ありふれないジェダイとクローン軍団で世界最強   作:コレクトマン

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連続投稿です。


73話目です。


堕ちる天使達、教会の最後

 

 

初撃はシュラーゲンによる一撃だった。

 

 

 

紅いスパークが迸り、見るからに凶悪なフォルムの怪物兵器から凄絶な破壊力を宿らせた超速の弾丸が一直線に目標へと迫る。ティオのブレスすら正面から貫いた貫通特化の砲撃に、流石の銀翼でも分解する前に貫かれると判断したのかノイントは雷電から距離を取りつつも回避を選んだ。

 

 

 

その場から身を捻りながら落下し、紅い閃光の真下を掻い潜りながら、恐るべき速度でハジメに突進する。

 

 

 

しかし、それを読んでいたのか、そこには既にクロスビットが配置されており、炸裂スラッグ弾が回避不能の近さで轟音と共にぶっ放された。

 

 

「ッ!?」

 

 

ノイントは、紅い波紋を広げる炸裂スラッグ弾を見て、銀翼での防御も間に合わないと見たのか、その手に持つ一之大剣で迎撃に打って出た。

 

 

 

神速で振り抜かれた大剣は、まるでバターを切り取るようにスッと弾丸に入り込みそのまま縦に両断する。内包する魔力を分解された炸裂スラッグ弾だったが、大剣の一撃もその全てを散らすことは出来ず、ノイントの左右に分かれた弾丸が両側から衝撃波を放った。

 

 

 

威力は減じているものの、衝撃をモロに浴びて動きが一瞬止まってしまうノイント。

 

 

 

そんな彼女の懐に、意識の間隙を突くようにいつの間にか踏み込んできたのはハジメだ。“空力”を使った空中での震脚によって、踏み込みの力を余すことなく左腕に集束し、ギミックの“振動破砕”と“炸裂ショットガン”、そして“豪腕”と膨大な魔力を注ぎ込んだ“衝撃変換”による絶大な威力の拳撃を放った。

 

 

 

ノイントは、咄嗟に弐之大剣を盾にした。体と着弾寸前の拳との間に大剣を割り込ませる。その試みはギリギリのところで間に合い、ハジメの鋼鉄の拳をせき止めた。

 

 

 

しかし、その威力までは止められず、ガァアアン!という金属同士が衝突する凄まじい音を轟かせながら、ノイントは猛烈な勢いで吹き飛ばされた。

 

 

 

ドパァアアンッ!ドパァアアンッ!

 

 

 

ハジメは追撃の手を緩めない。即座にドンナー・シュラークを抜くと最大威力で連射する。轟く炸裂音は二発分。夜闇を切り裂く紅い閃光も二条。されど、吹き飛びながらも双大剣をクロスさせて防御姿勢をとるノイントを襲ったのは十二回分の衝撃だった。

 

 

「くぅうううっ!!」

 

 

ドンナー・シュラークそれぞれにつき、一発分しか聞こえない程の早撃ちと、全く同じ軌道を通り着弾地点も同じという超精密射撃。ノイントの呻き声と同時に、彼女の持つ大剣が衝撃に震え、僅かにピキッと嫌な音を立てる。

 

 

 

ハジメ渾身の拳撃とレールガン十二発を受けて尚折れない双大剣の耐久力に呆れるべきか感心すべきか。

 

 

 

更に吹き飛び、再び、背後にあった教会の荘厳な装飾が施された何らかの施設を破壊しながら埋もれるノイント。雷電は、ダメ押しとばかりにノイントに向けてフォース・プッシュを放った。

 

 

 

ノイントは再び大剣で防御するが、防御が意味をなさないかの様に瓦礫の方に吹き飛ばされる。

 

 

 

この時にハジメは雷電に問いかける。

 

 

「雷電……お前、大丈夫か?」

 

「…何とかな。自我を保てる事態、ある意味奇跡的だよ。それよりも、一気に畳み掛けるぞ!」

 

「あぁ…分かってる!」

 

 

ハジメと雷電は追撃の手をまだ緩めない。ハジメは、“宝物庫”からオルカンを取り出し、瓦礫の山に向かって狙いを定めた。

 

 

 

と、その瞬間……

 

 

「っ、下かっ」

 

 

ハジメが眼下に視線を向け直すと同時に直下の地面が爆発したように弾け飛び、その中から銀翼をはためかせたノイントが飛び出てきた。どうやら、魔法を使って地中に退避し、そのまま強襲を掛けてきたらしい。

 

 

 

おびただしい数の銀羽が掃射され、銀の砲撃が撃ち放たれる。雷電はライトセーバーでハジメを守りながらもおびただしい数の銀羽を弾き、叩き落す。ノイントと交差する一瞬で振り抜かれた双大剣をライトセーバーで受け流しつつ僅かな剣撃の隙間を側宙するように通りぬけた。そして、通り過ぎるノイントに向かってハジメは、オルカンに搭載されているミサイルを発射する。

 

 

 

