「ふっ!」
妖夢と幽々子さんが見ているなか、木刀を振る。
ビュン、と風を切る音が聞こえた。
「…………えーと」
「…………あらぁ、才能なしね~」
「無慈悲!?」
現実は非情である。
やっぱり俺は人間だったようだ。
そ、そんなにはっきり言う………?
幽々子さん、泣いちゃうよオレ。
「そうねぇ………妖夢が
100なら……10か15くらいかしら~?」
「あ、あはは………ほら、人間ですから……」
「…………そっすね」
結構ショック。
ほら、剣は男のロマンじゃないか。
才能ないかぁ………そっかぁ………
「鍛練あるのみ、よ~?
強くなれるかは別として、だけど」
「裏返せば強くなれないんですよね、それ」
「そうねぇ」
「否定してほしいなぁ」
オレは木刀を軽く振ってみる。
妖夢に聞いたのだが、
幽々子さんも武具の心得があるらしい。
才能がないとすぐに見抜けたのは
多分そのせいだろう。
「………そうね、妖夢と試合でもしたら?」
「オレに死ねと?」
「あぁ、私のを見て覚える、と言うことですか」
「そうよ。それじゃ、私が審判をするわ~」
「「お願いします」」
妖夢が腰の剣(短い方の白楼剣)を鞘ごと構える。
マジすか。
オレも木刀を構え、息を吐いて集中する。
「それでは
────────始め!!」
掛け声と共に妖夢が地を蹴り、
刀を大きく振り上げる。
刀は、実は受け流すのがとても難しい。
避ける方が確実だ。
能力を使って青い光を纏う。
足を後ろへ下げて、ギリギリで回避。
鼻先を風が切る。
「!」
「し──ッ!」
腰を落とし、下段からの斬り上げ。
だが、妖夢は刀の腹を使い、
オレの木刀の勢いを利用して大きく逸らす。
隙ができ、妖夢が横に振りかぶったのを確認。
逸らされた影響で崩れた体勢を利用する。
地を押すような感覚で蹴り、後ろへ跳ぶ。
「っや!?」
「せぇア!!」
速い………!
小柄な身体を活かした素早さで接近してくる。
妖夢は刀を大きく振りかぶり、横に薙ぐ。
それを木刀で防御する。が。
「しッ!!」
「ぐ──が、はぁ、っ!?」
木刀に命中させた瞬間に勢いを止め、
その止まった勢いの衝撃が、木刀を貫通、
オレの腹を衝撃が撃ち抜く。
────遠当て。
合気道などの応用、
気を飛ばして防御を貫通する技。
それを、霊力と剣の衝撃で妖夢は繰り出してきた。
衝撃に吹き飛ばされ、
受け身を取って右手に木刀を構える。
本当に死んじまうぞ!?
それでも審判はニコニコしながらこちらを
見ており、対戦相手からは殺気すら感じる。
刀の振り下ろしを後転で回避、
後転の途中で地面へ足をつける。
一か八か、やってやる。
「───!!」
「──っ!?」
妖夢の懐に地面を蹴った勢いで潜り込む。
妖夢は避けた後にまた追撃をしようと
していたので、こんな反撃は分からないだろう。
オレは木刀を振り、
妖夢の腹でピタリと止める。
「────!」
「勝負あり。勝者、ソラ~」
「か、勝った………?」
オレは呆然と立ち尽くす。
青い光が薄れ、溶けるように消えた。
オレの目の前の妖夢も口をパクパクさせている。
「……………」
「妖夢~?」
「ひ、ひゃい!?」
「あなた、油断しすぎよ~?
真っ直ぐ斬るのは良いけど、攻めすぎよ~」
そうだ。言われてみれば、防戦一方だったが。
攻め込みの隙を晒していたのも事実。
「ソラ、あなたも良かったわよ~。
あなたの強みはその目ね~」
「何度も死に目にあってますから………
もしかしたらそれかもしれませんね」
思い出せば、フランの弾幕を回避していた時。
あの時も極限まで集中していた。
大量の弾幕の動きを観察したのだった。
観察力、だろうか。
「凄まじい観察眼ですね………
動体視力には自信があったんですけど」
「おそらく、妖夢以上よ~?後は、
体勢を立て直す速度が異常なくらい速いわね~」
「同感です。それより速く決着を
つけるつもりだったのですが………」
「妖夢の速度より一歩速かったのね。
妖夢、ちょっと欲張りすぎよ~?」
…………体勢を立て直す速さ。
多分、腕斬られたり、
腹抉られたりしてるからだろうなぁ、って。
痛みに慣れるって嫌だなぁ。
「お疲れ様~、良い試合だったわよ~」
「「ありがとうございました」」
何とか、妖夢には勝てた。
だがまぁ、剣術も何もあったものじゃないので
油断していなければ絶対に
妖夢が勝っていたのだろう。
結局、オレに剣の才能はないようだった。