ありふれないジェダイとクローン軍団で世界最強   作:コレクトマン

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少しスランプ気味になっている今日この頃……orz

アンケートにて、キャラの詳細を書いてほしいかを募集します。


63話目です。


メルジーネ海底遺跡

 

 

ハジメ達が乗る潜水艇がヴェネター級と合流した後、ヴェネター級に乗り移り、“メルジーネ海底遺跡”へと針路を取る。針路を取って以降、“海上の町エリセン”から西北西に約三百キロメートル。

 

 

 

そこが、かつてミレディ・ライセンから聞いた七大迷宮の一つ“メルジーネ海底遺跡”の存在する場所だ。

 

 

 

だが、ミレディから聞いたときは時間がなかったため、後は“月”と“グリューエンの証”に従えとしか教えられず、詳しい場所はわかっていなかった。

 

 

 

そんなわけでハジメ達は、取り敢えず方角と距離だけを頼りに大海原を進んできたのだが、昼間のうちにポイントまで到着し、ハジメはユエと香織にティオ、雷電の案で修行の一環として同行させるシアと共に潜水艇に乗り移り、潜水艇を潜水させて海底へと潜り、海底の中を探索したものの特に何も見つけることは出来なかった。海底遺跡というくらいだから、それらしき痕跡が何かしらあるのではないかと考えたのだが、甘かったらしい。

 

 

 

ただ、周囲百キロメートルの水深に比べると、ポイント周辺の水深が幾分浅いように感じたので、場所自体は間違えていない……と思いたいハジメだった。

 

 

 

仕方なく、探索を切り上げてミレディの教えに従い月が出る夜を待つことにした。今は、ちょうど日没の頃。地平線の彼方に真っ赤に燃える太陽が半分だけ顔を覗かせ、今日最後の輝きで世界を照らしている。空も海も赤とオレンジに染まり、太陽が海に反射して水平線の彼方へと輝く一本道を作り出していた。

 

 

 

どこの世界でも、自然が作り出す光景は美しい。ハジメは、停泊させた潜水艇の甲板で、沈む太陽を何となしに見つめながら、ふと、このまま太陽へと続く光の道を進んだならば、日本に帰れはしないだろうかと、そんな有り得ない事を思った。そして、何を考えているんだかと苦笑いをこぼす。

 

 

「どうしたの?」

 

 

そんなハジメの様子に気がついて声を掛けてきたのは香織だった。

 

 

先程まで船内でシャワーを浴びていたはずで、その証拠に髪が湿っている。いや、香織だけではない。いつの間にかユエやシア、ティオも甲板に出てきていた。皆、ハジメ自慢の船内シャワーを浴びてきたようで、頬は上気し、湿った髪が頬や首筋に張り付いていて実に艶かしい姿だ。備え付けのシャワールームは、天井から直接温水が降ってくる仕様なので、四人全員で入っても問題ない。

 

 

 

ちなみに、ハジメが甲板で黄昏れているのは、下手をすればシャワールームに連れ込まれていた可能性があったからだ。

 

 

 

シアを除く彼女達が、シャワーを浴びようとした時、ティオがハジメを誘ったのだが、それに香織も、もちろんユエも賛同し、断ったハジメに全員でにじり寄ってきたのである。この光景を見ていたシアは、何かとハジメに対して内心苦笑いしつつも同情するのだった。ユエ以外の女を抱くつもりがないハジメは、他の女と裸の付き合いをするつもりはないとはっきり伝えた。

 

 

 

しかし、そんなハジメの言葉を笑顔でスルーした香織達は、頬を染めてイヤンイヤンしているユエを尻目に、香織とティオでハジメを抑えに掛かり、強制的に連れ込もうとしたのだ。流石に身の危険を感じたハジメは、割かし本気で逃げ出し、甲板に出て来たわけだが……据え膳食わぬは、やはり男の恥なのだろうか?その時、脳裏に誰かしらの言葉がよぎった。

 

 

 

“逆に考えるんだ……“平らげちゃってもいいさ”と”

 

 

 

その過った言葉に一体何を?と内心ツッコミを入れながらもハジメは、そんな疑問と過った言葉をを馬鹿馬鹿しいと頭を振って追い出しつつ、香織の質問に答えた。

 

 

「ちょっと、日本を思い出していたんだよ。こういう自然の光景は、変わらねぇなって」

 

「……そっか。うん、そうだね。向こうの海で見た夕日とそっくり……なんだかすごく懐かしい気がするよ。まだ半年も経っていないのにね」

 

「こっちでの日々が濃すぎるんだよ」

 

 

ハジメの隣に座った香織が、どこか遠い目をしながらハジメの言葉に同意する。きっと、日本で過ごしてきた日々を懐かしんでいるのだろう。

 

 

 

二人にしか通じない話題に寂しさを感じたのか、ユエは、火照った体でトコトコとハジメに歩み寄ると、その膝の上に腰をおろし、暑いだろうに背中をハジメの胸元にもたれかけさせ、真下から上目遣いで見つめ始めた。

 

 

 

