ありふれないジェダイとクローン軍団で世界最強   作:コレクトマン

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二月中に何とか投稿できた。……疲れたorz


81話目です


偽善の言葉、覚悟の示し

 

 

雫と清水の救出作戦を終えてから三日が過ぎた。医療ステーションにいる雷電はハジメが作った義手を三日の内に慣らした。態々と思うが、義手にしなくても神代魔法の再生魔法で右腕を再生させればよくないかとハジメに聞かれたことがあった。雷電自身もそれはそれで盲点だったが、右腕の傷は戒めを兼ねてそのままでいいと答えた。再生させるのは全てが終わってからと雷電はそう心に決めていた。

 

 

 

一方の清水の方は体内に蝕んでた薬物の排出が完了し、香織の回復魔法で完全回復を果たす。その時の清水は迷惑をかけてすまないと雷電達に謝罪した。雷電はあまり気にしてはいなかった。ことの発端は清水の頭に埋め込まれてた行動抑制チップが原因であると雷電はエコー達から事前に聞いていた。清水に埋め込まれたチップを摘出するために雷電は、しばらくの間は医療ステーションに待機するように清水に告げる。

 

 

「もう体は大丈夫かもしれないが、万が一という事もある。一度行動抑制チップを摘出してもらったほうが良い」

 

「わかっている。不安要素は確実に排除しておくつもりだ。戦線に戻れるようになったらすぐに駆け付ける」

 

「あぁ。…それともう一つ、彼女(シルヴィ)を一旦ここに連れてくる。お前が向こうに行ったことで精神が若干不安定だ。もう二度と彼女のもとからいなくなるなよ?」

 

「……肝に銘じておく」

 

 

そんな形で清水は治療という建前で行動抑制チップ摘出のため一時ハジメたちのパーティーから外れることになった。雷電は内心これでよかったのかと思うこともあるが、それは己自身の自己満足かもしれないとその考えを止めた。その時に雷電を迎えに来た一人の()()()()()がいた。

 

 

「雷電くん。身体の調子はどう?」

 

「あぁ、問題ないよ。ハジメが作った義手のおかげで右腕の不具合さはない。それよりもだ、本当にその体になって後悔はないのか、()()?」

 

「大丈夫だよ。僕も覚悟を改めてハジメに無理を頼んでこの体にしたんだから」

 

 

そう、銀髪の女性の正体は恵理だった。何故彼女が銀髪の女性こと香織と同じエヒトの使徒の体になっているのか?時間は三日前に遡る……

 

 

 

当時の恵理は雷電が最前線で戦い、傷つきながらも戦い抜いていた。しかし、今回の救出作戦で雷電は右腕をエヒトの使徒との戦いによって失い、ハジメと同じように義手をすることになった。この時の恵理は今のままではだめだと思った。雷電ばかりに縋っていてはいずれ雷電が死んでしまうことになる。それが嫌で恵理はハジメに無理言って香織と同じようにしてほしいと頼んだ。ハジメは恵理の頼みを最初は断った。しかし、雷電の右腕を見て万が一という事もあると考え悩んだ結果ハジメの心が折れ、恵理の頼みを了承した。そして、雷電と清水の治療が始まってから一日が経った頃、魂魄魔法でラミエルの体を入れ替えた恵理が雷電用の義手を持って雷電に渡しに来た。この時の雷電は驚きはしたが、香織と同じであると理解したときに雷電はハジメに対して怒りを感じた。しかし、恵理の強い意志での頼みであったためにむげには出来なかった。その為、ハジメに対する怒りは直ぐに消えた。そんなこんなでしばらくの間は恵理に看病されながらも傷も完治して今現在に至る。

 

 

 

ちなみに恵理は香織の体ことノイントの体とラミエルの体を区別するために元の体でも使用していた眼鏡をかけていた。眼鏡はハジメが作ったレンズが入っていない伊達メガネである。更にはラミエルの固有技能であろう“肉体変化”という自身の肉体を変化させるものがあった。恵理はこの技能を使って、前の体と同じ身長と骨格に変異したのだ。恵理の前の体と比べると髪色が違うのとステータスが違う程度だ。現在の恵理のステータスはこうなっている。

