先に謝りますが、今回も戦闘シーンがモリモリになってしまい、フブキちゃんの出番が少ないです。ごめんなさい。
3人で遊びに行ったあの休日から、数週間が経過していた。
あの日からずっと考えていることがある。
それが自分にできることなのか、どうすれば目的を達成できるか、そんなことばかり考えている。
今も朝から学校で、考え事を続けていた。
「な~にをそんなに難しい顔して考え込んでるんだ!」
悪友がいつもの軽い調子で絡んできた。
「ん~まだちょっと考えがまとまってないから話せないかな」
「そっか、まぁ難しいことはよくわかんねぇし、考えがまとまったら教えてくれよ!」
そう言っていつものように後ろの席に座ってきた。
そのまま何か話しかけてくるわけでもなくずっとそこにいた。
コイツのこういう気づかいは正直助かる。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そうして今日も何事もなく学校が終わり、僕は考えていることの答えを出すために、調べ物をしに街の図書館の方に来ていた。
ネットなんかでも色々調べているが、地方の古い文献や伝承なんかだと殆ど載っていないから、わざわざ調べて回っている。
「ふぅ~、ここにも詳しいモノはないか…」
読んでいた本に一区切りついたため、一息ついている。
僕はここ数週間ずっと、放課後は調べ物をするために学校の図書室をはじめ、街の図書館を巡っていた。
しかし未だに知りたい情報は見つかっていなかった。
悪友はこういう地味なことが苦手なため、この数週間は別行動をしていた。
アイツの方は今頃、学校で適当な部活に顔を出している頃だろう。
僕が用事があって構ってやれない日が続いたりすると、適当に体を動かすためと言って、その日の気分で学校の運動部に遊びに行っている。
普通、入部していない奴が部活に来るのは迷惑行為でしかないが、アイツの場合はその類い稀なる身体能力と才能に、挑む奴、教えを乞いたい奴、仮想他校のエース対策として利用する奴と言った具合に色々と重宝されているらしい。
本人は暇つぶしになると気楽にやっているみたいだが、やはりその才能が欲しいらしく、各部からの勧誘は未だに多いらしい。
しかし本人にその気がないのと、昔いろいろあったため、そういうところには所属しないようにしているのだ。
そんなわけで僕は今、一人で図書館に来ていた。
そうしていろいろな文献や伝承などを調べていたが、閉館時間が迫っていたので、僕は荷物をまとめて図書館を後にする。
今日でこの街の図書館はあらかた見て回ったが、欲しい情報は未だに手に入ってはいない。
まだしばらくは図書館に通い詰めになりそうだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今日も学校はいつも通り何事もなく終わり、今回は隣街の図書館まで来て調べ物をしていた。
「ここにもなかったか…」
結果は芳しくなく、閉館時間が近づいてきたため、帰路につく。
さすがに隣街まで行くと家までの距離が遠いので帰るのが大分遅くなってしまっている。
明日は休みだから、多少遅くなったところで問題はないのだが、今日は嫌に静かな夜だった。
いつもの帰り道である住宅地の通りを一人歩いているが、周囲の家からも、空き地の草むらからも、生き物がいる気配が感じられない。
(なんだか不気味だな…早く帰ろう)
少し足早になり始めた僕の耳元に、背後から聞いたことのない気味の悪い声が聞こえた。
「…ねぇ…お腹…すいたの……食べても…いい?」
「は?」
何かと思い、足を止めて背後を確認した僕の目に映ったのは、ちょうど街灯の陰でよく見えないが、小学校低学年くらいの小さな子供の影だった。
(こんな夜遅い時間に子供?)
そう疑問に思いつつも、その小さな影を見ていると徐々にこちらに近づいてくる。
次第に街灯の明かりに照らしだされて、その姿が明らかになる。
そこに映し出されたのは、額に突起のような角を生やし、青い色の肌をした醜悪な顔つきの…そう、物語に出てくるような……小鬼がいた。
「は?えっ?」
理解が追い付かない。なんだあれは!あんな生物がいるのか!?
「お腹すいたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
そう叫びながらこちらに走ってきたそれに、若干の恐怖を覚えつつも、僕は構えを取って、迎撃の準備をする。
ただの暴漢くらいならここまで緊張することはないが、この世のものとは思えない化物との戦いには、さすがに戸惑いがある。
見たところそこまで速くはないが、残りの距離があと数メートルというところで、小鬼が飛び掛かってきた!