その瞳は明らかに、自分も話に入れて欲しいと物語っている。寂しさと同時に、ハジメ達の故郷のことを聞きたいという気持ちがあるようだ。ユエの可愛らしさに内心ノックアウトされながら、ハジメは、隣の香織が般若を出しそうになったので、そのほっぺをプニプニして諌める。

 

 

 

それだけで、途端に機嫌が良くなるのだから、ハジメとしては複雑だ。受け入れてくれない相手に、どうしてそこまで……と、思ってしまう。もっとも、思うだけで口にはしない。それは、余りに彼女の気持ちに対して失礼だから。

 

 

 

香織の頬をプニっていると、背中にはティオがもたれかかった。特に何を要求するでもなく、静かに背中合わせになっている。ただ、体重のかけ具合から心底リラックスしていることが分かった。変態的な要求でもされたら、海に投げ落としてやろうと思っていただけに、ハジメとしては少々意外だった。

 

 

 

もっとも、ハジメの雰囲気から何か感じたのか、一瞬ビクッと体を震わせると、少し息を荒くしていたが……

 

 

 

広大な海の上で、小さく寄り添い合うハジメ達。夜天に月が輝き出すまでは今しばらく時間がかかる。それまでの暇つぶしに、ハジメは、少し故郷のことを話し始めた。

 

 

 

ハジメの語りにユエ達が興味津々に相槌を打ち、香織がにこやかに補足を入れる。そんな和やかな雰囲気を楽しんでいると、あっという間に時間は過ぎ去り、日は完全に水平線の向こう側へと消え、代わりに月が輝きを放ち始めた。

 

 

 

そろそろ頃合かと、ハジメは懐から“グリューエン大火山”攻略の証であるペンダントを取り出した。サークル内に女性がランタンを掲げている姿がデザインされており、ランタンの部分だけがくり抜かれていて、穴あきになっている。

 

 

 

エリセンに滞在している時にも、このペンダントを取り出して月にかざしてみたり、魔力を流してみたりしたのだが、特に何の変化もなかった。

 

 

 

月とペンダントでどうしろと言うんだ?と、内心首を捻りながら、ハジメは、取り敢えずペンダントを月にかざしてみた。ちょうどランタンの部分から月が顔を覗かせている。

 

 

 

しばらく眺めていたが、特に変化はない。やはりわけ分からんと、ハジメは溜息を吐きながら他の方法を試そうとした。

 

 

 

と、その時、ペンダントに変化が現れた。

 

 

「わぁ、ランタンに光が溜まっていきますぅ。綺麗ですねぇ」

 

「ホント……不思議ね。穴が空いているのに……」

 

 

シアが感嘆の声を上げ、香織が同調するように瞳を輝かせる。

 

 

 

彼女達の言葉通り、ペンダントのランタンは、少しずつ月の光を吸収するように底の方から光を溜め始めていた。それに伴って、穴あき部分が光で塞がっていく。ユエとティオも、興味深げに、ハジメがかざすペンダントを見つめた。

 

 

「昨夜も、試してみたんだがな……」

 

「ふむ、ご主人様よ。おそらく、この場所でなければならなかったのではないかの?」

 

 

おそらく、ティオの推測が正解なのだろう。やがて、ランタンに光を溜めきったペンダントは全体に光を帯びると、その直後、ランタンから一直線に光を放ち、海面のとある場所を指し示した。

 

 

「……なかなか粋な演出。ミレディとは大違い」

 

「全くだ。すんごいファンタジーっぽくて、俺、ちょっと感動してるわ」

 

 

“月の光に導かれて”という何ともロマン溢れる道標に、ハジメだけでなくユエ達も“おぉ~”と感嘆の声を上げた。特に、ミレディの“ライセン大迷宮”の入口を知っているシアは、ハジメやユエ同様、感動が深い。

 

 

 

ペンダントのランタンが何時まで光を放出しているのか分からなかったので、ハジメ達は早速、導きに従って潜水艇を航行させた。

 

 

 

夜の海は暗い。というよりも黒いと表現したほうがしっくりくるだろうか。海上は月明かりでまだ明るかったが、導きに従って潜行すれば、あっという間に闇の中だ。潜水艇のライトとペンダントの放つ光だけが闇を切り裂いている。

 

 

 

ちなみに、ペンダントの光は、潜水艇のフロントガラスならぬフロント水晶(透明な鉱石ですこぶる頑丈)越しに海底の一点を示している。

 

 

 

その場所は、海底の岩壁地帯だった。無数の歪な岩壁が山脈のように連なっている。昼間にも探索した場所で、その時には何もなかったのだが……潜水艇が近寄りペンダントの光が海底の岩石の一点に当たると、ゴゴゴゴッ!と音を響かせて地震のような震動が発生し始めた。

 

 

 

その音と震動は、岩壁が動き出したことが原因だ。岩壁の一部が真っ二つに裂け、扉のように左右に開き出したのである。その奥には冥界に誘うかのような暗い道が続いていた。

 

 

「なるほど……道理でいくら探しても見つからないわけだ。あわよくば運良く見つかるかもなんてアホなこと考えるんじゃなかったよ」

 

「……暇だったし、楽しかった」

 

「そうだよ。異世界で海底遊覧なんて、貴重な体験だと思うよ?」

 

