「300、年………!?」
「意識をしっかり持ちなさい。
ここで死んだら本当に終わりよ」
「何、を───」
弾幕が展開、一瞬で全ての妖獣が焼き払われる。
ルーミア、こんなに強かったのか。
「フッ、フーッ………!」
「セン!?」
茂みの奥から背に動かない藍を乗せた
キズだらけのセンが出てくる。
勝ったのか!?
「無事か、真神の名は伊達じゃないのね」
「ぐ………っ、まさか、遅れをとるとは………」
「っ!?」
「迷えば死ぬわ、生きているだけマシでしょう?」
「……………あぁ」
藍が懐から見覚えのあるリボンを取り出す。
あれは────
「全て、話す…………マヨヒガへ、行くぞ」
「この後に及んで足掻く、って訳じゃないわよね」
「なんだ、なんの、話を……」
「撤退するのよ。
藍は今は味方してくれるってこと。
霊夢は…………ちゃんと守ってくれたのね」
ルーミアが霊夢を抱き上げる。
藍はフラフラとセンから降りて立ち上がり、
リボンでスキマを開く。
オレはセンに咥えられ、背中へ乗せられる。
そして、スキマへと入る。
スキマを出る。
そこは、霧がかった集落のような場所だった。
集落の外は霧が濃すぎて見えない。
あとは…………人の、妖怪の気配がしない。
「こ、こは………」
「マヨヒガ、八雲家がある場所よ」
「は………!?」
「安心しろ、もう私はお前たちの敵じゃない」
集落の一際大きい家、その隣へと入る。
すると、その中から化猫が出てくる。
「藍しゃま!?
その傷はどうしたんでしゅか!?」
「………橙、客人だ、薬箱を取ってきてくれ」
「わ、分かりました!」
そそくさと家の中を走っていく。
「藍の式よ、今は少し休まないと」
「……………」
「………二人のことは、すまなかった」
「…………っ………いや、いい。
多分、そうしないといけなかっただろうから」
「そう言ってくれると、助かる」
家へあがり、藍と別れる。
寝室のような部屋へ案内され、
ルーミアに布団へ投げられる。
「いってぇ!?」
「我慢しなさい、能力で治るんでしょう」
「…………まぁ、そうだが」
「私はあの真神と霊夢の応急処置へ行くわ、
紫に勝てるのはソラ、貴方しかいないのだから
休める時に休みなさい」
「…………後で聞かせろ、色々」
「嫌でもそうしてもらうわ」
そう言ってルーミアは襖を閉める。
…………八雲紫に勝つ、か。
「その時は、その時か…………」
疲れていた。
目を閉じ、泥のように眠る。
「────さぃ、
────────起きなさい」
ベシベシと頬を叩かれ、
無理矢理に意識を覚醒させられる。
「…………もうちょい優しく起こしてくれよ」
「冗談言える程度には休めたようね」
「冗談じゃねぇほど痛いからな………」
まだ身体がズキズキするし。
あーもうむっちゃ噛まれたなぁ………
そんなことを考えながら起きる。
ルーミア、藍、センがいた。
「早速だが良い知らせと悪い知らせだ。
悪い………いや、良い知らせになるのか、
靈夢、先代博麗の巫女が倒された」
「…………どうなった」
「今は応急措置してある。
無論、紫様には気づかれぬよう」
ホッとする。
良かった…………
「悪い知らせ、2つ目だが………」
「まだあんのかよ」
「1つとは言っていない。
…………マヨヒガが封鎖された。
紫様以外に我々はここから出ることができない」
「…………」
「つまり、我々がマヨヒガに
潜伏していることに気づかれた」
やっぱり、か。
………………待て、今は、何時だ?
「オレは何日寝てた!?」
「3日よ。随分と疲れてたみたいね。
「3日…………!?」
「お前が寝ている間に幻想郷が
紅魔異変が起こる前に戻された。
お前を覚えているものは私たち以外にはいない」
「…………、っ………クソッ!!」
3日も寝てたのかオレは…………!
「八雲紫は屋敷で貴方を待ち構えてるわ。
私も行ったけど、強力な結界が張られてた」
「…………行くのか」
立ち上がる。当たり前だ。
「行かないといけない。
認められない、認めるわけにゃいかねぇ」
「マヨヒガからは外の世界に出られる。
外の世界へ逃げ、身を隠すという手もある」
「逃げない。霊夢たちを
駒みたいに扱うアイツは許したくない。
それに、逃げたところでいつか見つかる」
「…………」
全員が黙る。
そして、ルーミアが沈黙を破った。
「なら、まだ座って聞いていきなさい。
そのままでは紫にその信念ごと砕かれるわよ」
「今更聞くことなんて………」
そこまで言って、唖然とする。
藍が、額を床につけていた。
「頼む。聞いてくれ、聞いて欲しい」
「…………わかった」
夜風が、恐ろしいほどに穏やかだった。