温かい目で見守ってください。
瞼を閉じると、いつも思い出すのは数歩先で僕の方を振り返り、はにかみながら笑う君がいた。
最近は自分が起きているのか夢を見ているのかもわからなくなってきている。
「あ!起きたんですね。おはようございます」
「あぁ、おはよう」
君と出会ってからもう数十年の月日が流れ、僕は老いてしまったが、君は出会った
あのころと変わらない姿で僕の世話をしてくれていた。
「起きたんならご飯食べましょう!ご飯とお味噌汁に、お魚も焼いてありますよ」
「いただくよ」
せっかく起きたことだし、ご飯を食べながら彼女と初めて出会った頃のこと思い出していた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その日は春らしいのどかな日差しと、時折吹く春一番の風が桜の花びらを、
舞躍らせているそんな朝。
僕は春の陽気に当てられ、うっかり2度寝をしてしまったために学校に遅刻寸前で、
近道のために普段は通らない近所の神社を駆け抜けていた。
「はぁっはぁっ、ここ近道なんだけど石段がきついんだよな…」
そう文句を言いながらも、遅刻を逃れるためにも休憩するわけにはいかず、僕は息を切らしながら
石段を駆け登り続けている。
やっと社が見え始め、この長い石段を登り切った瞬間、その日一番の強風が吹きつけてきて、
僕は目をつぶった。
目を開けた時、僕はハッと息をのんで固まりその光景を見つめている。
社の前には、太陽の光を反射する新雪のような綺麗な白髪の袴姿の女性がいた。
その髪色によく似合う蒼い袴のを着た彼女は、驚いた顔をしながら彼女と目が合う。
僕は彼女のあまりの美しさに目を奪われていると、その姿に違和感を覚えて見つめてしまう。
彼女の頭にはヒトにはついていないはずのかわいらしいケモミミが、
腰のあたりには触ると絶対気持ちいであろうモフモフの尻尾が付いていた。
「あっ、あの!」
思わず声をかけようとしたが、彼女は驚いた表情のまま逃げるように社の方へ駆け出して
行ってしまった。
「綺麗な人だったな…」
ぼーっと彼女が去っていったほうを見ながら、そんな月並みな感想を思いながら呆けていた。
Boo…Boo…
ポケットに入れてたスマホが震えたことで呆けたことに気が付き、スマホを確認してみると
悪友からの電話がかかってきている。
「おはy「おい、お前今どこだよ?」
「神社だけど?」
「もうHR始まるぞ!?なんでそんなとこいるんだよ!」
「遅刻しそうだったから近道しようとして天使に出会った」
「まだ寝ぼけてんのか!?いいから早く来い!担任に遅刻がばれたら俺たちにも
被害が来るだろ!!」
うちの担任は、なんでも寂しい青春時代を過ごしたせいか、クラスの結束力を
つけるためだと言って、何かと連帯責任にしたがるのだ。
その分何か良いことがあればクラスを巻き込んで面白いこともやってくれるのだが、
それについては賛否両論だ。悪い先生ではないんだがな…
「すまん、何とか間に合うようにする」
「頼むぜ!何があったかはあとで聴いてやるから」
そして僕はこの日、世界が狙える幻を見た。
「起立、気を付け、礼」
…ガヤガヤ
HRもおわり、授業開始までの短い時間だが、クラスに喧騒がやってきた。
「それで、まずは言い訳を聞いてやろう」
そう言って、僕のほうを見てくる悪友に、今朝のことを話した。
「お前それ寝ぼけてたんじゃねぇの?寝起きで無茶な運動したから幻でも見たんだろ」
確かに、あの時見た彼女の姿は幻想だといわれても納得してしまいそうな美しさだった。
だが、僕はあの時のこの気持ちの高ぶりが幻だったなんて思えず、今すぐにでも確認しに行きたい
思いで落ち着かない。
「幻だったか確かめるために、帰りにもう一回行ってくるわ」