昼間の探索が徒労だったとわかり、ガックリと肩を落としたハジメだったが、ユエと香織は結構楽しんでいたようだ。

 

 

 

ハジメは一旦ヴェネター級にいる雷電達へ通信を送り、雷電達が来るのを待った。そして雷電達が乗るヴェネター級と合流し、雷電達が潜水艇に乗り移った後、ハジメは潜水艇を操作して、海底の割れ目へと侵入していく。ペンダントのランタンは、まだ半分ほど光を溜めた状態だが、既に光の放出を止めており、暗い海底を照らすのは潜水艇のライトだけだ。

 

 

「う~む、海底遺跡と聞いた時から思っておったのだが、この“せんすいてい”?がなければ、まず、平凡な輩では、迷宮に入ることも出来なさそうじゃな」

 

「……強力な結界が使えないとダメ」

 

「他にも、空気と光、あと水流操作も最低限同時に使えないとダメだな」

 

「でも、ここにくるのに“グリューエン大火山”攻略が必須ですから、大迷宮を攻略している時点で普通じゃないですよね」

 

「もしかしたら、空間魔法を利用するのがセオリーなのかも」

 

 

道なりに深く潜行しながら、ハジメ達は潜水艇がない場合の攻略方法について考察してみた。確かに、ファンタジックな入口に感動はしたのだが、普通に考えれば、超一流レベルの魔法の使い手が幾人もいなければ、侵入すら出来ないという時点で、他の大迷宮と同じく厄介なことこの上ない。

 

 

 

ハジメ達は、気を引き締め直し、フロント水晶越しに見える海底の様子に更に注意を払った。

 

 

 

と、その時……

 

 

 

ゴォウン!!

 

 

 

「うおっ!?」

 

「んっ!」

 

「わわっ!」

 

「きゃっ!」

 

「何じゃっ!?」

 

「っとと!またか!?」

 

「つーか、これなんかデジャブをかんじるんだが?」

 

 

突如、横殴りの衝撃が船体を襲い、一気に一定方向へ流され始めた。マグマの激流に流された時のように、船体がぐるんぐるんと回るが、そこは既に対策済みだ。組み込んだ船底の重力石が一気に重みを増し船体を安定させる。

 

 

「うっ、このぐるぐる感はもう味わいたくなかったですぅ~」

 

 

シアが、“グリューエン大火山”の地下で流されたときの事を思い出し、顔を青くしてイヤイヤと頭を振った。

 

 

「直ぐに立て直しただろ?もう、大丈夫だって。それより、この激流がどこに続いているかだな……」

 

 

そんなシアに苦笑いを浮かべつつ、ハジメは、フロント水晶から外の様子を観察する。緑光石の明かりが洞窟内の暗闇を払拭し、その全体像をあらわにしている。見た感じ、どうやら巨大な円形状の洞窟内を流れる奔流に捕まっているようだ。

 

 

 

船体を制御しながら、取り敢えず流されるまま進むハジメ達。しばらくそうしていると、船尾に組み込まれている“遠透石”が赤黒く光る無数の物体を捉えた。

 

 

「なんか近づいてきてるな……まぁ、赤黒い魔力を纏っている時点で魔物だろうが」

 

「……殺る?」

 

 

ハジメがそう呟くと、隣の座席に座るユエが手に魔力に集めながら可愛い顔でギャングのような事をさらりと口にする。

 

 

「いや、武装を使おう。有効打になるか確認しておきたいし」

 

 

ハジメが、潜水艇の後部にあるギミックを作動させる。すると、アンカジのオアシスを真っ赤に染めたペットボトルくらいの大きさの魚雷が無数に発射された。ご丁寧に悪戯っぽい笑みを浮かべるサメの絵がペイントされている。

 

 

 

激流の中なので、推進力と流れがある程度拮抗し、結果、機雷のようにばら撒かれる状態となった。

 

 

 

潜水艇が先に進み、やがて、赤黒い魔力を纏って追いかけてくる魔物──トビウオのような姿をした無数の魚型の魔物達が、魚雷群に突っ込んだ。

 

 

 

ドォゴォオオオオ!!!

 

 

 

背後で盛大な爆発が連続して発生し、大量の気泡がトビウオモドキの群れを包み込む。そして、衝撃で体を引きちぎられバラバラにされたトビウオモドキの残骸が、赤い血肉と共に泡の中から飛び出し、文字通り海の藻屑となって激流に流されていった。

 

 

「うん、前より威力が上がっているな。改良は成功だ」

 

「うわぁ~、ハジメさん。今、窓の外を死んだ魚のような目をした物が流れて行きましたよ」

 

「シアよ、それは紛う事無き死んだ魚じゃ」

 

「改めて思ったのだけど、ハジメくんの作るアーティファクトって反則だよね」

 

「それな。俺も南雲のとんでも兵器(アーティファクト)を見てそう思った」

 

「本当にそうよね?南雲くんは自重しないというか何というか……」

 

「下手をすればハジメのアーティファクトは厄災級になるな、これは……」

 

 

それから度々、トビウオモドキに遭遇するハジメ達だったが容易く蹴散らし先へ進む。

 

 

 

