「違う………違う違う違う!!
結界〝生と死の境界〟!!!」
「いい加減にしろよ………!!」
「あ、ぁぁぁぁぁぁぁ!!」
八雲紫が空間ごと遠ざかっていく。
更に部屋の間にあった襖が次々に閉まっていく。
先の部屋の重力が分からない。
こちらは既に限界。
…………覚悟はしていたが、仕方ない。
時間がない。突っ切る!!
「模倣〝魔法使いの熱光線〟」
八卦炉を模倣で作成、前に構える。
爆風と共に魔理沙のマスタースパークが発射され、
襖を破壊、弾幕を飲み込み
部屋を破壊し重力変化を解除する。
左腕が、焼け焦げた。
「づっ………次!」
次々に迫ってくるのは、蝶の形をした弾幕。
白玉楼で見た、命を奪う蝶だ。
ならば。
走り出す。
「模倣〝半霊の浮世断つ剣〟」
腰に出現した刀を鞘から抜き放ち、
全速力で壊れた部屋を疾走する。
飛来する蝶を、ほぼ無意識で斬っていく。
一匹残せば背後を取られる。
故に一匹残らず断ち斬る。
左腕が、肩から落ちる。
「まだだ………!」
右手はまだ動く。
銀のナイフが出現した。
弾幕を全て撃ち落とす。
「瀟洒な従者の短刀秘技」
ナイフを投げる。
瞬間、ナイフは全ての弾幕に狙いをつける。
全ての弾幕が破邪の銀ナイフに破壊された。
右腕に、無数の深い切り傷が刻まれた。
「まだ、終わらないわ!
奥義〝弾幕結界〟!!!」
来た。
八雲紫の、ラストスペル。
腰から、それを抜く。
翡翠の輝きを放つ札。
弾幕そのものが込められたスペルカード。
「お人好しはお互い様だな、幽香」
「!?」
跳躍し、弾幕結界と対峙する。
決して逃れることのできない、八雲紫の奥義。
だが、打ち消すくらいならできる。
切り札だ。
「花符〝幻想郷の開花〟」
空中に、鮮やかな華が咲く。
全自動ターゲットロックの弾幕。
幻想郷の開花、とは大袈裟だと思ったが。
「友達、だったんだろ。
これは幽香が夢見た、幻想郷だ」
八雲紫の旧友だと、そう聞いた。
なら、これに込められた意味も、オレより。
「気づく余裕なんて
なかったけど、今気づいた」
同じ花が咲いていない。
全て、違う花だ。
「皆が同じなんてことはない。
だけど、こうやって共に咲くことはできる。
争うことは皆が違うからできることで、
争いのない世界なんて存在しないんだよ」
花の弾幕が、結界を破壊する。
「完璧なんて存在しない。
それは悲しいことだけど。
それでも、オレたちは前に進むんだ」
辛い未来を乗り越えて。
それを笑って話せる過去にするんだ。
ボロボロの右手で、スキマへ逃げようとする
八雲紫の胸ぐらを掴む。
「ぐ、ぅ………っ!!」
「思い出せよ、お前が、
どんな気持ちで幻想郷を創ったのか!!!」
「…………!」
叫ぶ。
右手を離せば逃げられる。
左手は既に落ちた。
だが、まだだ。
「全ての命が、誰にも、
忘れられないようにするためだろうが!!!」
幻想郷の別名は、忘れられた者たちの楽園。
名前とは、意味。
外の世界で忘れられた者たちは、
幻想郷に訪れるのだという。
外の世界で、忘れ去られた名前(意味)は、
こちらの世界で認知され、生き続ける。
この世界は、残酷で、優しい世界だった。
「人間も、妖怪も、神も。
この世界だからこそ、生きていけるんだ」
身体に残る全ての力を振り絞る。
視界が、青い光に照らされる。
「未来は、誰にも分からない。
分からないからこそ、次はああしよう、
こうしよう、って歩みを進めていくんだ」
それを、誰かが決めるとするなら。
その誰かは、間違ってる。
「それが、オレたちの未来。
未来から目を逸らすな。
過去を恐れるな。
お前も、オレたちも、今を生きるんだ!!!」
紫電がスパークする。
そして、額を紫の額へぶつける。
「今を生きろ、八雲紫!!!!」