいんですよ。ミュウちゃんのお母さんなんですから」

 

「えっと、そういえば、皆さんは、ミュウとはどのような……それに、その……どうして、ミュウは、貴方のことを“パパ”と……」

 

 

香織が、早速、レミアの足を治療している間に、ハジメ達は、事の経緯を説明することにした。フューレンでのミュウとの出会いと騒動、そしてパパと呼ぶようになった経緯など。香織に治療されながら、全てを聞いたレミアは、その場で深々と頭を下げ、涙ながらに何度も何度もお礼を繰り返した。

 

 

「本当に、何とお礼を言えばいいか……娘とこうして再会できたのは、全て皆さんのおかげです。このご恩は一生かけてもお返しします。私に出来ることでしたら、どんなことでも……」

 

 

気にするなとハジメ達は伝えたが、レミアとしても娘の命の恩人に礼の一つもしないでは納得できない。そうこうしているうちに、香織の治療もひと段落着いたので、今日の宿を探すからと暇を伝えると、レミアはこれ幸いと、自分の家を使って欲しいと訴えた。

 

 

「どうかせめて、これくらいはさせて下さい。幸い、家はゆとりがありますから、皆さんの分の部屋も空いています。エリセンに滞在中は、どうか遠慮なく。それに、その方がミュウも喜びます。ね?ミュウ?ハジメさん達が家にいてくれた方が嬉しいわよね?」

 

「?…パパ、どこかに行くの?」

 

 

レミアの言葉に、レミアの膝枕でうとうとしていたミュウは目をぱちくりさせて目を覚まし、次いでキョトンとした。どうやら、ミュウの中でハジメが自分の家に滞在することは物理法則より当たり前のことらしい。なぜ、レミアがそんな事を聞くのかわからないと言った表情だ。

 

 

「母親の元に送り届けたら、少しずつ距離を取ろうかと思っていたんだが……」

 

「あらあら、うふふ。パパが、娘から距離を取るなんていけませんよ?」

 

「いや、それは説明しただろ?俺達は…「ハジメ、ここは大人しくレミアさんの好意を受け取ろう」…雷電?」

 

 

ハジメは雷電の予想外の言葉に耳を傾ける。

 

 

「ハジメ、ミュウを母親に渡した後、直ぐにお別れじゃあ、ミュウが余計に寂しい想いをするだけだぞ」

 

「嫌、しかしなぁ……」

 

「それに……短い時間であるが、ミュウはお前のことを父親と認識しているんだ。俺の場合は親戚のおじいちゃんという認識ではあるが、ミュウはお前のことが好きなんだ。もう一人の父親みたいにな?逆に聞くが、お前とて、ミュウと別れるのは少しばかり心寂しい筈だろう?」

 

「うっ……そ、それは……」

 

「だからこそだ、ハジメ。改めてここはレミアさんの好意は受け取ろう。な?……レミアさんも、それでいいですよね?」

 

「はい、ライデンさん。いずれ、旅立たれることは承知しています。ですが、だからこそです。ハジメさん、お別れの日まで“パパ”でいてあげて下さい。距離を取られた挙句、さようならでは……ね?」

 

「……まぁ、それもそうか……」

 

「うふふ、別に、お別れの日までと言わず、ずっと“パパ”でもいいのですよ?先程、“一生かけて”と言ってしまいましたし……」

 

 

そんな事を言って、少し赤く染まった頬に片手を当てながら“うふふ♡”と笑みをこぼすレミア。おっとりした微笑みは、普通なら和むものなのだろうが……ハジメの周囲にはブリザードが発生している。

 

 

「そういう冗談はよしてくれ……空気が冷たいだろうが……」

 

「あらあら、おモテになるのですね。ですが、私も夫を亡くしてそろそろ五年ですし……ミュウもパパ欲しいわよね?」

 

「ふぇ? パパはパパだよ?」

 

「うふふ、だそうですよ、パパ?」

 

 