どれくらいそうやって進んだのか。代わり映えのない景色に違和感を覚え始めた頃、ハジメ達は周囲の壁がやたら破壊された場所に出くわした。よく見れば、岩壁の隙間にトビウオモドキのちぎれた頭部が挟まっており、虚ろな目を海中に向けている。

 

 

「……ここ、さっき通った場所か?」

 

「……そうみたい。ぐるぐる回ってる?」

 

 

どうやら、ハジメ達は円環状の洞窟を一周してきたらしい。大迷宮の先へと進んでいるつもりだったので、まさか、ここはただの海底洞窟で道を誤ったのかと疑問顔になるハジメ。結局、今度は道なりに進むのではなく、周囲に何かないか更に注意深く探索しながらの航行となった。

 

 

 

その結果……

 

 

 

「あっ、ハジメくん。あそこにもあったよ!」

 

「これで、五ヶ所目か……」

 

 

洞窟の数ヶ所に、五十センチくらいの大きさのメルジーネの紋章が刻まれている場所を発見した。メルジーネの紋章は五芒星の頂点のひとつから中央に向かって線が伸びており、その中央に三日月のような文様があるというものだ。それが、円環状の洞窟の五ヶ所にあるのである。

 

 

 

ハジメ達は、じっくり調べるため、最初に発見した紋章に近付いた。激流にさらされているので、雷電の魔力のフォローを受けながらも船体の制御に気を遣う。

 

 

「まぁ、五芒星の紋章に五ヶ所の目印、それと光を残したペンダントとくれば……」

 

「……そうゆうことか。改めてこの大迷宮を作った解放者は本当に面倒な仕組みを作ったな?」

 

 

ハジメはそう呟き、雷電が五芒星の紋章に五ヶ所の目印の意味を理解し、改めて面倒なしか背であると呟く。そしてハジメは首から下げたペンダントを取り出し、フロント水晶越しにかざしてみた。すると、案の定ペンダントが反応し、ランタンから光が一直線に伸びる。そして、その光が紋章に当たると、紋章が一気に輝きだした。

 

 

「これ、魔法でこの場に来る人達は大変だね……直ぐに気が付けないと魔力が持たないよ」

 

 

香織の言う通り、このようなRPG風の仕掛けを魔法で何とか生命維持している者達にさせるのは相当酷だろう。“グリューエン大火山”とは別の意味で限界ギリギリを狙っているのかもしれない。

 

 

 

その後、更に三ヶ所の紋章にランタンの光を注ぎ、最後の紋章の場所にやって来た。ランタンに溜まっていた光も、放出するごとに少なくなっていき、ちょうど後一回分くらいの量となっている。

 

 

 

ハジメが、ペンダントをかざし最後の紋章に光を注ぐと、遂に、円環の洞窟から先に進む道が開かれた。ゴゴゴゴッ!と轟音を響かせて、洞窟の壁が縦真っ二つに別れる。

 

 

 

特に何事もなく奥へ進むと、真下へと通じる水路があった。潜水艇を進めるハジメ。すると、突然、船体が浮遊感に包まれ一気に落下した。

 

 

「おぉ?」

 

「んっ」

 

「ひゃっ!?」

 

「ぬおっ」

 

「はうぅ!」

 

「おわっと!」

 

「ま、またか!?」

 

「わわっ!?」

 

 

 

それぞれ、多者多様の悲鳴を上げる。ハジメは、股間のフワッと感に耐える。直後、ズシンッ! と轟音を響かせながら潜水艇が硬い地面に叩きつけられた。激しい衝撃が船内に伝わり、特に体が丈夫なわけではない香織や恵里が呻き声を上げる。

 

 

「っつつ……今日は厄日だな。恵里、大丈夫か?」

 

「な……何とかね」

 

「っ……香織、無事か」

 

「うぅ、だ、大丈夫。それより、ここは?」

 

 

香織が顔をしかめながらもフロント水晶から外を見ると、先程までと異なり、外は海中ではなく空洞になっているようだった。取り敢えず、周囲に魔物の気配があるわけでもなかったので、船外に出るハジメ達。

 

 

 

潜水艇の外は大きな半球状の空間だった。頭上を見上げれば大きな穴があり、どういう原理なのか水面がたゆたっている。水滴一つ落ちることなくユラユラと波打っており、ハジメ達はそこから落ちてきたようだ。

 

 

「どうやら、ここからが本番みたいだな。海底遺跡っていうより洞窟だが」

 

「……全部水中でなくて良かった」

 

 

ハジメは、潜水艇を“宝物庫”に戻しながら、洞窟の奥に見える通路に進もうとユエ達を促す……寸前でユエに呼びかけた。

 

 

「ユエ」

 

「ん」

 

 

それだけで、ユエは即座に障壁を展開した。

 

 

刹那、頭上からレーザーの如き水流が流星さながらに襲いかかる。圧縮された水のレーザー(雷電曰く、水圧カッター)は、かつてユエが“ライセン大迷宮”で重宝した“破断”と同じだ。直撃すれば、容易く人体に穴を穿つだろう。

 

 

 