 

 

 

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中村恵里 17歳 女 レベル:2

 

天職:降霊術師

 

筋力:1000

 

体力:1000

 

耐性:1000

 

敏捷:1000

 

魔力:1000

 

魔耐:1000

 

技能:黒魔術[+縛魂]闇属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]・高速魔力回復[+瞑想]・再生魔法・言語理解・双大剣術・分解能力・全属性適性・複合魔法・肉体変異

 

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見るだけ見ても最早バグっているとしか他に言葉が見つからなかった。レベルはラミエルの肉体と入れ替えたためか初期化されていたが、高水準のステータスがそれを補っていた。極めつけなのはラミエルの光属性適応を恵理も継承されていたことだ。しかし、恵理も香織と同様に未だ、肉体を掌握しきれていないためか香織のステータスよりも少しだけ低い。強化されたとはいえ、油断はできないと雷電は少し不安気味だった。

 

 

 

そんなこんなで恵理と共にシャトルでトータスに降り、ハジメたちと合流するのだった。

 

 

雷電Side out

 

 

 

雷電が無事に完治したと医療ステーションにいるクローンから通信を聞いてやっとかと安堵するハジメ。雷電が完治するまでの間、ハジメはまったくとは言わないが、少しばかり休めた気がしなかった。魔人族に襲撃されてから五日、清水と雫の救出+雷電と清水の治療から三日を含めて計八日も過ぎたのだ。三日間の間、ハジメはリリアーナの頼みで大結界の修復と街の復興を行った。そんな苦労を抱えながらもハジメは雷電たちが乗るシャトルが着陸するであろう広場に向かうのだった。

 

 

 

八日が過ぎてクラスメイト達は既に体力的に回復したものの、精神的な傷は深く、回復は難しかった。心強いクローン達の裏切り(敵にひそかに埋め込まれた行動抑制チップの影響だが、彼らには裏切りにしか見えなかった)やクラスメイトの死からあまり立ち直れていなかった。何処からか情報が漏れたのか檜山の脱走と失踪。尋問官によって殺された近藤の死に、いつも一緒だった中野や斎藤は引きこもりがちになっている。更には雫が尋問官に連れ去らわれ、主戦力である光輝も尋問官に右腕を切り落とされるなど、これ以上の衝撃はなかった。

 

 

 

現在の光輝はメディカル・オフィサー・クローン達とクローン・エンジニア達が作り上げた最新の義手で失った腕を補っていた。光輝の切り落とされた右腕は魔人族襲撃の際にどこかに消えてしまったため、光輝はあまりクローン達とは好かなかったが止む無しと判断し、苦渋の決断をするのだった。

 

 

 

そんな心身共に深い傷を負った光輝達は、リリアーナ達の王都復興に力を貸しながらも、立ち直るために療養しつつ、あの日から姿を見せないハジメ達の事をチラチラと考えていた。

 

 

 

前線組や愛ちゃん護衛隊のメンバーはハジメと雷電の実力を知っていたつもりだが、それでも光の柱で大軍を殲滅したような圧倒的な力までは知らず、改めて、隔絶した力の差を感じて思うところが多々あった。

 

 

 

光輝達ですらそうなのだから、居残り組にとっては衝撃的な出来事だった。帰還したメンバーからハジメと雷電の生存や実力のことは聞いていたが、実際のハジメの凄まじさは、自分達の理解が万分の一にも達していなかったことを思い知ったのだ。誰も彼も、ハジメの事や、連れて行かれた香織、ハジメの仲間の事が気になって仕方ないのである。

 

 

 

そんな彼らに三日前にハジメ達がやってきて、連れ去られたであろう雫と、死んだであろう香織を連れてきたのだ。しかし、ハジメ達の中に雷電と恵理の姿が見当たらない。ハジメ曰く、雷電は今現在は療養中で、恵理は雷電の看病中とのことだ。