予想よりも高い跳躍力のそれに、僕は思わず蹴りを繰り出し、小鬼の側頭部あたりを蹴り飛ばした。
体格差もあってか、小鬼は面白いように飛んでいき、住宅地の外壁にぶち当たった。
「はぁ、はぁっ…やったか?」
言ってから気が付いたフラグに、それでも思わず口をついて出てしまうのだから、物語の登場人物たちもこんな心境だったのかと、思わぬところで理解してしまった。
そしてやはりフラグになったようで、壁に叩きつけられて少しの間動かなかった小鬼は、また何事もなかったかのように動き出した。
全く効いてない様子でこちらを見て気味悪く顔を歪めている。
「笑って…いるのか…?」
再びこちらに襲い掛かってきた小鬼を殴り、蹴り、そして投げ飛ばしてみるも、どの攻撃も大して効いた様子はなく、何度も、何度も襲い掛かってくる。
(くそ、切りがないな…)
この世のものとは思えない異形の相手との戦いに、緊張も相まっていつも以上に疲弊していた。
時間が経つにつれ、こちらの動きに精彩がなくなり、次第に相手の攻撃を捌ききれずに引っ掻き傷などの怪我が増え始めた。
少し血を流して冷静になってきたのか頭が回り始めて思い出したけど、白上さんが前に言ってた悪鬼ってのはアレのことか…
確か白上さんたちが祓ってるって話だけど、物理攻撃でどうにかできるのかな?
そんな阿呆なことに思考を割けるくらいには余裕が出てきた。
ドン!
そんなことをしていた所為だろう、背後から来ていた別の小鬼の気配に気付けず、奇襲を許してしまった。
僕は背後からの飛び蹴りを右肩のあたりにまともにくらってしまい、受け身もろくに取れずに地面に倒される。
何とか追撃が来る前に立ち上がり、次の攻撃に備えるが、こちらの攻撃の効かない訳の分からない化物が2匹に増えたうえに、さっきの攻撃で右腕が動かない状況に、どうしたものかと考えていた。
「骨が逝ったか…これはさすがに、厳しいか…」
痛みに耐えながらそう呟いて、僕を挟むように佇む2匹からどうやって逃走するかの算段を考え始めていた時…
キィー!!ガシャン!!
「ば、化物!!」
小鬼の向こう側で自転車の甲高いブレーキ音のあとに倒れる音、そして女性の叫び声が聞こえた。
新しい獲物を見つけたとばかりに2匹の小鬼は女性の方を見て、ニヤニヤと笑い出した。
「マズい!!」
僕は慌てて女性を庇うために動き出すが、右肩が痛み上手く動かない身体で小鬼を追いかけ、背後にいる小鬼にからの攻撃が来る可能性もあるため、
無傷での対処は厳しいと判断し、自分へのダメージを無視して、女性を助けることを優先する。
今出せる全速力で目の前の小鬼を追い、その頭を左手で力の限りつかんで地面へ叩きつけて動きを止める。
「今のうちに逃げるんだ!」
「こ、腰が…」
「!?、くそっ!!」
思わず悪態が口から出てしまうが、小鬼を押さえつけながら後ろにいるであろうもう1匹の小鬼の確認をする。
「!?」
背後を確認した僕の目には、小鬼の飛び蹴りがもう眼前に迫っていた。
(あ、これはやばいな…)
そう悟って、飛び蹴りに耐えるために歯を食いしばり、頭へのダメージを少しでも抑える為に痛む右腕を無理やり顔の前へ動かす。
そうやってすぐ来ると思っていた衝撃も痛みもいつまでたってこない。
不思議に思って確認してみると、そこには狐の面を付けた二人組の姿があった。
「大丈夫ですか?」
「白上さん?」
聞き覚えのある声に、口から思わず名前がこぼれた。
「ふふっ、今度は私が助ける番ですね」