オルカンの威力を知らないノイントは危険だと判断し、銀の光を弾きながら高速飛行し、追尾してくるミサイルから距離をとる。そして背後に向けて銀羽を飛ばして迎撃しつつ、作り出した魔法陣から怒涛の魔法攻撃をハジメに向けて放った。

 

 

 

夜天に撃墜されたミサイル群の爆炎が無数に咲き誇っているのを尻目に、ハジメは、オルカンをしまうと、再びドンナー・シュラークを抜いた。そして、急迫する魔法の核を撃ち抜き、ノイント同様に全て迎撃する。

 

 

壮絶な空中戦の合間に訪れた僅かな静寂。空中でノイントとハジメが対峙する。

 

 

「なぁ、ちょっと聞きたいんだが俺に構っていていいのか?」

 

「……何のことです?」

 

 

教会関係者が地上で起きている魔人族による王都侵攻を知らないわけがない。問答無用に襲われていたので聞く暇もなかったのだが、一時の間が出来た上に、ノイントが会話に乗ってきたので、ハジメは、ちょうどいいと話を続ける。

 

 

「下で起きていることだ。このままじゃ王国は滅びるぞ? 次は当然、この“神山”だ。俺なんかに構ってないで、魔人族達と戦った方がいいんじゃないのか?」

 

「もしこの国が滅びればこの国の責任ではなく、お前達の神エヒトの信仰が大きく減るという事になる。ハジメの言う通り、俺達よりも人間達を守る為に魔人族達と戦う方がいいと思うが?」

 

 

言い直されたハジメのもっともな質問と便乗してきた雷電の意見に、しかし、ノイントはくだらない事を聞かれたとでも言うような素振りで鼻を鳴らす。

 

 

「そうなったのなら、それがこの時代の結末という事になるのでしょう」

 

「結末ねぇ。……やっぱり、エヒト様とやらにとって“人”は所詮“人”でしかなく、暇つぶしの駒でしかないということか。……この時代は、たまたま人間族側についてみただけってわけだ?この分じゃ、魔人族側の神とやらもエヒト本人か、あるいは配下ってところか」

 

「……だったら何だというのです?」

 

「いや、“解放者”達から聞かされた話の信憑性を一応、確かめてみようかと思ってな?ほら、俺達にとっちゃあ、どっちも唯の不審者だし」

 

「確かに、もし神エヒトが実在するなら堂々と出てきてもいい筈なのだが、出て来ないという事は小心者と見てもいいだろう」

 

 

主を不審者、小心者呼ばわりされたせいか眉がピクリと反応するノイント。しかし、ハジメは気にした風もなくにこやかに告げる。

 

 

「なぁ、俺が邪魔なら元の世界に帰してくれてもいいんじゃないか?あと、勇者達も、王国が滅びたら大して機能しなかった残念な駒として終わるわけだし、ついでにさ?」

 

「却下です、イレギュラー」

 

「理由を聞いても?」

 

「主がそれをお望みだからです。イレギュラー、主はあなたの死をお望みです。あらゆる困難を撥ね退け、巨大な力と心強い仲間を手に入れて……そして、目標半ばで潰える。主は、あなたのそういう死をお望みなのです。ですから、なるべく苦しんで、嘆いて、後悔と絶望を味わいながら果てて下さい。あなたが主に対して出来る最大の楽しませ方はそれだけです。ああ、それと勇者達は……中々面白い趣向を凝らしているとのことで、主は大変興味を持たれております。故に、まだまだ主を楽しませる駒として踊って頂きます」

 

 

ハジメは、概ね予想通りの回答だったので特に気にした風もなく肩を竦めると、かつて聞いたミレディ・ライセンの言葉に、内心で深く同意した。すなわち、“確かに、クソ野郎共だ”と。

 

 

 

しかし、自分の事はともかく、最後の言葉はハジメとしても気になるところだ。

 

 

「……面白い趣向?」

 

「これから死ぬあなたにとって知る必要のないことです」

 

 

話は終わりだと、ノイントは、無数の魔法と銀羽を放ち戦闘再開を行動で示す。

 

 

 

もっとも、先程までとは威力も桁も別次元だった。銀羽の一枚一枚がレールガンに迫ろうかという威力を持ち、放たれる魔法は全て限りなく最上級に近いレベルである。よく見れば、ノイントの体全体が銀色の魔力で覆われており、感じる威圧感が跳ね上がっていた。まるで、ハジメや光輝が使う“限界突破”のような姿だ。

 

 

「「ッ!」」

 

 

その圧倒的な物量からなる怒涛の攻撃に息を呑みながら、ハジメは右手にメツェライを、左手にシュラーゲンを持って応戦し、そして雷電はライトセーバーで銀羽を弾きながらもハジメのカバーに入る。メツェライが咆哮を上げ、毎分一万二千発の破壊を撒き散らして銀羽と魔法を相殺し、シュラーゲンが射線上の全てを打ち砕いて直進しノイントを狙う。

 

 

 