 

 

 

雫が雷電によって助けられたことに光輝は複雑な気持ちになった。香織がハジメに連れ去られたあの日、一度は友としての縁を切り、仲違えになった。しかし、今思い返せばアレは自身が蒔いた失態だ。今更雷電に顔を合わせる資格がないと下向きに考えてしまう。そして、彼自身気づいてはいない……否、気づきたくないのかもしれないが光輝は二度に渡って何も出来ずハジメと雷電に救われたという事実に相当落ち込んでおり、自分とハジメの差や香織を連れて行かれたこと、雷電がハジメの側に付いたこと(光輝の中ではそういう認識)も相まって、ハジメに対してはいい感情も持てていなかった。

 

 

 

それが、いわゆる“嫉妬”であるとは、光輝自身自覚がない。仮に、気が付いたとしても認めることは容易ではないだろう。認めて、その上で前に進めるか、やはりご都合解釈で目を逸らすか……光輝次第である。

 

 

 

それから三日が経ち、いつも通りに療養している中、一隻のシャトルがやってきた。そのシャトルが気になったのか光輝はシャトルのところに向かう。そして着いた先が広場であり、ハジメたちがシャトルが着陸してくるのを待っていた。シャトルが着陸し、シャトルの扉から完治し終えた雷電と雷電の看病に付きっ切りだった恵理がシャトルから降りてくるのであった。

 

 

 

この時に恵理の姿が違うことに少しばかり戸惑ったが、あの姿は前にハジメが香織を蘇生した時にエヒトの使徒の体を使ったのと同じだと見抜いた。そんな光輝の考えを知らずに雷電はハジメにクラスメイト達と愛子先生を集めるように頼んでいた。一体なにをするのか全く見当もつかなかった。

 

 

 

そうしてクラスメイト達と愛子先生が集められた。更にはリリアーナも同席している。何故彼女がここにいるのかは香織から大事な話があるためとのことだ。それは雷電たちが今話そうとしていることと関係があるらしい。ハジメはあまり面倒なことは避けたい様子だったが、どのみち話すのが早まっただけのことだと雷電は言いながらも、雷電は光輝たちに狂神の話とハジメ達の旅の目的を話し、そして、自分が攫われた事や王都侵攻時の総本山での出来事を話し出した。

 

 

 

全てを聞き終わり、真っ先に声を張り上げたのは光輝だった。

 

 

「なんだよ、それ。じゃあ、俺達は、神様の掌の上で踊っていただけだっていうのか?なら、なんでもっと早く教えてくれなかったんだ!オルクスで再会したときに伝えることは出来ただろう!」

 

 

非難するような眼差しと声音に、しかし、ハジメは面倒そうにチラリと光輝を見ただけで何も答えない。無視だった。その様子を見ていた雷電は何かを見定めるように何も言わず、無言のままハジメやクラスメイト達を見ていた。その態度に、光輝がガタッ!と音を立てて席を立ち、ハジメに敵意を漲らせる。

 

 

「何とか言ったらどうなんだ!お前が、もっと早く教えてくれていれば!」

 

「ちょっと、光輝!」

 

 

諌める雫の言葉も聞かず、いきり立つ光輝にハジメは五月蝿そうに眉をしかめると、盛大に溜息をついて面倒くさそうな視線を光輝に向けた。

 

 

「俺がそれを言って、お前、信じたのかよ?」

 

「なんだと?」

 

「どうせ、思い込みとご都合解釈大好きなお前のことだ。大多数の人間が信じている神を“狂っている”と言われた挙句、お前のしていることは無意味だって俺から言われれば、信じないどころか、むしろ、俺を非難したんじゃないか? その光景が目に浮かぶよ」

 

「だ、だけど、何度もきちんと説明してくれれば……」

 

「アホか。なんで俺が、わざわざお前等のために骨を折らなけりゃならないんだよ?まさか、俺がクラスメイトだから、自分達に力を貸すのは当然とか思ってないよな?……あんまふざけたことばっか言ってっと……檜山の二の舞だぞ?」