そう言って僕が押さえつけていた小鬼にお札を当てて「破っ!!」と気合の掛け声とともに、一瞬光ったかと思うともうそこに小鬼の姿はなかった。
彼女が術を使う姿を見るのはこれで2度目だが、状況がいまいちの見込めない僕はボケッとしていた。
そうして呆けている間に、もう一人の狐面の男性の方も小鬼を討伐していた。
僕があれだけ苦戦していたのが馬鹿らしくなるほどあっさりと消滅させてしまっていたことに、悔しさと戸惑いの感情が隠せない。
結局、大怪我をしているのは僕だけで、女性の方は自転車でこけた時に膝を擦りむいた程度で、大した怪我はないようだ。
狐面の男が女性に近寄り、膝の怪我の部分に札を当て、何やら呪文のようなものを唱えたかと思うと、札が柔らかな光に包まれた後にそこに描かれていた文字が消えていった。
気付いたときには膝の怪我はなくなっており、お礼を言う女性を無視するように別の札を彼女の目の前に出した。
またも何やら先ほどとは違う呪文を唱えたかと思うと、今度は札が焼失し、女性はぼ~っとした様子で倒れていた自転車を起こしてそれに乗ると、そのままどこかに行ってしまった。
「あの女性…」
「彼女は今の出来事を忘れて、家に帰りましたよ。無関係の人たちがこの街のことを知って、無用な混乱をさせたくありませんから」
ことの成り行きを眺めていた僕にあの男性が何をしたのか白上さんが教えてくれた。
そのまま彼女も僕の肩に札を当てて、先の男性よりも長い呪文を唱えたかと思うと最後に「治癒」と言うと、僕の体を淡い光が包み、体中の傷とともに右肩の痛みがなくなった。
僕は右腕が動くのを確認し、お礼を言おうと白上さんの方を見ると、彼女は少し悲しそうな顔で申し訳なさそうに、
「ごめんなさい」
そう言いながら僕の目の前に札を出すと、次の瞬間、視界は光に包まれ、そこで記憶が途切れた。
目を覚ますと、そこは自室のベッドの上で、僕は昨日の夜からの記憶が曖昧だった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
昨日の夜のことがどうしても何か引っかかる。
僕は思い出そうと必死に考えるも、隣街の図書館に行き、閉館時間になったから家に帰ってそのまま寝たという、どこもおかしなところのない記憶しか思い出せない。
しかし、何故かその記憶に違和感を覚え、そのことを考えていたが、結局その違和感の正体はわからないまま、最近の日課になってる朝のランニングに出かけていた。
なんだか気持ち悪いと思いつつも、今日も図書館に行くか悩みながら走り始めると、
「なぁ、今からちょっと時間くれよ」
悪友の家の前を通りかかったとき、なんだか落ち着きのない様子で話しかけてきた悪友に、僕はここ数日コイツが部活に顔を出していたことを思い出して、何がしたいかを察した。
「わかった。武道場で良いか?」
「あぁ!もう武道部の方には話つけてっから!」
そう確認した僕に、悪友は嬉しそうに満面の笑みで頷いていた。
やはり部活に参加するだけでは物足りず、逆にフラストレーションが溜まっていたようだ。
この学校の部活は、これでも県内屈指の実力だったと記憶しているのだが…
まぁいいか、僕もちょうどモヤモヤしていたから身体を動かしてスッキリしたいところだったんだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そんなわけで早朝から学校の武道場に来たのだが、休日だというのに部活をしている生徒が誰もいない。
聞けば昨日教師から使用許可を取ったらしいが、コイツはどうやってここを借りる許可を取り付けたのだろうか?
