落ちる。
紫から手を離し、背中を畳に打ち付ける。
そして、気づいた。
「オレの、負け、か」
しかし、反応はない。
ただ、やったことは、確かだ。
無理矢理に身体を起こし、
壁へもたれかかる。
目の前には、紫が立っていた。
「あと、ちょっと、動ければ、なぁ………」
「…………………その必要はないわ」
涙を流して、彼女はそう言った。
「私の、負けよ」
「…………そうか、オレ、勝ったのか」
もう、笑うだけで精一杯だった。
彼女が清々しい泣き顔だったのが、救いだった。
「…………許して、とは言わないわ」
「そうだな、許すし」
「え………?」
「幻想郷、好きなんだろ?
オレも紫が創った幻想郷が好きだからさ。
ここを創ってくれて、ありがとう、紫」
目を見開いた彼女は、
その言葉に華のような笑顔を浮かべた。
「………あ………っ」
「ぐえっ!?」
紫も限界だったのか倒れる。
オレの上に。
「ごめん、なさい………もう……」
「大喧嘩だったからな………仕方ないよ」
「…………1つ、聞いてもいい?」
「どうぞ」
顔を上げた彼女の瞳は澄みきっていた。
「私、これから、どうすればいいかしら………」
「そうだなぁ………まずは、藍に謝れよ。
多分、紫を一番心配してたのが藍だから」
「その後は………?」
「自分で決めろよ、言っただろ?」
「だけど………」
泣きそうな顔をするもんだから、
びっくりしてしまう。
「あぁもう、分かったよ。
皆に謝って、それからウチで宴会しよう!
また、集まって、な」
「うん……」
「それから、幻想郷を見て回れよ。
スキマに引きこもって、見てないんだろ?
楽しい場所、沢山あったからさ」
話す。
子供に言い聞かせるように、
幻想郷で、どんなことがあったかを。
笑い合って、改めて、思った。
彼女も、幻想郷が大好きなんだろうな、って。
「あぁ、そろそろ行かないと」
「え、まだ駄目よ、動けないでしょ?」
「行かないといけない場所があってな。
もう身体は動くんだ、
人里にスキマで送ってくれないか?」
「…………えぇ、分かった。
それじゃあ、約束しましょう?」
「約束?」
彼女は、小指を差し出してくる。
それに、オレも小指を絡めた。
「宴会、するんでしょう?」
「…………そう、だな」
笑って、スキマに入った。
「はぁっ………はぁっ、はぁっ………!」
人里の外に、スキマは開かれていた。
焼けた店の後は、残っていた。
だが、数十メートルの距離が、遠い………!
「行かないと、いけないんだ………」
動かない身体に鞭をうって、必死に歩く。
脳裏に、映姫との話が浮かんだ。
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『もし、貴方が能力の
使いすぎで死亡した場合ですが』
『あぁ』
『魂は存在そのものです。
貴方は自身の存在を削って戦っている。
つまり、貴方が死んだ瞬間に』
『貴方の存在は輪廻の輪から外れ、
その世界にはいなかったことになります』
影響は少なからず、残りますがね。
と、そう言っていた。
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「約束したんだ………!
必ず、帰るって………!」
視界は既に靄がかかり、左手はない。
ふらつく足で、歩を進める。
「…ぅ……っ………!」
倒れる。
あと少し、手を伸ばす。
そして。
「…………お帰りなさい、ソラ様」
「ワフ」
涙が、零れた。
零れる涙を止めることなどどうでも良くて。
彼の伸ばした手を取る。
「ただ、いま…………
わる、い、もう、ねむ、くて」
「……………はい。
ゆっくり、お眠り下さい」
「……………クゥーン……」
彼は、笑顔を見せて。
「う、ん………おや、すみ………」
目を閉じ、息を引き取った。