しかし、ユエの障壁は、例え即行で張られたものであっても強固極まりないものだ。それを証明するように、天より降り注ぐ暴威をあっさり防ぎ切った。ハジメが魔力の高まりと殺意をいち早く察知し、阿吽の呼吸でユエが応えたために、奇襲は奇襲となり得なかったのである。当然、ハジメが呼びかけた瞬間に、攻撃を察していた雷電やシア、ティオや清水、デルタと不良分隊にも動揺はない。

 

 

 

だが、香織と恵里はそうはいかなかった。

 

 

「「きゃあ!?」」

 

 

余りに突然かつ激しい攻撃に、思わず悲鳴を上げながらよろめく。香織の傍にいたハジメが、咄嗟に、腰に腕を回して支えた。雷電も恵里が蹌踉めく所を見て、フォースを使って恵里が倒れない様に支える。

 

 

「「ご、ごめんなさい」」

 

「いや、気にするな」

 

「ここは解放者が作った大迷宮だ。これ以上のトラップが待ち構えている筈だ。油断はするなよ」

 

 

香織は、あっさり離れたハジメをチラ見しながら、普通なら赤面の一つでもしそうなのだが、香織の表情は優れない。抱き止められたことよりも、自分だけが醜態を晒したことに少し落ち込んでいるようだ。恵里も香織と同じ様に自身の無力さに少し落ち込んでいる。

 

 

 

そして、それ以上に、ユエの魔法技能の高さに改めてショックを覚える。

 

 

 

光輝達といた時は、鈴の守りを補助する形でそれなりに防御魔法は行使してきた。たくさん訓練をして、発動速度だけなら“結界師”たる鈴にだって引けを取らないレベルになったのだ。それでも、ユエと比べると、自分の防御魔法など児戯に等しいと思わせられる。

 

 

 

“オルクス大迷宮”でハジメ達に助けられた時から感じていた“それ”──分かってはいたが、それでもハジメの傍にいるためにはやるしかないのだと自分に言い聞かせて心の奥底に押し込めてきた──“劣等感”。自分は、足でまといにしかならないのではないか?その思いが再び、香織の胸中を過る。

 

 

 

恵里も香織と共通することはあれど、一つだけ、恵里の中に渦巻いているものがあった。それは“嫉妬”。雷電とハジメがオルクス大迷宮の奈落に落ちてからこの半年間、二人は力を身につけ、更にはこの世界で出来た新たな仲間と共に旅をしている。特にシアは産まれた時からなのか無自覚にフォースに目覚めていて、雷電は同じフォース使いとしてなのかシアを弟子を取り、修行を重ねながらも旅を続けている。そして何より、シアは雷電に好意を抱いているのだ。シアの気持ちを雷電は理解しているが、雷電の前世の影響もあってか、何かと答えが見出せない様だった。

 

 

「どうした?」

 

「えっ?あ、ううん。何でもないよ」

 

「……そうか」

 

「恵里、あまり一人で抱え込まない様にな?」

 

「うん……分かっているよ」

 

 

香織は咄嗟に誤魔化し、無理やり笑顔を浮かべる。ハジメは、そんな香織の様子に少し目を細めるが、特に何も言わなかった。そして恵里も雷電の注告を素直に受け取るのだった。

 

 

 

そのことに、香織が少しの寂しさと安堵を感じていると、未だに続いている死の豪雨を防いでいるユエがジッと自分を見ていることに気がついた。その瞳が、まるで香織の内心を見透かそうとしているようで、香織は、咄嗟に眼に力を込めて睨むような眼差しを返す。

 

 

 

いつかのように、自分の気持ちを嗤わせるわけにはいかない。そんな事になれば、ハジメの愛情を一身に受ける目の前の美貌の少女は、香織を戦うべき相手とすら認識しなくなるだろう。

 

 

 

それだけは……我慢ならない。

 

 

 

香織の強い眼差しを受けたユエは、少し口元を緩めると再び頭上に視線を戻した。同時にティオが火炎を繰り出し、天井を焼き払う。それに伴って、ボロボロと攻撃を放っていた原因が落ちてきた。

 

 

 

それは、一見するとフジツボのような魔物だった。天井全体にびっしりと張り付いており、その穴の空いた部分から“破断”を放っていたようだ。なかなかに生理的嫌悪感を抱く光景である。

 

 

 

水中生物であるせいか、やはり火系には弱いようで、ティオの炎系攻撃魔法“螺炎”により直ぐに焼き尽くされた。

 

 

 

フジツボモドキの排除を終えると、ハジメ達は奥の通路へと歩みを進める。通路は先程の部屋よりも低くなっており、足元には膝くらいまで海水で満たされていた。

 

 

「あ~、歩きにくいな……」

 

「……降りる?」

 

 

ザバァサバァと海水をかき分けながら、ハジメが鬱陶しそうに愚痴をこぼす。それに対して、ハジメの肩に座っているユエが、気遣うようにそう言った。ユエの身長的に、他の者より浸かる部分が多くなってしまうのでハジメが担ぎ上げたのだ。

 

 

 

少し羨ましそうに見つめてくる香織の視線をスルーして、問題ないと視線で返しながら、ハジメはユエが落ちないように太ももに手を置いてしっかりと固定した。ユエも、ハジメの首筋に手を回してぴったりとくっついた。