「あぁ、好きにしな。だがその前に…お前のせいでやらされる課題をやって写させろ!!」
世界を狙える景色を見たが、時をかけることはできなかった。
つまり僕は結局遅刻して、クラス全員仲良く課題を出されたわけだ。
あの時の担任のウキウキした顔は、当分忘れられそうにないな…
いや、忘れたいな…課題と一緒に…
つつがなく本日の授業も終わり、帰る時間になった。
「おい、今日この後どうすんだ?暇なら遊び行かね?」
悪友がいつもの調子で遊びに誘ってくる。
こいつは今朝、僕が言ったことをもう忘れているようだ…
僕は今朝のことが気になっていると誘いを断り、荷物を片付ける。
「あぁ?寝ぼけてただけじゃないのか?まぁいいや、面白そうだし、俺もついてく!」
そう言ってきたので、一緒に帰り支度をして、神社に向う。
「それにしても、相変わらずここの石段は長いなぁ…」
「ならここで待っててもいいぞ。」
「いや、こんな面白そうなことをここでお預けはないだろw」
悪友とともに長い石段を登っていく。
今朝も見た通りの少し寂びれた、しかし厳かな雰囲気の社が見えてきた。
「相変わらず人気のない神社だな」
「そう言うなよ、これでも由緒ある神社なんだし、正月とか参拝客であふれてるだろ」
ぶつくさ文句を言う悪友をなだめつつ、僕は今朝見た彼女がいないか探していた。
それから30分ほど探して回ったが、人っ子一人見つからずあきらめて帰ろうかと
思っていたら、ふと視線を感じたので振り返ってみると、賽銭箱の端から
白いケモミミとフサフサの尻尾がのぞいていた。
「あ!?」
僕は思わず走り出す。
「君は、今朝ここにいた娘だよね!!」
興奮しすぎて食い気味に近寄ってしまったが、驚かせてしまったようで「にゃっ!!」っと
猫の鳴き声のような悲鳴を上げながら尻もちをつき、フサフサだった尻尾が縮こまり、
ケモミミもふにゃっと垂れてしまっている。
「あ、ごめん、驚かせちゃったね」
「い、いえ。こちらも覗き見るような真似をしてすみませんでした」
そう言って彼女は立ち上がり、困ったような笑みを浮かべていた。
「それで、さっきも言ったんだけど、今朝ここで会ったのは君だよね?」
「は、はい。その節は急に逃げ出してしまってすみませんでした」
「それは別に大丈夫だよ。それより君にもう一度会いたかったんだ」
「へぇ~この子が朝言ってた娘?」
そう言いながら僕の後ろからのしかかるように悪友が肩を組んでくる。
「可愛い娘じゃん♪俺ともよろしくしてよ♪」
いつもの軽いノリで握手を求める悪友に対し、求められるままに
握手をしようとしてる彼女を止めるために、
僕は思わず邪魔だと言わんばかりに肩に乗っている悪友の手を払いのけた。
「相変わらず軽いやつだな。こいつのことは気にしなくていいから」
「は、はぁ…?」
「なんだよ、お前嫉妬でもしたのか?」
「うるさいなぁ」
「ふっ、ふふふ。ごめんなさい、仲がよろしいんですね」
「まぁこいつとの付き合いももう10年以上になるからな。もう兄弟みたいなもんだ」
「そうなるとお前は手のかかる弟だな」
「あぁ?俺の方が兄貴だろ!」
「はいはい、これからも頼むよ、兄さん」
「ふふふふっ。あ、私はこの神社に住んでいる”白上フブキ”って言います」
「僕は…
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
懐かしいな…彼女と初めて会った時、あれが一目惚れって言うんだろうなぁ。
もう数十年前か…思えば長い時間を彼女ときたものだ。それから何があったかな。
まぁいい、ゆっくり思い出していこう。
読んでくださりありがとうございます。
これからゆっくり続きも書いていきますし、もう続きが思いつかなくなって終了するときは、連絡しますのでよろしくお願いします。