 

 

永久凍土の如き冷めた眼差しで睥睨するハジメに、クラスメイト達はさっと目を逸らした。

 

 

 

だが、光輝だけは納得できないようで未だ厳しい眼差しをハジメに向けている。ハジメの隣でユエが、二度も救われておいて何だその態度はと言いたげな目を向け、更には雷電の隣で恵理は、嘗て救ってくれた光輝に対してこんなご都合主義な男に助けられたのかと落胆と同時に絶対零度の目線を向けているが光輝は気が付いていない。

 

 

「でも、これから一緒に神と戦うなら……」

 

「待て待て、勇者(笑)。俺がいつ神と戦うといったよ?勝手に決め付けるな。向こうからやって来れば当然殺すが、自分からわざわざ探し出すつもりはないぞ?大迷宮を攻略して、さっさと日本に帰りたいからな」

 

 

その言葉に、光輝は目を大きく見開く。

 

 

「なっ、まさか、この世界の人達がどうなってもいいっていうのか!?神をどうにかしないと、これからも人々が弄ばれるんだぞ!放っておけるのか!」

 

「顔も知らない誰かのために振える力は持ち合わせちゃいないな……」

 

「なんで……なんでだよっ!お前は、俺より強いじゃないか!それだけの力があれば何だって出来るだろ!力があるなら、正しいことのために使うべきじゃないか!」

 

 

光輝が吠える。いつもながら、実に正義感溢れる言葉だ。しかし、そんな“言葉”は、意志なき者なら兎も角、ハジメには届かない。ハジメは、まるで路傍の石を見るような眼差を光輝に向ける。

 

 

 

「……“力があるなら”か。そんなだから、いつもお前は肝心なところで地面に這いつくばることになるんだよ。……俺はな、力はいつだって明確な意志のもと振るわれるべきだと考えてる。力があるから何かを為すんじゃない。何かを為したいから力を求め使うんだ。“力がある”から意志に関係なくやらなきゃならないって言うんなら、それはもうきっと、唯の“呪い”だろう。お前は、その意志ってのが薄弱すぎるんだよ。……っていうか、お前と俺の行く道について議論する気はないんだ。これ以上食って掛かるなら面倒いからマジでぶっ飛ばすぞ」

 

 

ハジメはそれだけ言うと、光輝達に興味がないということを示すように視線を戻してしまった。

 

 

 

その態度からハジメが本気で自分達や世界に対して、嫌悪も恨みもなく唯ひたすら興味がないということを理解させられた光輝。また、自分の敗北原因について言及され激しく動揺してしまい口をつぐむ。自分には強い意志がある!と反論したかったが、何故か言葉が出なかったのだ。

 

 

 

他のクラスメイト達も、何となく、ハジメが戻ってきて自分達とまた一緒に行動するのだと思っていたことが幻想だったと思い知り、そして、下手な事をすれば雷電が檜山を投獄したように同じく投獄されるかもしれないと震え上がった。そしてなにより、今のハジメは例え相手がクラスメイトであろうと殺すことが出来ると断言できる。更に言えば、嘗て光輝と決闘で一方的に打ち負かし、殺そうとした雷電も、怒りに触れるようなことをすれば殺されるのもわけもない。

 

 

 

なにせ、訳ありで操られていたとは言え、雷電が召喚したクローン達を含めて顔見知りもいた騎士達を何の躊躇いもなく肉塊に変えてしまった相手なのだ。居残り組に関しては、ハジメが奈落に落ちる前のこともあり視線すら向けられないでいた。

 

 

「……やはり、残ってはもらえないのでしょうか? せめて、王都の防衛体制が整うまで滞在して欲しいのですが……」

 

 

そう願い出たのはリリアーナだ。

 

 

 

未だ、混乱の中にある王都において、大規模転移用魔法陣は撤去したものの、いつ魔人族の軍が攻めてくるかわからない状況ではハジメ達の存在はどうしても手放したくなかったのだ。相手の総大将らしきフリードは、ハジメがいるから撤退した。ハジメ達は、そこにいるだけで既に抑止力になっているのである。