ブリザードが激しさを増す。冷たい空気に気が付いているのかいないのか分からないが、おっとりした雰囲気で、冗談とも本気とも付かない事をいうレミア。“いい度胸だ、ゴラァ!”という視線を送るユエ達にも“あらあら、うふふ”と微笑むだけで、柳に風と受け流している。意外に大物なのかもしれない。その時に雷電は、フォースの予知で、いずれ自分もその様な体験をする光景を見て、“いずれ俺も、ハジメと同じ目に合うのか…?”と少しばかり不安になった。

 

 

 

何だ彼んだとあったが、最終的にレミア宅に世話になることになった。部屋割りで“夫婦なら一緒にしますか?”とのたまうレミアとユエ達が無言の応酬を繰り広げたり、“パパとママと一緒に寝る~”というミュウの言葉に場がカオスと化したりしたが、一応の落ち着きを見せた。

 

 

 

明日からは、大迷宮攻略に向けて、しばらくの間、損壊、喪失した装備品の修繕・作成や、新たな神代魔法に対する試行錯誤を行わなければならない。しかし、残り少ないミュウとの時間も、蔑ろにはできないと考えながら、ベッドに入ったハジメの意識は微睡んでいった。

 

 

ハジメSide out

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

一日目。

 

 

レミアさんの自宅に止まって一泊し、一日目になった。あと二日後に“メルジーネ海底遺跡”へと迷宮攻略に向かわなくてはならない。…しかし、世間の情報が疎くなるのもそれはそれで面倒と判断した雷電は、シアと恵里と共にエリゼンで今の世間の情報を収集するのだった。なお、ハイリヒ王国にいるクローンと連絡を取って情報を聞こうと考えたが、ファースト・オーダーがこちらの通信を傍受する可能性を考慮し、地道に情報収集することにしたのだ。

 

 

 

そんな感じでエリゼンを回りを見て回っている時に、雷電はある店を見かける。

 

 

「…ん?この店は……」

 

「マスター?どうなされたんですか?」

 

「雷電君?……このお店は?」

 

 

シアと恵里も雷電が見ている方に視線を向ける。そこにあったのは、()()()()()()()()と異世界トータス語で書かれた一件のお店だった。アンダーテイカーとは、請負人、引受人、または葬儀屋という意味を持つ。そんな変わった名前をした店を雷電は少しばかり気になったのか、この店に入ってみることにした。シアと恵里は少しばかりこの店に入ることに不安であったが、雷電とそばにいれば問題ないと思いつつも雷電に続いて店に入ることにした。

 

 

 

雷電はドアを開け、店の中に入る。その店の中は、日差しを遮る為か窓にはカーテンが閉じてあり、より暗い空間になっていた。ただし、一条の光がない訳でもない。この店の木製の棺桶の上や所々の場所にロウソク立てが多数存在し、火の明かりが灯されていた。

 

 

 

この様な場所には雷電も少しばかり冷や汗が流れる。この場所に人の気配がないことから、この店の店主は今、出かけていると思ったその時……

 

 

「おや……これは随分と変わったお客だね?キッヒヒヒ…!」

 

「…っ!」

 

 

突如と不気味な男の声音が店内に響き渡る。すると薄暗闇の中から長い銀髪の男が出てくる。その男は黒装束に身を包み、顔と首、左手の小指に傷があり、目は前髪で隠れており、外からは見えない姿だった。シアと恵里もこの男が出て来た瞬間、一瞬であるが背中から悪寒が走ったと同時に少し震えながら思った。“この男は別の意味で危険な男である”と…。

 

 

 

そんな二人の様子を見た雷電は、震える二人を落ち着かせ、その男こと店の店主らしき人物と話し合う。

 

 

「……失礼、貴方はこの店の店主だろうか?」

 

「キヒヒッ!…そうだね、小生はこの店の店主であることは間違いないよぉ?最も…うちは葬儀屋だけどねぇ?」

 

「葬儀屋?このエリゼンで?」

 

 

この時に雷電は不思議に思った。何故このエリゼンで葬儀屋をしているのか気になったが、あまり詳しいことは気にしないことにした。そして本来の目的である世間の情報を聞き出そうとした。

 

 

「それはそうと、えー……」

 