「なぁ、今回はどうやってここを借りたんだ?」
「あぁん?昨日、一昨日と武道部の連中と組手やって全員ボコったらみんな動けないってんで、数日は休みになったみたいなんだ。だから体育教師に言って借りた」
「は?……何やってんだよ…」
「いや、始めは球技とかの運動部に行ってたんだけど、段々血が騒いできたからここ数日は武道部に来てたんだが、ついはしゃいじゃって」
「つい、で全員ノしてんじゃねぇよ!まぁ今回は場所が確保できたってことで…よかったのか?」
そんな軽口トークをしながらそれぞれストレッチをしている。
お互い準備ができたから、道場の中央で向かい合い集中力を高めていく。
「じゃ、始めるか」
「いくぜ!!」
悪友の鋭い踏み込みからのストレートをいなし、カウンターに上段回し蹴りを放つもダッキングで躱され、下からアッパーカット気味の掌底を両手でガードしながら後ろに飛んで威力を受け流し、そのまま距離を取る。
「相変わらず阿保みたいな動きしてんな」
「そっちこそ、こっちの死角を突くようないやらしい技使ってくるじゃんよ」
一瞬の攻防の後に軽口を交わし、再び激しい攻防が始まる。
殴る蹴るは当然、投げ技に組み技と、何でもありの激しい戦いがそこに繰り広げられていた。
それなのに両者に有効打はなく、どの攻撃も躱し、防がれ、まるでお互いの動きがわかっているかのようだ。
そんなことがしばらく続いていたが、その均衡は僕の体力が尽きてきたことによって崩れる。
段々と防戦一方になり始めた僕に対し、どんどん熱が上がっていく悪友に、相変わらずでたらめな奴と思いながら、反撃の一手を虎視眈々と狙う。
なかなか隙がなく、そろそろ体力の限界かと思ったその時、勝負を決めようと大振りになった悪友の一撃に、一瞬の光明が見えた僕は必殺のカウンターの一手を繰り出す。
「ここだ!」
残りの体力を使い切る勢いで動き出した直後、やはり限界だったのか足が縺れ、ミスをした僕のテンプルに悪友の1撃が見事に当たってしまった。
「あれ?」
悪友も僕が少なくともガードをすると思っていたようで、クリーンヒットをもらった僕の姿に呆気にとられている。
僕は目の奥がスパークしたように眩暈がしたその時、頭の奥の靄が晴れるような衝撃を受け、昨日の晩のことをすべて思い出したあとに、意識を手放した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「う、うぅん…」
「お、起きたか」
「あぁ、おはよう。どのくらい寝てた?」
「5分くらいだぞ。それよか調子は?」
悪友にどのぐらい気を失っていたか確認しながら、自分の身体の調子を確かめる。
「体中が痛いし、ひどい頭痛がする最悪の目覚めだが、頭の中がスッキリしたよ。ありがとう」
「あぁん?よくわかんねぇが俺も久々に全力出せて楽しかったぜ!できればもう少し長くやりてぇがな」
「はははっ、最近は本の虫だったからね。次はボコボコにしてやるよ」
「おう!楽しみにしてんぜ!」
次の時までにしっかりと牙を研いで、ぐうの音も出ないほど完封しようと心に誓った。
とは言え並大抵の努力では難しいこともわかっているので、用事が済んでからどうするか考えよう。
「じゃあちょっと用事を思いだしたから帰るな」
「あいよ。俺はもうちょい身体動かして帰るわ」
そうして悪友と別れ、僕は痛む身体をそのままに疑問を解決するために神社へ向かった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「やはり来てしまわれたか…」
神社の境内に着いて白上さんの姿を探していると、背後から静謐で厳かな、それでいて老練な声が聞こえた。
振り向くとそこには彼女によく似た狐耳と白髪に立派な顎髭の生えた、老人が立っていた。
「やはり?僕がここに来ることを知っていたのですか?」
「あの子から君の話を聞いていたからの。予感はしておった」
そう言いながら僕を見る老人の視線は、まるですべてを見透かしているかのようで、なんだか落ち着かなかい。
「失礼ですが、貴方は…?」
「おっと失礼。儂はフブキの祖父で、この神社の神主じゃ。いや、ここはこう言うべきかの。この街を守護する組織の長じゃ」
「貴方が…」
そう聞いて目の前の老人のことを改めてマジマジと見てしまったが、話しかけられた時も気配を感じなかったがこの御老公…隙がなさ過ぎじゃないか…
いかんいかん、さっきまでアイツと戦ってたから思考が野蛮になってるな…
「して、ここに来たのは昨晩の件ですかな?」
「そうですね。あとはフブキさんの件で…」
「フブキの…?」
「まずは昨日の件で聞きたいことが」
「ふむ…」
そうして僕はいくつかの質問をして、最後に一つお願いをした。
それを聞いた御老公はしばし目をつむって思案すると、
「…よかろう。ただしお主の覚悟のほどを見せてもらおう」
腹の底に響く雷鳴のような声と重圧に、心臓が縮み上がるようなプレッシャーを受けるも、何とかポーカーフェイスを貫いて「はい」と答えた。
さて、主人公の彼はいったいどんな質問をして、どんなお願いをしたんでしょうか?
それにしてもおかしいな?僕はイチャラブのラブコメを描く予定だったはずなんだが…
では、続きをゆっくりお待ちください。