 

 

「神の使徒と本格的に事を構えた以上、先を急ぎたいんだ。香織の蘇生に五日もかかったしな。それとアンタの頼みで大結界や街の復興に協力もした。これ以上は欲深いんじゃねえか?明日には出発する予定だ」

 

 

リリアーナは肩を落とすが、ハジメ達が出て行ったあと、フリード達が取って返さない保証はないので王女として食い下がる。

 

 

「そこを何とか……せめて、あの光の柱……あれも南雲さんのアーティファクトですよね? あれを目に見える形で王都の守護に回せませんか?……お礼はできる限りのことをしますので」

 

「……ああ“ヒュベリオン”な。無理だ。あれ、最初の一撃でぶっ壊れたし……試作品だったからなぁ。改良しねぇと」

 

 

ハジメが、魔人族の大軍を消し飛ばした対大軍用殲滅兵器“ヒュベリオン”は、簡単に言えば太陽光収束レーザーである。【神山】を降りる前に上空へ飛ばしておいたものだ。

 

 

 

“ヒュベリオン”は、巨大な機体の中で太陽光をレンズで収束し、その熱量を設置された“宝物庫”にチャージすることが出来る。そして、臨界状態の“宝物庫”から溢れ出た莫大な熱量を重力魔法が付加された発射口を通して再び収束し地上に向けて発射するのだ。

 

 

 

そして、この“ヒュベリオン”最大の特徴は、夜でも太陽光を収束できる点にある。その秘密は、オスカー・オルクスの部屋を照らしていたあの擬似太陽だ。あれは、太陽光を空間魔法と再生魔法、それにハジメの把握しきれていない神代魔法の力が加わって作り出された〝解放者〟達の合作だったのだ。

 

 

 

今のハジメでは、擬似的とはいえ太陽の創造など到底できない。そして“ヒュベリオン”は試作段階だったせいもあり、その自身の熱量に耐えられずに壊れてしまったので、もうあの一撃は撃てないのである。もっとも、ハジメが作り出した大軍用殲滅兵器は“ヒュベリオン”だけではないのだが……

 

 

「そう……ですか……」

 

 

ハジメの言葉に、再びガクリと肩を落とすリリアーナ。そこで雷電、香織、愛子の視線がハジメに突き刺さる。三人ともハジメのスタンスを理解している。ハジメが、いくら多少周囲を慮るようになったとはいえ、基本的に、この世界のことに無関心であることに変わりはない。周囲にも手を伸ばすのは、そうすることでユエ達が間接的にでも悲しまないようにするためだ。だから、三人とも言葉にはしない。しないが、その眼差しは雄弁に物語っている。

 

 

 

ハジメは、用意された茶を飲みながら無視していたが、余りにしつこいのでボソリと呟くように告げた。

 

 

「……出発前に、雷電が何とかしてくれる。それでいいか、雷電?」

 

 

ハジメの言葉に雷電は頷く。そしてハジメと交代するように雷電が口を開く。

 

 

「リリアーナ王女、自分の技能であるクローン軍団召喚なら失った兵力の補充と兵器の配置、軍備増強が可能です。ハジメが作ったアーティファクトほどの抑止力はありませんが、それでもある程度の抑止力になります」

 

「…本当ですか!南雲さん!藤原さん!有難うございます!」

 

 

パァ!と表情を輝かせたリリアーナを無視して、これでいいだろ?と香織達に視線をやるハジメ。三人ともリリアーナと同じく嬉しそうな笑顔をハジメに返した。

 

 

 

何だか、ほんとに甘くなったなぁと思いつつも、隣にいるユエやシアまでハジメに微笑み掛けてくるので、「まぁ、悪くないか」と肩を竦めて、ハジメは苦笑いを零した。

 

 

「それで、南雲君達はどこへ向かうの? 神代魔法を求めているなら大迷宮を目指すのよね? 西から帰って来たなら……樹海かしら?」

 