 

 

 

益々、羨ましそうな眼差しを送る香織達だったが、魔物の襲撃により、集中を余儀なくされる。

 

 

 

現れた魔物は、まるで手裏剣だった。高速回転しながら直線的に、あるいは曲線を描いて高速で飛んでくる。ハジメは、スっとドンナーを抜くと躊躇わず発砲して空中で撃墜し、雷電がライトセーバーでその高速回転する魔物を切り裂き、全滅させた。ハジメのドンナーに体を砕かれ、雷電のライトセーバーで切り裂かれて、プカーと水面に浮かんだのはヒトデっぽい何かだった。

 

 

 

更に、足元の水中を海蛇のような魔物が高速で泳いでくるのを感知し、ユエが、氷の槍で串刺しにする。

 

 

「……弱すぎないか?」

 

「確かに……ハジメの言う通り、ここの魔物達は幾ら何でも弱すぎる」

 

 

ハジメと雷電の呟きに香織と恵里、清水以外の全員が頷いた。

 

 

 

大迷宮の敵というのは、基本的に単体で強力、複数で厄介、単体で強力かつ厄介というのがセオリーだ。だが、ヒトデにしても海蛇にしても、海底火山から噴出された時に襲ってきた海の魔物と大して変わらないか、あるいは、弱いくらいである。とても、大迷宮の魔物とは思えなかった。

 

 

 

大迷宮を知らない香織達以外は、皆、首を傾げるのだが、その答えは通路の先にある大きな空間で示された。

 

 

「っ……何だ?」

 

 

ハジメ達が、その空間に入った途端、半透明でゼリー状の何かが通路へ続く入口を一瞬で塞いだのだ。

 

 

「ゼリー状の何か?一体これは……」

 

「私がやります!うりゃあ!!」

 

「っ!?待てっシア!」

 

 

雷電はゼリー状の何かを見て、何かが怪しいと睨んだと咄嗟に、最後尾にいたシアは、その壁を壊そうとドリュッケンを振るう。雷電がシアに制止を掛けるも、シアが振るったドリュッケンは表面が飛び散っただけで、ゼリー状の壁自体は壊れなかった。そして、その飛沫がシアの胸元に付着する。

 

 

「ひゃわ!何ですか、これ!」

 

 

シアが、困惑と驚愕の混じった声を張り上げた。ハジメ達が視線を向ければ、何と、シアの胸元の衣服が溶け出している。衣服と下着に包まれた、シアの豊満な双丘がドンドンさらけ出されていく。

 

 

「ちょ…おまっ!?」

 

「シア、動くでない!」

 

 

咄嗟にティオが、絶妙な火加減でゼリー状の飛沫だけを焼き尽くした。少し、皮膚にもついてしまったようでシアの胸元が赤く腫れている。どうやら、出入り口を塞いだゼリーは強力な溶解作用があるようだ。

 

 

「溶解作用のあるゼリーの壁か……となると、この後の展開は……」

 

「っ!また来るぞ!」

 

 

警戒して、ゼリーの壁から離れた直後、今度は頭上から、無数の触手が襲いかかった。先端が槍のように鋭く尖っているが、見た目は出入り口を塞いだゼリーと同じである。だとすれば、同じように強力な溶解作用があるかもしれないと、再び、ユエが障壁を張る。更に、ティオが炎を繰り出して、触手を焼き払いにかかった。

 

 

「正直、ユエの防御とティオの攻撃のコンボって、割と反則臭いよな」

 

「確かに、“最強の矛と盾”と言った感じか?」

 

 

鉄壁の防御と、その防御に守られながら一方的に攻撃。ハジメと清水がそう呟くのも仕方ない。それを余裕と見たのか、シアが雷電の傍にそろりそろりと近寄り、露になった胸の谷間を殊更強調して、実にあざとい感じで頬を染めながら上目遣いでおねだりを始めた。

 

 

「あのぉ、マスター。火傷しちゃったので、お薬塗ってもらえませんかぁ」

 

「……シア、お前ワザと言っているだろ?」

 

「いや、ユエさんとティオさんが無双してるので大丈夫かと……こういう細かなところでアピールしないと、香織さんと恵里さんの参戦で影が薄くなりそうですし……」

 

 

シアが、胸のちょうど谷間あたりに出来た火傷の幾つかを雷電に見せつけながら、そんなことをのたまった。

 

 

 

シアに何か一言注意しようとした矢先、雷電の背中に悪寒が走る。その謎の悪寒の正体は雷電でも知っていた。それは、恵里から発する異常な圧を放っていたのだ。それも満遍な笑みで……(ただし、目が笑っていない)

 

 

 

これは下手な発言が出来ないと判断した雷電は、慎重に言葉を選ぼうとしたその時……

 

 

「聖浄と癒しをここに〝天恵〟」

 

 

いい笑顔の香織がすかさずシアの負傷を治してしまった。“あぁ~、お胸を触ってもらうチャンスがぁ!”と嘆くシアに、クローン達を除く全員が冷たい視線を送り、デルタ、不良分隊は苦笑いをする。

 

 