しかし、銀光を纏うノイントの動きもまた、先程までとは比べ物にならなかった。シュラーゲンの紅い砲撃が確かにノイントを撃ち抜いたと思われた瞬間、彼女の姿は霞のように消え去り、数メートルも離れた場所に現れたのだ。

 

 

 

自らが放つ弾幕を追い越す勢いで進撃するノイントの姿は、余りの速度に残像が発生し、常にその姿を二重三重にブレさせる。

 

 

 

ハジメが“先読”で配置したクロスビットから炸裂スラッグ弾を放つが、やはり撃ち抜くのは残像のみ。フッと姿を消したノイントは、次の瞬間にはズザザザザーと残像を引き連れてハジメの背後に回り込んでいた。そして、独楽のようにクルクルと物凄い勢いで回転しながら遠心力をたっぷり乗せた双大剣を振るった。

 

 

「ッ!?」

 

 

ノイントの最後の動きは、ハジメの〝瞬光〟状態での知覚能力をも上回り、完全な不意打ちとなった。辛うじて身を仰け反らせ直撃を避けたものの、咄嗟に盾にしたシュラーゲンを真っ二つに両断されてしまう。内蔵されたエネルギーが暴発し、ハジメとノイントの間で大爆発が起こった。

 

 

 

それが、ほんの一瞬ではあるがノイントの追撃を遅らせる。ハジメが反撃に出るための時間としてはそれで十分だった。ハジメの全身から紅色の魔力が噴き上がり体を覆っていく。“限界突破”だ。雷電もライトセーバーを分割させ、ノイントと同じく二刀流でハジメと共にノイントを迎え撃つ。

 

 

 

踏み込んできたノイントに対して、ハジメ達もまた一歩を踏み込む。ハジメの手には既にメツェライはなく、代わりにドンナー・シュラークが握られていた。そこからは超接近戦だ。

 

 

「つぁああッ!!」

 

「ウォオオッ!!」

 

「はぁああッ!!」

 

 

一之大剣による唐竹の斬撃を半身になってかわしたハジメに、絶妙なタイミングで弐之大剣が胴を狙って横薙ぎに振るわれる。

 

 

 

雷電は、右手に持つライトセーバーで横薙ぎしてくる大剣を受け止め、ハジメはドンナーとシュラークでノイントの心臓を狙った。撃ち放たれた紅の閃光を、残像を残しながら回転することでかわしたノイントは、その勢いのまま一之大剣を下方より跳ね上げる。

 

 

 

ハジメはシュラークに“金剛”の“集中強化”を大剣の刃が当たるほんの僅かな場所に通常時の数倍の密度でかけて分解に対抗し、大剣の勢いに逆らわずシュラークを跳ね上げて、その軌道だけを逸らした。

 

 

 

そして、水平に切り込んできた弐之大剣は雷電のライトセーバーによって止められ、そしてノイントの持つ弐之大剣を弾き飛ばした。

 

 

 

互いに至近距離で、相手の武器をかわし、逸らし、弾きながら致命の一撃を与えんと呼吸も忘れて攻撃を繰り出し続ける。

 

 

「「おぉおおおおおおおっ!!!」」

 

「はぁあああああああっ!!!」

 

 

ハジメと雷電、ノイントは何時しか互いに雄叫びを上げていた。

 

 

筋一本、神経一筋、扱いを間違えただけで、次の瞬間には死が確定する。互いの攻撃を判断する時間などあるわけもなく、ただ本能と経験だけを頼りに神速の剣撃と銃撃が互いの命を僅かでも削り取ろうと飛び交った。

 

 

 

銀色の剣線が夜の闇に幾条もの軌跡を残し、紅の閃光が血飛沫のように四方八方へと飛び散ち、青色の剣線が銀色の剣線と何度も交差する。銀と紅と青に輝く三人を太陽に例えるなら、三人が放つ攻撃の嵐はさながらフレアだろう。一秒、一手を掻い潜り互いが生き残る度に、際限なく速度は上がっていく。

 

 

 

比例して、僅かにヒットする攻撃が互いを血染めに変えていった。ハジメと雷電はいたるところを浅く切り裂かれ、ノイントは抉るように穿たれた箇所から血を滴らせる。

 

 

 

ハジメと雷電、ノイントの技量は互角。このまま、永遠に続くかと思われた攻防だが、実際に追い詰められているのはハジメの方だった。いや、正確に言うなら、追い詰められる事になるのは、だ。

 

 

 

それはハジメも理解していた。なぜなら、ノイントの魔力が開戦してから全く消費されていないからだ。

 

 

 

言うまでもなく、ハジメの“限界突破”は制限時間付きだ。それを過ぎれば強制的に解除され、しばらくの間弱体化を余儀なくされる。ハジメの魔力が膨大であるとは言え、いつまでも発動し続けられる訳ではないのだ。

 

 

 

それに対してノイントの場合、どうやら何処からか魔力の供給を常に受けているようで実質無制限に強化状態を維持できるらしい。ハジメの魔眼石は、やたらと強く輝き、全く衰える様子のない魔石に似た何かがノイントの心臓部分にあるのを捉えていた。

 

 