「おっと、これは失敬、まだ小生の名を名乗っていなかったねぇ?巷では小生のことをアンダーテイカー(葬儀屋)と呼ばれていてね?小生のことはアンダーテイカーと呼んでおくれ。…それで、君たちは何かね?」

 

「そういえば、まだ名乗ってなかったな。俺は藤原雷電、冒険者だ。こっちは俺の弟子のシアと、俺達の仲間の恵里だ」

 

「ライデンにシア、エリ…か。何かと不思議な力を持っている様だね?特にライデンとシアの二人には?おっと、流石にプライベートの話は駄目だったかね?キヒヒッ…!」

 

 

アンダーテイカーと名乗る男はライデンとシアのフォースを感じ取ったのかは分からないが、決して気を許しては行けない男ではあることを雷電は理解した。しかし、それでも情報が欲しいので情報を聞き出した後に即座に退散することに決めた。

 

 

「……早速で聞くが、アンダーテイカー…だったか?ここ最近で何か変わったことはないか?主に世界の様子とかそういう部類の情報を持っていないか?」

 

「どうだったかなぁ?有ったかなぁ?何だか面白いものを見たら思い出す気がするなぁ…」

 

「……何か欲するものが?」

 

 

勿体振る様にアンダーテイカーは何かを求めていることは確かだった。しかし、一体何を求めているのかは不明だ。するとアンダーテイカーは、その求める物を雷電達の前に口にした。

 

 

「何、小生が欲するのは極上の()()というものさぁ!そしたらなんでも教えて上げるよ!キッヒッヒ…!」

 

 

アンダーテイカーの極一部変わった性格を知った雷電達。アンダーテイカーという男は一体どういう生活をしたら今の様に成り立ったのか不思議でしかなかった。シアと恵里に至っては、アンダーテイカーの変人っぷりにドン引きだった。しかし、情報は必要であることには変わらない為にやるしかなかった。だが、アンダーテイカーを笑わせるには少しばかりの下準備が必要だ。雷電は恵里に元の世界で、大晦日にやるテレビのあるバラエティー番組の話を持ち出す。

 

 

「……なぁ恵里?俺達の元の世界で大晦日に一度やるバラエティー番組のことを覚えているか?」

 

「え?それって、笑ってはいけないの奴?」

 

「あぁ、それの一部再現をやろうと思う。その為にはシアの協力が必要だが、ちょっと彼女には内緒にしてほしい?」

 

「あれ?マスターに恵里さん。何か方法が有るのですか?」

 

 

そうシアが聞き出したが、俺はアンダーテイカーを笑わせる方法を話す。……といっても、シアには極一部だけしか話さなかった。これにはシアのリアクションが必要不可欠なのだ。そんな感じでアンダーテイカーに数分待ってほしいと言って店から出て下準備を行う。

 

 

 

雷電が店を出てから三分後……

 

 

 

下準備が終えた雷電が再び店に入り、アンダーテイカーに準備が終わったことを告げる。

 

 

「待たせたな、アンダーテイカー。極上の笑いの為の下準備を終えたぞ」

 

「そうかい?それじゃあ、小生に報酬(笑い)をおくれよぉ!」

 

「あの〜…恵里さん?何だか嫌な予感がするですぅ……」

 

「それは……気の所為じゃないかな?」

 

 

シアは何かと不安になる一方、恵里は内心複雑そうな感じで気のせいであると答える。そんな事を気にせず、アンダーテイカーの期待に応える為に、雷電はあるスイッチを取り出す。そして、そのスイッチをシアに渡し、押す様に指示を出す。

 

 

「シア、このスイッチを押すんだ」

 

「えっ?このスイッチを……ですか?」

 

「あぁ……押すんだ」

 

 

シアは何かと不安になりながらもスイッチを押す。すると、その押したスイッチから“デデーン!”と音声が流れた後に……

 

 

 

《シア OUT》

 

 

 

「えっ……えぇっ!?」

 

「ぶっ!?ぶぅっはっはっはっはっはっはっはぁー!!」

 

 