「む?……ハジメ、このゼリー、魔法も溶かすみたい」

 

 

嘆くシアに冷たい視線を送っていると、ユエから声がかかる。見れば、ユエの張った障壁がジワジワと溶かされているのがわかった。

 

 

「ふむ、やはりか。先程から妙に炎が勢いを失うと思っておったのじゃ。どうやら、炎に込められた魔力すらも溶かしているらしいの」「……この大迷宮は、完全に魔法特化の人にとって相性最悪な場所の様だな」

 

 

 

ティオの言葉が正しければ、このゼリーは魔力そのものを溶かすことも出来るらしい。雷電もティオの言葉にそう呟く。ハジメも雷電と同じ考えで、中々に強力で厄介な能力だ。まさに、大迷宮の魔物に相応しい。

 

 

 

そんなハジメの内心が聞こえたわけではないだろうが、遂に、ゼリーを操っているであろう魔物が姿を現した。

 

 

 

天井の僅かな亀裂から染み出すように現れたそれは、空中に留まり形を形成していく。半透明で人型、ただし手足はヒレのようで、全身に極小の赤いキラキラした斑点を持ち、頭部には触覚のようなものが二本生えている。まるで、宙を泳ぐようにヒレの手足をゆらりゆらりと動かすその姿は、クリオネのようだ。もっとも、全長十メートルのクリオネはただの化け物だが。

 

 

 

その巨大クリオネは、何の予備動作もなく全身から触手を飛び出させ、同時に頭部からシャワーのようにゼリーの飛沫を飛び散らせた。この時に雷電は巨大クリオネが飛び散らせたゼリーの正体を見抜いた。

 

 

「こいつが撒き散らかすゼリーはまさか……気をつけろ!奴が飛ばすゼリーは、さっきのゼリーの壁と同じ溶解作用を持っているぞ!」

 

「ユエも攻撃して!防御は私が!──“聖絶”!」

 

 

雷電が皆に警告する中、香織は派生技能“遅延発動”で、あらかじめ唱えておいた“聖絶”を発動する。それにコクリと頷いたユエはティオと一緒に巨大クリオネに向けて火炎を繰り出した。シアも、ドリュッケンを砲撃モードに切り替えて焼夷弾を撃ち放つ。

 

 

 

全ての攻撃は巨大クリオネに直撃し、その体を爆発四散させた。いっちょ上がり!とばかりに満足気な表情をするユエ達だったが、それにハジメが警告の声を上げる。

 

 

「まだだ! 反応が消えてない。香織は、障壁を維持しろ……なんだこれ、魔物の反応が部屋全体に……」

 

 

ハジメの感知系能力は部屋全体に魔物の反応を捉えていた。しかも、魔眼石で見える視界は赤黒い色一色で染まっており、まるで、部屋そのものが魔物であるかのようだった。未だかつて遭遇したことのない事態に、自然、ハジメの眼が鋭さを帯びる。

 

 

 

すると、その懸念は当たっていたようで、四散したはずのクリオネが瞬く間に再生してしまった。しかも、よく見ればその腹の中に、先程まで散発的に倒していたヒトデモドキや海蛇がおり、ジュワーと音を立てながら溶かされていた。

 

 

「ふむ、どうやら弱いと思っておった魔物は本当にただの魔物で、こやつの食料だったみたいじゃな……ご主人様よ。無限に再生されてはかなわん。魔石はどこじゃ?」

 

「そういえば、透明の癖に魔石が見当たりませんね?」

 

 

ティオの推測に頷きつつ、シアがハジメを見るが、ハジメは巨大クリオネを凝視し魔石の場所を探しつつも困惑したような表情をしている。

 

 

「何だか嫌な予感がしてきた……」

 

「……ハジメ?」

 

 

雷電が何かを悟り、ユエが呼びかけると、ハジメは頭をガリガリと掻きながら見たままを報告した。

 

 

「……ない。あいつには、魔石がない」

 

 

その言葉に全員が目を丸くする。

 

 

「ハ、ハジメくん?魔石がないって……じゃあ、あれは魔物じゃないってこと?」

 

「わからん。だが、強いて言うなら、あのゼリー状の体、その全てが魔石だ。俺の魔眼石には、あいつの体全てが赤黒い色一色に染まって見える。あと、部屋全体も同じ色だから注意しろ。あるいは、ここは既に奴の腹の中だ!」

 

「おいおい、勘弁してくれよ!」

 

 

ハジメが驚愕の事実を話すと同時に、再び、巨大クリオネが攻撃を開始した。今度は、触手とゼリーの豪雨だけでなく、足元の海水を伝って魚雷のように体の一部を飛ばしてきてもいる。

 

 

 

ハジメは、“宝物庫”から黒い大型ライフルのようなものを取り出した。その大型ライフルには、本来マガジンが装填されるべき場所にボンベのようなものが取り付けられており、口径も弾丸を発射するとは思えないほど大きい。そして雷電もまた派生技能の“共和国軍武器・防具召喚”でハジメが“宝物庫”から取り出した黒い大型ライフルと同様の物を二つ召喚し、その一つを清水に手渡し、巨大クリオネに向ける。

 

 

 

ハジメや雷電達が持つそれはライフルではなく……

 

 

 

ゴォオオオオオーー!!