ハジメは、このままではジリ貧だと勝負をかける決断をしたその時……

 

 

「待たせたな!俺も混ぜさせろぉ!!」

 

「「「っ!?」」」

 

 

突如とアシュ=レイがハジメ達とノイントの攻防戦に介入し、バスターソードでノイントに斬り掛かる。ノイントは介入してきたアシュ=レイに反応が送れて回避が間に合わず咄嗟に大剣で防御するが、それを逆手にアシュ=レイは、バスターソードをノイントに投げつける。

 

 

 

「血迷いましたかっ」

 

 

 

ノイントの無機質な瞳が、僅かに見開かれる。その瞳には、アシュ=レイの正気を疑う色が宿っていた。ノイントは投げてきたバスターソードを上空へと弾き飛ばす。しかし、それがアシュ=レイの狙いだったのだ。

 

 

「だからお前等は甘いんだよ!!」

 

「っ!?」

 

 

弾かれたバスターソードをフォースで操り、そのままバスターソードをノイントに向けて飛ばす。不意をつかれたノイントは咄嗟に回避しようとするも、完全に躱す事は出来ず僅かに掠り傷が出来てしまう。

 

 

「この程度の傷……どうという事は「いや、違うな」……?」

 

 

ノイントはアシュ=レイの言葉を理解できなかった。アシュ=レイはそんな事を気にせずに言葉を続ける。

 

 

「お前は俺の剣に傷つけられた時点で、既に敗北してるんだよ」

 

「敗北…?何を馬鹿な……」

 

「分からねえのか?今、お前自身に何が起こっているのかをよ」

 

「私自身に?一体何を……!?」

 

 

すると、ノイントにある異変が起こる。彼女の身体から謎の怠さと目眩が襲いかかる。何故この様な状態異常が起きたのか理解が出来なかった。

 

 

「ぐっ!?イレギュラー……私に何をした」

 

()()させたんだよ、お前の血液の四割をな」

 

「消滅……!?」

 

 

掠めただけで己の血液を消滅させるなど不可能だとノイントは考えるが、アシュ=レイの消滅魔法に掛かれば雑作もないとアシュ=レイは答える。その時にノイントは、アシュ=レイと戦っていた筈のルイントの姿が見えない事に疑問を覚える。

 

 

「……ルイントはどうしたのです?」

 

「確かに……アシュ=レイ、もう一人の使徒はどうした?」

 

 

雷電もルイントの存在を思い出し、アシュ=レイに問い出す。するとアシュ=レイからあっけからんに答えた。

 

 

「彼奴か……もう居ねえよ。肉体はあっても、魂だけは()()()()()からな」

 

「……!」

 

 

魂の消滅。それは死よりも生温いものだった。魂の消滅は、二度と転生する事が出来ない神の所業であるのにも関わらず、それをアシュ=レイはやってのけたのだ。更に、ルイントが倒されたことを裏付ける決定的な武器をアシュ=レイは持っていた。それは、ルイントが持っていたライトセーバー擬きだった。

 

 

「こいつには見覚えがあるだろ?あのルイントとか言う奴が持っていた剣だ。彼奴は能力と魔法に頼った戦い方だった分、剣術はお粗末だったけどな?」

 

「……っ、おのれ…イレギュラー達め……!」

 

「どの道、俺が介入した時点でお前の敗北は決定したんだけどな。そんで、どんな気分だ?たかが

イレギュラー、それも人間に下剋上された気分はよ?今にも地に落されそうな神の使徒さんよ」

 

「……っ!貴様ぁ!!」

 

 

ノイントは貧血状態でありながらもアシュ=レイに接近し、大剣を振り下ろそうとするが……

 

 

「馬鹿が……」

 

「っ!?」

 

 

それよりも先にアシュ=レイのバスターソードがノイントの胴体に突き刺さった瞬間、ノイントの視界が暗転する。ノイント自身、理解できていなかった。アシュ=レイのバスターソードに付与されている消滅魔法によって魂が消滅されたことを。ノイントは、自分に何が起こったのか理解できないまま、ノイントの魂はこの世から消滅したのだ。

 

 

 

魂という入れ物がなくなった肉体は、糸が切れた操り人形の様にそのまま自然落下していく。しかし雷電はフォースを使い、死したノイントの肉体を優しく地面へと降ろした。

 

 

 

その後に雷電達は地上に降り、ノイントの様子を確認した。ノイントの眼は、最早死んだ肉体の様に眼のハイライトが消えていた。

 

 

「―――」

 

「………」

 

 

後に残ったのは、アシュ=レイによって魂を消滅させられ、肉体という抜け殻を残したノイントの姿。バスターソードによって付けられた傷口を雷電は、再生魔法で傷口を治す。ただし、魂だけは再生することは敵わない。雷電なりの慈悲なのか、傷がなくなったノイントの姿は人間味を感じさせない。空気に溶け込むように霧散していく銀翼の中から覗く瞳は相変わらず機械的な冷たさをたたえたままだった。

 

 

 