「ああ、そのつもりだ。フューレン経由で向かうつもりだったが、一端南下するのも面倒いからこのまま東に向かおうと思ってる」

 

 

ハジメの予定を聞いて、リリアーナが何か思いついたような表情をする。

 

 

「では、帝国領を通るのですか?」

 

「そうなるな……」

 

「でしたら、私もついて行って宜しいでしょうか?」

 

「ん? なんでだ?」

 

「今回の王都侵攻で帝国とも話し合わねばならない事が山ほどあります。既に使者と大使の方が帝国に向かわれましたが、会談は早ければ早いほうがいい。南雲さんの移動用アーティファクトがあれば帝国まですぐでしょう?それなら、直接私が乗り込んで向こうで話し合ってしまおうと思いまして」

 

 

何とも大胆というかフットワークの軽いリリアーナの提案にハジメは驚くものの、よく考えれば助けを求めるために単身王城から飛び出し隊商に紛れて王都を脱出するようなお姫様なのだ。当然の発想と言えば当然かと、妙に納得する。

 

 

 

そして、通り道に降ろしていくだけなら手間にもならないので、それくらいいいかと了承の意を伝えた。ただし、釘を刺すのは忘れない。

 

 

「送るのはいいが、帝都には入らないぞ? 皇帝との会談なんて絶対付き添わないからな?」

 

「ふふ、そこまで図々しいこと言いませんよ。送って下さるだけで十分です」

 

 

用心深い発言に、思わず苦笑いを浮かべるリリアーナだったが、そこへハジメに黙らされた光輝が再び発言する。

 

 

「だったら、俺達もついて行くぞ。この世界の事をどうでもいいなんていう奴にリリィは任せられない。道中の護衛は俺達がする。それに、南雲が何もしないなら、俺がこの世界を救う! そのためには力が必要だ!神代魔法の力が!お前に付いていけば神代魔法が手に入るんだろ!」

 

「いや、場所くらい教えてやるから勝手に行けよ。ついて来るとか迷惑極まりないっつうの」

 

 

勝手に盛りがって何言ってんだと呆れ顔をするハジメ。非難しながら頼るとか意味がわからなかった。そこに、愛子がおずおずと以前のハジメの言葉を指摘する。

 

 

「でも、南雲君、今の私達では大迷宮に挑んでも返り討ちだって言ってませんでした?」

 

「……いや、それは、あれだよ。ほら、“無能”の俺でも何とかなったんだから、大丈夫だって。いける、いける。ようは気合だよ」

 

「無理なんですね?」

 

 

自分の発言をきっちり覚えていた愛子に、ハジメは目を逸らしながら無責任な事を言う。

 

 

 

ハジメとしては、自分達が世界を越える手段を手に入れた暁には、クラスメイト達が便乗するのを許すくらいのつもりはあった。だが、彼等が一から神代魔法を手に入れる手伝いをするなどまっぴらごめんだった。時間のロス以外の何ものでもないからだ。

 

 

「南雲君、お願いできないかしら。一度でいいの。一つでも神代魔法を持っているかいないかで、他の大迷宮の攻略に決定的な差ができるわ。一度だけついて行かせてくれない?」

 

「寄生したところで、魔法は手に入らないぞ? 迷宮に攻略したと認められるだけの行動と結果が必要だ」

 

「もちろんよ。神のことはこの際置いておくとして、帰りたいと思う気持ちは私達も一緒よ。死に物狂い、不退転の意志で挑むわ。だから、お願いします。何度も救われておいて、恩を返すといったばかりの口で何を言うのかと思うだろうけど、今は、貴方に頼るしかないの。もう一度だけ力を貸して」

 

「鈴からもお願い、南雲君。もっと強くなって、みんなを守りたい。だからお願い!このお礼は必ずするから鈴達も連れて行って!」

 

 

今のままでは無理という愛子の言葉を聞いて、雫が一つだけ神代魔法を手に入れる助力をして欲しいと懇願する。その顔は、恩も返せないうちにまた頼らなければならない事を心苦しく思っているのか酷く強ばっている。

