東方友好録   作:青い灰

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エピローグ「未来」

 

夜もふけ、人里で居酒屋が開店する。

 

 

「いらっしゃいませー!」

 

 

カランカラン、と鳴る扉に彼女は言う。

まだ客はいない。

この方が今日の最初のお客だ。

 

 

「…………へぇ、落ち着きのある居酒屋ね」

 

「昼は喫茶店、の方が良いかもですね。

 どうぞ、このお席に」

 

「ありがとう」

 

 

やって来たのは金髪の女性だった。

だが………彼女は妙な既視感を感じた。

 

 

「あの………失礼ですが、

 どこかでお会いしましたっけ?」

 

「………奇遇ね、私も貴女を

 どこかで見たことある気がするのよね」

 

「どこかですれ違ったのかも知れませんね」

 

 

不思議な感覚だった。

そして、妙な違和感。

 

そう、何か、足りないような…………

 

 

「ワフッ!」

 

「あっ、今行きます!

 すみません、少し外します!」

 

「えぇ」

 

 

バタバタと奥へ駆けていく青い着物の女性。

奥に行くと、大きな灰色の体毛をした狼が

どうやら皿を割ったようだった。

 

 

「あら、割っちゃったんですか?」

 

「ワフ……」

 

「大丈夫ですよ、私たち用の食器でしたし。

 ……………あれ、おかしいですね。

 食器、1つ余ってましたか?」

 

 

彼女の言う通り、食器が1人分多い。

彼女はこ(・)の(・)狼(・)と(・)2(・)人(・)で(・)暮(・)ら(・)し(・)て(・)い(・)た(・)筈(・)だ(・)が(・)。

しかもこの皿、使ったことがないような………?

 

 

「ワフ?」

 

「…………?

 あ、お客様を待たせてましたね」

 

 

彼女は床の皿を適当に片付け、

お客の元へと向かう。

 

どうやら客足も増えたらしい。

珍しいことに、紅魔館の吸血鬼がやって来ていた。

 

 

「久しぶりね。ワイン、入荷したんでしょ?

 折角だから味見をしに来たわ」

 

「あら、どこぞの吸血鬼じゃない」

 

「へぇ、珍しい。

 幻想郷の賢者もこんなとこに来るのね」

 

「お嬢様、立ち話も

 ですから、お座りになられては?」

 

「そうね、ワインお願いできるかしら?」

 

「はい、お持ちしますね」

 

 

彼女はワインのある蔵へと向かう。

そして、ふと、考える。

なぜ、ワインをうちで出そうと思ったのだったか。

 

…………ダメだ、思い出せない。

入手方も忘れてしまった。

 

 

「…………ダメですね、しゃきっとしないと」

 

 

頬を軽く叩き、ワインの樽を持ち出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確かに、彼は無かった存在として

魂が磨耗しきった結果、

誰の記憶からも消去された。

 

 

 

 

彼の行動は、誰の記憶にもない。

 

 

吸血鬼の狂った妹を救ったことも

 

川の汚染を止めたのも

 

一度死んで永遠亭に運び込まれたことも

 

白玉楼で剣士を手助けしたことも

 

森で巫女を守ったことも

 

 

────幻想郷を、信じたことも。

 

 

 

 

 

 

真の意味で消滅したのだ。

それは、外の世界でも、幻想郷でも同じこと。

 

誰からの記憶からも消え失せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど、それはオレが望んだことでもあった。

 

 

救いたい人を救い、

幻想郷の人、妖怪、神に、

世界に、未来はあると示した。

 

 

十分すぎた。

 

だから、少し疲れて。

 

 

 

立ち止まった時に、消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど、あの場所に居たいと願うのは。

 

皆と、守った未来で笑い合いたいと願うのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「欲張り、なのかな」

 

 

 

 

悲しそうに、誰でもない彼は呟いて、消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の闇が、その残滓を最後に消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         ~完~

 

 

 





東方友好録、完結!

どうだったでしょうか。

え、終わりなのかって?


はい、終わりです。






彼(・)は自己犠牲を構わずにするタイプ。
もう消えて、そこで終わりです。

あとは、何か足りない未来が続いていくだけ。








それでは皆様、〝東方友好録〟を最後まで
お読み頂き、ありがとうございました!






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