ただ、それでも、どことなく恨めしそうな雰囲気が混じっているように思えたのはハジメの気のせいか……

 

 

 

そんなノイントの瞼を雷電が閉ざし、そのまま安らかに眠らせるのだった。

 

 

 

ノイントとルイントを無事に倒せた雷電達は、ティオ達と合流しようと行動に移そうとしたその瞬間……

 

 

 

ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

 

 

“神山”全体を激震させるような爆発音が轟いた。今度は何事かと振り返ったハジメ達の目に映った光景は……巨大なキノコ雲と轟音を立てながら崩壊していく大聖堂を含む聖教教会そのものだった。

 

 

「「「……うそん」」」

 

 

 

思わず漏れたハジメ達の呟きが、やけに明瞭に木霊した。昔、テレビの戦争系ドキュメンタリーでこんな光景見たなぁと思いながら呆然としていると、突然、念話が届いた。

 

 

“ご、ご主人様よ……そっちはどうじゃ?”

 

“お? おぉ、ティオか。いや、こっちはちょうど終わったところなんだが……”

 

“ふむ、それは重畳。流石ご主人様じゃ。ちょうどこちらも終わったところなんじゃが、合流できるかの?”

 

“いや、それが何かすごいことに……”

 

“……その原因はわかっておる。というより、妾達のせいじゃし……”

 

“……何だって?”

 

“取り敢えず、合流出来るかの?”

 

“はぁ、わかった”

 

 

どうやら聖教教会総本山が根こそぎ崩壊した原因を知っているようなので、一体、何があったと頬を引き攣らせながら、ハジメは雷電達に軽く説明した後にティオとの合流を急ぐ事にした。上空に上がると、直ぐに、黒竜姿のティオがキノコ雲から距離を置いた場所で滞空しているのを発見する。

 

 

 

そしてハジメの目には、その背に乗って“あわわわ”といった感じで狼狽えまくっている愛子の姿も映った。なぜ、ここに愛子が?という疑問は湧いたものの、愛子の性格ならきっと、逃げずにティオに協力でもしたのだろうと当たりを付けるハジメ。それよりも、明らかに愛子の“やってしまった”といった様子の方が気になった。

 

 

「……先生、ティオ。二人共無事みたいだな」

 

「な、南雲君!藤原君!よかった、無事だったんですね。……本当によかった」

 

「こっちは五体満足だが、二人が無事で良かったよ。しかし、一体何があった?こっちからでも教会が爆散された様子が見えたんだが?」

 

“ご主人様。それに雷電殿。うむ、一瞬、死ぬかと思ったが何とか生きておるよ。全く、流石はご主人様の先生殿じゃ。まさか、妾のブレスを聖教教会そのものを崩壊させる程に昇華させるとは。天晴れ見事じゃよ”

 

 

ティオの言葉に、ハジメが目を瞬かせる。そして、愛子に“まさか”という引き攣った表情を向けた。

 

 

「……先生、一体何やったんだ」

 

「あわわわわわ、ち、ちなうんです!こんなつもりでは。ちょっと教会の結界が強くて……ティオさんのブレスの威力を高められればと……結界を破るだけのつもりが……」

 

「その結果が結界諸共教会を爆破してしまった……ということか。何でそうなった?」

 

 

ハジメの登場に、安堵の吐息を漏らす愛子だったが、続くハジメの質問で再びあたふたし始めた。狼狽える愛子に事情を聞くと、どうやらこういう事らしい。雷電も愛子の事情を聞いた後、悟って答えに辿り着いたのだった。

 

 

 

愛子は、ティオに騎乗しながら、イシュタル達がハジメに状態異常の魔法をかけられないように戦うことを決意した。しかし、魔法に関して高い適性は持っていても、碌な魔法陣を持っていない愛子に強力な攻撃魔法を行使することは出来なかった。また、大聖堂そのものが強力な結界を発動させるアーティファクトだったらしく、その結界に守られたイシュタル達には、ティオのブレスさえも届かなかった。

 

 

 

このままでは、イシュタル達は安全地帯から悠々と魔法を行使できてしまう。何とか結界を突破できるだけの火力を得ることは出来ないだろうかと、神殿騎士達からの攻撃を凌ぎながら考えて、愛子が思いついたのは……自分の特技を生かす事だった。ちなみに、愛子の特技とは以下にある通り……

 

 

 

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畑山愛子 25歳 女 レベル:56

天職:作農師

筋力:190

体力:380

耐性:190

敏捷:310

魔力:820

魔耐:280

技能:土壌管理・土壌回復[+自動回復]・範囲耕作[+範囲拡大][+異物転換]・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作[+急速発酵][+範囲発酵][+遠隔発酵]・範囲温度調整[+最適化][+結界付与]・農場結界・豊穣天雨・言語理解

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この内、使ったのは発酵操作らしい。“神山”と言えど、人が暮らす場所であるから発酵できるものは大量にある。それから、地球で言うところのメタン発酵というものを行ったようだ。勿論、正確には別の異世界物質だが、可燃性ガスであることに変わりはない。

 

 

 