 

 

 

雫に感化されて、ずっと黙っていた鈴まで頭を下げだした。どうやら、雫が尋問官に連れ去られた事で色々考えているようだ。その声音や表情には必死さが窺えた。光輝は、その光景を見て眉をピクリと反応させたが、結局何も言わなかった。

 

 

 

ハジメは、逡巡する。本来なら、【ハルツィナ樹海】の攻略に光輝達を連れて行くような面倒ごとを引き受けるなど有り得ない。さっさと断って、【オルクス大迷宮】でも【ライセン大迷宮】でも好きなところに逝ってこいと言い捨てるところだ。

 

 

 

しかし、この時、ハジメの脳裏にノイント達との戦闘が過ぎったがため少し判断に迷った。

 

 

 

というのも、ノイントは【メルジーネ海底遺跡】でも垣間見たように時代の節目に現れて裏から権力者達を操ったり邪魔者を排除したりと、文字通り神の手足となって暗躍してきた神の意思をそのまま体現する人形だ。

 

 

 

ならば、明らかに作られた存在である“神の使徒ノイント”と“神の使徒ルイント”は、果たして、あれ一体だけと言えるのだろうか。そう言い切るのは楽観的に過ぎるというものだろう。

 

 

 

ノイントは言った。ハジメと雷電はイレギュラーであり、苦しんで死ぬのが神の望みだと。ならば、ノイントのような存在を多数送り込んで来ることは十分に考えられることだ。だとすると、その時のために、光輝達に力を持たせておいてぶつけるというのもいいのではないか?とハジメは考えた。

 

 

 

自分を狙う敵に他人をぶつけるなど鬼畜の所業だが、「まぁ、勇者とか神と戦う気満々だし問題ないよね?」と軽く考えて、最終的に【ハルツィナ樹海】に限って同行を了承することにした。一応、ユエ達にも視線で確認を取るが、特に反対意見はないようだ。

 

 

 

雫達の間に安堵の吐息と笑顔が漏れる中、ハジメは、残り二つとなった大迷宮とこれからの展開に思いを巡らせる。

 

 

 

何があるにせよ、この旅も終わりが見えてきたのだ。どんな存在が立ちはだかろうと、どんな状況に陥ろうと、必ず全てを薙ぎ倒して故郷に帰る。この世界で手に入れた“大切”と共に。

 

 

 

その誓いを、新たに重ねてきた絆と想いで包み込み、更に強靭なものとする。ハジメは、心の中で更に大きくなった決意の炎を感じながら、そっと口元に笑みを浮かべた。

 

 

ハジメSide out

 

 

 

色々あって明日には光輝たち勇者組とリリアーナと護衛・侍女たちがハジメ達に同行することとなった。雷電はリリアーナの希望通り抑止力の代わりであるクローン師団を召喚し、更にはガンシップを始め、AT-TEやAT-RT、TX-130セイバー級ファイター・タンクにターレットなど召喚してはクローン達に配備させるよう指示をだす。そしてある程度のクローンや兵器を召喚した後に、雷電はもう一つの用事を済ますために召喚したクローン達に任せてこの場を後にした。その用事というのは、光輝の本当の覚悟を見定めることだった。

 

 

 

雷電は光輝を探している道中で光輝を見つける。雷電自身、光輝とは最初から仲は良くないとはいえ、そのまま赤の他人として無視できないでいた。光輝のご都合主義解釈によってクラスメイトが殺されることはどうにも我慢ならなかった。光輝も雷電が声をかけてくるとは思いもしなかったようだ。

 

 

「雷……いや、藤原か……」

 

「天之河、一度しか言わないからよく聞け。すぐに訓練場の広場にこい」

 

「訓練場…?どうして訓練場なんだ?」

 

「話は訓練場についてからだ。異論は受け付けん」

 

 

何故雷電に呼ばれたのか光輝は雷電の行動を理解できなかった。そして流されるがまま訓練場についた。そして雷電は腰に懸架していたライトセーバーを二分割にする。

 

 