 

 

 

火炎放射器なのだから。タール状のフラム鉱石が、摂氏三千度の消えない炎を撒き散らす。ハジメが狙うのは巨大クリオネでも、触手や飛沫でもない。周囲の赤黒い反応を示す“壁”だ。本体への対応は現在雷電達に任せる。

 

 

 

巨大クリオネには擬態能力まであるのか、何の変哲もないと思っていた壁が、ハジメの火炎放射によって壁紙が剥がれるようにボロボロと燃え尽きていく。どうやら、壁そのものが巨大クリオネというわけではないようで、少しホッとするハジメ。

 

 

 

しかし、半透明のゼリーは、燃やしても燃やしても壁の隙間や割れ目から際限なく出現し、遂には足元からも湧き出した。靴底がジューと焼けるような音を立てる。

 

 

 

ユエ達の魔法の攻撃、雷電と清水の持つ火炎放射器による本体への攻撃も激しさを増し、巨大クリオネもいよいよ本気になってきたのか、壁全体から凄まじい勢いで湧き出してきた。しかも、いつの間にか水位まで上がってきており、最初は膝辺りまでだったのが、今や腰辺りまで増水してきている。ユエに至っては、既に胸元付近まで水に浸かっていた。

 

 

 

ユエ達は何度も巨大クリオネを倒しているのだが、直ぐにゼリーが集まり、終わりが見えない。それに加え、火炎放射器による攻撃も巨大クリオネの再生能力を遅らせる程度の時間稼ぎだった。

 

 

 

殲滅の方法が見つからない上に、戦闘力を削がれる水中に没するのは非常にまずい。なにせ、巨大クリオネには籠城が通用しないのだ。魔法で障壁を張ろうとも、潜水艇を出して中に入ろうとも、殲滅方法がなくてはいずれ溶かされてしまう。

 

 

 

故に、ここは一度離脱するべきだとハジメは決断した。しかし、全ての出入口はゼリーで埋まっている。ハジメは、必死に周囲を見渡す。そして、地面にある亀裂から渦巻きが発生しているのを発見した。

 

 

「ハジメ、こいつはかなり厄介だぞ!このままじゃ、ジリ貧だ!」

 

「分かってる。一度、態勢を立て直すぞ。地面の下に空間がある。どこに繋がってるかわからない。覚悟を決めろ!」

 

「んっ」

 

「それしかないか……了解!」

 

「はいですぅ」

 

「承知じゃ」

 

「わかったよ!」

 

「了解だ!」

 

「分かったわ!」

 

「「「イエッサー!」」」

 

 

全員の返事を受け取り、ハジメは火炎放射器を振り回して襲い来るゼリーを焼き払いながら、渦巻く亀裂に向かって〝錬成〟を行った。亀裂を押し広げ、ドンドン深く穴を開けていく。雷電と清水は巨大クリオネの注意をハジメに向けない様に火炎放射器で攻撃し、ヘイトをこちら側に向けさせる。

 

 

 

ハジメは、水中に潜り、ポーチから長さ十五センチ直径三センチ程の円筒を取り出した。中程にシュノーケルのマウスピース部分のような突起がついている。これはミュウ監修の下に作り出された小型の酸素ボンベだ。生成魔法で空間魔法を付与した鉱石で出来ており、中には“宝物庫”と同じく空間が広がっていて、空気が入れられている。

 

 

 

ただ、エリセンで準備していたときは、壊れた道具や喪失した装備を優先した上、空間魔法は扱いが物凄く難しく、“宝物庫”とは比べるべくもない狭い空間しか作れなかった。なので、この小型酸素ボンベは一本で三十分程度しか保たない。(なお、当時は潜水時間二分程度の物にしようと思ったが、そのことでミュウに怒られ、潜水時間の重要性を徹底的に教えられたのは余談である)

 

 

 

タイムリミットを頭の片隅に、ハジメは水中で“錬成”を繰り返していき、やがて地面が反応しなくなると、“宝物庫”からパイルバンカーを取り出した。そして、アンカーで水中に固定すると、一気にチャージする。

 

 

 

キィイイイイイ!! 

 

 

 

そして、階層破りの一撃を放つ引き金を引いた。

 

 

 

ドォゴオオオオン!!!

 

 

 

水中にくぐもった轟音が振動と共に伝播する。

 

 

 

次の瞬間、貫通した縦穴へ途轍もない勢いで水が流れ込んでいった。腰元まで上がってきていた海水が、いきなり勢いよく流れ始めたので、ユエ達も足をさらわれて穴へと流されて来る。

 

 

 

ハジメは激流の中、水中で必死に踏ん張りながら“宝物庫”から巨大な岩石と無数の焼夷手榴弾を転送しつつ、ユエ達と共に地下の空間へと流されていった。

 

 

 

背後で、くぐもった爆音が響く。巨大クリオネの追撃に対し、少しでも時間が稼げたのか確かめることは出来なかった。

 

 

オリキャラの詳細を書いた話を書くべきか?

  • 書くべき。
  • 不要。
  • 作者に任せる。
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