それをとにかくひたすら教会周辺で行いまくったようだ。攻撃魔法ではなく、ただの発酵なので教会の結界も反応せず空気と同じように結界の内外に溜まり続けた。風に吹かれて霧散しないようにティオが風を操って一定範囲に留めることまでした。

 

 

 

そして、これくらい可燃性ガスが溜まっていれば、ティオのブレスと相まって教会の結界を破壊できるだろうと、いざ、ブレスを放ってみれば……

 

 

「……こうなったと」

 

“うむ。妾達も盛大に吹き飛ばされてなぁ、久しぶりに死を感じたのじゃ。結界を破壊するどころか、教会そのものを崩壊させる程とは……このような方法、妾の長い生のうちでも思いつかんかった。流石、ご主人様の先生殿じゃ。感服じゃよ”

 

「ちなうんです!そうじゃないんです!こんなに爆発するなんて思ってなくて!ただ、半端はいけないと思って!ホントなんです!はっ!?教会の皆さんはっ!?どうなりました!?」

 

 

愛子が、涙目でオロオロしながら弁解し、廃墟と化した教会に視線を彷徨わせる。ハジメ達も一緒に瓦礫の山々に視線を向けるが……

 

 

「……まぁ、まとめて吹き飛んだんだろうなぁ」

 

「教会に留まって防衛していたと考えると、全員死亡たと考えるのが妥当だろう。例え生き残っていたとしても、四枝がバラバラの状態だろうな」

 

“教会の結界を過信している感じじゃったしのぉ。完全な不意打ちでもあったのじゃし、無防備なところにあの爆発では、助からんじゃろ”

 

「あ、ああ……そんな……いえ、覚悟はしていたのですが……」

 

 

自分の幇助が、教会関係者達をまとめて爆殺してしまった原因である事に顔を青ざめさせる愛子。覚悟を決めて戦いに挑んだつもりだが、いざ、その結果を突きつけられると平常心ではいられない。

 

 

 

思わず、その場で嘔吐してしまう。涙を流しながら吐く愛子に、ハジメは頭をカリカリと掻くと、そっと愛子に寄り添った。そして、吐瀉物で汚れているのも気にせず愛子の手を握る。今の愛子には、とにかく暖かさが必要だと思ったのだ。

 

 

 

愛子は、凍えて砕けてしまいそうな心が握られた手から伝わる暖かさに繋ぎ止められるのを感じた。そして、今だけは生徒と教師という事も忘れて、ハジメの胸に飛び込みギュッと抱きついて嗚咽を漏らした。

 

 

“……妾の背中……”

 

「少しぐらい我慢しな。それにあの愛子という女、恐らくだが、初めて人を殺してしまったことに気持ちの整理が追いついていないんだ。ここはハジメに任せておけばいい」

 

 

ティオが、自分の背中の惨状に少し悲しげな声を出すも、アシュ=レイがそうティオに言い聞かせる。ティオは直ぐに気を取り直して再生魔法を行使する。ティオとしても、愛子には時間を掛けて立ち直ってもらいたいという思いはあるし、そもそもブレスを放ったのは自分であって愛子が必要以上に責任を感じる必要はないのだが、今は、その説明が許されるほど時間に余裕のある状況ではない。なので、再生魔法によって、磨り減った精神を僅かばかりに癒したのだ。

 

 

 

気力が戻ってきた愛子は、ハジメの胸元から顔を上げる。涙と鼻水と吐瀉物で大変なことになっていたが、ハジメは特に気にした風もなく“宝物庫”からタオルや水を取り出すと、汚れた愛子を綺麗にしてやった。愛子は、とんだ醜態を見せた事に動揺して、されるがままである。

 

 

「落ち着いたか? 先生」

 

「は、はい。も、もう大丈夫です。南雲君……」

 

 

ハジメの呼びかけにハッと我に返った愛子は、羞恥やら何やらで顔を真っ赤に染め上げた。心なし、ハジメの名を呼ぶ声に熱が篭っている。上目遣いにチラチラとハジメを窺う瞳も熱っぽくうるうると潤んでいた。どう見ても、ただの羞恥心だけから来るものではなく、特別な感情が窺える表情だ。

 

 

 

愛子は教師であるという認識が先に来て“女”として見ていなかったハジメだったが、流石に、そんな表情を見せられては“あれ?なんかこれ違くない?もしかして、そういうこと?”と愛子の感情を察して、頬を引き攣らせた。そんな様子を見ていた雷電は“またか……”と自然にハーレムを作ってしまうハジメに呆れる他になかった。

 

 

 

何だか色々ヤバイ気がすると、咄嗟に目を逸らしたハジメに、ティオから警戒心の含まれた声が届く。

 

 

“ご主人様、雷電殿。人がおる。明らかに、普通ではないようじゃが……”

 

「何だって?」

 

「人…?生存者か?」

 

 