突如と謎のシアのアウト宣言。いきなりの不意打ちにアンダーテイカーは思わず爆笑してしまう。しかし、それだけでは終わらなかった。店のドアからクローンがケツバットを手に店へと入り込んで来た。

 

 

「うぇっ!?ちょちょちょっ、待ってください!?ま、マスター!これはどういうことですか!?」

 

「すまない、シア。アンダーテイカーを笑わせるにはこれしかなかったんだ。大晦日のバラエティー番組の一部を再現をすればアンダーテイカーでも笑わずにはいられないと思ってな」

 

「じゃ…じゃあ、クローンさんが持っているそれは何ですか!?絶対に必要ないですよね!?」

 

「これも情報を引き出す為だ。言い方は悪いが、シア。情報の為の……犠牲になれ」

 

「いやいやいやっ!?それはないですよ、マスター!?…うきゃあっ!?」

 

 

シアが雷電と話しているのにも関わらず、クローンはシアのケツをしばく。しばき終わった後、役目を終えたのかクローンはこの店を後にする。そして、アンダーテイカーはというと……

 

 

「うっはっはっはっはっはっはぁー!!」

 

 

テーブル代わりにしていた棺の上で転がりながらも大爆笑していた。

 

 

 

大分満足に笑ったアンダーテイカーから齎した情報によると、ハイリヒ王国で怪しい動きが王族と貴族、そして教会の間で起きているそうで、実際それがなんなのかは不明だそうだ。それを聞いた雷電は、恐らくこの世界の神ことエヒトが、俺達に対して何かしらの妨害の準備をしていることを理解した。その情報を受け取った後にアンダーテイカーに別れを告げ、葬儀屋を後にするのだった。

 

 

 

その後、雷電は理不尽にもケツをしばかれたシアに謝罪した。その時にシアは少し納得いかなかったが、許す条件として“それじゃあ、今日一日デートしてくれたら許してあげるですぅ”と条件をつけて来た。雷電はそれを了承し、シアのデートに付き合うのだった。その時の恵里の笑みは絶対零度を発する様な気迫を放っていた。流石にこれには溜まらないと判断した雷電は、二日目には恵里と一緒にデートすることを決めたのであった。

 

 

雷電Side out

 

 

 

三日目。

 

 

 

妙にハジメとの距離が近いレミアに、海人族の男連中が嫉妬で目を血走らせたり、ハジメに突っかかってきたり、ご近所のおばちゃん達がハジメとレミアの仲を盛り上げたり、それにユエ達が不機嫌になってハジメへのアプローチが激しくなったり、夜のユエが殊更可愛くなったりしながらも、準備を万全にしたハジメ達は、遂に、“メルジーネ海底遺跡”の探索に乗り出した。

 

 

 

しばしの別れに、物凄く寂しそうな表情をするミュウ。盛大に後ろ髪惹かれる思いのハジメだったが、何とか振り切り桟橋から修繕した潜水艇に乗り込もうとする。ミュウが手を振りながら“パパ、いってらっしゃいなの!”と気丈に叫ぶ。そして、やはり冗談なのか本気なのか分からない雰囲気で“いってらっしゃい、あ・な・た♡”と手を振るレミア。

 

 

 

傍から見れば仕事に行く夫を見送る妻と娘そのままだ。背後のユエ達からも周囲の海人族からも鋭い視線が飛んでくる。迷宮から戻って来ることに少々ためらいを覚えるハジメであった。

 

 

 

その様子を見ていたシアと恵里は、可能性の未来である雷電との結婚を夢見ながらも、互いにライバル視しながらも雷電に対してアプローチが激しくなることを、今の雷電は知る由もなかった。

 

 

(…なんだろうな?なんだが、二匹の猛獣に狙われているような気分だ。……こういうのは憂鬱に終わってほしいのだが……)

 

 

……案外そうでもなく、嫌な予感を雷電は感じてはいたが、回避することは不可能であることは変わらなかった。

 

 

檜山の末路について(死亡は確定済み)

  • 雷電に首を刎ねられる
  • 激昂した恵里に殺される
  • 原作通り
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