「藤原…?一体なにを…?」

 

「お前の本当の覚悟を見定める。それだけだ」

 

 

そう言って雷電は分割したライトセーバーの片方を光輝に投げ渡す。いきなりの投げ渡しだったので光輝は受け取り損ねそうになったが、何とかライトセーバーを手にする。

 

 

「これは……。これを渡して、一体なにを……」

 

「ここからは、語る言葉はない。…いくぞ!」

 

「……っ!?」

 

 

雷電はライトセーバーを起動させるや否や、フォースによる身体能力強化で大ジャンプと同時に光輝に対して切りかかる。光輝は慌てて咄嗟に横に飛び込んで回避する。

 

 

「な…なにをするんだ!?いきなり襲い掛かってくるなんて!」

 

「……!」

 

 

光輝の言葉すら聞く耳を持たず雷電はシエンで光輝を攻めまくる。光輝も只、やられっぱなしという訳にはいかず、見よう見まねでライトセーバーを起動させ、光刃を展開して雷電の剣戟を捌く。

 

 

 

しかし、雷電が使うシエンの力を込めたスイングで、相手の防御の構えを弾くほどの強さを持つ。その為、光輝は雷電の重い一撃を防御するのに精一杯で攻撃に転じることが出来ずにいた。光輝自身も何故雷電が自身の覚悟を見定めようとするのか理解できなかった。

 

 

「戦いに雑念を抱くな!」

 

「……っ!?」

 

 

雷電に指摘され、一瞬の油断を生み出してしまい、光輝の手元からライトセーバーが弾かれるように雷電の一撃によって手放してしまう。このままではやられると悟った時には、光輝の首元に雷電のライトセーバーが向けられていた。完全に勝負がついたと判断した雷電は、ライトセーバーのスイッチを切り、光刃を消す。そして雷電は弾いたライトセーバーをフォースで引き寄せ、回収する。

 

 

「覚悟はいまいちだ。そんな半端な覚悟で戦うつもりなら、今すぐ戦いから降りろ。むしろ足手まといになる」

 

「くっ…!だからってこんなことをしなくても……」

 

「必要はないとでも?すでに覚悟はできているとでも?笑わせるな。天之河、今のお前は中途半端な男であり、ご都合解釈の塊だ。それを改めなければ、お前の思い込みやくだらない理想によって仲間が危険にさらされる。それこそ、ハジメが言ってたように檜山の二の舞だ。ここ(ハイリヒ)を出る頃にはご都合解釈や思い込みを捨てておけ。でなければ、いずれそれが自身の足かせとなり、やがて皆に置き去りにされるだろう」

 

 

そう言い残し、雷電は訓練所の広場を後にした。ポツンと一人取り残された光輝は、まさか雷電にもハジメと同じことを言われるとは思いもしなかった。この時の光輝は雷電に対するある感情を二つ、無自覚に抱いていた。それは“憎悪”と“劣等感”。憎悪は雷電の棘のある言葉と行動に対してである。いつから憎悪を向けるようになったのかは、恐らくオルクス大迷宮で雷電と仲違いした時にであろう。そして劣等感は、雷電と光輝の差が違いすぎることだ。光輝よりも雷電の方が戦争のことをよく知り、無限とも言える雷電が召喚するクローン軍団。そして光輝よりも高いカリスマでクローン達や他の人たちに慕われている。

 

 

 

それに対して光輝はどうだろうか?相手の言葉に踊らされ、目の前の現実を見ず、ただ偽善の言葉で皆を巻き込んで、危うく犠牲を出すところだった愚か者としか言いようがない。

 

 

 

覚悟の示しもつかず、決定的な挫折。自身を変えようと取り組んだものの、結局はハジメ達に助けられてばかりだった。知らず知らずのうちに光輝の心の中に潜む闇が少しずつ増長していった。

 

 

ハイリヒ王国編が終わった後、番外編をやろうと思います。ハジメ達や勇者(笑)達を含めて別世界に転移するという設定なのですが、転移する場所はどのような場所が良いでしょうか?

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