まさか、あの爆発で生き残った者がいるのかと驚きながら、ハジメと雷電がティオの視線を追うと、そこには確かに、白い法衣のようなものを着た禿頭の男がおり、ハジメ達を真っ直ぐに見つめていた。しかし、ティオの言う通り、普通の人間では有り得ない。なぜなら、その体が透けてゆらゆらと揺らいでいたからだ。

 

 

 

禿頭の男は、ハジメ達が自分を認識したことに察したのか、そのまま無言で踵を返すと、歩いている素振りも重力を感じている様子もなくスーと滑るように動いて瓦礫の山の向こう側へと移動した。そして、姿が見えなくなる直前で振り返り、ハジメ達に視線を向ける。

 

 

「……ついて来いってことか?」

 

“じゃろうな。どうするのじゃ、ご主人様よ”

 

「……そうだな、さっさとユエ達と合流はしたいところだが……元々、ここには神代魔法目当てで来たんだ。もしかしたら、何か関係があるのかもしれない。手がかりを逃すわけにはいかないな」

 

“ふむ。そうじゃの。では、追うとしよう”

 

 

ハジメの言葉に、ティオは一つ頷くと、翼をはためかせ瓦礫の山の上に降り立ち、ハジメと愛子を降ろしてから竜化を解いた。そして、背中の汚れに気がついて、少し眉を下げると“宝物庫”から代わりの服を取り出した。ハジメも、それで自分の状態に気がついたのか、“宝物庫”から服を取り出し、素早く着替えを済ませる。

 

 

「あぅ、す、すみません……汚してしまって……」

 

 

その原因である、愛子が、羞恥と申し訳なさで小さな体を更に小さくして謝罪する。女として、自分の吐瀉物で他人の服を汚すなど恥ずかしくて堪らないのだろう。

 

 

 

ハジメもティオも、仕方ない事だと分かっていたので、気にするなと声を掛けるが、そう簡単に割り切れるものでもない。なにせ、先程のやり取りで、愛子自身自分の気持ちを認めつつあり、それ故に、特にハジメに対しては色々と思う所があるのだ。

 

 

 

しかし、いつまでも縮こまっていられても困るので、ハジメはさっさと話題を転換する。

 

 

「先生、悪いが付いてきてくれ。何が起こるか分からないが……あのハゲが何者か、確かめないわけにもいかないんだ」

 

「は、はい。わかりました。……南雲君達に付いていきます……」

 

 

最後の付いて行くという言葉に妙な力と熱が篭っていたような気がするハジメだったが、敢えて気がつかない振りをして、禿頭の男が消えていった場所に歩を進めた。

 

 

 

禿頭の男は、その後も、時折姿を見せてはハジメ達を誘導するように瓦礫の合間を進んでいく。そして、五分ほど歩いた先で、遂に目的地についたようで、真っ直ぐハジメ達を見つめながら静かに佇んでいた。

 

 

「あんた、何者なんだ?俺達をどうしたい?」

 

「……」

 

 

禿頭の男は、ハジメの質問には答えず、ただ黙って指を差す。その場所は何の変哲も無い唯の瓦礫の山だったが、男の眼差しは進めと言っているようだ。問答をしても埓があかないと判断したハジメは、ティオ達と頷き合うとその瓦礫の場所へ踏み込んだ。すると、その瞬間、瓦礫がふわりと浮き上がり、その下の地面が淡く輝きだした。見れば、そこには大迷宮の紋章の一つが描かれていた。

 

 

「……あんたは……解放者か?」

 

 

ハジメが質問したのと、地面が発する淡い輝きがハジメ達を包み込んだのは同時だった。

 

 

 

そして、次の瞬間には、ハジメ達は全く見知らぬ空間に立っていた。それほど大きくはない。光沢のある黒塗りの部屋で、中央に魔法陣が描かれており、その傍には台座があって古びた本が置かれている。どうやら、いきなり大迷宮の深部に到達してしまったらしい。

 

 

 

ハジメ達は、魔法陣の傍に歩み寄った。ハジメは、何が何やらと頭上に大量の“?”を浮かべている愛子の手を引いて、ティオと頷き合うと精緻にして芸術的な魔法陣へと踏み込んだ。

 

 

 

と、いつも通り記憶を精査されるのかと思ったら、もっと深い部分に何かが入り込んでくる感覚がして、思わず三人とも呻き声を上げる。あまりに不快な感覚に、一瞬、罠かと疑うも、次の瞬間にはあっさり霧散してしまった。そして、攻略者と認められたのか、頭の中に直接、魔法の知識が刻み込まれる。

 

 

「……魂魄魔法?」

 

「う~む。どうやら、魂に干渉できる魔法のようじゃな……」

 

「なるほどな。ミレディの奴が、ゴーレムに魂を定着させて生きながらえていた原因はこれか……」

 

「その様だな。アシュ=レイ、こっちから聞かなかったが、さっきのは解放者の一人か?」

 

「あぁ、彼奴の名は“ラウス・バーン”。神代魔法の一つ"魂魄魔法"の担い手だ。昔は聖光教会が誇る実質的な対外戦の最強の騎士団・白光騎士団の団長だそうだ」

 

 

いきなり頭に知識を刻み込まれるという経験に、頭を抱えて蹲る愛子を尻目に、ハジメは納得顔で頷くと、脇の台座に歩み寄り、安置された本を手にとった。

 

 

 

どうやら、中身は大迷宮“神山”の創設者であるラウス・バーンという人物が書いた手記のようだ。オスカー・オルクスが持っていたものと同じで、解放者達との交流や、この“神山”で果てるまでのことが色々書かれていた。

 

 

 

しかし、ハジメには興味のないことなので、さくっと読み飛ばす。ラウス・バーンの人生などどうでもいいのである。彼が、なぜ映像体としてだけ自分を残し、魂魄魔法でミレディのように生きながらえなかったのかも、懺悔混じりの言葉で理由が説明されていたが、スルーである。

 

 

 

そして、最後の辺りで、迷宮の攻略条件が記載されていたのだが、それによれば、先程の禿頭の男ラウス・バーンの映像体が案内に現れた時点で、ほぼ攻略は認められていたらしい。

 

 

 

というのも、あの映像体は、最低、二つ以上の大迷宮攻略の証を所持している事と、神に対して信仰心を持っていない事、あるいは神の力が作用している何らかの影響に打ち勝った事、という条件を満たす者の前にしか現れないからだ。つまり、“神山”のコンセプトは、神に靡かない確固たる意志を有すること、のようだ。

 

 

 

おそらくだが、本来、正規のルートで攻略に挑んだのなら、その意志を確かめるようなあれこれがあったのではないだろうか。愛子も攻略を認められたのは、長く教会関係者から教えを受けておきながら、そんな信仰心より生徒を想う気持ちを揺るがせなかったから、あるいは教会の打倒に十分手を貸したと判断されたからだろう。

 

 

 

この世界の人々には実に厳しい条件だが、ハジメ達には軽い条件だった。

 

 

 

ようやく、神代魔法を手に入れた衝撃から立ち直った愛子を促して、台座に本と共に置かれていた証の指輪を取ると、ハジメ達は、さっさとその場を後にした。再び、ラウス・バーンの紋章が輝いて元の場所に戻る。

 

 

「先生、大丈夫か?」

 

「うぅ、はい。何とか……それにしても、すごい魔法ですね……確かに、こんなすごい魔法があるなら、日本に帰ることの出来る魔法だってあるかもしれませんね」

 

「全ての神代魔法を集めればですけどね?」

 

 

愛子が、こめかみをグリグリしながら納得したように頷く。その表情は、ここ数日の展開の激しさに疲弊しきったように疲れたものだったが、帰還の可能性を実感できたのか少し緩んでいる。その時に雷電はアシュ=レイにあることを聞き出す。

 

 

「……それはそうとアシュ=レイ、お前、神代魔法を持っていることを何で話さなかった?」

 

「あー、悪い。メルジーネ海底遺跡でお前達に起こされた時にすっかり伝えるの忘れてたぜ。それによ、俺の神代魔法である“消滅魔法”は、解放者にとっても、エヒトの連中にとっても、予想外の魔法だったそうだ。しかも、誰かに消滅魔法を教えたとしても、それを扱いきれず最終的に自分自身を消滅してしまうという危険性を持ったヤベぇ魔法だ」

 

「それは分かった。しかし、何でお前がそんな危険な神代魔法を得たんだ?」

 

 

雷電はアシュ=レイが消滅魔法を得た経緯を聞き出そうとしたが、アシュ=レイは珍しく問いに答えるのを拒否した。

 

 

「悪い、幾ら腐れ縁のお前でも話すことは出来ねぇ。だが、強いていうのなら、大切な何かを失ったその時に消滅魔法が発現したとしか言えねぇ」

 

「アシュ=レイ……」

 

 

これ以上聞き出すのは野暮であると判断した雷電は、あまり聞き出すことはしなかった。そしてハジメも、ユエ達を合流しようと意見する。

 

 

「それじゃ、魔法陣の場所もわかったことだし、早くユエ達と合流しよう」

 

「あっ、そうです!王都が襲われているんですよね?みんな、無事でいてくれれば……」

 

 

心配そうな表情で祈るように胸元をギュと握り締める愛子を促して、ハジメ達は、下山を開始した。といっても、“神山”から王都へ降りるためのリフトがある場所から飛び降りるだけだが。

 

 

 

強制フリーフォールを体験することになった愛子の悲鳴が木霊するものの、ハジメもティオもスルーだ。ぐったりした愛子を肩に担いで地面に降り立ったハジメ達は、あちこちから火の手が上がり悲鳴や怒号が響き渡る王都を尻目に愛子を送り届けるため、まず香織達がいる場所に向かう。

 

 

 

そして、合流した先で見たものは……

 

 

 

ブリッツやARCトルーパー達がシア達に銃口を向けている光景だった。

 

 

ハイリヒ王国編が終わった後、番外編をやろうと思います。ハジメ達や勇者(笑)達を含めて別世界に転移するという設定なのですが、転移する場所はどのような場所が良いでしょうか?

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